卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
NAME:『神の如き』『王者の』『神聖なる』『滅びの』『絶望を呼ぶ』『狂気の』『神速の』『大いなる』『嵐を呼ぶ』『鉄壁の』フェイクゴッド
【ネームド】が、増えている。
「まさか、このマップのすべてのモンスターを倒したから――」
そんな分析をする間もなく、【フェイクゴッド】がゆうたさんを無視して一瞬でボクに肉薄する。すかさずゴブ蔵がボクの前に割って入るが、敵が右手で振るう黒剣の一撃で全損させられる。
しかしおかげで一瞬の猶予ができた。«テレポート»で大きく後方へ逃れ、【ゲールウィンド】で牽制する。
「怖いぷちーっ!」
肩の上でかわいらしいもちもちがぷるぷると震える。そういえば、桜餅プチさんはなぜか«テレポート»についてこれているな、などと考えかけて、すぐに軌道修正する。目の前の強敵の処理が先だ。
今度はゆうたさんのすぐ後ろへ、背中に隠れるように«テレポート»した。
「なんとかしてください!!」
「なにかしらの追加【ネームド】でモンスターが中身入りになったようだ。【タウント】は効かん」
中身入り――プログラムではなくAIが制御しているということか。それならそれでやりようはある。
ボクは足を強く踏み鳴らし、全能によって周囲の光と空気をぐにゃりと捻じ曲げる。この世のものとは思えない名状しがたい『異形』の姿を空間に投射するとともに――。
「《SANチェック》」
ただそれだけで【フェイクゴッド】はがくりと崩れ落ちる。すかさずゆうたさんは【アームズスイッチ】で巨大な斧を取り出しながら«テレポート»で距離を詰め、その刃を力強く叩き下ろす。
ボクの攻撃を遥かに上回る火力が叩き出され、その一撃で【フェイクゴッド】のHPがごっそり削り取られ――そこに桜餅プチさんの【追撃のカノン】による追加ダメージが入った。
それでもなんとか起き上がろうとする【フェイクゴッド】に、ボクは最速で足を踏み出し、【ソウルフレア】を叩きつける。
一瞬にしてゲージは黒色に染まり、果たして【フェイクゴッド】は全損し、粒子となって宙に溶けていく。
「よし、大勝利です!」
ついでに《SANチェック》の使用ノルマも達成だ。今回は演出にもこだわってみた。いつもは試合の状況によって恐怖の種を植え付けるか、〈
「終わってみれば意外と楽に勝てたな。むしろ《SANチェック》が通りやすい分、【ネームド】が増えたあとのほうが楽だったということか」
ゆうたさんが斧を地面におろし、息を吐く。
「《SANチェック》は機械的に制御されたBotであっても揺らがせることはできるんですけどね。やはり中身がいたほうが使いやすいです。……ところでその斧、強くないですか?」
このゲームにおける瞬間火力の頂点は炎属性魔法を使ったときのボクだと自負していたのだが、物理攻撃で容易く超えてくるとは。未鑑定だから、相変わらず見ただけではどんな斧なのかよくわからない。
「これはモンスター特攻のスキルを持ち、すべての弱点を同時に突くことにも特化した斧でな。対人ではそこまでの威力は出ないんだ」
「そうなんですか? 安心しました」
「ぷちの演奏の威力が高かったぷち」
「それもありましたね。多分、多段ヒットしてたように見えましたが……」
「それは単なる〈痙攣撃ち〉だな。細かく振動させて多段ヒットを狙い、通常攻撃の回数を稼ぐ。今回は【追撃のカノン】ともシナジーした」
なるほど。〈痙攣撃ち〉は攻撃のトリガーを稼ぐだけで火力には乏しいと思っていましたが、使い手次第でこうも変わるんですね。
「なにはともあれ――」
【ストレージ】を確認すると、ちゃんと入ってた。【神の如き王者の神聖なる滅びの絶望を呼ぶ狂気の神速の大いなる嵐を呼ぶ鉄壁のフェイクゴッドの咎十字】。
「これだけ【ネームド】がついてるんですし、クエストの報酬は増えないんですかね?」
なんて、期待はしてないが口に出してみる。
「さぁな。だが経験値はたくさん貰えたはずだぞ」
「いっぱい強くなったぷち!」
「よかったです! これで桜餅プチさんももっと活躍できますね」
肩に乗った桜餅プチさんのもちもちした身体をなでなでして、ふと戦闘中の疑問を思い出した。
「桜餅プチさんが«テレポート»についてこれてたのはなんでなんでしょう?」
何気なくついてくる前提で肩に乗せていたが、原理からすればその場に置いてかれてもおかしくないと思うのだけど。
「ぷちはもちもちだから張り付けるぷち」
「……なるほど」
そう言われてボクは装備欄を開く。そこには今も肩に乗っている桜餅プチさんの名前が表示されていた。
もちもちだから張り付ける、だから装備として扱われたのか。もちもちしていれば何でも装備扱いになるのか、桜餅プチさん固有の能力なのかはわからないけど、扱いやすそうだ。
「さて、【錬金工房】に報酬を受け取りに行くか」