卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
メグさんはスキルを起動するとともに大きく向きを変え、おっさんを目がけて衝撃波を飛ばす。
「おわぁっ!?」
「いつまでも1vs1を続けていられると思ったら、大間違いなのです!」
メグさんの放った衝撃波は、波としての性質を完全に無視していた。二人の間にある空間を跳躍し、座標に直接衝撃を撃ち込むその絶技は【ニュートラルヴァリアント】によって齎されたスキルの効果だ。おっさんは回避すらできず、攻撃を受けて大きくよろける。
「【エレウテリア】!」
すかさずボクの瞳が翠色に輝き、魔眼の暴威がおっさんを襲う。HPゲージが『1』にまで削り取られたものの、即座に回復へ転ずるのを観測した。【パインサラダ】の効果はこれで使わせられましたね。
「これはぴえんだね――【アームズスイッチ】」
おっさんが装備を換装するのと同時に、テトリスさんが上空から彼のもとへ着地する。
「まったく、足手まといはごめんだよ?」
「やれやれ、弁明の余地がないね。だが――ここから取り返すさ」
そう言っておっさんが取り出したのは、巨大な旗だった。光り輝く槍と、羽の生えた靴をあしらったデザインが特徴的で、風もないのにぱたぱたとはためく。
間違いなく強力な効果を持つ装備だ。ボクの〈ロールプレイング〉がそのデザインから性質を看破した。
「あれは味方に絶大な
こちらにはなんの影響も及ぼさない。ただ純粋に攻め手を苛烈にするための準備だ。
刹那の間も置かず、おっさんの正面から
「【シフトチェンジ】なのです!」
ボクと座標を入れ替えたメグさんが、代わりに攻撃を受け止める。«絶対防壁»で正面からの攻撃は防ぎきったが、一部の光線は回り込むようにして彼女の身体を刺し貫いた。
メグさんと入れ替わりに上空へ移動したボクは詠唱を始める。
「〈夜空に輝く神の一欠片、大いなる炎の源よ〉――」
「さすがにそのレベルの魔法を撃たせる隙は――」
テトリスさんが鎌を構えながら«テレポート»で距離を詰める。〈転移串刺し〉を狙ったのだろうが――。
「ちっ――」
鎌を引きながら、テトリスさんは舌打ちをする。さすがに転移する座標すらも読まれ、量子単位で回避されるとは思っていなかったらしい。
「〈灼熱の業火を身に纏い、天空より顕現せん〉【メテオ】!」
ボクがスキルを発動させると、隕石がテトリスさんの直上に生成され、即座に命中する。強力な耐性を持つはずのテトリスさんのHPを一撃で『1』にまで削り取る。
【メテオ】の威力が高いこともあるが――【空神の加護】が二重に乗っていることも大きい。
【空神の加護】
[パッシブ][ブレッシング]
効果:[対象]より[高度]に[位置]している[時][スキル]の[出力]を[増加]させる。
【空神の指輪】におまけで付いている【加護】とプレイヤーの持っている【加護】が合わさり、ボクの【メテオ】は想像以上の威力を発揮するようだ。
隕石の絶大な物質干渉力によって地上に向けて墜ちるテトリスさん。合わせるようにメグさんはその落下予測地点へ移動する。
「«五月雨飛ばし»!」
メグさんの«五月雨飛ばし»は空間を超越して最速で放たれる。しかしテトリスさんは無傷のまま受け止めて、«テレポート»で離れた上空へ転移した。
「『障壁』ですか……」
テトリスさんの鎌にはあらゆるダメージを無効化する『障壁』が5枚も付与されている。普通にHPを削れたので気にしていなかったが、致死ダメージを受けるときに発動するようだ。
そんな分析をする間もなく、テトリスさんは鎌を全力で投擲してくる。ボクを目がけた真っ直ぐな軌道。しかしいまさらこんな容易く躱せるような攻撃をしてくるはずがない。
再び《ガゼルフット》を切れば、回避はできる。それでもボクは«テレポート»を発動してテトリスさんの上を取った。その直後に鎌を起点として大爆発が巻き起こり、先程までボクがいた地点を一瞬にして飲み込む。
「【フェアリーブレス】!」
すかさずボクが煌めく突風を撃ち放つと、それに追従して【フェアリーストームワンド】の妖精さんが【ゲールウィンド】を発動させる。
煌めく風はまさに神風の如き速度で吹き荒び、テトリスさんの障壁を削り取る。
「【アームズスイッチ】!」
装備の換装によって素早く鎌をその手に引き寄せたテトリスさんは、その場で軽く振り払うように鎌を動かす。それだけで【ゲールウィンド】は相殺されてかき消えた。
「やってくれたね」
テトリスさんは【ヒーリング】を起動してHPを回復させる。
――もう後がないのだろう。テトリスさんの5枚の『障壁』は«五月雨飛ばし»によってその大半が消し飛び、最後の『障壁』すらもたった今消えた。
ボクがスキルを唱え始めた瞬間、テトリスさんが鎌を振るう。ただそれだけで、刹那にも満たない間にボクの身体に斬撃が叩き込まれる。
さすがに危なかった。一時的な速度のブースト、油断していたら全損は免れなかっただろうけど――。
「〚エデン〛かっ――」
〈ロールプレイング〉を全開に立ち上げたボクに、不意の一撃は通用しない。
僅かな後隙をついて彼の後方に転移したメグさんの斧が、その首を一撃のもとに刈り取った。