鉄血のオルフェンズ〜天使と悪魔の軌跡〜   作:あらたかける

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登場人物は今回から後書きにあります。


Ep.3ピンクの一閃

 

時は、ハニエル出現直後に遡る。

 

 

 

カリードは目の前に展開された混乱を見つめ、焦燥感を押し殺しながら叫んだ。

 

「隊長!自分が出ます!」

 

 

戦場の緊張を全身で感じながら、テリー隊長はその申し出を一蹴する。

「いや、お前はここに残って指揮をとれ。」

その一言は、カリードにとって決定的な拒絶であり、同時に、テリーの戦士としての覚悟を示していた。声に混じる静かな決意が、彼の意思の固さを物語っていた。

 

カリードは唇を噛みしめたが、それ以上の反論はなかった。自分よりも遥かに多くの戦場を駆け抜けてきた男の決定には従うしかない。

 

 

「私が出る。」

テリーの表情は冷たく鋭く、命を預けるに足る信頼を一瞬で植えつけた。

 

 

 

格納庫にてーー

 

テリー隊長は無言で自らのモビルスーツを見上げた。その圧倒的な存在感が彼にかつての戦友としての感覚を呼び戻す。全身が青で統一された巨大な機体、ガンダムサレオス。その機体の前で、テリーはかすかに微笑んだ。

 

「久々だな、相棒。」テリーの囁きに応えるように、ガンダムサレオスは鈍く低い機械音を響かせた。

 

後ろからメカニックが駆け寄り、無意識に声をかける。「隊長、お気をつけて。」

 

テリーは短く息を吐き、軽く頷く。

 

 

「ああ。」

 

次の瞬間、テリーはすでにコクピットに滑り込んでいた。無駄のない動作でスイッチを押し、システムが一斉に起動する。

 

 

 

 

「テリー・バクラザン……ガンダムサレオス、出る!」

 

冷たい声で宣言すると同時に、サレオスのバーニアから高出力の音が格納庫全体に響き渡り、青の機体が勢いよく空へと飛び出した。

 

 

◇◆

 

 

 

ー戦場ー

 

アレンは目の前で展開される戦闘に心が騒ぎ、額に汗を滲ませながら報告する。「エリスはどうした!」

 

隣に立つ隊員は歯を食いしばりながら答えた。「1人で突っ込みました…追いかけるべきでしょうか?」

 

アレンは頭を抱えたくなる気持ちを押し殺し、深く息を吐いたが、答えはすぐに出なかった。目の前でエリスの姿が見えなくなった瞬間が脳裏に焼き付いている。焦る気持ちを抑えきれない。

 

「全くエリスめ……」隊員は苛立たしげに呟いた。

 

その時、管制室から冷静な声が響いた。「今、基地から隊長が発進した!アレンはそこで待機しろ!」

 

アレンは一瞬驚きながらも、命令に従うしかない。「……はい!」

 

 

 

 

その頃、テリーはすでにサレオスの操縦桿を握り、雲間を駆け抜けていた。空高く舞い上がるその青い機体は、空と完全に一体化し、その動きは鷹の如く鋭い。異形の足からは大型のスラスターが出力され、圧倒的な速度で風を切り裂いていく。

 

「隊長!どうする気ですか!」

管制室からの焦った声が通信を通して響く。

 

「上空から狙う。」テリーの声は一貫して冷静だった。

 

「まさか…アレンを!!」

 

「そういうことだ。アレンに待機命令を出せ!」

 

その瞬間、目の前に広がるプルーマの群れが光の束に包まれ、一掃されていく。

 

「エリスのやつ、もう始めやがったな……」テリーは軽く口元を緩め、サレオスの操縦桿をしっかりと握り直した。

 

 

 

 

「アレン!つかまれ!」

 

 

 

 

その声が通信を通じてアレンに届いた。

 

アレンは目の前のモニターに映し出された巨大な青い手に気付き、反射的にハルファスの手を伸ばす。サレオスの手に掴まれた瞬間、2機は息を合わせたかのように勢いよく上空へと飛び上がった。

 

上空の風が吹き抜ける中、アレンは驚きと疑問を抑えきれない。「隊長…何を?」

 

テリーは一瞬の間を置いて、冷静に説明する。「エリスが引き付けている間に、上空から降下してハニエルの動力を突き刺せ!」

 

アレンの心に緊張が走る。これまで経験したことのない任務の重さに一瞬ためらいが見えたが、すぐにその顔は決意で硬くなる。「!!わかりました!!」

 

テリーが確認のためにもう一度声をかける。「できるか?」

 

アレンは歯を食いしばり、力強く頷く。「やりますよ!」

 

青と黒のガンダムは、ついに雲を突き抜け、地球の湾曲が見えるほどの高みへと到達した。瞳に反射する地球の風景が、一瞬、アレンの胸に広大な感情を呼び起こす。美しい世界を守るための戦い。それが、今自分に課せられた使命だと感じる瞬間だった。

 

「エリスが突っ込んだ!今だ!」

管制室からの声が響く。

 

テリーは短く命令を下す。

 

「行け!」

 

その瞬間、テリーの号令とともに、サレオスがハルファスを力強く押し出した。ハルファスのバーニアが赤く燃え立ち、青白い光が一閃。爆発的な推進力により、ハルファスは一気に急降下を始めた。

 

アレンはその圧倒的な速度に息を飲みつつも、自らに課された使命を胸に刻む。

 

「ハルファス……もっと速く!」

 

その叫びは、彼の全身に響き渡る。そして、その言葉に応えるかのように、ハルファスの両目が妖しくピンク色に輝いた。

まるで戦場の闇の中で、怒りと覚悟が具現化したかのように、その光は鋭く、そして鮮烈に輝きを増していく。

 

ハルファスは、さらに速度を上げた。

 

音を凌駕し、周囲の雲は瞬時に弾け飛ぶ。音速を超えた衝撃波が空を引き裂き、四方に散る雲はまるで天に咲き誇る桜の花びらのように、無数の軌跡を描きながら美しくも儚く舞い散る。その圧倒的な力が、破壊と美の狭間で織りなす光景だった。

 

スラスターから放たれる轟音は、もはや後方に置き去りにされていた。

ハルファスの速度は、時間さえもねじ曲げるかのように凄まじく加速していく。ピンクの眼光は、まるで闇の中を切り裂く流星のように、戦場全体を覆い尽くすかのような存在感を放っていた。その光はただ直進し、あらゆるものを突き抜けていく。ピンクの残光が闇の中でゆらめきながら、その後を追いかけるように広がり、まるで天から舞い降りた死神の刀が空を裂いたかのような壮絶な光景が広がっていく。

 

「ハァ、ハァ……」

息を荒げながらも、アレンの瞳はひたすらに真下を見据えていた。

 

ハルファスの剣は、既にその手の中で輝きを放っており、彼の意志を宿していた。眼下には、今まさに狙うべきハニエルの動力部があった。

すべての力を、ただ一撃に込めて――その瞬間が近づいていた。

 

音を完全に置き去りにしたハルファスの姿は、もはや戦場のすべてを飲み込む一筋の閃光。その光が大地に降り注ぐ瞬間、戦いの結末が決定されるかのように、時間は永遠に止まったかのように感じられた。アレンの心にはただ一つ、必勝の覚悟が宿り、彼はその覚悟と共に、目の前の敵を貫くことを決意していた。

 

ハルファスの剣がハニエルの動力部を正確に突き刺した。その瞬間、膨大な衝撃が機体全体を貫き、ハニエルはその翼で空へ逃れようと試みた。

 

キュオォォオオンッッ

 

しかし、アレンが操るハルファスの圧倒的な速度と力に耐えきれず、ハニエルはもがきながら空中で揺れ、そのまま地面へと無残に墜落していく。

 

 

 

 

ーーズドオオォォォォンーー

 

地面に激突したハニエルの衝撃は地を揺るがし、大地を割るような音が響き渡る。

 

直後に、音速を超えたハルファスの置き去りにした轟音が、大気を裂いて豪雨のように戦場に降り注いだ。その音は耳をつんざくようで、戦場全体を飲み込み、凄まじい衝撃波を伴って周囲に広がっていく。

砂塵が空高く舞い上がり、まるで巨大な暗雲が地上を覆うように、周囲は闇に包まれた。

 

 

 

視界を奪われ、重い空気が戦場を支配する中、その闇の中に、たった一つの光が揺れていた。

 

ピンク色の光だった。

 

 

ハルファスの眼光が、闇の中で美しくも禍々しく輝き、ゆらりと揺れながら戦場を照らし出す。

その光は、まるで戦神の意志そのもののように、不吉なほどに鮮やかで、見る者すべてに恐怖を抱かせるような冷たい威圧感を漂わせていた。美しさと恐ろしさが一体となり、ハルファスはその姿で圧倒的な存在感を放っていた。

 

 

ハニエルの残骸を見下ろしながら、アレンは剣を抜き、息を整えた。

 

 

アレンは息を荒げながら、興奮を抑えきれずに叫んだ。「エリス!大丈夫か?」その声には達成感と緊張感が混じり、まだ戦場に立っている実感が肌に残っていた。

 

しかし、エリスは彼を見つめ、低く呟いた。

 

 

「悪魔……」

 

 

 

 

「何言ってんだよ、エリス!」

アレンはその言葉の意味を測りかねて、眉をひそめる。

「それより、早く――」

 

その瞬間、空気が一変した。

 

ーーキュオォォオオオォンッッ

 

 

突如、ハニエルが最期の足掻きともいえる動きを見せた。巨大なビーム砲の砲口から、再び圧倒的な光が放たれる。その光はアレンに最後の一撃を見舞おうとしていた。

 

エリスは目を見開き、即座に叫んだ。「まずい!アレン、避けろ!」

 

だが、避ける間もなく、戦場に響いたのは別の音だった。

 

ーー ドォォォォォン!

 

 

 

天上から放たれた一撃がハニエルを貫き、その巨大なビーム砲の光を瞬時に消し去った。ハニエルの羽は力を失い、ゆっくりと大地に沈み込むように落ちていく。

 

「隊長!!」アレンとエリスは声を揃えて叫んだ。

 

上空には、ガンダムサレオスが姿を現していた。巨大な砲を構えたまま、テリーが微笑みながら彼らを見下ろしていた。

 

「危なかったな!」

テリーは短く笑い、サレオスのスラスターを吹かしながらゆっくりと降下してきた。

 

「ハニエルのエイハブウェーブ消失!」

管制室の声が緊迫の中、喜びを混じえた。「やりました!勝利です!」

 

 

歓声が戦場を包み込んだ。

 

 

その時、カリードの声が再び響いた。

「待ってください!!」

 

彼は緊急の報告をするかのように、管制室から通信をした。

「ハニエルの残骸から何か反応が……!」

 

「なに?!」と、エリスが振り向く。

 

管制室では、モニターの前で数人のスタッフが一斉に画面を見つめていた。

カリードの声が続く。

 

 

「これは……人間……?」

 

 

 

「どういうことだ?民間人か?」テリーが疑問を呈する。

 

「どうでしょう……」カリードは考え込むように言った。

「ただ、この生体反応がハニエルのエイハブウェーブと酷似しています。」

 

モニターには二つの波形が表示され、明確に似たパターンを描いていた。

 

 

 

「アレン、エリス……確認できるか?」テリーが急かす。

 

「目視では確認できません。1度、ガンダムから降りて近づいてみます。」

アレンが返答する。

 

「気をつけろよ」とカリードが忠告する。

 

アレンとエリスは、無言のままガンダムから降り、ハニエルの残骸へと足を運んだ。

戦場の余韻が静かに漂う中、風が砂を巻き上げていた。

 

エリスがハニエルの残骸に何かを見つける

「何だあれ...」

 

瓦礫の中に倒れている少女の姿が、二人の目に飛び込んできた。

少女は意識を失っており、その体は無数の傷で覆われていた。服はところどころ裂け、血が滲んでいる。最も異様だったのは、彼女の足に重々しい足枷が嵌められていたことだ。

 

「……足枷?」アレンは眉をひそめ、少女の足元に目を落とした。

 

エリスが膝をついて少女の状態を確認しながら低く呟く。

「この子、一体……」

 

アレンも膝をつき、慎重に少女の肩を軽く揺すったが、反応はなかった。

 

「こんなところに、どうして……」アレンは呟きながら、少女の足枷をじっと見つめた。金属の冷たい光が、その異常さを一層強調していた。

 

エリスは少女の脈を確かめてから、静かに顔を上げた。「まだ生きてる。だが、相当衰弱してる……」

 

アレンは、胸の中で何かが軋むような感覚を覚えた。

 

 

「何者なんだ、この子...」

 

 

 




登場人物
アレン・ドット 15歳 火星に生まれ、両親と農地開拓を生業に生活していた。5年前、モビルアーマーによって両親を失ったことで恨みを持つようになる。その後、アグニカ・カイエルの率いるレギオン(後のギャラルホルン)に加わる。

リナ・ソナウラ 14歳 アレンの幼馴染で、彼を支える存在。ガンダムフレームのメカニック

エリス・ヨータス 17歳 アレンのライバルであり、親友。交戦的な性格であり、戦いが好き。

テリー・バクラザン 36歳 アレンたち第5部隊の隊長。過去に多くの戦地を戦い抜いてきた。

カリード・エルワス 25歳 5番隊の一員。ガンダムに乗る。


登場機体

ガンダムサレオス テリーの乗る機体。19機目のガンダムフレーム

ガンダムフェネクス エリスの乗る機体。37機目のガンダムフレーム

ガンダムハルファス アレンの乗る機体。38機目のガンダムフレーム

ハニエル 南米第7エリアで観測された中型のモビルアーマー。4枚の大きな羽と強力なビーム砲を持つ。

モビルアーマー 厄祭戦の始まりである、無人の大型殺戮兵器。自身の意思で人間を殺す

プルーマ モビルアーマーに付属する無人攻撃オプション。




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