卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「勝てた――! よかったー!」
あれだけ啖呵を切って負けたら悔しくて夜しか眠れないところでした。
それに――このたびの戦いでは、ボクは負けたら1週間のゲーム禁止宣言だったけど、ゆうたさんはゲーム引退とまで明言していた。
もしもボクのせいでゆうたさんが引退してしまったら、もう立ち直れなかったかもしれない。
でも、そんなものを躊躇せずに賭けられるほど、勝利への確信と信頼をもらってたんだなって考えると、ちょっと嬉しくなるよね。
「まだ気を抜くなよ。大会は終わっていないぞ」
「そ、そうなんですけどね?」
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>はー。これでついに優勝か
>まだ3回戦だぞ
>なんでまだ3回戦なの??
>勝ったな。風呂入ってくる
>試合の組み合わせ決めた奴無能すぎない??
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「……わたくしの【『アイテール』】ってなんだったんですの? ……あ、おめでとうございますわ! ちょっと意識が朦朧としていただけですの」
かわいそう。
「大丈夫ですよ。ボクが味方ですからね。なでなで」
「ちょ、ちょっと、恥ずかしいですの……ふにゃあ」
ちょっと目が虚ろな猫姫さんをなでなでしながら、ボクは考え事にふける。
今大会最大のラスボスと思しきプレイヤーを倒したとはいえ、まだまだ気は抜けない。
はっきり言って、もうエンディングでいいよね? って感じだけれど、大会の進行度的には一応これからが本番だ。
それでも――ボクは大会そのものよりも、終わったあとのことが気になってしまう。
このゲームにおける最大最悪の仕様。理論上は誰もが入手できる新たな力、〈
これを知ってしまったプレイヤーは、これからどんな道を選ぶのだろうか。
〈
それならば――せめて、そんな独自の力を得るための選択肢を増やしてあげたいなって思った。
一般プレイヤーの分際でそんなことを願うのは、傲慢かもしれないけれどね?
「終わりっすね」
ふと振り返ると、そこにはああああさんがいた。秘書Dさんはいないらしい。
「あそこまでやって負けるようじゃ、もう僕には止められない。地獄への片道馬車は走り出した。あとは終焉へと続くだけ」
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>厨二病かな?
>まだなんか裏があるのか? 事情通っぽいけど
>↑かっこつけてるだけだぞ
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「あなたにどんな事情があるかは知らないですけど――」
「……なんすか?」
「――今日はボクの配信を見ていってください。後悔はさせませんよ」
実際のところ、本当に彼の目的はわからない。でも、1つだけわかってることがある。
それは――絶対に勝ちたかった、ということだ。
それならば、そんなああああさんにも新たな選択肢を用意する。
これを先日のああああさんとの問答への回答としようではないですか!
「……」
ボクの華麗なる宣伝を無視して無言でログアウトしたああああさん。現実世界から見てくれるといいなあ。
「さて、何を配信するつもりだ? よほど自信があるようだが」
「自信はありますよ! さて、ボクがああああさんにあんな宣伝行為をしたのかと言いますと……今回、みなさんに最新情報をお届けしたいと考えているからです!」
「えっ、最新情報!? なんですの??」
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>なんだ、最新情報か
>絶対しょぼいな。間違いない
>さて、風呂入って寝るか
>おつかれさまでしたー
>解散
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「定番のコメントありがとうございます。でも視聴者数減ってないの見えてますからね? さて! 今回お届けする最新情報はこちら!」
さらさらっと図を描き、文字を入れたフリップを作ってカメラの前に掲げる。
そのフリップに書かれているのは……。
「〈
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>マジで??
>いや、取得方法とかあるの? 頭おかしくないとできないでしょあれ
>↑頭をおかしくする方法を教えてくれるんだぞ
>こんな配信見てるだけで頭おかしくなるぞ
>↑マジかよ毎日視聴します
>視聴するだけでソウルワードが得られる系配信
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「失礼ですね! 頭おかしくなったりしませんよ! むしろIQ上がりますよ! で、ですね。取得方法なんですがね。実は、みなさんもすでに取得してると思うんですよ」
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>は?
>なにいってんだこいつ
>そんな簡単に取得できたら苦労しないぞ
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「なるほど、荒罹崇の配信が鍵というわけか」
ゆうたさんは相変わらず、1を聞いて10を知るお人だ。すでに答えにたどり着いている。先読みされるのはさすがに恥ずかしいんだけどね……。
「ゆうたさん、その通り! 〈
この配信を見ている人はボクのことが好きなので〈
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>草
>ナルシストかな??
>べ、べつに卍さんのことなんか好きでもなんでもないんだからねっ!
>これは今世紀最大のアホ
>【悲報】卍さん、自惚れてしまう
>失望しました。卍さんのチャンネル登録外します
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