卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
しかし転移した先では、おっさんの剣が迫ってきていた。
「おっとぉ!?」
メグさん、もっと安全なときに転移を発動してくださいよ! と心の中で叫びながらも、さすがに避けきれずにHPを削り取られる。【パインサラダ】の効果が発動し、HPが『1』になった瞬間に【オートユーザー】でポーションを起動してHPを回復させた。
回復のタイミングからわずかに遅れて猛毒の
【フォッダー】では一度かかった
バックステッポで下がりながらも【解毒薬】を【ストレージ】から取り出し、一瞬で飲み干す。
「ふう、さすがにやばかったですね」
ひと呼吸おいたところで、あさっての方向に飛ばされていた妖精さんがようやく戻ってきたようだ。ボクの【フェアリールビーロッド】の近くに寄ってきて、楽しそうにまとわりついている。
しかしそんな光景に癒やされている暇はなかった。次の瞬間にはおっさんが«テレポート»で距離を詰めてくる。反射的にさらにバックステッポで下がって〈転移串刺し〉を回避すると、妖精さんをおっさんのほうに向かわせる。
妖精さんはまっすぐに光を超える速度で宙を駆け抜け、おっさんにがっしりとしがみついた。
「【エレウテリア】!」
自由の風は『接触』のキーワードにより、大きく弾け、おっさんのHPを削るとともに軽く
やはり風属性の耐性までは完璧ではないようですね。
おっさんは妖精さんを軽く振り払うと、【アームズスイッチ】で武器を切り替えながらその場で大きく突き出してきた。
〈転移串刺し〉だ。ボクはそう考えながらも、あえてその場に留まる。おっさんはやはり«テレポート»を起動してボクの後方に転移した。
「――避けなかった!?」
「ボクの思考を読もうとするとは、100年早いですよ!」
ボクは振り返りながらも【フェアリーブレス】を撃ち込む。ダメージはほとんど与えられないが、その効果によりさらなるAGIの
おっさんはボクが躱すことを前提に、回避先を読んで串刺しを狙ったのだ。単なる当てずっぽうではなく、〈ロールプレイング〉による確信を持った選択だったのかもしれないが、それを狙ってくることそのものがボクにとっては確定していた。
おっさんは【アームズスイッチ】で取り出した鉾を大きく薙ぎ払うようにして振り返る。鉾から斬撃が飛び出してボクに迫りくるが――。
ボクのカラダが瞬間的に白い毛玉に変化する。【アイズ・ファミリア】への転生により、アバターのサイズを小さくして回避した。そしてすかさず元のアバターに戻しながら杖を振るう。
「«五月雨突き»!」
同時に6つの【アンプルアロー】が生成され、おっさんを目がけて飛ぶ。鉾を振るって撃ち落とそうとする彼だったが、【アンプルアロー】はボクの〈流水誘導〉によって鉾をかわすように軌道を変える。そのままおっさんに命中して瓶がかしゃんと割れた。
「【フルバーニング】!」
勢いよく踏み込みながら、スキルを宣言する。その瞬間、ボクを起点として大爆発が巻き起こり、避ける間もなくおっさんはその範囲に巻き込まれた。
「ちっ……HPが――」
先ほどボクが放った【アンプルアロー】の中身は、炎耐性をお手軽に下げられる便利なポーション、【油】だ。余裕をもった耐性を確保しているならまだしも、ぎりぎりで詰めているなら耐性を下げれば攻撃を通すこともできる。
おっさんは大きくバックステッポしながらも、牽制の斬撃を振るうが――今のボクにおっさんの苦し紛れは通用しない。
「《ガゼルフット》」
今回の大会で最大の信頼を置く〈
前々から回避のために時々使っていたが、今大会ではそのあまりの高実績っぷりもあって、〈
もはや小細工は必要ない。【『アイテール』】でまっすぐに踏み込んで距離を詰め、斬撃を〈トンネル避け〉ですり抜けながらもおっさんに杖を叩きつけた。
「【ソウルフレア】!」
白銀色の炎がおっさんを包み込み、HPを大きく削り取った。
おっさんはボクに構わずその場で【キュア】を発動し、炎耐性の弱体化を解除する。
ボクは【フェアリーブレス】を発動させながら再びバックステッポで距離をとった。
「そこそこ危険が危なかったけど、このゲームには【抗体】システムがあるからね」
「【イグニッション】――そうなんですよねー。治されてしまうと決定打がなくなってしまうんですよ」
そんな世間話をしながら、ちらりと上空を見る。メグさんはテトリスさんの鎌の一撃を避けながら【ニュートラルヴァリアント】を重ねているところのようだ。
「〈己が基本を改革せよ〉――【ニュートラルヴァリアント】――«五月雨飛ばし»!」
メグさんはスキルを起動するとともに大きく向きを変え、おっさんを目がけて衝撃波を飛ばす。
「おわぁっ!?」
「いつまでも1vs1を続けていられると思ったら、大間違いなのです!」
テクニックその157『転生避け』
【転生】によってアバターを変更し、身体のサイズを変えて攻撃を回避するテクニックです。〈トカゲの尻尾避け〉と違ってシステム上の処理なので、当たり判定そのものが小さくなり、有効性は高いですよ。