卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

542 / 543
第529話 ディスマインド

 三下さんに視線を戻し、ボクは【フェアリールビーロッド】を向ける。

 

「さて――『近接対応(てくにかる)』たる所以を、お見せしましょうか!」

 

 ボクは【『アイテール』】によって空を5回連続で踏み鳴らし、独特の破裂音を響かせながら加速する。【ストレージ】から取り出した【魔界の御札】を自身に貼り付け、一気に三下さんへ肉薄した。

 

 【魔界の御札】の効果により、ボクは【ウォーリア】の戦略(スタイル)付与(エンチャント)を受け、近接戦闘への適性を得る。

 

ウォーリア

・あなたは近接武器のエンチャントを強化する

・あなたは近距離攻撃の威力を増加させる

・あなたは近距離攻撃の威力を軽減できる

・あなたは運動能力に対して追加補正を持つ

・あなたは状態異常に対して強い抵抗を持つ

 

 ボクが杖を突き出すのに合わせて、三下さんが拳を鋭く繰り出す。強化されたとはいえ【メイジ】と【モンク】が正面からぶつかれば、普通なら勝ち目はないが――。

 

「【アタックコマンド】なのです!」

 

 【将軍の旗槍】によるメグさんの支援(バフ)を受ける。下手な絡め手なんて要らない。力づくで叩き潰すだけだ。

 

 【アタックコマンド】によって強化されたボクの一撃は、三下さんの拳を押し返し、その勢いのまま三下さんを派手に吹き飛ばす。

 

「ただの支援(バフ)で……っ」

 

 もちろん支援(バフ)だけで【メイジ】と【モンク】のステータス差は縮まらない。しかし一撃に六撃を重ねれば話は別だ。«五月雨突き»で射出した6つの【アンプルアロー】が一斉に弾け、爆発的な破壊力を叩き出した。

 

 とはいえ大きなダメージには至っていない。それどころか【モンク】の超優秀な継続回復(リジェネ)受動(パッシブ)【黙想】で、見ているそばから凄まじい速度でHPが回復していく。回復行動すら取る必要がないのがあの職業(クラス)の厄介な点だ。

 

【黙想】

[パッシブ][スイッチ][条件:素手]

効果:[自身]の[HP]を[継続的]かつ[大幅]に[回復]させる。

 

 三下さんはボクから距離を取りつつ、拳をまっすぐ前へ突き出す。人間の動きではない。まるでピストンのように関節を無視して繰り出される『正拳突き』だ。その動きだけで空気が圧縮され、爆炎をまとった衝撃が撃ち出された。

 

 衝撃は彼が生み出した〈流水誘導〉に従い、刹那にも満たないうちにボクの眼前へ滑り込んでくる。この手の『波の性質』を帯びた攻撃は〈トンネル避け〉では回避しづらいが……。

 

「【《イグニッション》】――《ガゼルフット》!」

 

 《イグニッション》で強化すれば話は別だ。回避の意思を魂に刻み込めば、迫る衝撃を容易くすり抜け、その勢いのまま前方へ加速する。

 

 そのまま【アンプルアロー】を6連射で撃ち込むが――三下さんは避けもせず受け止めた。ダメージは――入らない。

 

「なっ――」

 

「それはスキルだから」

 

 地を蹴って鋭く踏み込み、お返しとばかりに拳が突き出される。

 

「【引力】」

 

 〈トンネル避け〉で逃げようとしたボクの身体を捉え、正面から一撃が叩き込まれた。弾き飛ばされながらも《神なる行動(ディバインアクション)》でリタイアだけは回避してその場に踏みとどまる。

 

「くっ――」

 

 確かに厳密に言えば、【アンプルアロー】を射出する【アーチャータクト】自体はスキルだ。しかし先程は無効化されなかったのに、今度は無効化されるとは。スキルを能動的に無効化する【権能】なのか?

 

 脳裏で思考を巡らせていると、三下さんがすかさず追撃を仕掛けてくる。

 

「【アブソリュート】」

 

 スキルを宣言しながら拳を突き出すと――その拳が凄まじい速度で射出された。

 

「はぁ!?〈改造行為(チート)〉!?」

 

 身体との結合部は完全に金属でできており、陽光を受けて鈍く輝いている。〘リアルステーション〙じゃなかったのか。不自然な関節の挙動も〈改造行為(チート)〉の一環――。

 

 しかし《神なる行動(ディバインアクション)》を中断させるつもりだったのかもしれないが、ボクは【モーションアシスト】がなくたってその発動意思を保ち続けられる。もはやHPが0なのだからダメージも関係ない。

 

 【『アイテール』】で空を踏み鳴らすと、鋭い刃が次々と空間に生まれ、拳へ向かって射出される。やはり拳にはアバターとしてのダメージ判定が残っており、その質量と加速力に弾かれながらもダメージを蓄積させていく。

 

 そこで【サモン・ガイア】の召喚時間が尽きた。帰還していく【ガイア】の気配を肌で感じると同時に、三下さんに与えるダメージ量が大きく跳ね上がる。ダメージを肩代わりする能力の恩恵が受けられなくなったためだ。

 

 しかし【黙想】で回復を続ける彼のHPを削り切れず、正面から〘ロケットパンチ〙の直撃を受け、大きく後方へ弾き飛ばされた。

 

 だが〘ロケットパンチ〙はそこで終わらない。弾き飛ばされたボクを追うように空中で軌道を変え、食らいつくように迫ってくる。

 

 しかも三下さん本人も別方向から砲弾めいた勢いで肉薄していた。挟み撃ちですか!しかし今はいくらダメージを受けたところで――そう思った矢先、《『第六感』》が警告する。

 

 〈魔導〉が来る!

 

「〚ディスマインド〛」

「〚アンチマジック〛!」

 

 〘ロケットパンチ〙から膨大な魔力が迸り、光線として放たれるその瞬間に〈魔導〉を打ち消す。どんな効果かは知らないが、消せてよかった。

 

 しかし次の瞬間、ボクの左腕が三下さんの手刀によって切り落とされた。




改造行為(チート)その10 『自在関節』
ばねのような伸縮・屈曲が自在の関節により、自由な肉体動作と強化された打撃力を両立する〈改造行為(チート)〉です。便利なようにも見えますが、これまでの改造と比べても人体の置換範囲が広すぎるので、そう簡単にできることじゃありません。

改造行為(チート)その11 『ロケットパンチ』
ありそうでなかった〘機関銃〙の互換的な〈改造行為(チート)〉です。
弾丸を素手として扱うのではなく、素手そのものを射出します。
恐らくは武器を持って振るったりすることも出来るので、意外と使い勝手は良さそうです。

魔導その11 『ディスマインド』
精神を破壊する〈魔導〉です。
当たった時点で心が破壊され、人格が崩壊するそうです。
精神的なショックで破壊するのではなく、パーツとして砕かれるだけなので、処置を受ければトラウマなどの後遺症もなく回復できるのだとか。ゲーム内でもスペック通りの効果になるのかはわかりませんが、そんな危険な〈魔導〉をさらっと使わないでいただきたい!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。