「ブルアカって透き通った青春学園RPGだよね?」「え?」   作:ヘイホー

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今日も安定に続きましたね〜。

 ブルアカのBGMってどれもいいですが、その中でも『Aira』と『Morose Dreamer』が結構好きです。今話は、そんな『Aira』と『Morose Dreamer』を聴きながら執筆していました。
 是非皆さんも『Aira』、『Morose Dreamer』を聞きながら読んで頂けると嬉しいですね。


「秘密ってさ……言葉の響きがいいよね」「うん」

 

 

 

 

 

 ────この世には“偶然(奇跡)”が溢れていて、常にソレとの出会いが連続的である。

 

 

 偶然、泣いている女の子に声をかけたら幼馴染になったり。

 偶然、夢の中で泳いでいたら属性の濃い薄着狐とも出会ったり。

 偶然、キヴォトスの中心地に来たら前世を認識したり。

 

 

 

 

 ………え?ないの?

 

 う〜〜ん、じゃあ他には……

 

 

 

 

 偶然、トリニティのカタコンベに彷徨って。

 偶然、カタコンベを出れた先に1()()()()()()()()に出会うこともあれば。

 偶然、この世界の()を知ることもあったり。

 

 

 

 

 ………え?これもないの?

 ────いや、そう言われても………実際俺は体験してるからなぁ。

 

 

 まぁなんだって良いのさ。俺はその“偶然”を大事にしていきたいってだけだから。

 “偶然”っていうのは“奇跡”に近しいもの、それが“出会い”になって俺とあの子たちの“関係”を紡いでくれる。

 そう考えると素敵なものだ。俺たちは細い糸の線上の先で関係を紡ぐことができたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────深い森林の中を歩く。

 

 

 ここはD.U.地区郊外にある森林。都会から少し離れているということもあり空気が新鮮で、妙に美味しく感じられる。ここにいるだけで体の悪い部分が浄化されていくようだ。

 

 さて、何で俺が森林の中にいるのかというと、この先にある学校に用があるからだな。

 まぁ、学校とはいっても随分昔に廃校になった校舎を()()()()()の仮の学校として再利用しているだけだけど。

 

 

 そんなこんなで古びた校舎が見えてくる。この学校を見ていると、何処かノスタルジック的というか、望郷の念を覚えるというか……いや、懐かしさも何も、あんな学校に通った覚えはありゃしないけどさ。

 

 そんなどうでもいい事を考えながら校門を潜ると学校の様相もより詳しく見えてきて…………あー、近くで見ると蔓が目立つねぇ。

 この校舎を借り受けた時から定期的に手入れをしているから以前よりも苔や蔓が生えたり伸びたりはしていないけど、それでも多少は残ってしまうものだ。

 だけど、俺的には結構好きだよ。なんか秘密基地っぽいっていうか、この森に自然に溶け込んでいるような感じがして。

 

 

 「……まずは校庭に行ってみようかな」

 

 大体の当たりを付けて校庭へ足を向ける。

 大雑把な予想ではあるが、何となく()()は校庭にいると確信を得ている。

 

 なんせ、あそこには()()()()()()()()()()()()()()のだから──────

 

 

 「───────」

 

 

 校庭の端っこ────詳細に言えば、校舎に沿うように配置された()()の傍でしゃがみ込みながら()を見る彼女の後ろ姿を確認する。

 

 その雰囲気はまさにアスファルトに咲く可憐な花。

 特徴的な薄紫色の髪を両サイドに三つ編みにして垂らし、しゃがみ込みながらじっと花壇の花を覗き見ていた。

 

 

 

 

 ──────あぁ、懐かしいな。

 

 

 

 

 彼女との出会いも最初は()()()()()だった。

 たった一輪の、今にも死に枯れてしまいそうな花を、寂しそうにじっと見ていた彼女に声をかけたのが始まりだったっけ。

 

 そう、確かこんな風に──────

 

 

 

 

 

 

 

 「─────や、そこで何を見ているのかな、お嬢さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 目の前にいる彼女は大きく肩を揺らし、次の瞬間には立ち上がって大きく振り返る。

 その大袈裟とも汲み取れる行為は()()()()()()()()()()だった故なのか、それとも突然声をかけられて驚いた故なのかは分からない。

 

 ただ─────目の前の彼女が嬉しそうに微笑んでいることは確かなことで。

 

 

 

 

 

 

 

 「────おかえりなさい、ハヤト」

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の名前は秤アツコ

 カタコンベの先で出会った、笑顔が素敵な女の子(プリンセス)だ。

 

 

 

 

 

─────

───

 

 

 

 

 

 「ふ〜〜ん、みんないないんだ」

 

 

 古びた校舎の中を2人で並んで歩きながら、アツコから最近の近況について教えてもらっていた。

 その流れで聞かされたのはアツコの他の生徒────つまり、アリウス分校の生徒たちが総出で留守にしているということだった。

 

 「うん、みんな任務中。私はサッちゃんたちから休めって言われちゃったから……」

 「ははっ、相変わらずプリンセス扱いは抜けないんだな」

 

 しかし、そうか。サオリたちはいないのは残念だったな。最近は忙しくて来れていなかったし、()()()()()()に久々に顔を見たかったんだけど……

 まぁ、いないもんはしゃーないか。どうせ近々すぐに会うんだし。

 

 ────そうは思っても、やはり会えないのは残念なもので……

 

 「はぁ〜……サオリたちとも会いたかったな〜」

 「─────ふ〜〜ん、そんなにサッちゃんたちのことが気になるんだ?」

 「なんか刺々しいなオイ……」

 

 隣からジト目&頬を膨らませるという、もはや“狙ってるんか?”と思えるほどに()()()()仕草をするアツコにため息を吐く。

 

 「知ってた?男の子はね、隣に女の子がいるときは他の女の子の事を考えたらいけないんだって」

 「っ、どっからそういう知識を……」

 「ミカちゃん」

 「なに教えとんじゃ、あの恋愛脳……!」

 

 だよな!薄々そうなんじゃないかって思ってたわ!ここに頻繁に訪れてそんな話をする子はミカしかいねぇわ!

 

 「だからハヤトはマナー違反。私が隣にいるのに他の女の子の事を考えたから」

 「そんなマナーはないんだよなぁ……」

 「……まだ言うんだ。折角許してあげるチャンスをあげようと思ったのに」

 

 そんなにご立腹だったのか……?とてもそんな風には────いや、ムッとした顔だから彼女なりに怒ってるのかも。

 う〜〜ん、些か引っかかる所はあるけど、これもまたお姫様の御一興と思えば安いものか。

 

 「わーったよ!俺が紳士も何もないバカ野郎でワルぅーござんした!ごめんね!」

 「なに、その“謝れば許してもらえるでしょ”みたいな態度。それが傷つけた女の子に対する態度なの?」

 「…………私が間違っていました、本当にごめんなさい」

 「よろしい」

 

 直角90°に折り曲げて謝罪した後、上から許しの許可を得た。妙にドヤ顔なのがちょっと腹立つな……

 

 「じゃ、じゃあ許してもらったところで別の話を─────」

 「ダメだよ。謝罪は受け取ったけど、ちゃんと罰はあるんだから」

 「…………」

 

 み、見ろ……!あの小悪魔みたいな笑顔……!

 完全に俺をおちょくってる顔だ……!!

 

 「なにしてもらおうかな─────あっ、そうだ。“()()()()()”って言って」

 

 その言葉を聞いた瞬間、かつてないほどに脳の思考速度が上がった。

 

 

 

 

 

 ─────“何でもする”。

 

 それは奇跡を叶える魔法の言葉。絶対命令、絶対遵守が基本の生殺与奪の権すらも握れる暴君もびっくりな言葉。あと女性が絶対に口にしてはいけない言葉らしい。まぁ、だよねとしか言えないが……

 

 しかし、“何でもする”か。俺は男だし、彼女も変なお願いはしないだろうから別にいいが─────あれ、でもアイツ(幼馴染)から『絶対に約束しちゃダメ!』とか言われてなかったっけ?

 まぁ、アイツ心配性なところあるしな〜。一応保険かければ別に大丈夫でしょ。

 

 「んー、いいよ。ただし出来る限り────」

 「そういうのいいから。ハヤトが答えられるのはYESかNOだけ。どっち?」

 「喜んでYESと言わせていただきます」

 

 強いねぇ……まさか逃げ道を塞がれるとは思いもしなかったよ。

 

 

 「────ふふっ」

 

 

 ─────ピッ

 

 

 『喜んでYESと言わせていただきます』

 

 

 「録音したから」

 「wow……」

 

 本当に強いねぇ……ここまでくると怖くてちびっちゃいそうだ。(畏怖)

 

 「お願いはまた今度言うね」

 「んん?今じゃなくていいの?」

 「うん。どうせなら大事に使いたいから」

 

 さっきの小悪魔的な笑顔から一変して、可憐に咲く一輪の花のような笑顔に移り変わる瞬間を目に焼き付けながら、“彼女が幸せそうなら何だっていいか”と自分を納得させる。

 

 …………最初に出会った頃と比べると、本当に笑うようになったな。嬉しい限りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はい、この教室に入って」 

 「ん?」

 

 突然にアツコが空き教室を指差す。

 少し鈍いドアを開ければ─────

 

 

 「─────なんか、雰囲気があるな」

 

 

 漏れ出る太陽の光が教室に陰を作り出し、僅かに開いた窓から入ってくる風が白いカーテンを揺らめかせる。

 そう、ここはまるで夏休みに内緒で入った古びた学校の教室のようで。

 

 「この教室、一度使ってみたかったんだ」

 「……?使えばよかったんじゃ?」

 「………そう思ったんだけど、どうせならハヤトと()()()“学校ごっこ”がしたくて」

 「“学校ごっこ”って……確かにここに教員はいないけど、俺がたまに先生役として教えてるじゃん」

 「だから言ったでしょ?()()()“学校ごっこ”って。私、()()2人っきりの授業を受けてみたかったの」

 

 2人っきりって……本当に出会った最初の頃じゃないか。

 あの時の授業は………確か花についての授業だったっけ?

 

 「ほら、早く早く」

 「……わーったよ」

 

 アツコは教壇から1番近い席に座り、“早く早く”と俺を教壇に立たせようとせがんでくる。その姿が歳相応に────いや、何なら幼く見えるな?彼女の童顔のせいか?

 だけどまぁ、俺が教壇に立つ事は変わりないようで……

 

 「ハヤト先生、質問」

 

 教壇に立った瞬間、ビシッと勢いよく手を挙げるアツコを見て────すぐに目を逸らす。

 今の彼女の姿は肩がはだけた白ワンピースに夏を感じさせる麦わら帽子という、なんとも()()()()というか、無防備な格好なんですわ。だから、その……彼女の普段見えないような部分()とかが見えてしまって、何だか妙な罪悪感と緊張感に苛まされる。

 

 注意したい……でも、そしたら俺が気になっているって思われそうでヤダな。

 ……うん、ここは鋼の意志でそっち()を見ないようにしよう。

 

 「早速だね、アツコくん。いいよぉ〜、先生がじゃんじゃん答えて────」

 「子どもって、どうやってできるの?」

 「……………………コウノトリが運んでくるんだヨ?」

 「ふ〜ん、そっか─────ところで、何で顔真っ赤なの?」

 「…………」

 「ふふっ」

 

 いや、だって………うむむ……

 

 「そ、そういうのは()()の先生に聞いたらいいんじゃないかな!?先生の方が知ってそうだし!!」

 「……先生って、あの大人の?」

 「おぉ、知ってる?」

 「………うん。いっぱい、調べたから……」

 

 やっぱり気になるよな。俺からしてみても、先生に興味を抱いてくれるのは嬉しいもんだ。

 

 「…………」

 「どうした?」

 「………ううん、何でもない」

 

 僅かに顔を曇らせながら何でもないように話すアツコは、俺から見れば何処かこの話題を()()しているようにも思えた。

 ……確かに、彼女からしてみれば外から来た“大人”なんて信用できないのかもしれないな。なんせ過去が過去だ、“大人”に対する忌避感を抱いてしまっても仕方ないのかもしれない。

 

 ただ、俺としては是非仲良くなってもらいたいんだがなぁ。

 

 「彼女(先生)()()()のような“大人”じゃないよ。優しくて生徒想いな………ちゃんと信用できる“大人”さ」 

 「っ、ちがっ、そうじゃなくて……」

 「え?」

 「……………何でもない」

 

 そう言い切ってアツコは立ち上がり、教壇の元まで来たかと思えば()()()()()()()教室を出た。

 いきなりというか、かなり強引な行動に、流石の俺でも困惑せざるを得ない。

 

 「ア、アツコ……?」

 「もう先生の話は終わり。あとハヤトはペナルティ1つ追加ね」

 「なんで!?」

 「知らないっ」

 

 急かす足、手を握りしめる強さ、優しさの裏に隠された炎を宿す声色、少し吊り上がった目尻────

 それら全てが、彼女の状態が今とても()()()であることを教えてくれる。

 

 うぅむ……女の子って分からんなぁ……

 

 

 

 

 

 アツコに連れて行かれるままに森の奥地に入っていく。

 その間も、アツコの手は離れることはなかった。

 

 

 

 

 

─────

───

 

 

 

 

 

 「──────スゲェ」

 

 感嘆といった風に呟く。

 目の前には色とりどりの花が我を出すように煌々しく咲き誇っていた。そう、例えるなら────ここはきっと、()()()()と称することのできる場所なのだろう。

 

 「最近見つけた、私のお気に入りの場所。まだ誰にも言ってないの」

 「サオリやミサキたちにも?」

 「うん」

 

 へぇ〜、ズッ友にも言ってないとは……ここは相当貴重な場所なのでは────────ん?

 

 「あれ?じゃあ俺が初?ここに来たの」

 「そうだよ、記念すべき1人目」

 「マジか。そりゃあ嬉しいけど……俺が最初で良かったの?」

 

 唯一の心残りはそこだった。

 彼女たちは辛く苦しい半生を一緒に過ごしてきた者同士……その経験で彼女たちは血の繋がった家族よりも、より強固な関係を紡いでいることだろう。

 そんなあの子たちを差し置いて、彼女(アツコ)の秘密を共有する自分が何処かノイズのように思えてしまう。とても光栄なことには変わりないけど……それで本当に良いのかと考えてしまう自分がいた。

 

 

 「──────()()()()()()、だよ?」

 

 

 そんな靉靆たる気持ちを抱いていれば、彼女は優しく俺の手を握って、そっと花畑に連れ出すように歩き始めた。

 その真紅の瞳は、ただ真っ直ぐ前に向けられている。

 

 

 

 

 

 「………最近ね、()()()()()が楽しくて仕方がないの。ちょっとしたことでも、『あぁ、幸せだな』って思うことがいっぱいで……。今の生活が夢なんじゃないかって思えるぐらい、目に映る全てが輝かしく見えて……」

 

 

 

 「────世界はこんなにも広くて、綺麗な場所なんだって……そう気づかせてくれたのはハヤトなんだよ?」

 

 

 

 「あの日、私に声をかけてくれたから。あの日、私にお花の図鑑を持ってきてくれたから。あの日、私をあの場所から連れ出してくれるって約束してくれたから。───────あの日、()()から私たちを助けてくれたから()があって、幸せがある」

 

 

 

 そう区切って、ようやく瞳に俺を映す。

 何処までも真っ直ぐに、俺の心を覗き見るかのように。

 

 

 

 

 

 「全部、ハヤトのおかげ。全部、ハヤトが私に()()()()を教えてくれた。だから────ハヤト(あなた)だから、いつだって()()()()()()になってもらいたいの」

 

 

 

 

 

 

 ────言葉が出ないとはまさにこの事を言うのだろう。

 

 

 俺はアツコに感謝されるような事はしていない。俺がこの世界の()()()()()()を少し知っていたから()()()()()()()。いや、本来の世界での彼女たちの人生のことはこれっぽっちも分からないけどさ……ただ、怨みと苦痛を強いられるだけの人生ではないことは確かな筈だ。

 それに、だ。本来なら“青春”を思う存分楽しめる世界である筈なのに、彼女たちの“青春”どころか“人生”すらも使い潰されそうになるところを指を咥えて見ていられるか?

 

 否、断じて否である。

 

 俺は転生者、連邦生徒会副会長である以前に“()”であり、彼女たちの“()()”だ。

 “大人”の事情だとか、崇高な目的とかそんなのどうでもよくて……ただ、あの子たちに未来を生きて欲しかったから動いただけに過ぎない。

 

 だから感謝も恩も感じなくていいんだよ────そう心の中で思っても……やっぱりそう言われると()()()()

 直接感謝されるのは、いつも心が暖かくなってしまう。

 

 「……ふふっ、照れてる。顔が真っ赤だよ?」

 「………ウルセェやい」

 

 爽やかな風が吹き抜ける。

 その風が熱くなった体にはちょうどいいもので、認めたくはないけど……正直すごく気持ちいい。

 

 

 「─────そうだ。こんな日だから……」

 

 

 そう言ってショルダーバックから取り出したのは、近年ではめっきり見なくなったデジタルカメラだ。

 

 「なんでカメラ?」

 「これからの趣味にしていこうかなって。みんなと過ごす思い出を、少しでも形にして残したいから……」

 

 優しいアツコの、いかにも“らしい”想いに胸を打たれる。

 ただ、何故そのカメラを今取り出したのか分からない─────が、何となく話が読めるぞ。

 

 「花畑の写真撮りたいの?」

 「ううん、ハヤトを撮りたい。今の顔が真っ赤なハヤト、すごく貴重だから」

 「俺かよ!?しかもそれどういう意味!?」

 「ちなみにこれから始めていくので、記念すべき第1枚目です」

 「はァ!?」

 

 第1枚目!?第1枚目が俺の赤っ鼻単品!?最初がそれでいいの!?俺は嫌だぞ!?

 

 「─────あっ、そうだ!ツーショット写真なんかどう?俺の赤面より全然思い出っぽいじゃん!」

 「ツー、ショット……………いいかも」

 「だろ!」

 

 そうと決まれば気が変わらないうちに!ということでせっせと近寄るが……

 

 「………上手く撮れない」

 「まぁ、デジカメだしな」

 

 スマホならやりやすいんだが、いかんせんアツコが『これがいい』ってデジカメを譲らないもんでね。

 あと写真が上手く撮れない理由の1つに、普通に俺の身長が彼女よりも数十センチ高いってことも関係ありそうだ。

 …………ふむ、ならば───────

 

 「ほら、デジカメ貸して。そんでちょっと肩失礼するね」

 「ひゃっ……!」

 

 デジタルを借り受けた後、彼女の細い肩を抱き寄せて俺の体に密着させる。あとは俺が少し屈んで─────よし、どうだろうか。

 

 「………おぉ!見ろよ、アツコ!ちゃんと撮れて────どうした?」

 「─────バカ……」

 

 写真は撮り終わったっていうのに、いまだに俺の胸から顔を離さず密着し続けるアツコ。終いには罵倒を喰らうもんだから、もうどうしたらいいか分からんね。

 

 「ほらほら、見なって。いい写真だよ。()()()()()()()()

 「………ほんとだ」

 

 写真に映るアツコは、本当に幸せそうな笑顔を惜しみなく見せてくれていた。少し頬が赤いのは気になるけど、そこはレンズの光の向き方とかなんだろうと解釈しておく事にする。

 ………それにしても、本当にいい写真だ。あとで1枚貰おうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………そろそろ時間か」

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていくもの。

 この後、諸々の理由でアビドスに行かなくてはならないんだ。とはいっても、1番気掛かりなのは先日旅立った先生のことなんだけどな……

 ちゃんと水と地図を渡したし大丈夫だと思いたいんだが……

 

 「もう行っちゃうの……?」

 

 アツコが瞳を揺らしながら俺を見る。その声はひどく寂しそうに震えているように思えた。

 

 「なに?寂しいの?」

 「……うん」

 「わーお、まさかの肯定」

 

 いつもみたいに揶揄ってくると思ったから、この返答はちょっと予想外だ。

 まぁ、今は誰もいないしより一層孤独感が強いのだろう。

 

 「大丈夫、またすぐに会いに来るよ。エデン条約前には必ずみんなと顔を合わせたいからね」

 「そう言って1ヶ月近く来なかった人は何処の誰?」

 「それを言われたら痛いなぁ……」

 「ふふっ、冗談」

 

 風が靡く。

 花園に佇むお姫様(プリンセス)は、花吹雪に包まれながらもその気品を全く損なわずに、歳相応の笑顔で口を開く。

 

 

 「なるべく早く会いに来てね、ハヤト(私だけの王子様)?」

 

 

 ─────こんなにも素晴らしい笑顔を真正面から受けられる俺は、かなりの幸せ者なのだろう。

 そんな事を考えながら了承の旨を返すのだった。

 




群青の下、森の奥地に佇む誰からも忘れ去られた学校、そこで2人っきりの学校散策………美しいですねぇ。

ハヤトはアツコのことを可愛い妹分として見ている節があります。
対してアツコは………まぁ、はい()
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