ヤクを吸って、忘れ草をふかす 作:Cross Alcanna
「……ヘェ」
誰もいないだろう場所に着いて早々、思わず言葉が漏れる。
ここは、すでに閉店したであろう遊園地の跡地。まともな管理が行き届いている訳でもなく、ましてやこんなトコロに人なんていないハズ。
そんな廃墟が、蒼く妖しく光っているというのだから、まァ変な声が出てもおかしくネェだろ?
……いヤ、おかしくはねェか。
元々、"シロ/クロ"だとか"ゴズ"だとかが定期的に現れては退治されてたなんて聞く。ちょうどそのタイミングだったなんテ考えれば、何もおかしくなんてない訳だ。
と、すれば。
「そもそも、
エデン条約の1件から、オレの中ではその方程式が根底としてあった。
がしかし、仮にそれがオレの絵空事だったなら。そんな前提がなくても、ソイツらは活動出来るんだとしたなら。この状況もなんら矛盾している事はない。
かといって、
「おや、見慣れない顔ですね」
…………なァんだ、バカバカしい。
アレだけ頭を働かせたのが、まるでアホみてぇジャネェか。
「生きてたんだなァ?…………
元ゲマトリアが1人、デカルコマニーとゴルコンダ(コイツらは2人で1人みてェなもんだろ?)。
コイツが生きてたんなら、この状況にも納得がいく。
「アレは、お前が維持してたノか」
「アレ?……あぁ、
捨てられた作品、ときたか。
「別にアレは、私の管轄ではありませんよ」
──そういうこった!
「…………ナに?」
思わず出そうになった素っ頓狂な声を、どうにか呑み込む。そうして出た一言は、それでも少し素っ頓狂なモノだったが。
アレの維持に、ゴルコンダが関与してない?
何が何だか、ますます解らん。
「アレは最早、地縛霊と質が似通っていますので、維持については
地縛霊…………ナルホドな。
神秘なりその他必要な要素は、辺りから勝手に供給されてるって訳か。それなら、ゲマトリアが監督してなくても何とかなるナ。
にしても。
そこまで詳しく理解してる理由は、何だ?
オレはコイツがかつて関与してたと踏んでるんだが、そうでないとしたら。
…………待て。
そもそも、
よくよく考えれば、おかしな話だ。
第一、
俺はてっきり、マエストロだと思っていタ。アレの出処について言及されテた覚えはなかったが、アレについて妙に詳しいように見えたマエストロが、俺にとっては製造者に見えていた。
だが、
とはいえ、黒服が「
ゲマトリアの関与の是非については、いずれにせよ、どこかで違和感が生まれるナ。今の段階じゃア、考えるだけ無駄か?
…………まぁ、些事か。これ以上の考え事は糖分が欲しくナる。
「…随分と、長い考え事でしたね?」
「まァな。妙に引っ掛かるモンがあったからナ」
オレが考え事をしてた、なんて事を見透かしてきた事が1周回って気持ちワリィ、とかいう事は……その辺に捨て置くとする。デカルコマニー風に言うなら、「そういうこった」ってヤツだナ。
それはさておき。
なァんでオレはここに来たんだかナァ。色々と考えてるうちに、当初の(あったかどうかも分からネェ)目的を忘れた訳で。だとすれば、こんなトコに長居する理由なんてありゃアしない。
喉から手が出る程欲しいナニカがある訳じゃないシ、この世界を識るのにうってつけなナニカがあるなんて事もない。
ゴルコンダの生存確認と、この廃墟がまだ生きてる理由が分かった事が、目ぼしい収穫とでも思っテおくか。
そう思ったオレは、踵を返そうとした。
「おや、もうどこかへ行かれるのです?」
「あア。これといった収穫もなかった訳ダしな。それに、まだ行ってみる場所はある」
「成程、放浪の質をお持ちなのですね」
そんな感じだ、等と返すのも億劫だったので、適当に振り返って相槌を打っておく。アイツらの頭の良さなら、言葉なんて要らンだろうしナ。
……そう思っていると。
「……あぁ、そうでした。1つ、お尋ねしたい事が」
「…………ンあ?」
──貴方、
「…………
「……そう、ですか」
そんな言葉を軽く交わして、オレは一旦の帰路に立つ。
……そういや。
あのアヌビスとやら、ゲマトリアを討ちそびれたンだろうか?黒服以外のゲマトリアをアイツが壊滅させたンだとしたら、ゴルコンダが生きてるのもおかしな話だからナ。
…………いンや、どうでもいいか。
────────
「異界からの生命、ですか」
先程まで言葉を交わしていた彼がここを去った後。未だその場に居続けている私は、思考を回す。
最後に彼に聞いた、ある質問。彼は、Noと答えた。彼の顔を見た結論は、
そんな思考傾向が染み付いて離れないからこそ、それらしい独り言を零したように思える。
知らない、と。彼はそう言った。私にとってこの回答は、
要は何か。
「黒服らは、彼に対して何も感じてないのでしょうか……?」
そんな事が、果たしてあるのだろうか?そんな疑問を抱きながら、言葉が漏れる。
彼から滲み出る異物感。それは、いくら察しの良い私であれども、黒服らが分からないなんて事はない位の筈。アレは最早、私達側に近しいとも言えるでしょう。
そんな相手の違和感にすら感じないなんて事は、あるはずがないと思うのですが。
或いは、様子を見てるのか。そうだとしたら、合理的ではある。いや寧ろ、そうであって貰いたい。
「……こういう時に黒服とコンタクトが取れないのは、痛手ですね」
黒服らも立て直しの最中だとすれば、今連絡を取るのは無粋でもある。
……彼という
「……色々と、考え直さなければ」
これは、もう一波乱起こると考えておいた方がよさそうですね。