卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第516話 ビルディングタクティクス

「そろそろ次の試合が始まるみたいですね」

 

 しばらく配信で視聴者さんとたわむれていると、効果音と共に通知が表示された。

 

「……なのです」

 

 メグさんも言葉少なに応える。新しいフォルダさんと猫ですさんとの戦いを脳内でシミュレートしているようだ。

 

 周囲を見渡すと、第一試合が終わったこともあって、さまざまなプレイヤーが一喜一憂しているのが見て取れる。実感はなかったが、このわずかな時間で参加者の半分が脱落したのだ。そのことに気づくと背筋がひやりとした。

 

 第二試合が終われば参加者はさらに半分になる。この【ダブル杯】を突破できるのは選ばれた極僅かなプレイヤーだけ。ボクたちがそこに入れるかは定かではないけれど……。

 

「勝ちますよ、メグさん」

 

「――了解なのです!」

 

 

 そしてボクたちは競技エリアへと転移する。

 

 目の前にいるのは新しいフォルダさんと猫ですさんだ。

 

「こんなに早く当たるなんてね。本当はもっと後半で当たりたかったんだけど」

 

「おや、そうなんですか?」

 

「俺たちはバトルに慣れてないからね。【ダブル杯】だって初めてだ。強敵と当たる前に慣れておきたかったんだけど」

 

 【サバイバル杯】を突破してきてる以上、どのプレイヤーに当たろうとも十分すぎるほどの強敵なんですけどね。

 

「私も理論はわかっているつもりですが、実戦は初めてですにゃん」

 

 などと謙遜するお二人だが、油断してはいけないのはわかっている。むしろ畑違いだからこそ、バトル特化のプレイヤーとは違う柔軟な発想が飛び出してくるのは想像に難くない。

 

「こんな剣を作っておいて、よく言うのです。理論だけなら完璧にもほどがあるのです」

 

 メグさんが【ストレージ】から【古式・凍てつく炎の刃】を取り出し、剣の反射を眺めながらそう呟く。

 

 こんな武器を作ってる時点で、少なくともボクを仮想敵にしたシミュレーションはばっちりでしょうね。

 

「さすがに速攻で潰されたくはないので、今回は後衛寄りで動きますね」

 

「了解なのです。といっても、堂々とこんな武器を売ってる時点で――」

 

 メグさんの言いたいことはわかる。対策が近接戦闘前提のものだけのはずがない。だとしても安易に近づくことはできない。ボクの行動を縛るには最高の見せ札ですね。

 

「お手柔らかにおねがいするにゃん」

 

【4】

 

「了解しました。いつもの200%増しで挑ませていただきますね」

 

【3】

 

「まあそう言うと思ってたさ。せめてこちらは400%増しで受けて立つとするよ」

 

【2】

 

「そんなに簡単に出力を上げられたら世話がないのです……。私は【マクロ】の伝道師、如何なる時でも寸分違わず100%の出力でお相手するのです!」

 

【1】

 

「とか言いつつも、一番がんばるのがメグさんなんですよねー」

 

【0】

 

「では、生産系プレイヤーの生き様を――とくとご覧あれ!」

 

【START!!】

 

「〈混沌に仕えし魔の眷属よ、我に従え〉【サモン・ゴブリン】!」

 

 ボクの初手は決まっている。最速でスキルの発動を宣言すると、眼前に魔法陣が現れてゴブ蔵が飛び出した。【吸血悪鬼の妖精機関銃】の権限はゴブ蔵に移譲され、彼の装備になるが――。

 

「♪」

 

 実際に機関銃を携えているのはゴブ蔵ではなく妖精さんだ。ふわふわと浮かびながら、自身より一回りも二回りも大きな機関銃の銃口を猫ですさんたちに向けている。

 

 これこそ【ガンナー】のスキル【セミマニュアル】の真価だ。

 

【セミマニュアル】

[パッシブ][パーミッション]

効果:[装備]している[銃]を[自身]の[意思]で[使用]する。

 

 通常なら手に持って引き金を引かなければ使用できない銃系統の装備に、思念操作の選択肢を追加する極めて有用なパッシブスキル。地面に設置して『セントリーガン』として運用したり、【キネシス】で浮かせたりするのが基本だが、妖精さんと紐づいていれば完全に独立稼働できる。先の対戦でマイナー厨さんを仕留めたのも、妖精さんによる視界外の狙撃だ。

 

 メグさんも初手としては安定択を選ぶ。対策がなければ自由自在に転移できる現環境において【〈パウダーホーム〉】を展開しないという選択肢は存在しない。

 

 一方で生産プレイヤー組は――。

 

「うわぁ……」

 

 猫ですさんが床に手を当てると、一瞬にして巨大な塔がせり上がってきた。さながら【超高層射撃支援型展望台コメット】の如く巨大な建造物だ。いや、訂正しよう。『コメット』を軽く越えている。宇宙エレベーターを思わせるほど巨大なオブジェクトが一瞬で出現した。その光景に、思わず冷や汗が流れる。

 

 普通ならこれだけの建造物を【ストレージ】に収めることなどできない。しかし【ストレージ】の容量はあくまで重量だけで決まる。いかに巨大な建物であろうと、すかすかの内部構造で成立させれば収納できる。そんな内部構造であっても【ホーム】として認定されていれば『不壊』の要塞と化す。

 

「猫ですさんも新しいフォルダさんも、塔の上にいるみたいなのです」

 

 これだけの高層建造物であっても«テレポート»を使えば一瞬で頂上にたどり着ける。しかし……。

 

 ボクの《『心眼』》が内部の様子を透過する。たとえ壁を隔てていたとしても中の様子は筒抜けだが、わかっていたところで、対処できるわけではない。

 

「建物の中は当然のように【〈パウダーホーム〉】が充満しているみたいです。いや……それどころか、建物の周囲にも存分にまき散らしているようですね。それに――」

 

「――簡単に近寄らせてはくれないみたいなのです!」

 

 塔の壁面から、無数の銃口が顔を出す――。

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