「ブルアカって透き通った青春学園RPGだよね?」「え?」   作:ヘイホー

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つ  い  ぜ 

いや〜、今回色々悩んでました。主に先生のキャラ付けでなんですけど。
幾千のブルアカ二次小説でも描かれるように、先生とは鋼メンタルの完全無欠道徳足ペロ超人な存在ですが……本作はちょっと人間味がありすぎるかもしれませんね(?)

書いては消しての繰り返しな感じでしたが、やっぱり小説って難しいけど楽しいですね!
みなさんも書いてみたいものがあれば是非書いてみてください!俺が読みます!(宣言)


「屋上で先生と絶景を見る……これもまた青春か」「屋上じゃないけどね」

 

 

 

 

 

 ────時々、俺の存在を俺自身が疑う事がある。

 

 

 それはこのキヴォトスにやって来た時から頻発するようになった。なんせ、探す限り男子生徒が俺1人しかいないんだもん。明らかに異分子であったことに自覚はあった。

 

 

 何度自身を女性ではないのかと疑い、その度に幼馴染から笑われてきただろうか。

 何度遠方の学園の隅々にいるかもしれない男子を探し回り絶望してきただろうか。

 何度奇異と警戒の視線に晒されて心にダメージを負ってきただろうか。

 

 

 だからこそ、先生の来訪をかなり心待ちにしていたのは事実だ。

 

 何故って?勝手に先生を()()だと思っていたからですが何か?

 ……あぁ、今にして思えば何と浅ましく愚かな考えだったのかと嘆いている。勝手に期待を込めてしまった俺がバカだったのだ。

 

 

 

 

 

 ─────女性しかいないゲームで、必ずしも()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………これでどう?」

 「ん〜〜っと………漢数字……印鑑の捺印もズレなし……くだけた言葉で書いていない……うん、完璧っス」

 「ほんと!?やったぁ〜!!」

 

 まるで徹夜で裏ボスを倒したようなウイニングポーズをかましている先生に生暖かい視線を送りながら、俺は冷静に彼女の容姿を見遣った。

 容姿は端麗で、長くストレートな濃い茶髪と漆黒の黒目。その場にいるだけで何故か安心感を得られる雰囲気に、何もかも任せてしまいたくなる()()……

 

 

 

 そうです、先生は()()でした。

 もうまごう事なき女性です。完膚なきまでに女性です。隣からすんごい良い匂いがします。

 

 

 

 「先生、まだまだシャーレ関連の手続き等の書類があるんですから、そのカジキを一本釣りした瞬間のポーズをやめてください」

 「なかなか分かりやすいようで分かりにくい例えだね……でも、実際見た事ないけど何となく喜んでいるのが想像出来るよ」

 「別に俺の表現に対する評価は求めてないんですわ」

 

 「えへへ」とふんわり笑う先生を見て、俺も肩に不自然に張っていた力を嘆息と共に吐き出す。

 全く……なんか先生を見てると、さっきまで『男が〜』とか『存在理由は〜』とか考えていた俺がバカらしく思えてくる。まぁ、実際にバカだったんだろうけど。

 

 「────ま、もうどうでも良いか」

 「ん?何が?」

 「いいえ、こちらの話です」

 

 確かに同性を求めていなかったと言えば嘘になる。期待していなかったと言えば嘘になる。

 だけどまぁ、さっき言った通り、もう本当にどうでも良いとさえ思っている。

 

 俺が本当に気にしていたのは、ちゃんとした()()()()()()()が来てくれるかどうかだったんだから。

 その点に関して言えばこの先生は花丸の二重丸だ。もうね、『話しただけで分かるめっちゃ良い人やん!』を地で行く人だからね、これで心残りが1つ消えたと言っても過言ではない。

 

 

 「先生はこのキヴォトスでの生活は慣れてきましたか?」

 

 先生との衝撃的な初邂逅からしばらく経った今日この頃。

 先生がキヴォトスに来てから今日までの間、先生のお世話───というよりも、専属マネージャー的な立ち位置でサポートしていたのが俺です。

 

 まぁ、これには勿論連邦生徒会内部では反対意見もちょくちょくあったのは確かだった。『副会長のお仕事の量が』と気遣ってくれる意見が大半であったけど、たまに『ズルい』、『危ない』とか意味わからんこと言ってくる子もいました。

 

 だけどみんな、よくよく考えて欲しいと思う。

 折角外から来てくれたというのに呼び出した筈の張本人(幼馴染)がいないって……よくよく考えなくても不味くない?って。

 じゃあその責任は誰が取るかっていったら─────俺しかおらんやん。

 

 「うん、ハヤトくんのおかげで少しずつだけど馴染んできたよ」

 「フッフッフ、それは僥倖ですね。ですが、このキヴォトスは本当に広いですからね。少しずつ慣れていって、そうすればいずれ先生にも好きな()()()を見つけることが出来る筈ですよ」

 

 本当に飽きさせてくれないよね、この世界。

 ちょっと道を歩いていたら可愛らしい動物の市民さん方を見かけるし、銃弾は飛んでくるし、幼馴染は失踪するし、明らかに風紀を乱すような格好をしている輩もいるし────お前らに言ってんだぞハナコとエイミぃ!!!

 

 「……そうだなぁ、これからもキヴォトス中を回ってみたいし、色んな場所に行ってみたい。でもね─────」

 

 そう言葉を区切り、何処までも真っ直ぐな目が俺を貫く。

 心の内側まで見られていると思わせるほど澄んだ瞳が俺の姿を捉えて離さない。

 

 

 「─────“そこ”はもう見つけてるかな」

 

 

 頬付きながら俺を見る先生は何処までも慈悲深く、優しい微笑みを向けていた。この数年で色んな女性を見てきたが、その中でも一際艶やかで、大人独特の雰囲気を醸し出す人だと改めて感じた。

 というか早くない?もう見つけてたんだ。

 

 「俺気になります!何処っスか?」

 「ん〜……内緒かな?」

 「内緒か〜」

 

 教えてもらえないのは大変残念だが、先生もこの都市を楽しんでもらえている事は朗報だ。

 死ぬかもしれない場所に呼んでおいてクソつまんねぇなんて思われたら申し訳なさすぎるッピ……

 

 

 「う〜〜ん……」『はわわ!?目が回ります〜!!』

 

 ひとまず安心しながら、先日のワカモのやらかし(損害報告)がまとめられた資料を読む………が、最近()()()()()()()()左肩を回す。

 はぁ〜、イヤだイヤだ。この歳でもう四十肩の序章ですかね。デスワーク続きだったしなぁ……連邦生徒会のみんなにも注意しとかないと。

 

 「えっと……もしかして肩が重い、とか……?」

 「え?いえ、強いて言えば違和感ですね。ここ最近の無理が肩に来てしまったみたいで……でも、よく分かりましたね」『う〜〜ん……』

 

 『ちょっと見ただけで俺の異変に気づくとは……流石は先生だ』なんて考えながら資料から目を離して先生を見れば──────えっ、なんか左肩を凝視されてるんだが……?

 

 「な、何ですか……?」『ほっぺすりすり〜!』

 「い、いや、その〜………やっぱり感じちゃうよねっていうか……すんごいベッタリというか……

 「……?─────……………ハッ!?も、もしかして()()()()でも憑いてるとか!?先生にはそれが見えてるとかそんな感じですか!?」『!?』

 「あっ、ヤバいっ……!泣いちゃう……!い、いや!?確かにいる、いるけど!その子は悪い子じゃないから!むしろ幸運を運ぶ可愛い女の子だから!

 「えっ……な、なるほど……?なら良いです!」『えへへ〜♪』

 “やけに幽霊(仮)の肩を持つやん、肩だけに*1”とは思うものの、悪いモノじゃなければまぁいいかと思うようになってきた。

 つーか、先生マジで見えてたんだ。あっちの世界では霊媒師みたいなのやってたのかな?

 

 

 ……ふと思ったんだけど、もし幽霊がマジでいたとして、そのお祓いって誰に頼めばいいんだろう。

 パッと思いついたのがシスターフッドと陰陽部だけど………主要メンバーみんなお化けとか駄目そうだな。知らんけど。

 

 

 

 

 

 

 ──────っていうクソどうでも良いことを考えられるぐらいには余裕を持ててきたってことだな!ヨシっ!!

 

 

 

 

 

 

─────

───

 

 

 

 

 

 私がキヴォトスに来て感じた事は“()()”ばかりだった。

 

 

 

 見知らぬ空気感。

 見知らぬ人。

 見知らぬ価値観。

 見知らぬ文化。

 見知らぬ環境。

 

 

 

 私の元いた場合とは似ているようで似ていない────まるで鏡のような世界だと感じた事もあった。

 

 

 

 そんな馴染めるかも不安だった新生活のすぐ傍に─────彼がいてくれた。

 

 

 

 私にこの世界の常識を教えてくれたのも彼。

 私にこの世界の知識を教えてくれたのも彼。

 私にこの世界の良いところを教えてくれたのも彼。

 私に美味しいご飯屋さんを教えてくれたのも彼。

 私に書類業務を教えてくれたのも彼。

 仲良く出来るか不安だった生徒たちとの交流も………連邦生徒会の子たちとしか会っていないけど、彼が間に立ってくれたお陰で概ね順調だと言える。

 

 

 まだまだ不慣れなところもいっぱいあるけど……それでも、少しずつ前へ進めていると思う。

 

 

 先生としては情けないばかりだ。私がこの子たちを導かなくてはならないのに、逆に導いてもらっている。

 

 「────ごめんね。本当に色々と……」

 「えっ、どうしたんですか、急に」

 

 私の感謝とも謝罪とも言えない言葉に戸惑うハヤトくん。

 前後関係がバラバラなせいで、彼からは急に謝罪されたと感じているのだろう。……これは私の言語化不足だね。

 

 「えっと……今日まで色々と教えてくれたでしょ?私なんて、君から見れば外から来た見知らぬ大人なのに……それでも側にいてくれた。それが私にとっては本当に心強かったんだ」

 

 戸惑いながらも私の声に耳を傾けてくれる。それもまた有難いことだった。

 

 

 

 「だから──────ありがとう。こんな見知らぬ大人()に優しくしてくれて」

 

 

 

 万感の想いを込めて告げれば、急にあさっての方向へ向き出した。

 夕暮れ時の射光でも誤魔化せないほどに赤くなった顔を見て、何処か愛おしさすら感じてしまう。

 

 「もしかして……照れてる?」 

 「うっ………しょ、しょうがないでしょ。急に感謝されたら誰だって照れます……」

 

 資料で顔を隠すものの、チラリと蒼い瞳が見え隠れしている。少し潤んだ瞳が彼の碧眼を更に神秘的に輝かせているように思えた。

 

 「………それって狙ってやってないんだよね?」

 「え?狙って……?」

 「いや、何でもないよ。………こういうところも好かれる一因なのかなぁ

 「……?」

 

 その後、彼は特に何も聞かず、自身の顔を冷ますように手に持った資料で扇ぎ始めた。

 ……彼って肉体的接触では照れないのに、正面から感謝を伝えられると照れちゃうんだね。少し変わってるなぁ〜……

 

 「────感謝は有り難く貰っておきます。ですが、1つ訂正させてもらいたい部分が」

 「訂正?」

 

 ある程度落ち着いてきたのか、ひとつ息を吐いて告げられた言葉に今度は私が首を傾げる。

 訂正ということは、何か間違っていたのだろうか。

 

 

 

 

 「先生はもう()()()()()()()()()()()()()。俺にとっては……既に()()()()なんですから」

 

 

 

 

 微笑みながら告げられた彼の言葉が私の心臓を強く締め付ける。切なく、甘く、痺れにも似た刺激が脊髄を這う感覚を味わいながら、彼の言葉を咀嚼して飲み込んだ。

 

 彼は嘘が苦手だ。すぐに表情に出てしまう。

 だけど、逆に言えば本心も分かりやすいということ。今の彼の満面の笑みからは嘘なんて1つもない、本心からそう思って言ってくれているということへの証左でもあるわけで………

 

 「………そっか」

 「はい、そうなんです」

 

 彼を中心に優しく暖かな空間が出来上がる。それは、何処か春にも似た長閑で湿っぽさのある空気が2()()を──────

 

 

 『ぎゅ〜〜!』

 

 

 ────訂正、3()()だった。

 

 

 今も彼のお腹に抱きついている青い髪をした小さな女の子の名前はアロナ。私が持つ『シッテムの箱』のメインOS────私の可愛い秘書さんだ。

 

 先ほどからあんな風にハヤトくんにちょっかいをかけているのが、この小さな女の子だったわけである。

 本来なら私以外の人間には姿も見えないし声も聞こえないらしいが……どういうわけか、彼は違和感としてアロナの存在を確かに感じ取っていた。

 彼が最近妙に感じる肩の違和感……おそらくそれはアロナが彼の肩に乗っているときに感じたものだろう。

 

 ハヤトくんはメインOSの小さな子にも好かれるのかと戦慄したものだ。

 

 

 「────あっ!見てください、この空!いや〜、これを見られるのは運がいいですね〜」

 

 

 そう言って立ち上がり───アロナはなおもしがみついているが───彼の作業机の後ろ側に配置されている一面の窓ガラスの前に立った。

 私が座っている黒ソファーの位置からでも見えるが、どうせならと彼の隣で眺めることを選択した。

 

 

 

 「────綺麗……」

 

 

 

 ─────赫い海がある。

 

 

 

 いや、これは読んで字の如く比喩ではあるのだが、そう思わされるほどに焼け爛れた夕焼けが一面に広がっていた。そこには赫だけではなく、遠くには星々が煌々と照り輝いていて、まるで光と闇の融和を表現した空─────所謂、マジックアワーが目の前に出現していた。

 そして、下を見ればポツポツと人工的な灯りが灯り始めたビル都市────キヴォトスの中心地が一望できる。それらもまた美景を作り出すのに一役買っており……総じて言えば、この景色には無駄なものなんて一切ない、完成されたモノと言っていいほどの景観だった。

 

 「そう思ってもらえて嬉しいです。いや〜、この景色をお見せできたのはまさしく日頃の行いが良いからですね」

 「ふふっ、それって自分で言うことなの?」

 「俺だけじゃなく先生の分もです」

 

 ハヤトくんは屈託のない笑顔をしながら真っ直ぐにこの街を─────いや、()()()()を網膜に灼き付けているようだ。

 

 

 「……ハヤトくんはこのキヴォトスが本当に大好きなんだね」

 

 

 きっと、これが彼が頑張り続ける理由なのだと思った。

 彼は心の底からキヴォトスを愛し、そんなキヴォトスを守るために進み続けているのだと。

 

 だけど───────

 

 

 「まぁ……詳細に言えば少し違いますね」

 

 

 少し歯切れ悪く答える彼の表情は────とても穏やかで。

 

 

 「俺は()()()()()()()()()()()()()()キヴォトスが好きです」

 「みんな……?それって────」

 

 

 “みんな”……その言葉が表す意味は、きっと─────

 

 

 

 

 

 「えぇ、()()()()()()()()()()友人(生徒)たちのことですよ」

 

 

 

 「俺は、あの子たちが笑って過ごしてくれる日常を見るのが好きなんです」

 

 

 

 

 

 ─────あぁ、輝かしいな。

 

 好きなものを、ちゃんと『大好きだ』と胸を張って言える君が。

 裏なんてない、装飾もない───本当に心の底から思っていることをちゃんと言える君が。

 こんなにも素敵な笑顔を惜しみなく見せてくれる君が。

 

 ……きっと、他の子たちも魅せられてきたのだろう。

 この太陽のような温かな笑顔を間近で浴びてきたのだろう。

 ずっと、ずっと……彼から惜しみない無償の好意を伝えられてきたのだろう。

 

 なるほど、これなら先日の騒動で彼女たちが彼に見せた異様な好意にも納得が出来る。多感なお年頃である女の子たちの情緒も、男性観も全てグチャグチャに掻き乱されただろうことは想像に難くない。しかも、本人的には“恋愛”ではなく“友愛”ときた。……ままならないなぁ。

 いや、素直に好意を伝えられる事は素晴らしい事なんだけどね?

 

 

 「……あぁ。ですが、最近は少し変わりましたね」

 「そうなの?」

 「はい。“みんな”の部分に先生(貴女)が加わったので、()()()()()()が青春を過ごせるキヴォトスが好きです」

 「っ」

 

 

 

 ─────本当にズルいなぁ……

 

 

 

 「………ここにいるのが私で良かったね」

 「……?」

 

 先ほどの彼の問いかけ────このキヴォトスで最初に好きになった場所。

 私がこの世界で唯一と言って良いほど、無条件に寄りかかれる安息の場所。

 

 

 

 

 

 

 

 ────それが“()()()”だなんて……とてもじゃないけど言えないかな。

 

 

 

*1
激ウマギャグ




※作者のスーパー言い訳タイム(暇な人は見てネ!)

結論、たまにはちょっと乙女な先生もいいんじゃねぇかなって思い書きました。
生徒想いの気高い精神の持ち主には変わりありませんし、他の生徒の前では弱さを見せることのない完璧な先生ですが、このクソボケの前だけでは“先生”という仮面を外せる“1人の女性”として書きました。他者には見せない弱さを見せてくれるって……良いっすよね?

また性癖の話かって?そうだよ、悪いか?(開き直り)
あ、ちなみにまだ恋とかそんな感情は抱いていないです。お互い“なんか安心するな〜”程度しか思っていません。その矢印が先生の方が何倍か濃くて重いだけです()
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