卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第547話 シーンエンド

 犯罪者(レッドネーム)の誹りを受けながらも店を出る。コメント欄は大荒れ――正確に言えば大喜びだ。

 

 そんないつもどおりの視聴者さんを軽く受け流しながら、ボクはぼんやりと考える。

 

 ユーキさんなら、どうせいつもの公園にいるだろう。こういうときは、誰かに聞いてほしくてベンチに座っているのが定番だ。

 

 配信を切り上げてログアウトしようかと思ったところで、《『第六感』》が警告を発した。

 

「【ファストリカバー】! ――どちら様ですか?」

 

「――ほんと、【フェイクショット】って雑魚だよなー。気づかれないのがメリットのはずなのに、これじゃあまるで意味がないぜ」

 

 そう言いながらボクの前に姿を現したのは、まるで忍者のような黒装束のプレイヤーだった。いかにも闇に紛れそうな見た目だが、昼間の大通りでは逆に観光客向け忍者体験みたいになっている。

 

「さっそく【犯罪者(レッドネーム)】を狩りに来たってわけですか」

 

 特徴的なのは、彼の頭上に表示されたHPゲージだ。ボクは攻撃してないのに、すでに全損ぎりぎりの表示になっている。【アサシン】にはHPが少ないときだけ使用できる大技がある。おそらく、その手のスキルを活かす(ビルド)なのだろう。

 

 相手が【アサシン】ともなれば、こうして会話している間にも、こちらを攻撃し続けられる。戦いの前に無駄話をする余裕はない。ボクが【ストレージ】から【フェアリールビーロッド】と【フェアリーストームワンド】を取り出すと、

 

「――【シーンエンド】」

 

 無音でも発動できるはずなのに、あえてのスキル宣言。発動したはずなのに、やはり演出は表示されない。

 

 だが、その効果は知っている。戦況を一言でひっくり返す、恐るべきスキルだ。

 

【シーンエンド】

[アクティブ][エリア][補助]

詠唱時間:0s 再詠唱時間:480s 効果時間:10s

効果:[自身]の[HP]が[10%][以下]の[時]のみ[発動]できる。[自身]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[自身][以外]の[キャラクター]が[装備]している[アイテム]の[能力]を[無効]にする。

 

 一瞬にして装備がすべての効果を失う。炎属性ELMも初期状態だし、詠唱時間(キャストタイム)を減らす受動(パッシブ)スキルも剥がされた。

 

「〜♪」

 

 それでも、残っているものもある。【フェアリールビーロッド】に紐づけられた妖精さんが、男のほうへ凄まじい速度で飛翔する。

 

「妖精は消えないのか」

 

「妖精さんは能力ではなく装備の形状ですからね!」

 

 男はバックステップで距離を取ろうとするが、それよりも一手早くボクのスキルが先んじた。

 

「【ソウルフレア】!」

 

 炎属性ELMが初期状態でも、HPが10%未満の敵を仕留めるには十分な火力だ。妖精さんが接触した瞬間、白い炎が生じ、男のHPを『1』にまで削り取る。

 

「だが、想定済み。ここからは――」

 

「あっ、【加護】が乗った」

 

【不死鳥の加護】

[パッシブ][スイッチ][ブレッシング][炎属性][妨害]

効果時間:60s

効果:[炎属性][スキル]の[命中時][一定時間][キャラクター]に[継続的]に[ダメージ]を[与える]。この[効果]は[キャラクター]の[炎属性][耐性]を[無視]する。

 

 久々に乗った【不死鳥の加護】によって残りのHPを失い、男はあっけなく全損していった。

 

「結果だけ見れば楽勝でしたけど、かなり怖い相手でしたね……」

 

 というか、相性次第では普通に詰む。装備に寄せたボクみたいな(ビルド)にとって、装備効果の全没収は足場ごと抜かれるようなものだ。

 

 それに【シーンエンド】の効果時間はたったの10秒だが、【アサシン】は同名の能動(アクティブ)スキルを複数取得できる。その気になれば、常に装備効果を無効化し続けられるはずだ。

 

 しかし先ほどのチャット欄の盛り上がりからもわかるように、ボクを狙う刺客が1人だけのはずがない。

 

 次に現れた刺客は黒装束ではなかった。露店で焼き串を買っていた女性プレイヤーが、串を持ったままこちらへ振り返り――鋭く投擲してくる。

 

「食べ物を粗末にするのはよくないですよ!」

 

 そう言いながらもボクはサイドステップで横に跳ぶ。串はそのまま地面に突き刺さり、道路を掘り進むように貫いていった。

 

 昼間の大通りに細い溝が走り、周囲のプレイヤーが一拍遅れて距離を取る。食べ歩きの光景が、急に危険物取扱現場みたいになった。

 

 武器ならまだしも、その辺の串焼きでこのレベルの破壊力を生み出すとは――。

 

 その瞬間、串に刺さっていた肉がぽろりと落ちた。肉片は地面に触れるなり、まるで爆薬のように小さく弾ける。

 

「なるほど、単なる串焼きではなかったということですか」

 

 投擲を前提にした串焼きがあるとは存じ上げなかったが、【フォッダー】ならそういうこともあるだろう。

 

 そう分析していると、女性は串焼きを次々に投げつけてきた。串焼きは凄まじい唸りを上げながら逃げ道をひとつずつ縫い潰してくる。

 

「まあ、この程度なら――《ガゼルフット》」

 

 簡単に躱せる。そう思って〈魂の言葉(ソウルワード)〉を宣言したのだが――発動しない。絶対に回避しようという強い意思が湧いてこない。

 

「【フルバーニング】!」

 

 仕方ないので大きな爆発を起こし、串焼きを弾き飛ばすが――。

 

 まさか、ナーフで〈魂の言葉(ソウルワード)〉が使えなくなってる!?

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