卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第70話 異世界へ

「俺のログイン時間のことなどどうでもいい。異世界探検を始めるぞ!とりあえずプレイヤーのサイズに対応したポーション瓶を3つ用意した」

 

 そう言いながら【ストレージ】からごとりと巨大なポーションを取り出し、地面に置いた。

 

 とりあえずボクはそのポーションを横倒しにして瓶口から中へ入ってみる。ちょっと狭いけど、狭いところって地味に落ち着くよね。

 

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>絵面がシュールすぎて笑える

 

>口のところからひょっこり顔を出してる卍さんかわいい

 

>怪しい宗教の儀式かな?

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 隣の瓶を見るとゆうたさんも漆黒の翼さんもすでにポーションの中に潜り込んでいる。ゆうたさんは鎧姿ではさすがに入れなかったようで、布製の服に装備を切り替えていた。

 

「さて、準備OKですね!ミューズさん、ボクたちを【ストレージ】に投入してください!」

 

「わ、わかったわ……大丈夫なのよね?」

 

 恐る恐るポーション瓶を【ストレージ】に収納していくミューズさん。そして最後にボクが収納されたそのとき、世界が暗闇に染まった。

 

「真っ暗な空間だとは聞いていたのですけれど、本当に真っ暗ですね」

 

 しかし、それは光源がないから真っ暗だということではない。その証拠に一緒に収納されたゆうたさんや漆黒の翼さんは問題なく視認することができる。

 

 床も背景も、設定色が#000000()なだけだろう。

 

 ポーション瓶からもぞもぞと這い出して、ゆっくり立ち上がり、周囲を改めて見渡す。けれどやっぱり何もない。ミューズさんの私物と思しきアイテムが散乱していたりはするけれど、それはボクたちが【ストレージ】にアイテムとして入ってきた以上は当たり前の話だし、新たな発見とまでは言えないだろう。

 

 各人の【ストレージ】にデータではなく物理的な空間が用意されているのは面白いが、それだけだ。

 

 でも、わざわざ漆黒の翼さんがこの世界に招待したということは、それで終わるはずがない。

 

 彼はこの真っ黒の世界で何を見つけたのだろう?

 

 あれこれと予想していると、ポーションから這い出てきた漆黒の翼さんが話し出す。

 

「ここからが本番だ。この場所で【ホームリターン】によって自宅に戻る。今回は俺が【ホームリターン】した後に【コールグループ】でおまえらを呼び出してやろうではないか!」

 

「え?でも、【ホームリターン】って自宅に戻れるだけの機能ですよね?それじゃ意味ないんじゃ……」

 

 説明に添えられた【パーティ】申請を受諾すると、漆黒の翼さんが——ふっと、消えた。どうやら自宅に戻ったようだけど……。

 

 やがて【コールグループ】によってボクたちも漆黒の翼さんのもとへと集まると、そこは暗闇の空間だった。

 

「む?まだここは【ストレージ】の中のようだな」

 

「特殊な環境下ゆえに【ホームリターン】が不発した?いや、これは……」

 

「このゲームはシームレスゆえに……というのは言葉の綾だが、基本的には1つの巨大なマップの上であらゆる活動が行われる。つまり、【ホームリターン】はマップIDを参照する必要がない仕様となっている」

 

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>は?

 

>日本語でおk

 

>いやー俺は完璧に理解したわー天才だわー

 

>↑わかりやすく説明しろ

 

>俺はこの説明を完璧に理解したがここに記すには余白が狭すぎる

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「そして通常、ほとんどのプレイヤーが活動しているマップをID:1とするならば、この【ストレージ】の内部はID:3だ。IDが違うにもかかわらず【ホームリターン】は座標のみを移動させる。これにより俺たちは【ストレージ】内部の、本来なら家が存在しているはずの座標に移動したのだ」

 

「……わりと致命的なバグですね、これ」

 

 なんにもない真っ暗な空間だからいいけど、この理屈だと、下手をすれば壁の中に突っ込むことになりますよね?逆に【ホーム】をこっちの特定座標に置いておけば容易に再現可能ですし。

 

 いや、下手すると【ホーム】を【ストレージ】に入れた直後に【ホームリターン】しただけでも大変なことになってしまうのでは……!?

 

 ……誤爆しないように細心の注意を払いましょう。

 

「さて、ここからどうするんだ?座標が変わっても何もない空間であることに変わりはない。さらに次のステップがあるのだろう?」

 

 面白いバグではあるが、ゆうたさんの言うとおりだ。真っ暗な空間の中で座標だけ大きく移動しても、このままでは意味がない。どこに移動しようとも、結局は真っ暗な空間。新しい発見はできないのだから。

 

 ならばこの移動は、あくまで本命のバグ……もとい仕様に向けての布石であるはずだけど……。

 

「わかっているではないか!次の段階に進むぞ。メニューを開き、【闘技場】に入場せよ」

 

 ここからさらに【闘技場】へ……。嫌な予感がしますね。先ほどの理屈で言うならば、メニューから入場することのできる【闘技場】もまた通常のフィールドマップとは違うIDのエリアのはず。

 

 恐る恐る【闘技場】を選択すると、目の前に木でできた頑丈そうな扉が現れる。この扉の先が【闘技場】だ。恐る恐る扉を押し開けて、中へ——!

 

「なーんだ、普通に【闘技場】じゃないですか」

 

 ボクの開けた扉を通じて2人も【闘技場】に入ると、がしゃんと自動的に扉が閉まり、音だけを残して、門は消えた。

 

「地味に気になってるんですけど、入るときはただの扉なのに、帰るときは門が現れるんですよね。なんでそこ、統一しないんでしょう?」

 

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>闘技場利用者の95割が疑問に思う七不思議

 

>闘技場良く使うけど全く気づかなかったわ……

 

>↑眼科に行ったほうがいいぞ?頭の眼科にな

 

>頭の眼科ってなに?

 

>煽ろうとして失敗しちゃったシリーズ

 

>脳が原因で目に異常が出ることもあるからね、仕方ないね

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「最終ステップだ。【闘技場】から出るぞ」

 

「わかりました!じゃあ出ましょうか」

 

 もう読めちゃいましたよ。これで門から出ると、なぜか【ストレージ】の中じゃなくて通常のマップの座標に出られるってことなんでしょ?【ホームリターン】を使ったのは、【闘技場】から出たときの座標を切り替えるため。

 

さて、答え合わせの瞬間といきましょうか!

 

 ボクは帰り道の門を呼び出し、勢いよくそれをくぐる。

 

 そして意気揚々と門を抜けると、その先には——

 

 超高層のビルがいくつも立ち並び、魔動車が空を駆け抜ける。そんな世界が目の前に広がっていた。

 




テクニックその52 『異世界転移』
【ストレージ】に入ってそこから【闘技場】に入り、出ると異世界に着きます。
【ホームリターン】は位置調整の問題らしいです。
異世界探検……なんだか楽しみですね!
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