「ブルアカって透き通った青春学園RPGだよね?」「え?」 作:ヘイホー
つ づ い た ぜ !
1話目にして評価と感想、お気に入り登録されていて驚いている作者です。みなさんありがとうございます!
今回もノリと勢いで書きました!
─────トリニティ総合学園。
この学校はまさしく名門お嬢様学校と位置付けることができるほどの伝統と歴史がある学校だ。
その景観はまさしく荘厳な白亜の城。キヴォトスの外から訪れる人も景色を見たさにトリニティに訪れるほどだとされている。
というわけでね、来ちゃいました、トリニティ!
あぁ、勘違いしないで欲しいんだが、これはなにも仕事を放り出してトリニティに来たわけではなく今回も仕事の為に来たのだ。
「ほうほう、ここがエデン条約の調印式が行われる聖堂か。流石に荘厳すぎる」
…………………………
いや、ホントに仕事だよ?ただ予定より結構早く来ちゃったから、折角だし調印式の会場を見に来ただけだよ?ホントダヨ?
それに、この古聖堂は歴史ある場所だし、あらかじめ現地学習として見ておいた方がいいだろう、うん。
この古びた聖堂の名は『通功の古聖堂』。歴史と伝統を重んじるトリニティの中でも最も古く、トリニティの象徴とも言える聖堂なのだ。
なんせ、トリニティ総合学園の始まり───第一回公会議が行われた場所なんだから。
「しかしまぁ……本当に使われるところ以外はそのままなんだ」
『通功の古聖堂』で行われると言っても、わざわざ聖堂の全てを使うわけもなく。そのほかの場所は予算の関係上か修理は施されていないみたいだ。
一応使う場所の予定としては、聖堂の前と俺が今いる礼拝堂がある中央部分のみで組んでいる。
「でも逆に雰囲気が出てるね。新しすぎると有り難みが薄れそうだ」
「そうかい?そう言ってもらえると嬉しいよ」
誰もいないはずの聖堂に別の誰かの声が響き渡る。
幽霊────なんて思うはずもなく、ここ最近よく聞く声がする方に顔を向けた。
「おぉ、セイアじゃん。いつからそこに?」
「少し前かな。“夢”が君がここに来ると教えてくれたからね」
そこには1人の可憐な少女が少し古びた椅子に座り、じっと俺を見ていた。
僅かに漏れ出る日の光が彼女の金色のキツネ耳をより際立たせ、幼い顔立ち、幼い体型ではあるが、それが彼女の存在があたかも天からの使いであるような錯覚に至らされた。
彼女の名前は百合園セイア。
トリニティの3人の生徒会長から成る組織────ティーパーティの1人で、その中でも最高権力を持つ『ホスト』の役割を担っている子だ。
「おいおい、1人でこんな埃が溜まっていそうな場所に来て大丈夫なの?いつものそば付きは?」
「彼女なら今はいないよ。無断で来てしまったからね」
「……なんで?」
「そうだな、この行動に敢えて感情での理由付けをするならば………
ははーん?どうやら生粋のお嬢様であるセイア様は
「少女漫画でもハマったん?結構ベタな言葉を使うんだね」
「ふふっ、はっ倒してもいいかい?」
「そんな怒んなって」
さて、いつも通りの軽口を終えたところで、改めて彼女の隣に座って聖堂の内部の全体を見渡す。
う〜〜ん、やはり彼女が来てから聖堂の神聖さがぐんっと上がったような気がする。この子は本当に天の使いだったのか……?
「………ハヤト。君は今、なにを思って何を感じているんだい?」
「ん?どうしたよ、藪から棒に」
「……そうだな。コレはなんとも形容し難い感情だ。ただ、自分自身でさえ上手く言語化出来るようなモノではないことは確かだ」
「ふ〜〜ん?まぁ、答えることも吝かでないから全然答えちゃうけどね」
一度彼女から視線を外し、中央に聳え立つ像を見つめながら自身の感情に思い耽る。
「随分と長かった
数年かけてようやく第一歩だ。ようやく『キヴォトス平穏化計画』の1つ────『エデン条約』の締結がもう少しまで来ている。
本当なら入学したてでやりたかったんだが……あまりに力がなく、あまりにキヴォトスの事情について知らなすぎていたから、何だかんだで数年かかった。
これが早いのか、それとも遅すぎるのかは分からない。ただ、俺だけならともかく
「あぁ、
「………でも、まだまだこれからさ。俺にとってはこれからが始まりなんだ」
「…………」
この条約で
「本当にみんなには感謝しているよ。みんなが協力してくれたからエデン条約の締結の目前まで来れたんだ。みんながいなかったら絶対に無理だと思うから………だから──────ってあれ?お〜〜い、セイアさ〜〜ん?」
感謝を告げようと彼女に顔を向けると────何処か恍惚とした表情をしたセイアが俺を見ていた。
前後関係がまるで分からないので混乱するしかない。
「─────あぁ、すまない。ひどく
「えっ、なにそれ。俺も見たいんだけど」
「残念ながら、君には見れないだろうね」
「女性にしか見れないってヤツか……」
それって滅茶苦茶不公平では?
こんな世界おかしいよっ!!────というのは最初からだったな、うん。なんせ女性しかいないし、銃ぶっぱしてくるし、なんなら青春学園RPGの原型すらないし。
「……そうだ。君に聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと?」
「あぁ、と言っても、YESかNOで答えられるような簡単な問いかけだから気楽に答えてくれると助かる」
「なんかの引っ掛け問題かな?その手には乗らんぞ!」
「まだなにも聞いていないよ……」
少し咳払いした後、“確信”を隠せない目つきを添えて俺に問いかける。
「連邦生徒会長は─────
ん?
ん???
んん!?!?!?!?!?
まだ公表してないのに我が幼馴染が失踪してることを知ってるぞ、この子!?確かに“問いかけ”だけど、彼女の目が“問いかけ”なんかじゃなくて、もはや“尋問”とか“答え合わせ”の類なんよ。
まさか漏れた?いや、連邦生徒会のみんなは優秀だからそんなヘマはしない。いやいや待て待て、もしや俺がうっかり漏らしてる説が……うっわ、めっちゃありそうじゃん!
困惑する俺の表情を見て察したのか、セイアはくすっと上品に笑って答えてくれた。
「その表情を見るに“正解”ということでいいのかな?」
「……………なんで分かったんすか」
「分かるさ。体が弱くとも私はトリニティを代表するティーパーティの『ホスト』だ。他所の情報を取り入れて情勢を知ることも仕事なんだよ」
………なるほど、そりゃあ見抜かれるか。
「……違法に取引された武器の流通の増加に、七囚人の脱走……その他諸々で異変に気づいちゃった系っすかね?」
「ふふっ、そうだね。だけど、それはあくまできっかけにすぎない。武器の流通の増加だってそこまでだろうし、七囚人だって矯正局からよく脱走している。不良の暴動だっていつも通りだろう。つまり、私が確信に至ったのは────今さっき、君が古聖堂に訪れた瞬間かな」
細い指で俺の顔を指差し、まるで聖母のような慈しむ微笑みをもって俺に答えを突き出してくる。
「君が醸し出す
「………………」
「あぁ、きっと他の子にも気づかれているよ。それで、だ。今まで一定の安定を保っていたキヴォトスでの問題が発生したという事柄、それらが点と点で結びつき、“連邦生徒会長”という像が一気に浮かんできたわけさ」
「────────」
──────やっぱ俺じゃん!?
─────見事なまでに俺じゃん!?!?
────完膚なきまでに俺のせいじゃん!?!?!?!?
雰囲気でどうやったら察せられるのかと思うけど、結果的にセイアにバレてますし。なんなら他のみんなにもバレる可能性があるぞってご指導ご鞭撻を頂く始末ですし……
リンちゃんごめん……俺、切腹して詫びるよ……
「あの……正解してなんですが、これってあまり大っぴらに広めて欲しくない内容でしてね……」
「勿論分かっているさ。ただね、ミカとナギサには一応伝えておいた方が良いだろう。連邦生徒会の発案の関係上、エデン条約は
「………だよねぇ。はぁ〜……ったく、アイツが調印式前に帰ってきてくれると全てが丸く収まるんだけどな……」
「…………」
本当に困った幼馴染だ。いつも俺を散々振り回して、いつも巻き込まれて結局俺も一緒に怒られる。他の奴らだったら縁でも切られてるぜ、多分な。
…………今、アイツは何処にいるんだろうか。1人でちゃんとやっていけているのだろうか。
…………ん?そもそもアイツが失踪しなければよかった話では?俺なんも悪いことしてなくない?
「─────っとと、もう少しで時間じゃん。ほら、セイアも早く────なんで笑っているの?」
彼女に手を差し出せば、今まで見たことのない程に喜びが溢れている表情をしたセイアを見て驚く。
ただ、その嬉しそうな顔は何処か陰りがあって─────
「────あぁ、ありがとう。それにしても………ふふっ♪今日は本当にいい気分だ」
「そう?それなら良かったよ」
よく分からないが、取り敢えず相槌を打っておこうと思う。
『女の子はいつだって気分屋なんですよ!』とは幼馴染からの言伝だ。きっとコロコロ気分が変わるお年頃なんだろう。
まぁ、彼女の場合はそれにプラスして抱っこをせがんで来るんだがな。流石に俺だって限度がありますよーだ。
─────
───
─
“夢”とは何だろうか。
あぁ、“夢”というのは睡眠時に発生する過去の記憶と直近の記憶が混ざり合って流れる脳内ストーリーの話ではなく、各々が未来に抱く自身の野望みたいなものを指している。
理想、野望、願望、冀望、将来像………人はソレに様々な言葉を当て嵌め、様々な状態をもって自身の“夢”を語ってきた。
以前までの私であれば……きっと冷笑と共に吐き捨てていたであろう行為だ。未来が見える私にとって、未来とはただただ絶望と慟哭が蔓延る恐怖でしかなかったから。そんな世界に希望も、未来も、“夢”も抱ける筈がないだろう?
だから、きっと
彼に出会った日……あぁ、忘れる筈もない。
あの日は私の運命が覆された日────私が
その日に見た未来は“私が転んで怪我をする未来”。
要因は分からなかったが、幾らでも想像はつく。私が虚弱体質な事もあって様々な可能性が幾重にも存在していたことは確かだ。
怪我をする……つまりは“痛い”ということだ。私だって痛いのは嫌いだし、出来ることなら痛い思いなんかしたくない。
でも……あの時は既にどうでも良かったのだ。未来が確定しているなら、それに抗おうともただただ虚しいだけ……
だから、その日も結局無抵抗に痛みを受け入れようとした。無様に転んで周囲の人間に心配の目と鈍臭い者を見る目を黙って受け入れようと───
『あわわっ!?だ、大丈夫!?』
─────覆された。
堕勢な未来が、侮辱に満ちた未来が、諦観すべきだと思っていた未来が。
彼の一声と私を抱き止める腕の感触が、私が見た未来の全てを
小さな、本当に小さな変革なのかもしれない。私が怪我や痛みを感じないからって、他に何かが変わることもない。
だけど、私にとってはそんなことどうでも良かったのだ。
その日に初めて、私は“希望”というものを抱けたのだと思う。
他でもない彼の手によって、全てが───────
「───イア、セイア?」
「ッ」
肩を優しく揺すられて意識が浮上する。
周囲を見渡せば、先ほどまで見ていた私と彼だけの世界ではなく、数多の人が立ち込める風景が私に現実を突きつけてくる。
「な、何かな?」
「いや、呼びかけてもずっと反応が無かったから……」
心配そうに私を見てくれる彼を見て────可笑しなことだが、何処か優越感が私を満たしてくれた。
彼は私が虚弱体質なことを知っている。知っているからこそ、私の異変らしきものには敏感であり、毎度のように心配の声を掛けてくれる。
この瞬間だけは、仕事も、エデン条約も、ミカやナギサのことも────あの連邦生徒会長のことさえも考えずに、ただ私に意識を向けてくれる。私だけに意識を割いてくれている。
………私にとってはそれだけで幸せなのだよ。
「大丈夫さ。少し……そう、少し君との出会いを思い出していただけだよ」
「あぁ、あのすっ転びそうになった時のね」
ニコニコしながら答えてくれる彼を見て思わず私も頬が弛む。やはり共通の思い出とはいいものだ。
「あの日から私の全てが変わった。謂わば君の手によって私は染められたと言っても過言ではない」
「うん、語弊しかない言い方はやめようね?」
「語弊でもなければ冗談でもない。あの日……君のその海のような深い蒼の瞳に私を映してくれた瞬間から、文字通り私の世界が一変したんだ」
私は彼の瞳を見つめ返す。その色は“困惑”とほんの少しの“照れ”が混ざっているような不思議な色。
「改めてお礼を言わせてもらうよ。君と出会えて……本当に良かった」
────あぁ、完全に照れ出した。
真っ直ぐ見つめていた筈の瞳が揺れ動き、頬も僅かに紅色に……遂には完全に私から視界を外して頬を掻き始める。
ふふっ、本当に分かりやすい。意中の人が、他ならぬ私自身の手によってここまで表情を変化させてくれるのがこんなにも嬉しいものとは……嬉しい発見だ。
「な、何ですかね。急にそんな……」
「いやなに……きっと聖堂での話が私を余韻に浸らせているのだろう、気にしなくてもいい。まぁ……君は既に意識しているようだが?」
「ぐっ……!き、君って人の反応を愉しむタイプだったっけ?」
「あぁ、ついさっきだがそれに愉悦を見出してしまってね。今後の趣味にしていくのも悪くないかもしれない」
「………やめときなよ?お友達減っちゃうぜ?」
「冗談さ」
無論、君以外にする筈がないが。
「ほら、時間ももうすぐだし早く行こうじゃないか。まぁ、とは言っても私に無理に合わせてもらって迷惑をかけるが……」
「いやいや、何言ってんのさ。迷惑なんてこれっぽっちも思ってないよ」
嘘でもなければ建前でもない────本心から言ってもらえていると確信できる声色と顔を見て胸が切なく締め付けられる。
あぁ、本当に彼は頗る人が欲している言葉を掛けてくれる。ただ唯一の不満点といえば……きっと他の子にも同じように接していることだろうという一点のみだ。
…………………
他の子も……おそらく連邦生徒会長という最大にして最強の障壁が無くなったことで、今まで以上により
そんな時でも、私をより意識してもらうには────
「…………」
「ん?」
彼の手を掴む。
決して離さないと伝えるように、私が出せ得る精一杯の力を込めて彼の堅い手を握りしめる。
………私とは全く違う手。こんな些細なことでも、彼を異性として改めて再認識させられる。
「ははっ、なになに?転びそうになった?」
「………あぁ、そうだね」
…………先は長そうだ。
私が転びそうになったら真っ先に反応してくれるだろうに。まさか……わざと気づかないように────いや、ないな。間違いなく本心から言っているぞ、この女たらしは。
「まったく、しょうがないな〜」
そんなことを言いながら、痛まないと思える絶妙な力加減で握り返してくれる。私が求めてやまない反応を、彼はちゃんと返してくれた。
……本当にズルい。ズルすぎる。
「……ありがとう」
「おうよ」
ニカっと、まるで太陽のような輝かしい彼の笑顔を目に灼きつけて、手を繋いだまま目的地に向かう。
…………君は本当にズルいと、そう思いながら。