ヤクを吸って、忘れ草をふかす 作:Cross Alcanna
長らくお待たせしました。
ここ1年、原因不明の体調不良と格闘しておりました。
まだ完治してませんが、ある程度落ち着いてきたのでまた筆を執る事としました。
以前のような更新速度に戻せるかは分かりませんが、ゆるりとお待ち下さい。
では、どうぞ。
「ッ!銃身をあんなに振るってくるなんて……!」
──使エル技術ハ、全部使ってナンボだロ?
何なんだ、あの戦闘力は。
こっちが嫌だと感じる所に銃弾を撃ってきたかと思って近距離戦を仕掛けたら、銃身で直接殴ってくる。しかも、
……いや、かなり改造を施してハンドガンではない銃種っぽく改造はしている。だが、素体はハンドガン。耐久面でもリーチでも、他銃種にかなう事は…ないはず。
それを嘲笑うように、それら全てを技術でこなしている。
戦闘IQが、あまりにも高すぎる。それこそ、小鳥遊 ホシノや美甘 ネル、空崎 ヒナ等と同等レベルだろう。SRTの先輩を、優に超えていると思う。
「──かはッ!?」
「サキ!?」
──注意力ガおざナリだナ?
私の身体に襲い掛かる衝撃に続くように、言葉が放たれる。その衝撃に委ねられた身体は、宛てもなく後方へ飛ばされてしまう。
痛い。痛い。
銃撃ではあまり感じる事のない感触の痛みに、私は悶える事しか出来ない。
「この…っ!」
──感情任せの弾幕、20点ッテとコロか?
煽る様に言い放つヤツのふざけた口調とは裏腹に、洗練されたその動きで、高密度の弾幕の嵐を避けていく。
────ッ
「ハッ!アタシを忘れちゃぁ困るなア!?」
突如巻き起こる、衝撃波。その中心に居るのは、ヤツと美甘 ネルだった。
突然の事に、咄嗟に防いでいる銃身の衝撃を上手く逃がせていないようにも見える。
「あぁン?奇襲に弱いんじゃあねェか!?大した力じゃねぇな!!」
──耳障り、ダ
刹那、目にもとまらぬ速さで繰り出された、蹴り上げ。それをあっけらかんとバックステップで避ける、美甘 ネル。
隙を見せぬ勢いで、今度は銃撃をお見舞いする美甘 ネル。私達もすかさず、支援射撃を行う。
先程とは違う密度の弾幕に、ヤツは苦色を顔に浮かべる。
──瞬間。
────チッ…
ヤツの顔を覆っている機械の様なマスクが、一部割れた。完全に全貌が見えた訳ではないが、右目が露出した。
その瞳には、光が灯っていなかった。
濁り。そんな言葉が一番適切だったかと思う。
──……フゥ
ヤツは、溜め息を漏らしている。それにしては、随分と重々しいものだが。
「────嘘、だよね?」
戦場に似つかわしくない、魂の抜けたような一言。その声の方向に目を向ける。
先生だった。
「────彼、
────その一言は、戦場を凍てつかせた。
──────────
『──嘘、です』
C&Cの皆が合流した中で生徒がホロウと戦闘している最中、私に近い場所から、そんな声が零れる。
その場所は、シッテムの箱からだった。
その声主は、プラナ。
「…………プラナ?」
『否定、有り得ません。こんな…こんな、事……!』
今までに見ないレベルで取り乱すプラナ。冷静なその口調も、気付けば焦燥と絶望の色に染まりつつあった。
「プラナ!?…アロナ、プラナはどうしちゃったの!?」
生徒が聞いているかもしれないといった杞憂なんて、いつのまにか吹き飛んでいた。
気付けば私も、声を荒げていた。
『………先生』
少し経って。アロナが口を開き始めた。
シッテムの箱を見ると、プラナがフラフラしている様子だった。かく言うアロナも、顔色が悪い様に見える。
あの時の、色彩の一件の時の様だった。
『…プラナちゃんからの伝言を、伝えます』
言葉が紡がれる。その口は、いつもの何倍も重たそうな印象を思わせる。
そうして告げられたのは────
『──あの人……ホロウの生体反応が……』
────
「────嘘、だよね?」
────誰もが想像していなかった、受け入れがたい結論だった。
──────────
「────彼、
────フゥ。
そんなファンタジーな事が、あってたまるかッテんダ。
──アホ言うナ、筋違いモ甚だシイ。
何をどウ捉えテそうナッタんだカ。
テメェみたいナメルヘン脳とハちげェ、一緒くた二すんナ。
『……いえ、間違いないです』
…頭の片隅に、微カに残ってイルような声色。有り得ルハズの無イ、感覚。
混濁とシテいた煤けタ意識を覚マしてクル、
…………クソッタレが。
『……恐らく、この世界とは…そして。私の世界の先生とも違う、更に異なる世界線の先生……です』
嗚呼、気持ち悪い。
頭はこれ以上ナイ位冴え渡ッテいるのに、これ以上ナイ位気持ち悪イ。えモ言わレヌ頭痛ト吐き気に襲わテいる。
こういう時のタバコだってのに、ここぞの時にねぇんだからよ。…ちっ、完全に思い出しちまった。
心のままに、発砲する。勿論、あのいけすかねぇヤツめがけて。結果は、言まずもがな。
──ハッ、相変わらず健在か
「どう、いう……」
──とぼけなくなって分かる。テメェが1番、わかってんだろ?
「っ……やっぱり、そうなのか」
今更とぼけたって、意味ないのにな。
「そういう貴方は、シッテムの箱を持ってないようにみえる…けど」
──砕け散ったサ。俺の目の前で、綺麗さっぱりな。
まただ。今まで想起した事のない記憶、それらが今更になってありありと浮かんでくる。
その諸々が、俺にとっては覚えがない。他人の記憶を詰め込まれたような、歪な感覚。
ただ、これまでのような頭痛はなかった。えも言われぬ吐き気は、未だ健在だが。
──雑談ばっかしてて良いのか?
「…何?っ!」
当然、こんな見え見えな隙を逃すアレらではない。今も尚、アレらはアイツらに攻撃を仕掛け続ける。変わらず、生徒共が受けきって倒しているが。
アレらに、情はない。強いて言うなら、未練だけ。陰険な神父によって、無理やり供物にされていると薄々勘づいているんだろうか。
自分が何者かを問うだけの脳。その点においては、
──そっちはどうだ、神父
「私が驚くくらいには、至って順調です」
一方のコイツは、溢れた笑みを隠しきれていない。
……まぁ、気持ちは分かる。かく言うオレも、もう少し苦戦するとは踏んでいた。それこそ、アレらも敵に回る算段だったからな。
とは言え、あの杯を無理やり破壊しようものなら、この地帯がどうなるか分かったものではない。今のソレは、いわば少しの刺激で破裂しかねないエネルギーの塊。
あっちには
想像に難くない。この地とオレら諸共、大爆散間違いなしだ。アイツも、それを理解してのこの状況だろう。歯がゆそうにしてるのが、目で見てわかる。
気分が良い、面白いくらいに。
──オレに回すだけの余裕はあるか?
「ありますとも。ただ、その御身が保つでしょうか……?」
──最悪どうとでもなる。……てか、どの道だろ?
「…貴方も随分と、無茶をしますね」
仕方ねぇだろ、今まで大して暴れられてなかったんだからよ。こちとら運動不足で身体鈍っちまいそうなんだぜ?
老体……とまでは言いたくないが、少し老いた身体には定期的に鞭打たねぇとな。
……それに、よ。
ドーパミン、ってヤツか?どっちにしろ、もっともっと味わいてぇんだ。
そうして、オレの身体に注がれる神秘。
分かる。拒絶しつつも、何故だか求めている感覚が。
──ハハッ、楽しいなぁ?
嗚呼、オレはもう戻れないのだろうか。