卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第85話 回復変換

 通路を奥に進んでいると、後方で何かが砕け散る音が鳴り響く。大岩のモンスターが破壊されたのだろう。ある程度ならめりぃさんの精霊が受け止めてくれるはずだが、そう長い時間は保たない。

 

 できる限り追いつかれないよう速度を上げて走り続ける。しかし、ボクが地面に貼り付けた【マーカー(トラップ)】を回避する必要があるので最短距離では走れない。

 

 後方から迫り来るモンスターたちを振り切ることは不可能だと判断し、足を止めようとした——。

 

「ゴブゴブブ!」

 

 ゴブ蔵が後方に岩の弾丸を連射しつつ、先を急ぐように身振り手振りで急かす。

 

 このスキル【カタパルト】は、詠唱と同時に装填した岩を任意のタイミングで発射できる!さっき走るのが遅れていたのは、これを詠唱していたからだったんですね!

 

 【深淵たる叡智】で闇属性を帯び、【対価契約】で底上げされたその威力は、ボクたちを追う2体の忍者型モンスター【シノバズ】にとって痛手らしい。岩が命中するとともに走りを妨害され、回避のために明らかな遅れが生じる。

 

「頼みます、ゴブ蔵!」

 

 抑え込むに足る実力がゴブ蔵にはあると判断し、ボクたちは再び弾丸の如き速度で前に進み続ける!

 

 やがて目の前に現れたのは二つの分かれ道。最短ルートはわかっている。左だ。けれどその両方の道にモンスターが待ち伏せしていることが感じられる。挟み撃ちを狙うつもりだろう。

 

 いやらしいことに、どちらも曲がり角の先で待ち伏せしているため、直線の攻撃では接敵までにバリアを削れない。おまけにボクの【フルバーニング】でも射線外から巻き込めない、巧妙な位置取りだ。

 

 対処しきれず曲がり角に差しかかったところで、左右から2体のモンスターが満を持して仕掛けてくる。

 

 向かって右側にいるのが【ゼロスナイパー】。口内に銃を備えた犬型モンスターで、左側にいるのは【シニガミ】。()()即死のスキルを保有する階層筆頭の要注意モンスター!

 

 テトリスさんは【ファストチェンジ】で棍棒を取り出し、すかさず【シニガミ】へ叩きつける!その()()()1()()の一撃でバリアが粉々に砕け、そこへおっさんが妨害(デバフ)を重ねる。

 

 同じタイミングでめりぃさんの精霊が【ゼロスナイパー】のバリアをはがした。

 

 【シニガミ】が手にした鎌を大きく振るい、テトリスさんとおっさんを狙う。おっさんは【エアジャンプ】で回避したが、テトリスさんはわずかにかすってしまった。

 

 それだけで、HPのほぼすべてを一撃で持っていかれる。

 

 条件なしの近接攻撃で、圧倒的な割合ダメージ。そこへ【ゼロスナイパー】が銃弾をすかさず撃ち込もうとする。

 

「【アトラクト】!」

 

 めりぃさんがそこに【ナイト】の盾役(タンク)スキルを差し込んで弾をそらし、その隙にボクが攻撃を仕掛ける!

 

「撃ちます!」

 

 宣言を聞いたテトリスさんとおっさん、めりぃさんが瞬時に装備を換装し、ボクはスキルを発動する……!

 

「«獄炎»【フルバーニング】!」

 

 激しい爆発炎上が瞬時に巻き起こり、周囲の存在を敵味方関係なしに巻き込む。

 

 【シニガミ】と【ゼロスナイパー】はあまりの衝撃に大きく後方に弾き飛ばされる。それに対して明日香さんはまるで意にも介さず【シニガミ】に接近して張り手による追撃を行い、灑智の投槍が残りわずかなHPを削り切った。

 

「攻撃と同時に回復できるなんて便利だね。助かったよ」

 

 そしてテトリスさんは爆発を浴びて、ダメージどころか大きくHPを回復している。

 

 ……このレベルの耐性装備が出回ると、属性特化型【メイジ】は廃業に追い込まれるんですけど?こちらもさらにステータスを引き上げるしかないんですか?

 

 場違いな思考を巡らせているあいだに、【ゼロスナイパー】が弾幕の嵐をまき散らしてくる。

 

 やはり【シニガミ】が最優先事項だったとはいえ、この階層のモンスターすべてが厄介だ。反射的にめりぃさんを盾にするように身を隠したが、もしまともに浴びていたらHPを大きく失っていただろう。

 

 灑智が再び槍を回収して投擲すると、【ゼロスナイパー】は弾丸を放ち続けながらも軽く横移動して回避する。

 

 そこにめりぃさんの背後に隠れながら放ったボクの【ブレイズスロアー】がジャストヒットし……()()()()2本の槍が【ゼロスナイパー】を貫く。

 

「やりましたっ!お姉様との共同作業っ!!」

 

 ——これはDEXを極めた者にのみ許されたシステムの暴力。投げた武器の弾道を後から調整できる、れっきとした仕様だ。

 

 異次元の投擲から放たれた槍が異次元のUターンで戻ってくる光景はシュールというほかない。

 

 けれど2体のモンスターに手間取っているうちに、増援が現れてしまった。【ソードラグーン】だ。最短ルートの左の道をふさぐように待ち構えている。

 

 【フルバーニング】も【ブレイズスロアー】も使用済み。【ソウルフレア】はあの巨大な尻尾による射程を誇るドラゴンに当てに行くには心もとない。【メテオ】を撃つ時間はない。

 

 即座に判断したボクは、めりぃさんの攻撃に合わせて2つのスキルを発動させる。1つは【フラムブレット】。

 

「«獄炎»【フラムブレット】!〈魔の法に則り、眼前の獲物より全てを収奪せん〉【アブソーブ】!」

 

 もう1つは漆黒の翼さんが注目していた吸収(ドレイン)スキルだ。炎属性ではないけれど、ダメ押しで発動させていく。

 

 炎の弾丸がうなるようにドラゴンへ迫り、炸裂し、【アブソーブ】がHPを吸収する。

 

 この攻撃によってドラゴンのHPを大きく削り取ったことが【パスファインダー】としての感覚で察知できる。だけど——想定よりダメージが大きい?

 

 【フラムブレット】は平常運転だ。なら想定より威力が高いのは【アブソーブ】の方。

 

 何がおかしいのか。スキルのデータを改めて確認すると、すぐに気づいた。

 

【アブソーブ】

[アクティブ][キャラクター][攻撃][()()][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:5s 再詠唱時間:30s

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。

その後、[ダメージ]分、[HP]を[()()]する。

 

「そういうことですか!」

 

 回復だから【ルビーロッド】で炎属性に変換されたのか……!

 




テクニックその56 『回復変換』
無属性の回復を炎属性に変換するボクの【ルビーロッド】。これは回復の効果を変換するのではなく、それに付随したすべての効果が炎属性に変換されるようです。
効果に回復と付くならかなり対象が幅広いようですね。炎属性として利用できる範囲が広がるのは嬉しいです!
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