卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
その間にメグさんはいつもどおり【〈パウダーホーム〉】を展開していく。ゴブ蔵は出せていませんが、立ち上がりはなんとかなりましたね。
「さすがにこの程度の初見殺しで詰められるとはおもってなかったけどね」
テトリスさんが苦笑しながらその場で鎌を軽く振るう。ただそれだけで斬撃が空を駆け抜けた。
あれは単なる衝撃波ではない――【OA-YS】の装備エンチャントに裏打ちされた遠隔攻撃だ。
メグさんが【〈パウダーホーム〉】で相殺を狙うも、システムによって生み出された斬撃には、打ち消せるような質量が存在しない。純粋なダメージ判定となってボクを目掛けて迫りくる。
「«テレポート»」
あれには〈トンネル避け〉すらも通用しない。そう判断したボクは«テレポート»を起動して大きく後方に――おっさんの背後に回りこみ、攻撃を回避するとともに【フェアリールビーロッド】を叩きつけようとする。
その瞬間、おっさんが振り返り、お互いの杖が交差する。
負けたのはボクの杖だった。圧倒的な物質干渉力によって杖を弾き飛ばされて、おっさんの杖がボクの頭に叩きつけられる。
瞬間的に〈トンネル避け〉を試みるが、杖の軌跡に従って稲妻のエフェクトが迸り、物理ダメージを回避してもなお属性ダメージがボクのHPを削り取る。
徹底的に〈トンネル避け〉をメタってきてますね……!
電気属性の攻撃で停止した身体を【『アイテール』】で強引に動かし、バックステッポで後ろに下がる。
戦況を把握しようと俯瞰すると、テトリスさんがメグさんに肉薄していた。
「【強撃】!」
「«絶対防壁»!」
壁を取り出して攻撃を受け止めようとするメグさんに対して、テトリスさんは鎌を鈍器のように叩きつける。それだけで壁は粉々に打ち砕かれた。
「こいつ、『不壊』オブジェクトを……っ!」
「『それはすべてを破壊する』――ダンジョンの壁を破壊する人権エンチャントさ」
メグさんも直撃は免れたものの、そもそもあの壁は壊される想定ではない。予備はないはずだ。ここまであらゆる攻撃を防いできたメグさんの必殺【マクロ】がこんな形で突破されるとは……。
「相方の心配をしている暇があるのか? 小虎ちゃん!」
おっさんが杖を振るうと、蒼色の光線が放たれる。これも【フォッダー】には存在しない超常的な攻撃エフェクト――【OA-YS】の遺物か。
再び〈マイクロダム〉で防ごうとするも、同じ手を二度は食わないらしい。量子の壁を的確に避けた光線が迫りくる。
ボクの左手の【フェアリーストームワンド】が発光し、【エレウテリア】が起動する。投射として撃ち出された【エレウテリア】の風は蒼色の光線とぶつかり、攻撃を相殺する。
しかしおっさんがさらに杖を振るうと、再び蒼色の光線が射出される。こっちはスキルを使って受けたのに、向こうにとっては通常攻撃も同然ということか。
「〈夜空に輝く神の一欠片、大いなる炎の源よ〉」
ボクは詠唱しながら【フェアリーストームワンド】を眼前に向ける。杖先から【ゲールウィンド】の突風が撃ち放たれると、光の如き速度で宙を駆け抜け、光線を打ち消した。
【ゲールウィンド】で相殺できるということは、威力はそこまででもなさそうですね。とはいえ、そんなことを考えている間にも次弾が撃ち出されている。
「〈灼熱の業火を身に纏い、天空より顕現せん〉【メテオ】!」
詠唱を終えると、おっさんのすぐ真上から、白く輝く隕石が墜ちる。【空神の加護】が上乗せされ、絶対的な破壊力を帯びたその巨大質量は――あっけなく素手で払い落とされた。
「いまさら炎属性なんて通じるわけないだろう?」
「ですよねー!」
今回の大会、あまりにもメタられすぎじゃないですか? なんて心の中で愚痴を言いながらも、«テレポート»で光線をすり抜けつつ、おっさんとの距離を詰める。
「【フェアリーブレス】――【シルフストーム】!」
輝く風がおっさんに命中すると同時に、緑色の小爆発を起こして軽く弾ける。しかしおっさんはまるで意に介することなく、
「【リジェクション】」
全身から衝撃波を生じさせる。『エリア』系のスキルであるため、回避することはできず、HPを大きく削られながら後方に弾き出された。
とはいえ、【パインサラダ】効果の発動圏内ではなかったのなら、まだマシですね。
あえてその勢いに身を任せて後方に飛んでいき、メグさんとすれ違う。すかさず【ヒーリング】を入れてくれた。ボクは全回復しながら、テトリスさんのほうに飛んでいく。
「こっちのほうが与しやすそうですからね!」
「これでも、おっの奴より
燃え盛る業火を甘く見たこと、後悔させてやりますよ!
テクニックその155『不壊破壊』
【フォッダー】における『不壊』のオブジェクトは、一部の例外的挙動を除き、これまでほぼ無敵状態でした。しかし【OA-YS】には、この決して壊れない壁を破壊するエンチャントが付与された装備があるようです。
テクニックでもなんでもなく、アイテムの仕様なのですが、ここまで遭遇しなかったことを考えると、相当にレアなのでしょうね。