卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
ラーメンを食べ終えて、ボクは【アンネサリーの街】をぶらりと散歩する。
この街はシステム的な重要施設こそ少ないが、露店やプレイヤーメイドの施設が多い。より正確に言えば、ゲーム的なメリットよりも体験を追求するお店が多い。
要は、お散歩するには最適な街ということです。
周囲には初期装備のプレイヤーや見た目重視の服装をしたプレイヤーが往来している。中には【フォッダー】のゲームを楽しむ気はないが、【アンネサリーの街】を見に来たというプレイヤーもいるほどだという。
「確かに景観は良いけど……。他のゲームでも見られる町並みではあるんですよね」
感動を覚えるほどの景観というわけではない。むしろ古めな外国風の町並みに、日本風の屋台が立ち並んでいるので、アンマッチな感じもある。
それでもこの街に多くのカジュアルプレイヤーが集まるのは、【フォッダー】では意図的な設計らしい。
「この街にはNPCの飲食店が多いんですよね。そうした店は効果こそ控えめなものの、味が調整されていて、ゲーム系グルメのなかでもかなりの水準らしいですよ」
【フォッダー】の料理を食べることを目的にゲームを始める人がいるくらいの評判らしい。ボクは効率を重視するカジュアルゲーマーなので、効果が控えめという時点で興味は薄かったのだが、今日はせっかくなので名物料理とやらを体験してみたい。
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>猫姫さんのユニークスキルと同じ権限を持ってるんだろうな
>ゲームの料理ならOA-YSの方が上
>今日はグルメ回かな?
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「猫姫さんの【
もちろん【『ディオニューソス』】は効果を自由に決められる機能こそが本体なので、天と地の差があるわけだが……。純粋に料理を楽しむだけなら関係ない。
【マップ】を見ながら石造りの道を歩いていくと、大きな噴水が見えてきた。
「あれは死亡時の復活地点ですね。多くの街では復活地点が噴水になっているんですよ。【ディスポサル城下町】もそうでしたね」
なんとなく眺めていると、プレイヤーが次々と転送されてきてはすぐに移動している。やけに死亡者が多いですね。どこかで【ネームド】でも暴れてるのかな?
噴水を目印にしてすぐのところにあるのは、おしゃれな雰囲気のレストランだ。
名前は【月灯りのテラス】。
いかにもプレイヤーメイドっぽい名前だが、マップ上に名前が載っていることからNPCのお店だとわかる。
石造りの建物の一階部分を改装したような店で、外壁は白い漆喰で仕上げられ、窓枠には深い緑色の木材が使われている。入り口の横には小さな黒板が立てかけられていて、チョーク風の文字で本日のおすすめ料理が書かれている。
「今日のおすすめは【まろやかピリ辛オムカレー】ですって。面白そうですね」
扉を開くと、涼しい夜風のようなBGMと香辛料の甘い匂いが同時に流れ込んできた。ゲーム内の匂いだとわかっていても、胃袋は素直に反応する。
「さっきラーメンを食べたばかりなんですけどね」
席に着いて【まろやかピリ辛オムカレー】を頼むと、ほんの少しして料理が運ばれてくる。これも白凰さんのラーメン屋と違うところだ。ゲームなのだから理論上は一瞬で出せるのに、あえて待たせることで作ってる感を出している。
スプーンを入れると、黄色い卵の膜がぷるんと震え、下から赤みがかったカレーが顔を出した。
「見た目はかなり普通ですね。普通においしそうです。普通に、という言葉を【フォッダー】で使うとだいたいフラグなんですけど」
口に入れた瞬間は卵の甘さが勝っているのだが、半拍遅れて辛味が喉の奥をノックしてきた。
まろやか、という言葉に油断した舌が、次の瞬間にはじんわり焼かれていく。
「……ピリ辛のピリ、ずいぶん鍛えてますね」
通常なら、辛味という概念はゲームにおいてご法度とされている。痛みそのものだからだ。料理のためとはいえ、それを持ち出すことは法的に規制されている。
しかし【フォッダー】は超法規的措置ゆえか、その法律を完全に無視して辛味を提供しているのだ。
料理という創作物に使える絵の具が他よりも多いのだから、その一点だけで他のゲームより優位に立つ。だからこそ食事を味わうためだけに【フォッダー】にログインする人が絶えないのだろう。
「もちろんそれだけではないのでしょう。味覚表現のパレットが明らかに他のゲームよりも広い。これに関しても、技術が優れているというより、規制を無視しているような印象があります」
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>違法ゲームで草
>OA-YSと同じサーバーだからね仕方ないね
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「そうですね、【OA-YS】でも料理が人気という話ですが、【フォッダー】と同じシステムで動いている以上、それは当然のことですね」
その法律違反がなぜ許されているのかはわからないが、ユーキさんほどの立場なら、さもありなんといったところか。
そんな話をしていると、視界にウィンドウが表示された。
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【重要なお知らせ】
法的機関からの指導により、味覚の危険刺激上限を適正値へ修正しました。
これにより、辛味を含む料理は痛覚として認識されない範囲まで出力が低下します。
なお、本修正はゲームバランスではなく安全基準への対応です。
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口の中で燃えていた辛味が、通知を読み終えた瞬間、すっと優等生みたいな味に変わった。
「……許されてなかったみたいですね」
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>フォッダー終わってて草
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