ヤクを吸って、忘れ草をふかす   作:Cross Alcanna

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蠢き、騒めき

 

「……という状態でした」

 

「…思っていたより、怪しい状況ですね」

 

複製(ミメシス)が落ち着いてきたと思ったら、今度はソレらとも違う生命……」

 

「あの時の例があるから、今のうちに策を講じておいた方が良いかもね」

 

 

あれから私は、各筆頭勢力のリーダーと先生を招き、緊急会議の様なものを開いていた。議題は勿論、あの生命体。

 

私だけで決めてはいけない問題。あの時にそう判断して、今に至る。あの時から、少しは人に頼る事を覚えてきている……と思いたい。

 

ただし、具体性を持った解決案は、未だ出ず。"会議は踊る、されど進まず"。そんな言葉がふさわしい程進捗がない…訳では無い。

 

 

「場合によっては、他学校の子にも力を借りる必要がありそうだね」

 

「今すぐに…とは言えないのが何ともですね。私もサクラコさんも、その生命体を目で見た訳ではありませんし……」

 

 

…目下の問題は、別のところにある。

 

アレが現れたのは、確かに気がかりではある。

 

 

 

…………()()()()()()()。確かに、何かが起こる予兆なのかもしれないが、それを裏付けるだけの根拠は、今この場で提示できやしない。

 

複製(ミメシス)の時とは、訳も状況も違うのだ。アレは、明らかな脅威と分かっている存在が投下した戦力だったからこそ、脅威と断じる事が出来た訳で。

 

明らかに怪しい事には変わりないのだが、そこ止まり。"どう見ても怪しい不良集団が、自治区周辺に出没し始めた"くらいの状況でしかない。これに対して、何の根拠もない状態で戦闘作戦紛いの事をした暁には………根も葉もない噂が飛び交いかねない。

 

"自治区に対する危険の事前確認の為"とでも言えば、確かに大義名分にはなりうるだろう。ただし、周りを納得させるだけの説得力には欠ける。

 

……悲しい事に、私のこの自治区での信用度は、眉唾レベルである。エデン条約に補習授業部……それだけの事をしたのだから、仕方のない事ではあるのですが。

 

 

「……私もこの目で見た訳では無いのですが……どうにも、この件を"一旦保留"等と片付けてはいけないような気がするんです」

 

 

その言葉は、意外だった。

 

サクラコさんは、こういう場において冗談を言う人ではない。その言葉が本心から来る言葉である事に、一片の疑いようもなかった。

 

合理性の極致にいる訳では無いのは分かっていましたが、それでもこういう場のサクラコさんは、非常に合理的に物事を判断するとばかり思っていた。補習授業部の時も、かなり計画的に動いていたように思う。

 

そんな彼女が、いの一番にそう言ったのだ。驚くなと言う方が、無理がある。

 

 

「…珍しいですね。貴女であれば、"根拠がないと、何も言えないと思うのですが"と仰るとばかり」

 

「それで痛い目を見た事例がありますから。時には、宛てのない直感も視野に入れるべきだと思いましたので」

 

 

……事実ではあるのですが、何とも耳の痛い話ですね。

 

…………事実、ではあるのですが。

 

 

「…………ナギサ?紅茶を飲む頻度が多い気がするけど……大丈夫?」

 

「…大丈夫です。ただ、サクラコさんの一言が、耳の痛い言葉でしたのでつい」

 

「……あ、すみません。私と来たら……」

 

「他意はないのでしょう。でしたら、お気になさらず。……それに、事実ですから」

 

 

今回ばかりは、誤解のない様に伝えておく。

 

あの件から私は、自分が言葉足らずであった事に強く気付かされた訳で。そんな反省を無碍にする訳にはいかない。変な軋轢……いいえ、誰の為にもならない、というのが正しいでしょうか。

 

 

「…成長したね、ナギサ」

 

「……今言う事ではないでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……という感じでいかがでしょう?」

 

「一先ずの対策としては、かなり良い案かと」

 

「えぇ。私も異論ないです」

 

 

今後、どのように対策していくのかについて、最終的には"私達が合意声明として、公式な声明を出して公に調査できるよう地盤を整える"事で落ち着いた。

 

他の学園があの地域の調査に乗り出すなら、それはそれで問題ない。目標としては、おおよそ一致している以上、こちらからソレを制限する必要は特段無い様にも感じる。

 

 

「調査の手が多いに越した事は無いだろうから、ミレニアムの生徒にも声をかけておくね」

 

「…であれば、ウイさん辺りに予め声をかけておきましょうか?」

 

「うん、助かるよ」

 

 

ミレニアム。科学を突き詰めた学園と聞いている。それに加え、かなりの戦闘力を備えているのだとか。

 

……そして極めつけは、合理性の擬人化とも噂されている、調月(つかつき) リオ。何でも、想定しうる全ての害を算出しては、それに対抗しうる策を講じているのだとか。

 

聞き伝手でしかない為何とも言えないが、学園の下に、機械都市を作り上げたのだとか。……聞いた時は、頭が痛くなりました。本当、ミレニアムが敵対関係でなくて良かったものです。それを考えると、ゲヘナはあだ可愛い方でしょうね。……とはいえ、軽視して良いものではないのですが。

 

ただ、噂によれば、調月 リオは現在失踪中なのだとか。…それでも問題なく運営出来ているミレニアムの、何という恐ろしさよ。

 

…………ミレニアムについて考えるのは、止めにしましょう。

 

それに、今は味方なのですから、頼もしい事には変わりないですし。

 

 

「次調査に向かうのは、いつ頃の予定なのですか?」

 

「皆様の都合がよければ、明日明後日にでもと思っていますが……」

 

 

調査は、早い方が良い。私の直感が、そう告げていた。

 

何とも言えない不安感が、"先延ばしにすると、取り返しのつかない事態になりかねない"と告げて仕方ない。

 

杞憂であれば、それでいい。

 

……杞憂で、あれば。

 

 

「……その様子だと、先延ばしは得策ではないように見えますが」

 

「確証はありませんし、直感頼りでもあります。…不確定な要素が多い状態ではあるのですが……」

 

「その直感は、時に合理性より大事にするべきものだと思います。何分、先程の私がそうでしたから」

 

 

そう告げるサクラコさんの言葉に、私はハッとする。

 

そうだ。先程の私も、サクラコさんの直感を信じて話を進めたではないか。

 

で、あれば。

 

 

「……そうですね。ありがとうございます」

 

「いえ、お互い様です」

 

 

……腹を括りましょう。

 

 

「明日、再度の調査に乗り出そうと思います。……助力、頂けますか?」

 

『勿論「です」「だよ」』

 

 

私の中の覚悟は、もう固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「少し、宜しいでしょうか?」

 

「ア?どうシタよ」

 

「助力頂きたい事がありまして」

 

 

内容による、といウ言葉ハ吞み込んだ。都度同じようナ反応ヲしテも、マンネリだしナ。

 

 

「内容ハ?」

 

「貴方様の神秘(恐怖)を、少し頂戴したいのです」

 

「あァ?俺の神秘(恐怖)ダァ?」

 

 

そんなモン、()()()()()()()()()。そう言おうトし、また呑み込ム。

 

コイツがある前提で話ヲ進めてるんなら、アルんだろう。当の本人(オレ)としては、信用出来ネェ話ではアるが。

 

……とはいえ、だ。

 

それを使って、何をするんだ?自分の神秘……は、ないのか?それならマァ……納得は出来るけドモ。

 

 

「何をしたい?」

 

「事前の準備です。何分、規模が莫大なものになりかねないので」

 

「……?イマイチ、ピンとこねェが…」

 

 

そう俺が言い淀むト、「お耳をお貸しください」言い出すゼアロ。

 

そうして、告げた。目的の真意を。

 

 

「…………出来んのか?そんな事」

 

「貴方様の神秘(恐怖)だからこそ、成し得るのですよ」

 

 

一時の迷いもなく、即座にそう告げる。迷いがないのは良い事だが、こういうヤツの迷いのない様子は、あんまりいい思い出がナイ。

 

だが、俺がしばらく目を見据えてみても、その目ハ揺るがない。……コイツなりに、根拠はあるのだろう。

 

 

 

──だから、俺は信じる事にした。

 

 

 

「…分かっタだが、どうやって譲渡したらイイ?」

 

「やり方はお教えします。幸い、ゲマトリアにいた身ですので、裏技には精通しておりました故」

 

 

……ホンット、ゲマトリアって何なんだろうナ。

 

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