卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第559話 演奏破棄

 【神聖なる狂気のフェイクゴッドの咎十字】を求めて、ボクたちは【グレイブウッド】にやってきた。

 

「いやー、相変わらず静かな雰囲気のいいダンジョンですね。【フォッダー】の名観光スポットですよ」

 

 【グレイブウッド】を訪れたボクたちを蒼く幻想的な月が照らす。地表は荒廃しているように見えるけど、その光景すらどこか退廃的で、なんだか不思議な気分になる場所だ。

 

「【桜餅プチさん召喚】!」

 

 当然ながら戦闘が予想されるので、桜餅プチさんを呼び出しておく。桜餅プチさんはボクの肩にもちゅんと張り付きながら、嬉しそうに鳴いた。

 

「ぷちゅっ!」

 

「【フェイクゴッド】が出るのは奥のほうだが……。レベル上げが目的だしな。ここからは歩いて行こう」

 

 «テレポート»なら一瞬で目的地にたどり着けるが、あえてボクたちは入り口から歩き、荒んだ大地を踏みしめながら進んでいく。

 

「ゴブゴブ」

 

「なんだか落ち着く光ぷち」

 

 少し歩いていると、遠くのほうから3匹の狼がこちらへ駆けてくる。【セイクリッドファング】だ。一昔前なら同時に3匹に対応するのは一苦労だったが……。

 

「いけますか?」

 

「やってみるぷち」

 

 そう言うと桜餅プチさんはほんの一瞬だけ詠唱を始め――即座にそれを破棄する。

 

 その瞬間、激しい爆音が轟き、【セイクリッドファング】たちを襲った。

 

 【タクティクスフラッグ】による詠唱の省略だ。【バード】は詠唱時間(キャストタイム)が長い代わりに『フラッグ』の回収効率が高く、高威力のスキルを不意打ち気味に行使できる。

 

【タクティクスフラッグ:歌】

[パッシブ]

効果:[詠唱中]、[2][秒]毎に[バードフラッグ]を[加算]する。(最大16まで)

[アクティブ][呪文省略]詠唱時間:0s

効果:[バードフラッグ]を[消費]し、次の[効果]を[選択]して[発動]する。

1. [バードフラッグ]を2つ[消費]し、[直後]に[発動][する][消費MP]1以上6以下の[バード][スキル]の[消費MP]を0にする。

2. [バードフラッグ]を6つ[消費]し、[直後]に[発動][する][消費MP]1以上6以下の[バード][スキル]の[再詠唱時間]を0にする。

3. [バードフラッグ]を8つ[消費]し、[直後]に[発動][する][消費MP]1以上6以下の[バード][スキル]の[効果時間]を倍にする。

4. [バードフラッグ]を8つ[消費]し、[直後]に[発動][する][消費MP]1以上6以下の[バード][スキル]の[詠唱時間]を0にする。

 

「もう一発いくぷち――【共鳴のシンフォニー】!」

 

 続けざまに放たれた音響攻撃が【セイクリッドファング】を襲う。二度の攻撃を受けた彼らは、粒子になって溶けていった。

 

「大勝利ぷち!」

 

「桜餅プチさん、さすがです! 【タクティクスフラッグ】が溜まってるときの瞬間火力は相当なものですね」

 

「今ので使い切ってしまったがな。だが――」

 

 ゆうたさんがそう言うのと同時に、桜餅プチさんが【誘いのレクイエム】の詠唱を始めた。戦いはすでに終わっている。意味のない効果だ。しかし【タクティクスフラッグ】は貯まる。

 

「ぷち〜♪」

 

「対モンスターではかなり強い職業(クラス)ですね。強力な攻撃を2回撃ち込むための【タクティクスフラッグ】を事前に貯めておけるわけですから」

 

「【ダブル】などの競技系ではリセットされるから事前に貯めておけないが、これほどルールによって使い勝手が変わる職業(クラス)もなかなかないな」

 

 それからも何度かモンスターと遭遇したが、だいたいは桜餅プチさんの【バード】スキルで一掃していく。たまに倒しそこねた敵もゴブ蔵が機関銃で追撃するだけで倒しきれる程度のものだった。

 

 そしてついに目的のモンスターを発見する。

 

 蒼い月明かりの下、どす黒いオーラを放つ聖人のようなモンスター、【フェイクゴッド】。一説によるとその黒い力は生来のものではなく、周囲に存在する闇を一手に引き受けたことによるものだとされている。

 

「当たり前ですが、【ネームド】ではなさそうですね」

 

「複数のモンスターを倒させれば、【ネームド】が追加されることもあるが……誘導が難しいな」

 

 周囲を見渡すと、群れをなす【セイクリッドファング】を発見した。試しにあれをぶつけてみますか。

 

 ボクは【フェアリールビーロッド】の妖精さんを狼の群れに差し向ける。狼たちはすぐに気づいて妖精さんを追いかけ始めるが、【フェイクゴッド】のほうに近づいているとわかると、すぐに引き返す。

 

「周囲のモンスターにとっても危険な存在として扱われているようですね」

 

「なら、強引にぶつけてみるか」

 

 ゆうたさんは«テレポート»で狼たちのもとに移動し――。

 

「【リジェクション】」

 

 強力な物質干渉力の衝撃を発生させる。狼たちはその質量に押し負けて大きく跳ね飛ばされ――【フェイクゴッド】の射程圏内に着地した。

 

 慌てて距離を取ろうとする狼たちだが、【フェイクゴッド】はそれよりも一手早く黒い光線のようなものを放ち、狼たちを貫く。それと同時に新たな【ネームド】が加算された。

 

NAME:『神の如き』フェイクゴッド

 

「……違うな」

 

「でも方向性はわかりました。この調子でどんどんと餌を投げていきましょう」

 

 それから30分くらいかけて、目標の【ネームド】が付与されたことが確認できた。

 

NAME:『神の如き』『王者の』『神聖なる』『滅びの』『絶望を呼ぶ』『狂気の』フェイクゴッド

 

「うーん、強そう! 勝てますかね?」

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