アビドス自治区、紫関ラーメンの敷地にてアビドス高校のホシノを除く対策委員会、便利屋68の4人が対峙していた。紫関ラーメンは柴大将からの言葉を受けたアルの否定を勘違いしたハルカが仕掛けた爆弾にて消し飛んでおり、その騒ぎを聞きつけたアビドス対策委員会が駆け付けていた状況である。
「アルちゃん、本当にお店を吹っ飛ばしちゃったんだ……。やるじゃん!情にほだされないように店主ごとぶっ潰すとかアウトローだね!」
「…え?あ、えっと…そ、そうよ!当たり前でしょ!」
「その辺のザコには真似できない鬼畜っぷり!血の涙もない大悪党!悪人中の悪人じゃん!これがハードボイルドでアウトローってやつだね、見直したよアルちゃん!」
「あ、あはははは!とっ、当然でしょう!冷酷無比で情け無用!金さえ貰えば何でもするのがうちのモットーよ!」
アルはムツキにおだてられて、緊張しながらも悪役としての決め台詞を言い、そのムツキはアルのアウトローっぷりを見てテンションが最高潮に。店を吹き飛ばしたハルカは目をぐるぐるさせてアタフタとしており、カヨコは面倒ごとが起きたとして表情を重くしている。
そこへ口を挟んだのが、自治区内の爆発を観測して駆けつけた対策委員会の面々である。
「そういう事だったのね、あんたたち!よくもこんなひどいことを……!」
「!?」
「ありゃ、噂をすれば……」
「大将の無事を確認できました!幸い軽傷だったので、近くのシェルターに案内済みです!」
「ありがとアヤネ……。あんたたち、絶対に許さないから!」
「……タイミングはズレたけど、いつかは白黒つけなきゃいけない相手だし。確保しておいた傭兵を呼ぶよ」
「………そ、そうよ!これでわかったでしょう、アビドス!私たちがどんな悪党かを!覚悟しなさい!」
「叩きつぶしてあげるわ!便利屋68!」
セリカがそういうと同時にシロコとノノミが銃を構え、それに反応するようにして同じく銃を構える便利屋68の4人。戦闘が始まるその瞬間……
「お待ち下さい」
突如として声を掛けられたことによって銃を構えていた者たちがみな、一斉にその方向へと銃を向ける。
「「「「「……えっ?」」」」」
そこには見慣れたメイド服を着ていた少女が立っており、その場にいた全員が困惑の声を上げる。
「な、なんでこの前のメイドがここにいるのよ!」
「ん、セリカ、この前のメイドとはまた違う人……」
「そうですねー。以前傭兵の人達と来ていたメイドさんとも、ブラックマーケットで出会ったメイドさんとも違う人みたいです」
「(私があった3人よりも身長がちょっと低い?)」
先生を含めアビドス側の4人はそう言いながら警戒した表情でメイドを見つめる。これまで会ったことのあるメイドさんは全員モデルのようなスタイルと整った顔立ちをしていたが、目の前に現れたメイドはそんな彼女たちよりも一回り程身長が低く、どこか幼い顔立ちをしていた。以前出会ったメイド達と同様に長く伸びた髪はヘアアイロンをかけているのか、フワッとした感触でハーフアップでまとめられている。
「ふむ……その反応ですと、どうやら機体の調整は微妙だったようですね。時間を掛けたのにも関わらず、その反応をされると悲しいものですね」
「ご、ごめんね……?」
思わずそう謝る先生だが、メイドは特に気にする様子は見せていない。
「いえ、お気になさらずシャーレの先生、そして対策委員会の皆様。アビドス高校への襲撃時やブラックマーケットでは当社の者がご迷惑をおかけしました」
「ん、ということはやっぱりあのメイド達と関係者?」
「……そういえば先生も、似たようなメイドがあと4人いるみたいな事言ってたわね……」
「ブラックマーケットで出会ったメイドさんとアビドス高校で出会ったメイドさんはとても美人さんでしたが、あちらの方はどちらかというと可愛らしいですね~☆」
「お褒めいただき、ありがとうございます。改めまして自己紹介を。人材派遣会社Aid Ladyの代表を務めております。特に名称といったものは在りませんので、他の者と同様メイドさんとお呼びください」
「「「「だ、代表!?」」」」
そういって自己紹介を終えたメイドはカーテシーを披露する。そしてAid Ladyの代表という言葉に再度声が揃う対策委員会の面々。
「ん、代表っていうと……」
「……いわゆる社長ってやつよね……」
「他のメイドさんはとても綺麗な人達でしたが、こんなに可愛らしい人が社長さんなんですね~☆」
便利屋68と対策委員会との戦闘直前だった空気はどこか霧散したような様子を見せていた。そして代表と名乗ったメイドは便利屋68の方へと体を向ける。
「便利屋68の皆様。先日は当社をご利用いただき、誠にありがとうございます。Aid Ladyの代表を務めております、お気軽にメイドさんとお呼びください」
「え、えぇ。この前の依頼を受けてくれたこと感謝しているわ。この前連絡したから知っていると思うけど、契約内容とはいえ依頼料を踏み倒すような真似はしないわ。必ずあの時の依頼料を払うから待ってほしい」
「はい、依頼を担当した者からはそのように報告を受けております。その件につきましても私自身、直接お会いしてお話するべきだと判断して、直接お伺いさせていただきました。お時間の方を頂戴したく、こうして割り込ませていただきましたがお取込み中でしか?」
「え!?え、えっと……」
メイドからそう言われたアルはどこか居心地が悪そうにしてたじろいてしまう。自分がやったことではないとしても、こうして気を掛けてくれた柴大将のお店を吹っ飛ばしてしまった以上はそうやって悪役として貫くべきだと思っていたが、こうして改めて気を落ち着かせると不味い状況だと理解してしまう。
「(これからアビドスと戦おうとしてたけど、改めて見ると不利すぎる状況よね……。あの小鳥遊ホシノがいないとは言え、先生の指揮がある以上はこちらが負けてしまうわ……。アウトローとしては逃げるなんてことはしないし、金を貰えば何でもするのがモットーだけれど私たちが受けた依頼とは無関係な柴大将にも迷惑をかけてしまった以上はケジメをつけるべきね)」
便利屋68の社長として、そして自身の目指しているハードボイルドなアウトローとして判断をする。
「え、えぇそうよ、少しアビドスの人たちと取り込み中だから、待ってもらえないかしら?」
「左様でございますか。かしこまりました、私としてもお得意様の気分を害したくはありません。時間を改めるとしましょう」
「お、お得意様……///」
「(あーあ、せっかくカッコいいアルちゃんが見れたと思ったのに……)」
「(いきなり割り込んできたからどう対処しようかと思ったけど、特に介入するつもりはない感じかな……)」
「(え、えっと……私はどうしたら……!?)」
メイドはアルからそう聞くと再度振り返り、先生たちの者へと歩みよる。そんな様子に思わず銃を構えるが、先生によって抑えられる。
「本日は私に敵対の意志はありませんのでご心配なく」
「……ん、でも私たちと便利屋のやつらとの間にいきなり割り込んできたのはそっち……撃たれる覚悟があるはず」
「そっ、そうよ!いきなり現れてびっくりしたけど、これは私たちと便利屋の問題よ!」
「そうですねー、いきなり介入されると困りますよー」
「…………メイドさんはどうするつもりなの?」
アビドスのみんながその心境を表し、先生がメイドに対しこれからどう動くのか尋ねる。それに対するメイドの答えは実にシンプルなものだった。
「いえ、特にこれといったことはしませんよ」
「「「「…………」」」」
そう返事したメイドに再度対策委員会の面々は困惑の表情を浮かべる。以前にアビドス高校を襲撃した際は便利屋サイドにおり、こちらに直接攻撃することはなかったが、今回もそうだとは限らない。そう思っていただけに衝撃が大きかった。
「先程便利屋68の社長の方も申されていましたが、これは便利屋68とアビドスとの問題であって介入はしないで欲しいと。あなた方もそうおっしゃられるのであれば、私から今回の事態に介入は致しません。ご安心ください」
そのように聞いたアビドスの面々は少しだけ安心したような感情を抱く。以前の便利屋からの襲撃ではその実力を見せることはなかったものの、確実にこちら側を倒せるだけの実力を持っていると判断していた。襲い掛かったセリカを本人すら理解できないような動作で無傷のまま制圧、続くホシノの猛攻をなんなく防いだことから、まず間違いなく実力者であり、その務めている企業の代表ともなればどれだけ強いのかが想像もつかない。
たとえ先生の指揮があったとしても確実に勝てるとは思えず、それは先生自身も同じように判断していた。そのこともあって対策委員会の面々は少しだけ緊張がほぐれる。
「ですので、私は少し離れた場所で控えておこうかと。今回の事態について終始見ていたわけではないので、完全には把握していませんが、お邪魔するつもりはないとだけ理解してもらえれば大丈夫ですよ」
そういってメイドは対策委員会の元から離れていく。近くに建物のそばに立つと「お好きにどうぞ」と言わんばかりの表情と手に促されたことで再度、その場に緊張感が戻る。カヨコが呼んだ傭兵たちもちょうど到着し、対策委員会のみんなも銃を構えることでお互いの戦闘準備が整った。
お互い無言のままで相手を銃口に捉えており、シッテムの箱をもった先生も沈黙を貫いている。そうして十数秒後、控えていたメイドが指を鳴らしたことで戦闘の口火を切った。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
次回は一応風紀委員会の登場予定です。大体皆様の予定通り、メイドさんが戦う予定ですが委員長のヒナと戦うかは考え中です(戦ったとしてもほんの数行だと思います)
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登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?
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いらない
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そんなこといいからはよ続き書け