卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第520話 空神避け

 【ファイアワークス】を打ち上げたことで、新しいフォルダさんのHPはじわじわと減少に転じる。一方、彼の素振りが生むダメージは、花火の美しい光景をただ眺めていれば恐るるに足らない。

 

 そのまま素振りを続けても意味がないと判断した新しいフォルダさんは、上段に構えたまま、ほんのわずかに動きを止め――

 

 次の瞬間にはメグさんの懐へと一気に肉薄していた。

 

「読めているのです!«絶対防壁»!」

 

 新しいフォルダさんの振り下ろしに合わせて、メグさんは«絶対防壁»を頭上へ掲げて構える。しかし、

 

「こっちこそ、読めているよ。«振り下ろし»!」

 

 新しいフォルダさんのハンマーが壁に衝突すると、メグさんは当然のようにその圧力を真正面から微動だにせず受け止め切る。

 

「なに?」

 

「【マクロ】に対して最も有効なのは【マクロ】――だから、読めてると言ったのです」

 

 通常のアクション相手なら一方的に動作を再現して押し切れる【マクロ】も、【マクロ】同士が真正面からぶつかれば話は別――そんなことはここまでのやり取りでとっくにわかり切っている。

 

 だからこそメグさんは【マクロ】の強制力に驕らず、攻撃を()()することを選んだ。

 

【オフセット】

[アクティブ][近接][攻撃][物理][ガード][条件:盾]

消費MP:6 詠唱時間:0s 再詠唱時間:45s

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[スキル][相殺判定時]に[出力]を[増加]させる。

 

 そのままメグさんの力技で押し返され、勢いよく後方へ弾き飛ばされた新しいフォルダさんへ、ボクは間髪入れず、狙い澄ました迎撃を差し込む。

 

「【エレウテリア】!」

 

 自由の風に炎を添えた『魔眼』の暴威は、炎属性と風属性に耐性を持つ新しいフォルダさんにも確かな有効打になった。

 

 【ファイアワークス】ですでにダメージを受けていたこともあり、HPを『1』まで削り取ることに成功する。

 

 即座に【オートユーザー】で回復されてしまったが、【パインサラダ】だけはどうにか切らせることができた。

 

 バックステッポで後方へ下がる新しいフォルダさんと入れ替わるように、猫ですさんが前へ躍り出る。そして【ストレージ】から杖を一本取り出し、こちらを目掛けて鋭い軌道で振り抜く。

 

「【ガイデッド】!」

 

 瞬間、針のような弾丸が杖から放たれ、たちまちボクの身体へと一直線に突き刺さる。

 

【ガイデッド】

[アクティブ][投射][妨害:確定][攻撃][物理][条件:銃器][弾丸]

消費MP:4 詠唱時間:0s 再詠唱時間:60s 効果時間:4m

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[命中時]、[効果時間中][自身]の[投射]を[キャラクター]に[追尾]させる事が出来る。

 

「【バスターバレット】!」

「【キュアバレット】なのです!」

 

 即座にメグさんがボクの妨害(デバフ)を治療するが、それよりもなお一手早く、猫ですさんの横に控える砲台から凍てつく冷気を色濃くまとった砲弾が放たれる。

 

 ボクは即断で床を蹴り、サイドステッポで射線の外へ逃れるが――やはり、ほんのわずかに遅かったか。【ガイデッド】の効果は、どうやら効果時間中に放たれた弾丸すべてに適用され続けるらしい。

 

 猫ですさんが休みなく次々と砲弾を撃ち込み続けるのを横目に、必死に思考を巡らせる。

 

 スキルによって追尾の効果を付与された攻撃を〈トンネル避け〉で避けるのは無理筋もいいところだ。

 

「【アトラクト】!」

 

 頼みの【アトラクト】も、やはり不発。正確には、猫ですさんが続けざまに放った砲弾は引き寄せられたようだが、【ガイデッド】の効果が乗った砲弾は引き寄せられていない。

 

「さっきから【アトラクト】を使いすぎですにゃん!?」

 

 危なげなく«絶対防壁»で砲弾を受け止め続けるメグさんに、猫ですさんが文句を言うが、メグさんは無言を貫く。代わりに背後に控えるゴブ蔵が【カタパルト】を放って応えた。

 

 さて、メグさんたちのほうはひとまず安泰のようだ。ボクもそろそろただの足手まといという立場からは脱却しなくてはね!

 

 前方から迫る凍てつく弾丸へ、ボクは全力で真っ向から突っ込んでいった。そして今まさにぶつかるその瞬間に合わせて――

 

「【『アイテール』】」

 

 真上へと大きく跳ね上がる。追尾する弾丸ですら、【黄金の才(ユニークスキル)】の特異な挙動には対応できず、ボクのいない空間をそのまま抜けていった。

 

 そしてその勢いのまま急転降下し、新しいフォルダさんへ狙いをぴたりと定める。

 

「【イグニッション】!」

 

 新しいフォルダさんはすでに落下してくるボクの軌道を正確に見定めていた。こちらを正面から迎え撃つようにハンマーを構えている。応ずるようにボクは()()()()()()()加速した。

 

「【アブソリュート】!」

 

 ボクを倒すのに大した火力は必要ない。ただ、当たる技で確実に仕留め切るだけ。そのぶん、絶対に当てるという覚悟の強さがひしひしと伝わってくる。

 

 だが、それでもまだまだぬるい。ボクのカラダを掠めていくハンマーを見据えながら、杖の渾身の一撃を容赦なく叩き込んだ。

 

「アシスト無しで回避っ……」

 

「【ソウルフレア】!」

 

 如何に耐性を重ねていようが、それが無効化でないのなら、【イグニッション】を乗せた【ソウルフレア】で貫けぬ道理などない。白く眩く輝く炎が新しいフォルダさんを包み込み、残るHPを、文字通りたった一撃で全損させた。

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