卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第536話 先制攻撃

 機材トラブルとやらが解消するまで、メグさんと一緒にのほほんと戯れていると、どうやら本当にすぐに復旧したらしい。これから試合を始めるというお知らせが流れてきた。

 

「本当に陰謀や異世界からの侵攻じゃなかったんですねー」

 

 ほんとに【フォッダー】は信用できないからね、と添える。

 

「この十数分の間に迎撃したのかもしれないのです」

 

 それもなくはなさそうですね。単なる設備トラブルというのもたしかに怪しい話ではある。だが、解決したのであれば本当の理由は関係ない。今のボクたちにとっては【ダブル杯】の進行が全てだ。

 

 そして間もなく転移が発動し、ボクたちは競技エリアに飛ばされる。

 

 ボクはメグさんの腕の中からぴょんと飛び出して、元の人間のアバターに戻った。そして急いで【りんご】を取り出し、もぐもぐと頬張る。

 

 眼の前にはおっさんとテトリスさんがいた。

 

 おっさんはきらびやかな魔法のローブで着飾っており、いかにも魔法型という印象を受ける。未鑑定装備ではないところから察するに、【OA-YS】産の装備だろう。

 

 テトリスさんは自慢の大鎌を片手で持ち、ぶんぶんと振り回している。服装は軽装気味で、大鎌のイメージとは合わない半袖と短パンだ。見た目はダサいが、武器だけでなく防具も一級品なのだろうね。

 

「さすがに焦ったよ。また【フォッダー】が終わるんじゃないかってね(汗)」

 

「『かっこあせ』って……。かなりの飛び道具ですね」

 

 相変わらずおっさんの死語に関する語彙力には感嘆させられる。同時に冷や汗の感情表現(エモート)を起動しているので、わざわざ言葉にする意味が皆無である。

 

「僕は【フォッダー】が終わったとて知ったことではないけどね。所詮はサブゲームだから」

 

 などとテトリスさんは宣うが、【フォッダー】が終わったら【OA-YS】の集客力も低下することだろう。そもそもなぜ【フォッダー】と【OA-YS】が繋がってるのか未だにまったくわかってないのだけど。

 

「まあ結果オーライなのです。戦えるからには、全力でお相手するのです!」

 

 そう言ってメグさんが【ストレージ】から大斧を取り出し、中段に構えた。

 

「さて――攻めるか」

 

 テトリスさんがぽつりと呟くと、次の瞬間にはボクの眼前に肉薄していた。そして大鎌を力強く振るってくる。

 

「なっ!」

 

 まだ試合は始まっていませんよ! 始まる前に殴ってもダメージは与えられない。そう考えつつも《『第六感』》が激しく警告する。

 

 しかし回避に«テレポート»を使おうとしたのは悪手だった。試合前であるが故に【マクロ】は発動せず、鎌をモロに身に受け、大きく弾き飛ばされる。

 

 物理的な攻撃によるダメージは――無い。しかし『沈黙』と『MP継続ダメージ』『猛毒』の妨害(デバフ)が適用され、HPとMPが急速に減少し始める。

 

 まさか――【OA-YS】産の武器による属性攻撃は試合前の戦闘制限を無視できる!?

 

「悪いね、隠し札を切らせてもらった」

 

 テトリスさんは全く悪びれもせず、形だけの謝罪をする。確かにこんなバグが周知されていれば、一瞬で環境へ浸透していたはずだ。

 

 にもかかわらず、たった今、不意打ちとして機能してしまったのは、ここに至るまでバグの存在を秘匿し続けていたということ。

 

 警戒されているのは光栄なことですが、ちょっとは手加減してください!

 

【5】

 

 ようやくカウントが始まった。試しにポーションを取り出して飲んでみたが、やはり効果はない。試合前から使えるアイテムは料理だけだから。

 

【4】

 

 それなら、料理を食べればいい。【ストレージ】から【塩ラーメン】を取り出し、丸呑みする勢いで口へ押し込む。残念ながら妨害(デバフ)の解除はできないが、HPは急速に回復へ転じた。

 

【3】

 

 当然ながらテトリスさんの攻撃は続く。地を深く蹴り込むと、一瞬にして距離を詰めて大鎌を振るうが――同じ攻撃を二度は食らうものか。

 

「《ガゼルフット》!」

 

 〈トンネル避け〉の要領で強く前に踏み込み、テトリスさんをすり抜けるようにして攻撃を躱す。そしてメグさんの横に戻ってきた。

 

【2】

 

 そこでおっさんが【ストレージ】から杖を取り出してこちらに向ける。瞬間的に冷気の光線が放たれたが、〈マイクロダム〉で強引に受け止めた。

 

【1】

 

「この借りは――戦いで返してもらいますよ!」

 

【0】

 

「【キュアバレット】!」

 

 試合が始まったその瞬間、メグさんが【キュアバレット】を2連続でボクに撃ち込む。『沈黙』と『猛毒』が解除され、とりあえず首の皮は繋がった。

 

 即座に【オートユーザー】を起動し、ポーションでHPを回復する。

 

 そのわずかな間に、テトリスさんが後方から迫ってくる。ボクは振り返りながら妖精さんを向かわせた。

 

 妖精さんに触れられるのを嫌ったのか、テトリスさんは鎌を横薙ぎに振るって弾き飛ばそうとするが、妖精さんはその風圧を利用してふわりと浮かび、そのまま彼に肉薄する。

 

「【ソウルフレア】!」

 

 すかさずスキルが発動し、燃え盛る白銀の炎がテトリスさんを包む。完全耐性ではないらしい。わずかながらもHPが削れているのを確認した。

 

 その間にメグさんはいつもどおり【〈パウダーホーム〉】を展開していく。ゴブ蔵は出せていませんが、立ち上がりはなんとかなりましたね。




テクニックその154『試合前攻撃』
一部の【OA-YS】に由来するエンチャントの効果は。試合開始前の攻撃ができないタイミングであっても効果を及ぼします。これにより先制攻撃を行うという恐るべきテクニックです。かなりゲームとして終わっている類の仕様ですね。
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