機械少女と青春を   作:バグキャラ

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企業の上に立つものは

 アビドス自治区の郊外。砂嵐が吹き荒れる砂丘の中を、迷うことなく真っ直ぐに進む人物が1人。

 

「……………………」

 

 少し赤みを帯びた黄色い砂の上を、職人の手で仕立て上げられたかのような皮のブーツで歩くメイド。まず間違いなく砂の上では歩きずらいであろう格好をしているが、足を取られるような動作を見せずに進み続ける。

 

 便利屋68との商談中にButlerから連絡の入った彼女は、行き先をアビドス自治区の郊外へと定めて歩き出し、そうしてアビドス自治区を出て数十分。砂嵐を抜けた彼女の視界に広がるのは、鉄条網を兼ね備えた金属のフェンスで囲われた広大な施設であった。

 

「これはこれは………なんとも派手に施設を建てられたものですね」

 

 彼女の口から漏れ出たその一言は褒めているようで、それでいて呆れたような口調であった。フェンスで囲われた敷地内では多数の兵器が見てとれ、装甲車や戦車を始め、武装ヘリや対地対空ミサイルが並べられているのが施設外からでも確認できる。

 

 そんな数多くの兵器を視界に納めた彼女。しかし表情を変えるようなことはなく、無表情に呆れが混ざったかのようなそれで、施設の入り口へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 施設の入り口にて警備を担当する人物が、遠くからこちらに向けて歩いてくる1人のメイドを発見する。

 

「こちらPMC軍事施設検問所、施設遠方にて不審人物を発見。数は1、こちらへ向かってきている……施設の関係者のようには見えないが、客人か?」

 

『いや、今日は来客の予定なんてない………その人物の特徴は?』

 

「あぁ、身長は……150cmいかないくらいか?長髪で…武器を持っているようには見えないが、メイド服を着ているな」

 

『メイド服………こんな場所にか?何かの見間違いじゃないのか?」

 

「いや、確かにメイド服を着ている。もうすぐ監視カメラで映る範囲だ、確認してくれ」

 

 警備をしていた者が、彼女を捉えて本部へと報告するが、通信を受けた者が冗談のように受け取られてしまう。しかし何度見直してもメイド服を着た人物がこちらへと歩いてきているのが確認でき、施設に備え付けられた監視システムにて確認するよう要望する。

 

『…………本当だ。確かにメイド服を着ているな……』

 

「だろ?」

 

『あ、あぁ……』

 

「しかし、なんでまたメイドなんかがこんなところにくるんだよ」

 

『それはこちらでもわからないな……』

 

「武装はしていないようだし、とりあえず要件だけ聞いて追い払うか?」

 

『……いや、制服や防護服ではなくメイド服だ。どこかのお偉いさんの使いかもしれない……一応丁寧に対応しておくのが無難か?』

 

「………それもそうだな。変な地雷を踏んで、せっかくの職を手放すよう真似はしたくない」

 

 そうして警備を担当するもののふるまいが決まると同時に、その者の目の前で歩いてきたメイドが立ち止まる。

 

「あー……ここはカイザーPMCの軍事施設だ……です。関係者以外は立ち入り禁止で、今日の来客予定はないはずだったんだが…………一応名前を聞い……お伺いしても?」

 

「はい。人材派遣会社Aid Ladyの代表を務めております。特に名称はございませんので、適当にメイドさんとでもお呼びください」

 

「そ、そうですか……(メイドさん?)」

 

 簡易的な自己紹介を受けた警備の者は、頭の上に?を浮かべるだけであった。

 

「あー……少し待ってもらえないだろうか?……聞いたか?見た目通りの名前なんだが……知ってるか?

 

『いや、関係者リストにも載っていないな……』

 

だよなー……一応要件を聞いてみるか

 

 施設入り口の警備を担当する者として、見知らぬ人物を施設内に入れるわけにもいかない。しかし、その服装からどこかお偉いさんの使いの可能性もあり、雑な対応も危うい。そんな状況の板挟みの中で彼は四苦八苦しながらも、言い慣れない敬語で対応する。

 

「そのー……メイドさ……様。本日は当施設に来客の予定はないはずなんですが、差し支えなければご用件をお伺いしても?」

 

「私に敬称は不要ですよ、簡単にメイドとでもお呼び下さい。先程カイザーコーポレーションの理事を名乗る方からご連絡を受けて、こうしてお伺いさせていただきましたが、お聞きしていませんか?」

 

「り、理事から……?す、少し待って貰えないだろうか!?すぐに確認す……」

 

「いや、その必要はない。彼女は私の客人だからな」

 

「えっ……?」

 

「…………」

 

 警備を担当する者の後ろから突如として声が掛けられたかと思った次の瞬間、そこに大きな影を映すかのような背丈を持つ人物が立っていた。

 

「りっ理事長!?いつからそこに!?」

 

「つい先ほどだ。……さて、少し待たせてしまったかな?」

 

「いえ、わたしも先程ここへ着いたばかりですよ」

 

 そこに立つのはここの施設のトップに立つ人物は、カイザーPMCの代表取締役であり、カイザーコーポレーションの理事長を務める者であった。黒いスーツとオレンジ色のネクタイをした人物はその場にて圧倒的な存在感を放っている。

 

「迎えを送ろうとしていたのだが、どうやら不要だったようだ。さて、とりあえず中へ案内しよう………もう下がっていいぞ」

 

「……!し、失礼しました!」

 

 あまりの人物の登場に、数秒固まってい警備のものだが声を掛けられたことですぐさま持ち場へと戻る。そしてその横を通りすぎるように理事長とメイドが歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 施設の中を理事長の後に続くようにして歩いていくメイド。近くにいた兵たちがすかさず敬礼をしていくが、気にも留めずに通りすぎていく。そしてふとメイドの前を歩くPMC理事が話しだす。

 

「あぁ……そうだ。先日は我が社の不動産のお買い上げ、どうもありがとう。即日振込で営業部がとても喜んでいてね」

 

「それにつきましてはこちらからも礼を。ダメもとで連絡しましたが、まさか売って頂けるとは思いませんでしたよ」

 

「こちらとしても早く手放したいと思っていてね……とある目的であの土地を買ったのはいいが、活用法に困っていてどうしようかと思っていたのだよ」

 

「…………」

 

「あの土地にもう用はなくなったのだが、アビドスがこのざまでな。長い間買い手がつかず処分に困っていたのだが、まさか買い手が現れるとは思わなかったよ」

 

「そうですか」

 

 そう淡々と2人が会話をしながら施設内を歩いていき、格納庫に入ると、とある兵器の前で立ち止まる。

 

「さて……本日そちらに連絡をよこしたのは理由があってだな」

 

「私個人に対するご依頼ではないと?」

 

「あぁ……それについても大変興味深いが、今回は別件だ」

 

 とある兵器の目の前に立ちどまり、それを見上げていたPMC理事がメイドの方へと振り返る。

 

「君たちAid Ladyと取引をしたいと思っていてね」

 

「……ふむ」

 

「先日ブラックマーケットで君の会社の社員と(おぼ)しき人物ずいぶんと暴れていたのは知っているかね?」

 

「あの件ですか?ずいぶんと贅沢な兵器を取り揃えられていた部隊たちのことですね」

 

「知っているようでなによりだ。あのマーケットガード達には私たちからもいくらばかりか支援をしていてね……我が社とまではいかずとも十分な装備を整えさせていたつもりだったのだが、ずいぶんとコテンパンにやられたと聞いてね」

 

「その補填をしてほしいと?あれはあくまでも正当防衛ですよ、あちらからの先制攻撃も確認しています」

 

「いいや、その程度の被害を請求する為に私個人が呼びつけたりなどはしない。それにあそこまで装備を融通してやったのにも関わらず無様な負け方をしたのはあいつらの責任だ」

 

「そうですか」

 

「あぁ……話が逸れたな。そこでどんな部隊に負けたかと調べさせたのだが……メイド服を着た1人の人物に負けたなどと言い出してな。戯言かと思って私自身直接確認したのだが、まさか本当だとは思わなかったよ」

 

「…………」

 

「そしてそのメイド服の持っていた武器に興味を持ってね……あのサイズであれだけの威力を持った武器を見たことがない。そして是非我が社にも導入したいと思っていてな」

 

「……当社の装備を融通してほしいと?」

 

「そういうことだ……どうだね?こちらからもそれなりの物資を提供しようじゃないか。君たちも起業直後で色々と不便だろう?」

 

「あなた方に当社の装備を扱えるとは思いませんが?」

 

「それを決めるのは君ではなく、私たちだ。こちらとしても十分譲歩しているつもりだか、どうかね?」

 

 気づけば、兵器の目の前に立つ2人を取り囲むようにしてカイザーPMCの部隊が立っていた。

 

「取引内容を明確にしましょう。こちらが当社の装備を提供することで、そちらから資金や経営に関する物資を譲っていただけると?」

 

「そういうことだ。ついでに我が社の兵器もいくつか譲ろうではないか……悪い取引ではないだろう?」

 

 会話の内容を明確にし、顎に手を当ててその場で考えるような動作を取るメイド。

 

「ふむ………ひとまずこの件の返事は後日でよろしいでしょうか?当社としても、他者に融通するほど備品がある状態では…………おや?」

 

「……ん?どうかしt…………何事だ?」

 

 メイドからの返事を待っていた時、施設全体に警告音のようなアラームが鳴り響き、その出来事にメイドは問いかける。

 

「……いかがされましたか?」

 

「少し待ちたまえ………おい、何が起こっている?」

 

 理事長は、周りを囲んでいた部隊の1人に問いかける。

 

「は!当施設へ侵入者です!現在、施設の警備部隊と交戦中とのことです!」

 

「侵入者だと……?すぐに捕らえろ」

 

「了解しました!」

 

「……商談中にすまないな。どうやら招いていない客人のようだ」

 

「そうですか」

 

 顎から手を外し、淡々と会話するメイドとそれに受け答えする理事長。

 

「ひとまず場所を変えるとしよう……ついでに我々の軍事力のプロモーションといこうか」

 

「拝見しましょう」

 

 そういって2人は、兵器が多く並んだ格納庫から施設全体を取り巻く防壁の上へと場所を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カイザーPMC軍事施設全体を取り巻く外壁の上に付けられた通路に2人と数人の兵士が立ち尽くす。その視界の先では、侵入者と思われる数名の集団と、それを囲むようにして取り巻く多くの部隊と装甲車。黒を基調とした装甲にカイザーコーポレーションのロゴが見て取れる。その様子を自慢するかのように理事が手を向ける。

 

「どうかね、我が社の兵器は?この圧倒的な戦力差に侵入者どもも成すすべなかろう」

 

「………物量に関しましては評価します。戦闘において勝敗を大きく左右するものの一つとして、数の有利を取れるのは素晴らしいことです。しかし、兵器の質と部隊の練度に関しましては疑問を抱きかねませんね。先程から雲行きが怪しいようですが?」

 

「ふむ……確かに君の言う通りだ。どうやら侵入者どもを捕らえるのに少々手こずっているようだ」

 

 外壁の上に場所を移した後に見られた戦闘の様子は、変化しつつあった。最初は、その圧倒的な物量で包囲する形で侵入者たちを追い詰めていたが、それも徐々に押し返されつつあった。相対する侵入者とカイザーPMCの部隊たちの戦力差は人数差も含めて10倍以上はあるように見て取れたが、戦場を少しずつ移していくと同時に部隊の隊列が乱れた場所を狙いながら兵器たちの各個撃破をこなしていた。

 

 それでもここカイザーPMCの軍事基地ということで、部隊や兵器たちが撃破されたそばからどんどんと新しい戦力が投下されていく。そうして数分後には破壊された兵器たちの残骸を基に、簡易的なゲリラ戦が展開されいき、そうして戦場は終わりつつあった。

 

「……あの人数相手にどうやら苦戦されているようですが?」

 

「…………どうやら侵入者は中々の手練れのようだ……せっかくのプロモーションだというのに台無しだな」

 

 そういって苦虫を嚙み潰したような表情を受けべて、通路に備え付けらた柵の手すりに指をめり込ませていく理事。

 

「相手が手練れという点につきましては同意しますよ。それぞれが相応の実力を持ち、部隊の練度としても高いです。そして何より部隊の指揮を執っている人物ですね。素晴らしい戦術眼と素早い判断力とお持ちのようです。それだけではないようですが……

 

「……こうなっては仕方ない。おい、あれを出せ」

 

「了解しました!」

 

 カイザーが近くの兵に何かを伝えたかと思った次の瞬間、外壁に立つ2人の後ろを戦闘ヘリが飛びあがる。そうやって戦場へ向かったかと思うと、備え付けた対地ミサイルで辺り一帯を爆炎で包みこんだ。その衝撃は2人へも届き、メイドの長い髪と理事のコートを大きくなびかせた。

 

「そちらのプロモーションは以上でしょうか?」

 

「少々雑になってしまったがね」

 

「かしこまりました。相手が手練れということも考慮いたしまして、こちらと取引するに値するか検討させていただきます」

 

「良い返事を貰えることを期待しておこう」

 

「では、私はこれで……おや?」

 

「……なんだと?」

 

 爆炎が収まりつつある状況で、商談は一区切りするというところで、一発の銃弾が2人の間を横切った。銃弾が向かってきた方向を見ると、砂と煤にまみれた1人の生徒が銃を構えてこちらを見ていた。そして続くようにして、1人2人と姿を現す。

 

「どうやらあの爆撃をくぐり抜けたようですね」

 

「…………」

 

 わずかに口角が上がるメイドとは反対に驚いたような表情を取る理事長。無傷とはいかずともあの攻撃を潜り抜けたことに信じることが出来ない様子であった。

 

 驚く理事をしり目に、目の前の人物へと視線を向ける。そこには昨日あったアビドス対策委員会の4人とシャーレの先生が立っていた。お互いの視線が交差し、わずかな沈黙後、シャーレの先生が声を発した。

 

「……どうしてメイドさんがここにいるのかな?」

 

「昨日ぶりでございます。アビドス高校の皆様、並びにシャーレの先生」

 

 そういってメイドは丁寧にお辞儀をした。

 




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登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?

  • いる
  • いらない
  • そんなこといいからはよ続き書け
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