卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第562話 嵐の力

 【錬金工房】に戻ってくると、エリンさんが待ちかねたように扉を開けて出迎えてくれた。

 

「待ってたよ! それで、【神聖なる狂気のフェイクゴッドの咎十字】は手に入った?」

 

「【神の如き王者の神聖なる滅びの絶望を呼ぶ狂気の神速の大いなる嵐を呼ぶ鉄壁のフェイクゴッドの咎十字】が手に入りましたけど……」

 

 【ストレージ】から取り出した謎の十字架は、禍々しい黒色の光と神聖な白色の光を交互に放っていた。表面には様々な刻印がひしめき合っていて、もはやなにがコンセプトなのかわからない、カオスなアイテムだ。

 

「すごくぴかぴかしてるぷち!」

 

 肩の上から桜餅プチさんが身を乗り出すと、それに反応するように十字架の黒い光がぐにゃりと伸びた。

 

「触っちゃ駄目ですよ!」

 

「もちもちなら大丈夫ぷち!」

 

「その理屈で大丈夫だったのは移動だけですよ!」

 

 エリンさんが苦笑しながら指を鳴らすと、透明な膜が十字架をぴたりと包み込み、伸びていた黒い光を押し戻した。

 

「神聖な力と狂気の力だけでも扱いづらいのに、これは他の力まで混ざりすぎてるよ。でも、必要な【神聖なる】と【狂気の】はちゃんと含まれてる。素材としては問題ないよ」

 

 エリンさんが膜の上を指先でなぞると、十字架に刻まれた紋様が指先の動きを追うように、一つずつ淡く光を放った。

 

「問題があるとすれば、どの力を残して、どの力を捨てるかだね」

 

「【神聖なる】と【狂気の】だけ抜き出せばいいんじゃないですか?」

 

「それだと普通の素材を持ってきてもらったのと同じでしょ?」

 

 エリンさんの瞳まで、十字架の放つ光に負けないほどきらりと輝く。

 

「せっかくだから、全部使ってみたいよね!」

 

「……どうなるかはわからないが、報酬は変わりそうだな」

 

 ゆうたさんが顎に手を当てながら、ぽつりと呟く。

 

「本来の報酬は、スキルの追加なんですよね?」

 

「だが、本来の報酬というものがそもそも存在しているのか疑わしい。必要な2つの【ネームド】だけをピンポイントで揃えるほうがむしろ難しいくらいだ」

 

 エリンさんは部屋の奥にある大釜に咎十字をぶち込むと、棒でぐるぐるとかき混ぜ始めた。あらかじめ準備してくれていたのだろう。

 

「そんなふうに使うんですね」

 

「お料理ぷち!」

 

「錬金術ってのはだいたいこれだからねー」

 

 しばらく見ていると、大釜から白い煙と黒い煙が絡み合いながらのぼり始めた。その直後に小さな竜巻が現れたかと思うと、中の液体を巻き込み、凄まじい勢いで撹拌し始める。

 

「おっと、これは予想外」

 

 かき混ぜの時短テクニックなのかと思って見てたのに、予想外らしい。『嵐を呼ぶ』という【ネームド】の効果だろうか。

 

 やがて液体がぷくーっと丸く膨れ上がり、ぱちんと弾けた。その瞬間、スキルが追加され、視界に表示される。

 

【邪神の祝福】

[パッシブ][ブレッシング]

効果:[風属性]の[回数]を[増加]させる。

 

「清々しいほどに風属性のスキルになりましたね」

 

 効果はシンプルだが、かなり強い。風属性のアクションなら、種類を問わず回数を増加させる。風属性は威力が低い傾向にあるが、攻撃回数が増えるとしたら脅威になるだろう。

 

「本当は全部の要素を取り込みたかったんだけどねー。本来の【ネームド】の要素からすると、消費コストを軽減する効果になると思ったんだけど、風の要素が強すぎたみたい」

 

「そうなのか? 闇要素のほうが強いように思えるが」

 

「『神速の』『大いなる嵐を呼ぶ』だからね」

 

「『神速の』『大いなる』『嵐を呼ぶ』じゃないんですね」

 

「そうなんだよ。【ネームド】の並び順も重要な要素なんだ。――まあ、なにはともあれ、これで解決だね」

 

 改めてスキルを確認すると、【邪神の呪い】もちゃんと消えている。さすがにデメリットスキルを抱えたまま大会に臨むのはためらわれるので、これでようやく安心だ。

 

「ぷちも祝福をもらったぷち!」

 

「ゴブー!」

 

「なるほど。あんまり風に特化しすぎても良くないですけど、アクセントにはなりそうです」

 

 ボクのスキルへの対策では、どちらかといえば炎属性を重視するプレイヤーが多かった。炎対策のついでに風属性まで完封してくる相手もいたが、これからは炎も風も、ますます警戒されるかもしれない。

 

 警戒されるのは不利に思えるかもしれないが、実際には耐性で炎と風を同時に完封するのは非常に困難だ。

 

 風を警戒するあまり、炎への備えが手薄になる人も出てくるかもしれないし、風だけでもかなりの圧力をかけられる。攻撃回数が増えるのだから、今回のスキルによる火力の向上は相当なものだろう。

 

「これで準備はできたな。正確にはこのスキルを前提にもう少し準備をしておきたいが――まぁいいだろう」

 

「ですね! ちなみに【パーティ杯】はいつなんですか?」

 

「明日だ。召喚モンスターがいるとはいえ、人数差を覆すのはやはり難しいが――勝つぞ」

 

「えぇ! 狙うは絶対に優勝のみ! 有象無象(フォッダー)は叩き潰してやりましょう!」

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