卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第513話 予防線

 しばらく妖精さんとたわむれていると、最初の試合についてのお知らせが視界の前にウィンドウとして現れた。

 

 第一回戦の対戦相手は『x無敵丸x』さんと『マイナー厨』さん。聞き覚えのない名前だが、今回の大会には配信可の世界(チャンネル)以外からも無数の猛者が参戦している。ボクが知らない強豪はいくらでもいるだろう。

 

 ネットで検索してみたところ、無敵丸さんはもともと恒常の【ダブル杯】で活躍している強豪プレイヤーらしい。その一方で、普段の【ダブル杯】で組む相方はマイナー厨さんではないようだ。

 

「マイナー厨さんですか……。いかにもマイナーな戦法を利用してきそうな名前ですね。どんなびっくり(ビルド)で攻めてくるのか、楽しみです」

 

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>と、見せかけて普通のナイトとかだったら笑う

 

>フォッダーのマイナーな戦法ってたとえばなに?

 

>すっぴんビルドとか?殴りメイジも少なめ

 

>メインバードは少ないけどマイナーってほどじゃないか

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 メイン【バード】はこれまでにも意外と相手取ることがありましたからね。他の職業(クラス)に比べれば確かに少なめですが、職業(クラス)そのものがマイナーというわけではなさそうです。

 

「私の【マクロ】で蹴散らしてやるのです!」

 

 そういうメグさんの(ビルド)もマイナーといえばマイナーですよね。【マクロ】というシステム自体はマイナーなわけではないのですが、それを活用するためだけに特化(ビルド)を組むのはそこそこ珍しそうです。

 

「なんにせよ、相手にとって不足なし。初戦から見応えのある戦いが撮れそうですね!」

 

 

 そして間もなく試合開始時間となり、競技エリアへと転送される。

 

 ボクたちの前にいたのは、一見すると特にこれといった特徴のないプレイヤーだった。

 

 明らかに硬そうな全身鎧に身を包むのは無敵丸さん。未鑑定装備ではあるが、【ナイト】であるのは明白だろう。剣と盾を構えたオーソドックスなスタイルだ。

 

 その後方には二丁の銃を持ったマイナー厨さんが控えている。こちらも見た瞬間に【ガンナー】だとわかった。

 

「おいおい、一回戦から優勝候補サマかよ!?天は俺を見放したかぁ!?」

 

「甘えんな、カス。後からあたっても同じだろ。対策はしてんだ。速攻で潰せ」

 

 大げさな所作で天を仰ぐ無敵丸さんと、それをたしなめるマイナー厨さん。とはいえ無敵丸さんも本気で運のなさを憂いているわけではないらしい。もともとこういう『キャラ』のようだ。

 

「残念でしたね。初戦敗退は目前ですよ?」

 

 そんな彼の『キャラ』に合わせて、ボクも高圧的な煽り口調を浴びせていく。

 

「卍さんにばかり注目してるようですけど、私も忘れてもらっては困るのです!」

 

「忘れるわけねーだろ!【ダブル杯】なんだから二人揃っての脅威だ。相方がその辺の三下だったら俺もここまで絶望してねーぜ!」

 

「ず、随分と強気な口調で絶望してるのです」

 

 絶望なんてしてないからこその大げさな口ぶりだろうけど、なかなか面白い人ですね。

 

【4】

 

「だが――たとえ向かう先が絶望だろうと、諦めるわけにはいかねーよな!」

 

【3】

 

「いいですね、その姿勢は大事ですよ。ボクも希望に向かって突き進んでいきます!」

 

【2】

 

「ちなみにこいつ……。ひたすら予防線を貼っておいて勝ったときに大喜びするタイプだから。気をつけたほうがいいぜ」

 

【1】

 

「肝に銘じておくのです。徹底的に叩き潰すのです!」

 

【0】

 

「さぁ――徹底抗戦の始まりだ!」

 

【START!!】

 

「〈混沌に仕えし魔の眷属よ、 我に従え〉【サモン・ゴブリン】!」

 

 ボクが初手に選んだのはゴブ蔵の召喚だ。このゲームにおいて召喚は、ほぼノーリスクで手数を増やせる最強の選択肢だ。手札にあるのなら切らない理由がない。今まで割と召喚してないこともあったって? そこはノリですよ。

 

 ただし召喚の詠唱中には大きな隙が生まれる。その隙を埋めてくれるのがメグさんだ。【パーティストレージ】から【〈パウダーホーム〉】を周囲に振りまき、場を盤石に固めていく。

 

 さて、初手は盤面の強化に努めるのが【フォッダー】の鉄則だが、お相手さんは違ったらしい。

 

「【【ギガントスタンプ】】!」

 

 無敵丸さんは武器のサイズを大幅に増加させるスキルを多重に発動し、一瞬にして巨人の武器が如き大剣を作り出す。そのまま横薙ぎに振るい、初期位置から一歩も動かずにボクたちをめがけて攻撃を仕掛けてきた。

 

 近接物理の【ナイト】でありながら、事実上の遠隔攻撃というわけですか。

 

「«絶対防壁»なのです!」

 

 メグさんはすかさず【ストレージ】から巨大なダンジョンの壁を取り出し、剣を受け止める――その瞬間、

 

「【ニノタチイラズ】!」

 

 名前とは完全に相反して、無敵丸さんの二の太刀が振るわれる。スキルの効果によって、完全なる0秒で剣の位置取りを変更し、逆向きに切り返した。

 

「くっ……」

 

 メグさんはボクを庇うように瞬間的に位置取りを変え、その身で武器を受け止めようとするが――すぐにその動きを止め、大きく前へ跳躍して回避した。

 

 当然、剣はそのままボクに向かって振るわれ――。ゴブ蔵が動いた。

 

【ショットダウン】(ゴブブゴブ)!」

 

 【吸血悪鬼の妖精機関銃】から放たれた一発の弾丸が剣に命中すると、大剣は即座に叩きつけられるように地へ墜ちる。

 

【ショットダウン】

[アクティブ][投射][攻撃][補助][物理][条件:銃器][弾丸]

消費MP:4 詠唱時間:0s 再詠唱時間:60s

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。

[投射]への[命中時]に[弾道]を[変更]し[落下]させる。

[キャラクター]への[命中時]に[対象]を[地上]に[落下]させる。

 

「対空メタで武器を――ッ」

 

 持ち主である無敵丸さんも同時に地に伏せ、大きな隙ができた。

 

「まず一人――【メテオ】!」

 

 ボクがスキルの宣言を行うと、空中に星が生成される。燃え盛る白い火炎を放ちながら無敵丸さんをめがけて墜ちる――。

 

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