卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第542話 もっちり

「もったいない! 【OA-YS】をプレイしてもらう動機になるじゃないか! 装備は自分で掘るのが醍醐味だよ!」

 

「わからなくもないけど……。決勝トーナメントの開催までにランダムを掘り続けるのは不毛なのです。最初からいいやつを買えるなら買っておきたいのです」

 

 まだ最後の【シングル杯】がいつになるかは告知されてないけど、いいものを手に入れたうえで、さらなる良品を掘るのが無難ですよね。

 

 とはいえおっさんはボクに装備を供与してくれる気はなさそうなので、ボクは自力で掘らなきゃかな?

 

 彼が使っていた使い捨ての杖といい、テトリスさんが使っていた鎌といい、【OA-YS】における理論値の装備はそれ単独で戦況をひっくり返すパワーがある。

 

 炎属性や風属性が徹底的にメタられる環境は決勝トーナメントでも続くだろう。なにかいい感じの装備を手に入れておくのは大事そうだ。

 

「せめて供与するのは二軍系にしてくれよ。掘りに行く必要がなくなるものを供与するべきではない」

 

「もちのロンだよ。自分で使うための装備をホイホイ渡したりはしないさ。使い捨ての杖とかならいくらでも持ってるし、渡してもいいけどね」

 

 おっさんが杖について話しだしたので、せっかくだから聞いておこう。

 

「いまだに【OA-YS】の仕様についてよくわかってないので、聞いていいですか? おっさんは【ソーサラー】の戦略(スタイル)を選択しているんですか?」

 

「そうだよ。【OA-YS】の杖はそもそも【ソーサラー】でしかまともに運用できないからね」

 

 【ソーサラー】には『あなたは杖をうまく扱える』という能力がある。いままでボクは杖というカテゴリの武器をより強力に扱える能力だと思っていたのだが、実際には【OA-YS】の杖は使い捨てのアイテムなのだろう。

 

「杖! かなり強かったのです。あれも厳選した杖なのです?」

 

「そうだね。杖は強えーけど、使える回数も効果もランダムだから。【ソーサラー】は確率で回数を消費しなかったり、威力を高めてくれたり……。バッチグーに使うなら、おすすめだよ」

 

 そう言って、【ストレージ】から1本の杖を取り出して見せてくれた。

 

「これは【祝福された拡散する雷光の杖+75】。効果はだいたい名前でわかるけど、+75って付いてるだろう? 【ソーサラー】じゃないと、この数字がいくつでも、+0としての効果しかない」

 

「それは……かなり重要ですね」

 

 せっかく厳選した杖も【ソーサラー】でなければ有効に扱えない。その意味がよくわかる。

 

 ボクが設定している【戦略(スタイル)】は【パスファインダー】だけど、最近は《『第六感』》がよく働くこともあり、有効活用できてない。鞍替えを考えるべきか。

 

 なーんて、今考えることじゃないですよね。

 

「とにかく! 今はいつになるかもわからない【シングル杯】に向けての戦術よりも、お祝いのほうが重要です!」

 

「お祝いっていっても、何をするのです?」

 

「なんかしましょう!」

 

 ボクが考えなしにそう宣言すると、メグさんは呆れたような顔を見せた。

 

「だったら【OA-YS】でお祝いをするのはどうだい? 僕らにとっては反省会だが、併催しようじゃないか」

 

「相変わらず【OA-YS】のステマに余念がないね。まあいいさ、派手にパーリーしようじゃないか」

 

 というわけでテトリスさんの主催で祝勝会と反省会を同時に行うことになった。

 

 

 さっそく【ギルド】を経由して【OA-YS】の世界に向かうと、以前に見たときとはまるで違う異様な光景が目に映る。

 

「なんなのです? 謎の機械がいっぱい置いてあるのです」

 

 新手のバリケードなのかと疑うほどに、壁一面に広がる箱型の機械――自動販売機。都市が自動販売機で埋め尽くされていた。

 

「つい最近【OA-YS】のアップデートがあってね。自動販売機を自由に設置できるようになったんだ」

 

「ずいぶんとピンポイントなアップデートですね……」

 

 驚きはしたものの、要はプレイヤーが無人販売できるアップデートということだろう。自動販売機の形はしていないものの、【フォッダー】にも似たような機能はある。

 

 そしてテトリスさんはすぐ近くの自動販売機に駆け寄って、ボクらに示した。

 

「この自動販売機はおすすめだよ。最新作の料理がいくつも入ってる。奢ろうじゃないか。どれがいい?」

 

 どうやら自動販売機で祝勝会をすることになるらしい。ラインナップを見ると、カレーやらラーメンやらハンバーグやら、主要なメニューが一通り揃っている。

 

「うーん、私はハンバーグにするのです」

 

 メグさんがボタンを押すと、機械の中央に空いた穴からハンバーグが射出された。彼女はそれをぱしっと素手で受け取り、もぐもぐと頬張る。

 

「ずいぶんと自然に受け取りましたね……」

 

 皿ごと出てくるならまだしも、単品で出てきたんですけど? カレーとか大丈夫ですか?

 

 せめて固形物にしようと思って軽く目を通すと、もっちりパンケーキというかわいい料理が気になった。

 

「ボクはこれですね」

 

 そう言いながらぽちっとボタンを押すと、当然のようにパンケーキがそのまま射出される。

 

 さすがに予測していたので、問題なく手で掴むと、想像を絶するもちっとした感触が返ってきた。

 

「す、すごい! もちもちですよ!」

 

----

>そりゃもっちりパンケーキなんだからもちもちだろ

 

>ちゃんと食レポしろカス

----

 

「いや、ほんともちもちなんですって。まるでお餅みたいに伸びますよ!」

 

 うにょーんと伸ばして見せたら、『それ餅でよくね?』というコメントが流れてきた。パンケーキだからいいんじゃないですか!

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