卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第553話 桜餅プチさん

「さぁ、次はどなたですか? まとめて掛かってきても構いませんよ?」

 

 そう言った途端、四方八方から多種多様な投射スキルが飛んできた。おまけに足元に何重にも魔法陣が形成され、範囲スキルの発動を確信させる。

 

「うわわっ!」

 

「やれやれ――【アトラクト】!」

 

 すかさずゆうたさんが投射攻撃のターゲットを引き受けてくれるが、【アトラクト】では範囲攻撃には対応できない。ボクは瞬間的に«テレポート»を起動して範囲外に逃れ、ほっと一息をつく。

 

 しかし息をつく暇もないとはまさにこのことだ。《『第六感』》が攻撃を察知して、瞬間的に〈トンネル避け〉を発動させる。次の瞬間にはボクのお腹を貫くように一本の剣が出現していた。もちろんミクロ単位の動きで、身体の量子に擦れることなく、安全に回避できている。

 

「座標攻撃を躱した……!?」

 

「そんなあなたに《SANチェック》です」

 

 驚かれてしまったのなら、判定をせざるを得ない。ボクが対象を指差しながら宣言すると、ただの驚きが根源たる恐怖へと変換され、対象は瞬く間に奇声をあげながら発狂する。まもなくその場に倒れ伏し、強制ログアウトで消えていった。

 

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>またSANチェックかと思ったけど、全く怖くないな

 

>慣れてるからかな?

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 攻撃的なテストのためには《SANチェック》を乱発することになりますからね。指向性をつけて対象だけに撃ち込んでみたのですが、どうやらうまくいったようです。その分だけ、威力も上がったようなので、今後も活用していくとしましょう。

 

 《SANチェック》そのものの恐怖は伝播しなかったようだが、突然に発狂するプレイヤーを見た周囲の人々には恐怖の種が植え付けられている。続けて発芽させてもいいですが――もうちょっと演出を交えていきましょうか。

 

 ちらりとゆうたさんのほうを見ると、【ガードジャスト】を駆使して難なくすべての投射攻撃を受け止め、涼しい顔で周囲に銃弾をばら撒いている。

 

 これなら問題なさそうだ。ここからは【ダブル】の文脈ではなく、それぞれの敵に対処していこう。

 

 眼前では3人のプレイヤーがこちらに武器を向けている。1人は後衛としてスキルを詠唱し始めており、1人は関節を無視した華麗な動きで槍を投げてくる。もう1人は不自然に巨大なレイピアを突き出しながら距離を詰めてきた。

 

 まずは〈流水誘導〉によって槍の制御を奪い、レイピアのプレイヤーに側面から衝突させる。体勢を崩したところに【フェアリーストームワンド】が【ゲールウィンド】で追撃した。

 

「《ガゼルフット》!」

 

 そこで後衛の詠唱が完了する。地面に魔法陣が現れるとともに【リバースコール】が降り注ぐが――。

 

「――ズラされたっ」

 

 ボクの《ガゼルフット》は回避するためなら認識すらズラし切る。まったくの見当違いの場所に発動した【リバースコール】を横目に、レイピアを持った前衛の懐に入り、【ソウルフレア】で確殺する。

 

「妖精さん!」

 

「〜♪」

 

 【フェアリールビーロッド】を振るうと妖精さんがぱたぱたと射出され、【アンプルアロー】を撒き散らしながら中空を駆け抜ける。

 

 慌てて妖精さんに対処しようと二人のプレイヤーは動くが――。

 

「そろそろ収穫しましょうか――《SANチェック》です。正気を捧げなさい」

 

「ひっヒあああアアアアァッッ!???」

 

 ボクが宣言すると同時に二人は発狂してその場に倒れ伏す。なかなかの威力ですね。

 

 わずかな間に3人ものプレイヤーを処理した光景を見て、ほかのプレイヤーもたじろぐ。

 

「さぁ、次はどいつですか? ボクはこのままタイムアップでもいいんですよ?」

 

「ダメだ……勝てない」

「今の卍さんは絶好調のときのやつだ」

 

 どうやらかかってくるプレイヤーはいないらしい。それならここらで終わりにしましょうか。

 

「《イグニッション》――さぁ、ひれ伏しなさい、《SANチェック》」

 

 ボクの言葉は絶対的な恐怖として広場中に広がった。

 

 無言で倒れ伏すもの、反応する間もなく強制ログアウトするもの、人によって動きはさまざまだが、最終的な結果は同じだ。根源たる恐怖に屈服し、ゲームの盤面から排除される。

 

 まもなく【牢獄】にはボクとゆうたさんだけが残った。NPCすらもいつの間にやらいなくなり、静けさだけが残っている。

 

「流石だな。少なくとも俺だけではここまでの多人数戦を乗り切ることはできなかった」

 

「《SANチェック》はむしろ多人数戦のほうが強いですからね。ほかの人が狂気におちた姿そのものが恐怖を誘発しますので」

 

 さて、ここでゆうたさんとやり合うつもりはない。優勝賞品に興味はないし、本戦を待たずして雌雄を決する必要はないだろう。

 

「ということで降参します。これで決着ですかね?」

 

『ゲームセット WIN:ゆうた』

 

 ボクの宣言でシステム上は決着がついた。【牢獄闘技場】は終結し、ボクの【ストレージ】には準優勝の賞品として【桜餅のネックレス】が追加される。

 

 ゆうたさんはさっそく【『アイテール』】の靴を装備して、操作感を確かめだした。ボクも噂の【桜餅プチさん】とやらを見てみようかな。

 

 指輪を装備して、スキルを確認する。

 

【桜餅プチさん召喚】

[アクティブ][自身][エリア][召喚][魔法]

消費MP:24 詠唱時間:2.5s 再詠唱時間:1m 効果時間:10m

効果:[桜餅プチさん]を[召喚]する。

[桜餅プチさん]は[自身]を起点として形成した[エリア]でのみ活動を行う。

 

「効果は普通の召喚系みたいですね。特筆すべき情報は書いてなさそうです。【サモン・フィーニクス】なんかには召喚されるユニットのスキルも書いてありますが……別に書いてなくても特殊な能力を持ってることもありますし、とりあえず召喚してみましょうか」

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