卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第79話 ダイゴブリン

 ゴブ蔵が戦力になることが判明してからは第1層の雑魚は次々とぶっ飛ばしながら進んでいき、ついに次の階層へ続く階段を視界に捉えた。

 

 第1層の敵は相手にならないし、もちろん次の階層に進むわけだけど……階段のある部屋はかなりの大部屋だ。遠目から見た限り、モンスターの姿は見当たらない。

 

 これってどう考えてもボス戦の前触れですよね?これでボスがいなかったら詐欺認定でいいですよね?

 

「第1層のボスですし、灑智とゴブ蔵で戦ってみますか?」

 

「そうですね!私たちで倒してみせます!!」

 

「ゴブゴブ!」

 

 そこでボクは通路に残り、灑智とゴブ蔵がゆっくりと部屋へ足を踏み入れる。

 

 【パスファインダー】の能力で確認する限り、この大部屋に(トラップ)はないようだけど、そのうちボス部屋にも(トラップ)が仕掛けられるようになるんだろうね……。

 

 やがて2人が部屋の中央に近づくと、巨大な魔法陣が目の前に形成され、粒子のようなものが周囲から集められていく。

 

 集まった粒子は、やがて1体の巨大なモンスターへと姿を変えた。

 

 魔法陣の中心に立つのは体長10mを優に超える巨大な人型のモンスター。

 

 全身は焦げ茶色に染まり、その腕には大木のような棍棒を携えている。

 

 体格こそ異なるが、先ほど見かけたモンスターと瓜二つの姿だ。

 

 そう、目の前に現れたボスモンスターは巨大なゴブリンだったのだ。

 

「ゴブゴブー!」

 

 世界が違うとはいえ、同族相手の戦い。ゴブ蔵はやる気に満ち、

 

「お姉様にいいとこ見せます!」

 

 同じくやる気MAXの灑智。槍をくるくると器用に指で回してアピールしている。

 

 体格には圧倒的な差があるけれど、ゲームにおいて重要なのは体格ではなくステータスだ。装備を整えてレベルを上げた2人なら勝てるはずだ!

 

 

 ——それが誤りだと、2秒後に思い知る。

 

 目にも留まらぬ速さで棍棒が横薙ぎに振るわれ、2人は抵抗も回避もできず、一瞬で骨になった。

 

圧倒的なリーチと質量の暴力で、Z軸方向以外のあらゆる回避は封殺された。【エアジャンプ】も覚えていないから、今のをかわすのは不可能だった。

 

 一撃で仕留められるステータスも強いけど、体格はもっと重要でしたね!

 

----

>これが1層のボスモンスターかよ

 

>こんな所で苦戦してたら50層攻略まで何年かかるんだ

 

>やっぱクソゲーだわ

 

>原住民の方々は【A-YS】の力だけでこれを突破してるんだよな……

 

>いけ!卍さん!仇を打て!

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「ま、任せてください!第1層程度のボスモンスターなんてレベルと火力の暴力で一撃ですよ!」

 

 灑智とゴブ蔵を一瞬にして仕留めた巨大なゴブリンは次なる標的として通路にいるボクを狙ってくる。

 

「望むところですよ!」

 

 弾丸の如き速度でゴブリンに接近すると、それに対して再び横薙ぎに棍棒が振るわれる。

 

 それを【エアジャンプ】で大きく跳躍して回避し、目の前のゴブリンの顔面に勢いよく魔法をぶち込む!

 

「«獄炎»【フラムブレット】!」

 

 ボクの杖から銀色に燃えさかる弾丸が射出される。派手なエフェクトをまとった【フラムブレット】はそのままゴブリンに命中する。

 

 おそらくダメージは入っているようなのだが、【A-YS】のゲームシステムは敵のHPゲージを表示しない。どの程度のダメージを与えられているかは曖昧な感覚でしかわからない。

 

 ——それなら、圧倒的な火力でオーバーキルを狙ってやる!

 

 〈ロードウィング〉で空中でもう一段跳び、接近したところで詠唱時間の短い2つのスキルを放って追撃する。

 

「【フルバーニング】【ソウルフレア】!」

 

 激しい爆発と白き炎はゴブリンの身を焼き尽くす!

 

 

 しかし、それでもゴブリンは倒れなかった。

 

 目の前で超火力スキルを連発するボクに、ゴブリンはふっと鼻息を吐いた。

 

 

 その鼻息でボクは壁に叩きつけられ、HPが0になった。

 

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>マジかよ……

 

>控え目に言って魔王戦より絶望感が凄い

 

>鼻息で相手をぶち殺す最強ゴブリン

 

>どうやって勝つの??

 

>うわああああああああああああああああ

 

>こんな魔境で今50層に到達してるとかいう奴ら何者だよ

----

 

 

 気がつくとボクは街の中にいた。後ろを振り返るとダンジョンにつながる大穴が開いている。どうやら死亡するとダンジョンに入ったときの入り口に戻されるようだ。

 

 即座にリベンジに挑めるのはいいことかもしれないけど、このまま行っても二の舞だよねー。どうしようかな。

 

 なんだかんだで第1層で死ぬという恥ずかしいことをしてしまった割にはコメント欄は比較的穏やかだ。鼻息で死ぬというあまりのインパクトに『しゃーない』という風潮になっているのだろう。

 

「お姉様も負けてしまったんですか……?」

 

「残念ながらね。〈混沌に仕えし魔の眷属よ、我に従え〉【サモン・ゴブリン】!」

 

 ゴブ蔵も呼び出し、ボクたちは反省会をすることにした。とは言っても灑智とゴブ蔵に関しては、レベルを上げて装備を整えるしかないだろう。

 

 そういえば確か装備屋で、ゴブリンに対するダメージを引き上げる装備を売っていた記憶がある。【A-YS】はああいったメタ装備で対策を取っていくタイプのゲームなのだろうか。

 

 あそこまで実力差があると、少々メタを張ったくらいでは埋まらないように感じるけど……。とりあえず改めて装備を整えるところから始めようかな?

 

 と、そこでふとコメント欄を開く。なにやらあれから盛り上がっているようだけど……なになに?

 

----

>通路に入ればゴブリンの体格だと入れなかったよね??

----

 

 え?

 

----

>下手すると棍棒も通路通らないのでは?

 

>そんなんありかよ

 

>もしかして正攻法なのでは

 

>草

 

>あのレベルの戦闘能力のモンスターに真面目にやり合えるわけなかったな

 

>まあ、戦闘能力は初見じゃわからないから……

 

>究極の初見殺しである

----

 

「えっと……コメント欄に解決策らしき提案が出ているので、再挑戦してみましょうか……」

 

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