卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第538話 最速の攻撃

「こっちのほうが与しやすそうですからね!」

 

「これでも、おっの奴より熟練度(プレイヤースキル)があるつもりなんだけどねっ!」

 

 熟練度(プレイヤースキル)があろうがなかろうが、炎属性完全耐性のお相手よりはよっぽど与しやすい。

 

 燃え盛る業火を甘く見たこと、後悔させてやりますよ!

 

 テトリスさんが大鎌を振りかぶりながら一気に距離を詰めてくる。接近戦がお好みか。望むところだ。

 

 そういえば妖精さんは、と確認したがいつの間にやらかなり遠くのほうに弾き飛ばされていた。戻ってくるには時間がかかりそう。

 

 ボクは杖を振るいながらテトリスさんに迫る。【アーチャータクト】の効果により【アンプルアロー】が次々と放たれた。

 

 テトリスさんはボクが放った無数の矢を完全に無視して待ち構えている。このままなら当たる。そう思ったところで、矢は明後日の方向へと逸れていった。

 

「ボクのものより強力な〈流水誘導〉――」

 

「あんたの専売特許ってわけじゃないだろう?」

 

 そしてボクの接近に合わせて、テトリスさんは大鎌を振るう。この攻撃を受ければ無数の属性ダメージと妨害(デバフ)が入ってしまう。絶対に受けるわけにはいかない。

 

 ボクは【『アイテール』】で空を蹴りながら急停止し、攻撃を完全に透かす。しかしテトリスさんもその程度の回避を読めないはずがない。鎌を大きく一回転させ、前に踏み込みながら振るってきた。

 

 でもそれすらも予定調和だ。ボクは意図的に前に踏み出し、〈トンネル避け〉でテトリスさんを勢いよく突き抜けて背後に回り込む。そして【フェアリールビーロッド】を叩きつけた。

 

「【ソウルフレア】!」

 

 白銀の炎がテトリスさんを勢いよく包み込み、少なくないダメージを与える。さらに追撃の【フェアリーブレス】を撃ち込み、バックステップで距離を取った。その効果によりAGIが増加する。

 

【フェアリーブレス】

[アクティブ][投射][風属性][攻撃][支援][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:0.625s 再詠唱時間:10s 効果時間:20s

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[命中時]、[自身]の[AGI]を[増加]させる。この[効果]は[5回]まで[重複]し、[効果時間]は[リセット]される。

 

 テトリスさんは大きく鎌を横薙ぎに振るいながらその場で一回転するが、すでにボクはその射程にはいない。しかし鎌の効果により、斬撃の当たり判定がボクを目掛けて迫りくる。

 

「【《イグニッション》】!」

 

 力強く宣言しながら、杖を勢いよく斬撃に向かって叩きつける。それだけで当たり判定の勢いを殺しきり、無事にその場を凌いだ。

 

「やっぱり【OA-YS】の戦い方じゃ【フォッダー】ではなかなか通用しないねー」

 

「スキルを使ってこないと思ったら、そういうことですか。遠慮せずに使っていただいても――」

 

 そう言おうとした瞬間、《『第六感』》が警告を発する。後ろだ。【『アイテール』】を多段階で踏み抜き、大きく跳躍して攻撃を回避する。

 

 後ろに回ってきたのはおっさんだった。«テレポート»で転移しながら先ほどまでボクがいた場所に剣を構えている。

 

「おいおい、なる早の攻撃だったんだが?」

 

 確かに、剣を構えておいて«テレポート»で串刺しを狙うというのは、理論上は最速の攻撃だ。串刺しという字面のイメージとは違って、このゲームでは武器を振るったほうが威力は高いだろうが、それでもボクを仕留めるには十分な威力だっただろう。

 

 ただし最速の攻撃であっても、発動に意思を伴う時点で予兆は生じる。回避は不可能ではない。

 

「〈空行く律よ、束を解け〉【エレウテリア】!」

 

 おっさんを無視して、炎と風の視線をテトリスさんに差し向ける。【イグニッション】によって出力が大きく引き上げられた魔眼の力はテトリスさんのHPを大きく削った。

 

 しかし全損させられなかった以上、回復は容易い。瞬く間にテトリスさんのHPは満タンに回復する。おそらくは【オートユーザー】ですね。

 

「テレ――」

「«五月雨突き»!」

 

 おっさんが再び«テレポート»を発動しようとしたところで、メグさんが勢いよく彼の間合いへ踏み込む。自慢の大斧を前に突き出し、連続で打撃を加えた。

 

 物質干渉力によって大きく後退したおっさんだが、改めて«テレポート»を宣言してメグさんの後方に回り込む。

 

 しかしそこは彼女の張り巡らせた【〈パウダーホーム〉】の領域だった。転移したことで、小型の家が棘のように身体に刺さり、さらにダメージが重なっていく。

 

「よそ見をしてる場合かい?」

 

 そう言うと、テトリスさんは【ストレージ】から1枚の御札を引き抜く。あれは【魔界の御札】……?

 

 彼はそれをぺたんとおでこに貼ると、ボクとの距離を一気に詰めてくる。御札は一瞬で燃え尽きるように消えて、使用者に確かな支援(バフ)を与えた。

 

「速っ!?」

 

 明らかに先ほどまでとは段違いの加速力――【ウォーリア】の【戦略(スタイル)】を獲得したか。

 

 あっという間すらない速度で高度を合わせてきたテトリスさんは、鎌を抱えたままボクに体当たりを仕掛けてくる。

 

「【シフトチェンジ】なのです!」

 

 さて、どう躱すか。そう思ったところでメグさんの助け舟が入った。味方と座標を入れ替えるスキルによって衝突を回避し、代わりにメグさんが受け止めてくれた。

 

【シフトチェンジ】

[アクティブ][自身][キャラクター][補助]

詠唱時間:0s 再詠唱時間:480s

効果:[自身]と[味方]の[座標]を[交換]する。

 

 

 しかし転移した先では、おっさんの剣が迫ってきていた。




テクニックその156『転移串刺し』
武器を持ったまま«テレポート»を行い、武器の座標を敵の位置に合わせることでダメージを与えるテクニックです。«テレポート»した瞬間に攻撃できる最速の攻撃手段ですが、ダメージ的には武器を振ったほうが強いです。現実なら身体に刺さったら致命傷なのですが、このゲームでは、例外を除いて傷は発生しないので、物理エネルギーをぶつけるほうが重要です。
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