卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「問題ないのです。お相手は誰も彼もが卍さんの対策に寄せすぎて、本来の戦い方ができていない――打ち砕くのは容易いのです!」
「それはとんだご挨拶だね。【ジョーカー】を利用して相手に合わせた変幻自在の戦い方こそが俺の
メグさんの煽り口上が新しいフォルダさんに刺さったらしい。彼はハンマーを天に掲げ、スキルを詠唱し始める。
「〈己が基本を改革せよ〉――」
「«五月雨飛ばし»!」
その隙を突くようにメグさんが斧を振るい、衝撃波を放つ。しかし新しいフォルダさんの後方に控える猫ですさんが砲弾で迎え撃ち、衝撃波を次々と撃ち落としていった。
「【ニュートラルヴァリアント】ッ!」
その瞬間、新しいフォルダさんの気配が変わった。
【ニュートラルヴァリアント】は近接攻撃スキルを通常攻撃として振るえるようにする強力な
【ニュートラルヴァリアント】
[アクティブ][自身][支援]
消費MP:12 詠唱時間:5s 再詠唱時間:1m 効果時間:30s
効果:[キャラクター]の[通常][攻撃]を[消費MP]1以上6以下の[習得済み][近接][攻撃][スキル]1つに[変更]する。
そして新しいフォルダさんがハンマーを大きく振り下ろす。
「【正拳突き】!」
その言葉と同時に、世界そのものが震えるほどの衝撃が走った。空間がねじれたかと思うほどの歪みが発生し、破裂音だけでボクたちのHPが削れていく。
「それのどこが【正拳突き】ですか!?」
理屈はわかる。【正拳突き】は本来、素手でしか使えない制限があるぶん高威力の攻撃スキルだ。しかし【ニュートラルヴァリアント】で通常攻撃に設定すれば、その制約を突破できるバグがあるのだろう。
「【ワイドアイテム】」
ボクはアイテムの効果範囲を広げたままポーションを割り、HPの減少を食い止める。しかし衝撃だけでこの威力だ。直撃すればメグさんでも全損は免れない。
もはや新しいフォルダさんは攻撃を当てようとすら考えていないらしい。このまま素振りを続けるだけで空間ごとダメージを撒き散らし、全損を狙う腹づもりのようだ。
「〈古の炉より火の子を借りて〉〈星の拍手で天を割り〉――」
ボクは【ファイアワークス】の詠唱に入る。長尺の呪文だが、追加HPを確保できるのが強みだ。継続する範囲攻撃を乗り切るにはうってつけだ。
メグさんも対抗するように【ニュートラルヴァリアント】の詠唱を始めた。
ゴブ蔵はボクの背後から回復魔法を飛ばしてくれている。このままなら【ニュートラルヴァリアント】の
「【オーバードーズ】――【プレシジョンメディシン】ですにゃん!」
次の瞬間、メグさんの頭上にポーションが出現し即座に割れた。中身がメグさんに降りかかり――HPの回復をダメージに変える『反転』の
「くっ――【キュアバレット】!」
メグさんはすぐに詠唱を中断し、
【天使の加護】
[パッシブ][ブレッシング][オート]
再詠唱時間:10m
効果:[キュアバレット]を[発動]する。[回数]を[2回]として[扱う]。
だが時間は稼げた。
「〈終の夜空に咲き誇れ〉【ファイアワークス】!」
その宣言とともにボクの頭上に花火が打ち上がる。
【ファイアワークス】
[アクティブ][上昇][視界][聴覚][攻撃][支援][炎属性][魔法]
消費HP:25% 詠唱時間:20s 効果時間:4m 再詠唱時間:30s
効果:
[聴覚]で[観測時]、[ダメージ]を[与える]。
[視界]で[観測時]、[追加HP][追加MP]を[獲得]する。
目で見て楽しめば追加HPを獲得し、耳で聴けば継続ダメージを与える。夜空に咲く花々がボクのHPを瞬く間に補充してくれる。メグさんにとっては本来ならダメージを伴うスキルだが――。
「大丈夫、問題ないのです!」
ダメージは受けているはずなのに、追加HPの獲得で十分に相殺できている。連携のため、彼女にも炎属性ELMを高めてもらっているのが功を奏した。
一方で新しいフォルダさんたちは花火のダメージを明らかに防ぎ切れていない。ボクの【ソウルフレア】はやすやすと受け止められたのに、それより劣るはずの花火の継続ダメージでHPを削られていく。花火に視線を向け、追加HPで相殺しようとしているらしいが、それも難しそうだ。
なぜ同じ炎属性のスキルなのに結果が異なるのか。答えは単純で、彼らはELMではなく耐性で受けているからだ。
【エレメンタルレジスト】
[アクティブ][キャラクター][エリア][炎属性][水属性][土属性][風属性][支援][魔法]
消費MP:4 詠唱時間:10s 再詠唱時間:30s 効果時間:2m
効果:[キャラクター]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[味方]に[炎属性][水属性][風属性][土属性]の[耐性]を[付与]する。
ELMを高めたプレイヤーなら【ファイアワークス】はダメージを抑えつつ追加HPの獲得量が増える。極まっていればダメージすらも回復に転化する。
しかし耐性はそうではない。常に影響を抑える方向に働く。だからダメージは抑えられても、追加HPの獲得量まで減ってしまう。もともと追加HPの獲得で抑え込む前提の【ファイアワークス】では、差し引きはほとんど変わらない。
これを起点に、分水嶺を手繰り寄せていきますよ!
テクニックその149『武器正拳』
【ニュートラルヴァリアント】によって通常攻撃として扱われたスキルは発動条件を無視します。これによって【正拳突き】を武器から繰り出すことができるテクニックです。ただでさえ武器がないことを前提として高い火力を持つスキル0武器の攻撃力を込めて繰り出すことが出来る。その威力は計り知れませんね。