卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
気がつくとボクは【牢獄】の中にいた。目の前に鉄格子があるのでとりあえず【ソウルフレア】で燃やして蹴り砕く。
「むむ……負けちゃいましたね」
野良試合だからと油断していたかもしれない。ユーキさんにお願いされた攻撃的なテストを行うには、こんな簡単に負けていてはお話にならない。反省。
というわけで久々に【牢獄】にやってきた。
「以前はすぐに脱出してましたが、せっかくですし、ちょっとお散歩してみましょうかねー」
通路を見渡すと、周囲の鉄格子はほとんどが破壊されている。その一方で無傷の鉄格子もあるようだ。〈トンネル避け〉で抜けたのかもしれないし、自然修復された可能性もある。
「確かここの通路を抜けるとダンジョンがあって、それを攻略すると脱獄できるんでしたね」
以前の経験からそう思い返したが、改めて観察するとほかにも道が分岐している。噂によると【牢獄】の施設を利用するために意図的に犯罪行為に及ぶプレイヤーもいるそうなので、ほかの施設やダンジョンなどがあるのだろう。今回はそっちに行ってみよう。
とことこと通路を進んでいくと、大きめの広場が見えてくる。やけに人が多い【アンネサリーの街】に匹敵するほどの人通りで、【会社】システムのNPCが運営する屋台や露店が並び、中央の噴水らしき設備の周りではプレイヤーたちが談笑している。
「思っていたよりもずっと快適そうですね、ここ」
とはいえ屋台や露店は本来ならわざわざ【牢獄】の中で運営する必要はない。それでもなお経済が動いているということは、【牢獄】に常駐する価値のある仕組みがあるということだ。
「荒罹崇か、奇遇だな」
そんな声を掛けられて見てみると、そこには全身を未鑑定の鎧に包んだ男性がいた。
「ゆうたさんですか。ゆうたさんほどのプレイヤーでも利用するんですねー」
「知らないで来たのか?」
意図的に犯罪をしてやってきたわけではなく、普通に
「せっかくなので教えてください。ここの人たちはなんで【牢獄】に集まっているんですか?」
「1つの理由に収まるものではないな。荒罹崇の想像する以上に多様な施設があるからな。俺は【牢獄闘技場】の定期大会に参加しに来たんだ」
「【牢獄闘技場】……! 通常の【シングル】や【ダブル】の大会以外にそんなものが!?」
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>明らかに犯罪を誘発してるだろ
>PKそのものにメリットは無いが、PKをして犯罪者になる事にはメリットがあるゲーム
>わざわざPKをしなくても金を払えば指名手配して貰えるぞ
>殺した方が安いんだよなぁ
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【ダブル杯】でも今もなお現役で使えるような貴重なアイテムが出てきましたからね、【牢獄闘技場】限定のアイテムなんてあったら、そりゃあみんな捕まりに来ますよ。
「ちなみに地形を壊すだけでも犯罪者にはなれますからね。他人に迷惑は掛けないように!」
なんて視聴者さんにアドバイスをしたら「地形破壊も迷惑だろ」「チャンネル登録外します」と誹謗中傷が山のようになだれ込んできた。こいつら絶対犯罪者でしょ……。
「【牢獄闘技場】のバトル形式はなんなんですか? 【シングル】? 【ダブル】? 【パーティ】かな?」
「しいて言うなら野良試合だな」
「はい?」
ボクの認識では、野良試合というのは専用のエリアでルールに則って戦うのでなく、街中で突然PKをしたりするもののことを言う。事前に
「ゲームによって定められたシステムはある。対戦カードもシステムによって決められる。正常にバトルが開始されれば専用の【闘技場】で戦うことになる。だが――それよりも前に対戦相手を倒せば、不戦勝として勝ち上がれる」
「それは……確かに野良試合ですね」
そんな仕組みでまっとうに【闘技場】で戦っていたら【牢獄闘技場】の価値がない。【闘技場】を使わない盤外の争いこそが本質なのだろう。
「【ダブル】では対戦カードが決まったらすぐに会場に飛ばされていただろう? 【牢獄闘技場】はスケジュール通りの進行に対して露骨な遅延が入る。建前上はルールを無視した盤外戦術だが、裏の設計としては想定通りなのだろうな」
「ユーキさんのやりそうなことですねー。明らかにバグみたいな挙動を仕様として意図的に実装してくるんですよね」
【フォッダー】の全てが想定通りなのか、はたまたバグなのかはわからないけれど、今回に関しては意図した仕組みなのでしょうね。
大会への出場は、ユーキさんに依頼された攻撃的なテストを行うためにも格好の機会だけど……どうしようかな。
「今回の賞品は公表されてるんですよね? それ狙いなんでしょう?」
「目玉は【『アイテール』】付きの靴だな。荒罹崇が使ってるのを見て、評価が上がっているようだ。どこぞのカードゲームをやらなくて済むのは大きい」
ボクは【フォールダウン】も嫌いではないけれど、ただの資産ゲーですからねー。実質的な初期環境だったから、ボクはたまたま突破できたけど、次の環境が魔境と化していることは想像に難くない。多くのプレイヤーが避けたがるのも無理はないだろう。