卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「確か【ダブル杯】では複数の賞品がありましたよね? 【『アイテール』】は持ってるからいらないけど、ほかの賞品次第では出てみましょうかね」
「残念ながら優勝賞品は【『アイテール』】の靴だけだな。準優勝でも賞品が出るが……【桜餅プチさん】とかいうよくわからないモンスターを召喚できるネックレスらしい」
「【桜餅プチさん】……? 気になりますね」
そんなモンスターは聞いたことがない。強いのかはわからないけど、きゅーとなお名前だ。すごく気になる。
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>弱そう
>美味しいのかな
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「でも準優勝の賞品ですかー。ボクなら優勝できるのに意図的に負けるのはちょっとねー」
なんてツッコミどころのある台詞を置いてみたが、コメント欄では『反応したら喜ぶから無視しろ』という統制の取れた指揮官によって完全に沈黙していた。悲しい。
「できれば荒罹崇には参加してほしいのだがな。そして最終戦でわざと負けてほしい」
「おや、ゆうたさんの口からそんな発言が出てくるとは」
「今回の【闘技場】は『なんでもあり』が売りの大会らしいからな」
なるほどね。試合前の不意打ちがありなら、最終戦でわざと負ける八百長だってありに決まってる。ありかどうかは特に説明されていないが、ボクはそう思う。
「いいでしょう。本戦が始まる前に、ゆうたさんの今の実力は見ておきたかったところです。ここは協力といきましょうか!」
というわけでゆうたさんに案内されて今回の大会への参加登録に向かう。
受付は広場の怪しい売人風の男らしい。茣蓙に座っているその姿は、どう見ても大会の受付には見えない。
「ひっひっひ。うまい話があるんだが、聞いていかないか?」
「大会ですか?」
「知っているのか。それなら話が早い。この【牢獄】の囚人を賭けの対象にした催しがあるんだ。上位入賞者にはちょっとした景品と恩赦が与えられるのさ」
「囚人を賭けの対象に? 趣味が悪いですね……」
「まぁ、そう言うな。このクソッタレな場所から脱出できるんだ、ありがたい話だろう? それで、参加するかい?」
「ええ、参加します」
「よく言った。今回の大会の参加者リストに登録しておこう。試合が始まるまではせいぜい背後には気をつけておくんだな」
ということで登録が完了した。【ダブル杯】ではシステム的に参加申請を送るだけで、誰かと直接やり取りすることはなかった。こうして受付と話し、リストに登録してもらうのは、ちょっと不思議な感じですね。
「で、参加登録も済んだし、もう動いていいんですか?」
「まだだ。もう少ししたら参加者の名前や次の対戦相手が通知されるようになるからな。相手もわからないのに不意打ちなんてできないだろう?」
ゆうたさんが言うが、次の対戦相手が通知されるのを待つあたり、やはり彼はこういう裏路地の戦いに詳しくないのだろう。
ボクは確信している――戦いは既に始まっている。
「なーに言ってるんですか。対戦相手が誰なのかわからないなら――全員を始末すればいいだけでしょう?」
ボクは【ストレージ】から2本の杖を取り出し、楽しそうに談笑しているプレイヤーに向けて杖先の妖精さんを射出する。
妖精さんはぱたぱたと光の速度で飛翔して、男性の背中に張り付いた。
「【ソウルフレア】」
瞬間的に輝く爆炎が生じ、妖精さんの張り付いたプレイヤーを燃やし尽くす。その男性と雑談を交わしていた女性プレイヤーは、あまりに衝撃的な展開に面食らっていた。
「――《SANチェック》」
そんな衝撃を受けた女性には《SANチェック》のお時間だ。一瞬にして雑談の相手が全損する異常事態に不安を覚えた彼女は続けざまに放たれた根源の恐怖に屈伏し、その場に倒れ伏す。
周囲のプレイヤーたちは突然の爆炎と、その場に倒れ伏す女性の姿を目にし、一斉にこちらへ視線を向けた。
「これが裏路地の戦い方って奴ですよ」
「だが明らかにヘイトを買ったぞ? 逆効果ではないか?」
「なーに言ってるんですか。ボクとゆうたさんならこの程度の
「なるほど、道理だな」
ゆうたさんは【ストレージ】から機関銃を取り出して構える。事前の作戦会議は必要ない。彼が守ってボクが攻める。
視線が集まる中、広場の端にいた黒装束のプレイヤーがこちらを目掛けて疾駆する。即応できるあたり、なかなかに場馴れしているようですが――。
ゆうたさんが軽く足を踏み鳴らすと、疾駆してくる男の前に白い壁が出現した。男は突進の勢いを殺しきれないまま、その白い壁に激突し、地形ダメージによって一撃で全損する。
すべてがインフレしたこのゲームでも、今なお厄介なのが地形ダメージだ。光の速度なんてなかったときから一撃で全損することもあったのに、迂闊に最速で突っ込んだらこうなるのは当たり前。
「さすがですね。白い壁一枚で全損させるとは。ボクも負けていられません。【《イグニッション》】!」
後方から【アクアショット】が飛んでくる――ボクは振り返りもせずに後方に手を伸ばすと、その風圧だけで弾が消滅する。
スキルすら使わず、全能技ですらない。ただ単純な〈
同時に【フェアリーストームワンド】が煌めき、【ゲールウィンド】が打ち放たれる。【イグニッション】によって強化された突風は〈流水誘導〉の流れに乗ってくるりと旋回し、後方のプレイヤーを刹那にも満たない間に撃ち抜いた。
「さぁ、次はどなたですか? まとめて掛かってきても構いませんよ?」