機械少女と青春を   作:バグキャラ

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えー……皆様、お久しぶりでございます。
前回の投稿から約2か月間、続編が投稿できなかったことをここに謝罪します。年内に投稿することが出来ず申し訳ございません。
一応アビドス1~2章の締め方や続章の構想などはすでに頭の中に出来上がっているのですが、モチベや私生活で色々と滞っていたことで全然文字が打てませんでした(そのくせに様々な方の作品は読み漁っています)。
失踪するつもりは一切ありませんので、どうか長い目で見ていただけたら幸いです。


問題に向き合い

「とりあえず、大将が無事でよかったです」

 

 アビドス自治区内に位置する総合病院の一室にて、ベッドの上に寝そべる紫関ラーメンの店主である柴大将と、アビドス対策委員会のセリカとアヤネ、そしてシャーレの先生が向き合っていた。

 

「やあ、セリカちゃん、それにアヤネちゃんも……それに先生もだなんて……大げさだよ、ただちょっと検査するだけだったから」

 

「お体は如何ですか?」

 

「大丈夫さ、ちょつと擦りむいただけだ」

 

「だけど……大将のお店が……」

 

 どこか、ばつの悪そうな表情で立ちすくむセリカとアヤネ。

 

「それにほら………あの便利屋の子たちもちゃんと謝ってくれたし、メイド服を着た方もお店の後片付けをしてくれたみたいだから」

 

 そういって視界を部屋の隅にやると、便利屋68が置いていった現金の入ったバッグがあった。

 

「(あのお金って……)」

 

「それにセリカちゃんもゴメンね、バイトが出来なくなっちゃって」

 

「そういう問題じゃなくて……」

 

「それにほら、もうすぐお店を畳む予定だったからな。ちょっと予定が早くなっただけだ」

 

「え?お店を……?」

 

「あぁ、ちょっと前から退去通知を受け取っていてね」

 

「た、退去通知って、なんの……」

 

 向き合う柴大将から思いもよらぬ一言が飛び出して驚くセリカと難しい表情を浮かべるアヤネだったが、昨日の一件にてメイドが言っていたことを思い出す。

 

 

『先程から対策委員会の皆様はなにか勘違いをされておりますが、ここはすでに()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……大将さん。その退去通知ってもしかしてカイザーコーポレーションと何か関係がありますか?」

 

「……知っていたのかい?」

 

「いえ、昨日の一件で気になることをお聞きしまして」

 

「……何年か前、アビドスの生徒会が借金を返せなくて、建物と土地の所有権が移ったんだ」

 

「「…………」」

 

 

『……ビルを含む土地の保有者は……()()()()()()()()()()()()()

 

 

「やっぱり、あの時にあのメイドさんが言っていたことって……」

 

 昨日のメイドに続き、柴大将から聞いた事実が、アヤネの中で渦巻いていた疑問を確信へと変えた。

 

「しかしねぇ……あのお金は受け取らないつもりだったけど、あの子たち(便利屋)に押し切られちゃってね……どうしたものか……」

 

 そうベットの上で悩む柴大将に先生が声を掛ける。

 

「あのお金、大将のお店の再建に使ってくれませんか?」

 

「そうは言ってもなぁ先生……元々畳む予定だったお店なんだが」

 

「そ、そうよ!私も手伝うからさ、お願い大将!引退なんてしないでね!わかった!?」

 

「お、おぉ……考えておくよ」

 

 そういって3人は大将の病室から出たあと、病院の出口へと向かいながらアヤネが声を発する。

 

「セリカちゃん、先生。お二人は先に学校に戻っていて下さい。私はちょっと別のところによってから行きます」

 

「…………私もいっしょに行く!」

 

「では、先生は教室に戻っていて下さい!私たちもすぐに戻りますので……行こう、セリカちゃん!」

 

「うん!……じゃあ先生、またあとでね!」

 

「私も伝えたいことがあるから、みんなと学校で待ってるね」

 

 そう言って病院を出ると2人は、先生の前から走りっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス高等学校、対策委員会の教室は気まずい空気で包まれていた。普段通りにおっとりとした表情で机に伏せるホシノと、それに少し鋭い視線を向けるシロコ。

 

 そして2人の間で何かがあったと感じとるノノミと先生の2人であり、その光景からは想像できないような張りつめた空間となっていた。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 沈黙によってそろそろ耳が痛くなりだしそうな時、対策委員会の教室が勢いよく開かれる。

 

「先輩たち、大変!!これをみ…て………何よこの空気……」

 

「アビドス自治区の関係書類を持ってきました!これを…………何かあったんですか?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「お帰り二人とも。今は大丈夫だよ」

 

 重いたい雰囲気で包まれている教室の中で、ただ1人先生だけが笑顔で2人の帰りを迎えた。

 

「た、ただいま……?い、いやそれよりも!これを見て!とんでもないことが分かったのよ!」

 

「衝撃の事実です……!皆さん、これを見てください!」

 

 そういってアヤネは教室の中心に置かれた長机の上に紙を広げる。

 

「……んー、これって地図?それもアビドスの……」

 

「直近までの取引が記録されている、アビドス自治区の土地の台帳……”地籍図”と呼ばれるものです」

 

「土地の所有者を確認できる書類、ということですか……?でも書類を見なくても、アビドスの土地は当然アビドス高校の所有で…………もしかして」

 

 アヤネが持ってきた地籍図に自身の疑問を声に出すノノミだったが、アヤネと同様に昨日の一件でメイドが言っていたことを思い出す。

 

 

『先程から対策委員会の皆様はなにか勘違いをされておりますが、ここはすでに()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その一言を思い出したノノミは勢いよく椅子から立ち上がると、視線がアヤネの持ってきた地籍図にくぎ付けになる。

 

「ノノミ先輩も思い出した!?昨日ビルの上にいた時にメイドが言っていたことと、さっき大将から聞いたこと!」

 

「午前中に大将のお見舞いに行った時に、大将から話を聞いたんです。柴関ラーメンが入っている建物は勿論のこと、このアビドス自治区のほとんどが、私たちの学校が所有していることになっていませんでした……」

 

「!?……どういうこと?アビドス自治区がアビドスの所有じゃないってそんなわけ……」

 

 アヤネからの言葉に、机に伏せていたホシノも体を持ち上げた。

 

「……現在の所有者は……カイザーコンストラクション、そう書かれています」

 

「「「「……!!」」」」

 

 

『……ビルを含む土地の保有者は……()()()()()()()()()()()()()

 

 

 アヤネがそう告げると、ホシノを除く対策委員会の3人と先生の脳裏にメイドが提示した契約書の内容が浮かび上がる。

 

「カイザーコンストラクション……カイザーコーポレーションの系列です」

 

「アビドスの自治区を、カイザーコーポレーションが所有しているってことですね……」

 

「……柴関ラーメンも……」

 

「はい。大将はそのことを知っていて、ずいぶん前から退去命令も出ていたとかで……あのお店も畳むことを決めていたそうです……」

 

「………そういえば昨日のこと……、おじさんが居ないうちに一体何があったのさ?あの時の代表?のメイドさんからある程度は聞いたけど……」

 

 自身の知らない所で対策委員会が共通している認識によってズレを感じたホシノは再度昨日のことについて尋ねる。

 

「えっ………あっ……そういえば説明し損ねていたわね……」

 

「えっと……便利屋68の方達が柴関ラーメンを爆破して、私たちが現場に急行……そのまま戦闘に入る直前にAid Ladyの代表を名乗るメイドさんが現れまして……」

 

「なんかあの時のメイドは便利屋の奴らに用があるから……って言ってたけど、取り込み中なら邪魔はしないとか言い出して……」

 

「ん、そのまま便利屋68と交戦中にゲヘナ学園の風紀委員会が参戦してきた」

 

「…………ふむふむ」

 

「その後、メイドさんが順番待ちを割り込まれたって言って、私たちを助けてくれたんだよね」

 

「そのあと凄かったんですよ?いつのまにか他のメイドさん達がいたかと思うと、そのまま私たちを抱えて、ぴょーーん!!って感じで飛んだんですよ」

 

「…………飛んだ?」

 

「そうよ……いきなり抱っこされたかと思うと、視界一面が真っ青だったのよ…………」

 

「ふふっ……抱っこされてるセリカも可愛かったよ?叫びながらメイドさんの頭にしがみついてたもんね」

 

「えっと…………ゲヘナ学園の風紀委員の中隊を撃退した後に大隊に囲まれてしまったんですが、メイドさんが対処すると言いまして…………その…………オペレーターの私を除く対策委員会の3人と便利屋68のカヨコさんと先生を4人のメイドさんが抱えてビルの屋上に移動したんです」

 

「…………屋上?ビルの?」

 

「信じられないと思いますが…………」

 

「…………」

 

「そのあとにいきなり目の前のビルが崩れ始めまして…………」

 

「その崩れたビルがあのメイドさん達が買い取ったビルってこと?(…………ならあの時に聞こえた音ってのは)」

 

「………多分なんらかの方法であのメイド達が意図的にビルを倒壊させたんだと思う。あの数の風紀委員達を狙いつつ、自身と他の建物に被害が出ないギリギリのラインで………なかなかのやり手。勉強になる」

 

「………勉強になるってのはどういう意味かなシロコちゃん?」

 

「…………なんでもない」

 

「まぁ、その話はまた後でじっくりしようね?」

 

「…………ん」

 

 昨日に何があったのかを聞いていたホシノだが、話が逸れ始めた所で本題に戻る。

 

「それであの場所があんなになってたって訳だね…………ずいぶんと派手にやったもんだよ。後片付けはするとか言ってたけどもさー」

 

 椅子の背もたれに体を預けながら教室の天井を仰ぎ、昨日の出来事で廃墟と化した自治区を思い出すホシノだったが、アヤネとセリカがそれを否定する。

 

「それがそうでもないんですよホシノ先輩……」

 

「…………ん?」

 

「さっきアヤネと一緒に戻る途中で柴関ラーメンのところに寄ったんだけど、見てよこれ!」

 

 そういってセリカは自身のスマホで撮影した写真を対策委員会の皆に見せた。

 

「……嘘でしょ……」

 

「…………あの荒れ地が元通り……」

 

「どうやって建て直したのでしょうか?」

 

 ホシノ、シロコ、ノノミの3人は驚いた様子でセリカの写真を覗きこみ、各々が驚きの言葉をこぼす。セリカの撮った写真には昨日の騒動があった場所と本当に同じ場所なのかというほどに元通りになっていた。

 

 倒壊したビルの瓦礫は1つも残っておらず、アスファルトの剥がれた道路も見当たらない。むしろ昨日の騒動が起こる前よりも綺麗になっているのではないかと思うほどである。

 

「「「…………」」」

 

 写真を見た3人は空いた口が塞がらずただ茫然としていたが、ただ1人シャーレの先生だけは顎に手を当てながら思考を巡らしていた。

 

「(写真を見る感じ本当に元通りだ……。ここ(キヴォトス)にきてまだ日は浅いけど、色々と驚かされるばかりだね)」

 

 先生自身、セリカの写真を見て驚きはしたものの、それ以上に不可解な点を見つけていく。

 

「(ノノミの言う通り、どうやって元通りにしたのかな……瓦礫の片付けだけならまだ納得できた。今まで見てきたメイドさんの強さから、瓦礫の撤去は容易にできそう……というか昨日地面をひっぺ返してたし……)」

 

 持ち前の頭の回転速度を生かして、対策委員会が話し合うのを尻目に1人考察を進めていく。

 

「(そもそも重機や足場に使ったパイプの類も見当たらない……あの後に瓦礫を片づけた後に持ち込んで工事が終わって撤去した?いや、それはあまりにも非現実的過ぎる。ここ(キヴォトス)でも偶に工事現場で働いている生徒達は見かけるけど、その子たちがいたとしても半日で終わるなんて規模じゃなかった)」

 

「……先生?どうかしましたか……?」

 

 セリカの写真を眺めたまま固まっている先生に違和感を覚えたアヤネが声を掛けるが、先生からの反応はなかった。

 

「(いや、というか建材はどうしたんだろう?道路の補修や千切れた電線も元通りになってるから、復旧に使った建材の量も少なくないはず……もしかして瓦礫を再利用したとか……いや、あり得ないか……流石に……)」

 

「あの~、先生?大丈夫ですか?」

 

「……ん、どうしたのアヤネ?」

 

「あっ、シロコ先輩。その……さっきから先生が写真を見たまま反応が無くて……」

 

「……ん……」

 

 声を掛け続けるアヤネに気づいたシロコが事情を知ると、椅子から立ち上がって先生の座る椅子の後ろへと移動する。

 

「(うーん……仮にあそこの瓦礫を素早く撤去して、補修の自治区を補修する為の人材・機材・建材を持ち込んで作業して、今日の朝には建材を綺麗に使い切って作業を完了して尚且つ撤収作業が完了する……無理だね、圧倒的に時間が足りない)」

 

「……シロコ先輩?一体何を……」

 

「…………こういう時はこう……お腹を……」

 

「(以前聞いたときには5人のメイドさんで会社を経営しているって言っていたけど、もしかして5人のメイドさんとは別の作業員としていたりするのかな。従業員とは別の扱いなら居るとか……ありえなくはない話だけどもその線は薄いかな……)」

 

 シロコが自身の背後に移動したことに気づくことなく考察を続けていき……そして……

 

「(そういえばこの前ユウカがミレニアムには警備や建築にドローンを使ってるみたいな話を聞いたことあるね……メイドさんもその手のドローンを持っててもおかしくはないかわひゃっ!?

 

 突如としてお腹を擽られるような感覚を受けてた先生は思わず大きな声をあげてしまう。

 

「…え、え……!?し、シロコ!?ど、どうかしたの……?」

 

「……さっきからアヤネが声を掛けても反応しなかったから……強硬手段」

 

「えっ、あ……そうなの……?ご、ゴメンねアヤネ……気づかなくて」

 

「い、いえ!さっきから写真を固まっていたので何かあったと思いまして……」

 

「ううん……ちょっと気になることがあってね」

 

「そ、そうですか……」

 

 自身が思った以上に集中していた先生は、軽く反省しながら周囲の様子をうかがう。先程大きな声をあげたこともあり、他の対策委員会から注目を集めていた。

 

「えっと……とりあえず、自治区が綺麗になっててよかったね……。それで……どこまで話が進んだんだっけ?」

 

「はい。メイドさん達がビルを倒壊させたあたりから話が脱線しまして……」

 

「あぁ……そうだったね。えっと……その時にセリカがメイドさんに対して……」

 

「そうよ……勝手に私たちの自治区の建物を壊さないでよ!って言ったら1人のメイドが……ここは私たちの自治区じゃないって言って…………」

 

「…………そこでさっき言ってたことを聞いたわけだね」

 

 色々と話が省略され、度々脱線しながらも漸く話の話題へと辿り着く。

 

「その時にメイドさんから自治区やビルの所有権に関する書類を譲ってもらいまして……。社外秘の情報とのことですので紙には出せないんですが」

 

 そう言ってアヤネは昨日メイドさんから送付された契約書をタブレットに表示する。

 

 そこに書かれているのは、購入したビルの名前や建物の規格、建設された日時や取引価格。そしてビルを所有する企業の名前であった。

 

「(カイザー、か……)と、言うことは……あの風紀委員の子たちは既にあそこがアビドスの自治区じゃないってことを知ってたわけだ」

 

「はい、恐らくは……」

 

「ふーん……仮に私たちの自治区じゃなかったとしても無断で戦術的行動をしたのは変わらない…………けど、後からであればいくらでも大義名分が建てられたわけだ」

 

「…………風紀委員の師団ともいえるような人数の部隊という勝算と、素行不良の生徒……便利屋68という理由があるからこそ、あのゲヘナ学園の行政官は動いたわけですね」

 

「メイドさんが居てくれたからなんとかなりましたが……それでも危ないところでしたね」

 

「……今更だけど、本当に何者なのよあのメイド達……こんなものモノまで貰っちゃったけど厄介モノとかじゃないわよね……」

 

 そういってセリカは自分たちアビドスに対して便利屋68と共に敵対することもあれば、ブラックマーケットにてトリニティの生徒を押し付けられ、昨日のように窮地を助けてくれたメイド、Aid Ladyに対して何とも言えない感情を抱きながら、彼女の制服の内ポケットから黒いラインの入った白いカードを取り出した。

 

「……ん?それなんだっけセリカちゃん?」

 

「あっ……そういえばそのカードはセリカが貰ってたんだったね」

 

 制服から取り出すと自身の座る席の前に置いたカードにホシノが興味を示し、先生がそれを補足するように口を開いた。

 

「私も持ってるんだけど、そのカードはメイドさん達が経営してるAid Ladyっていう会社の名刺みたいなものでメイドさん達に依頼するときに使うんだけど……セリカの持ってるカードは私のカードとちょっと違うみたいだね……?」

 

 そう言いながら先生は、持っている情報をみんなと共有しながら自身も持っている白いカードを取り出して、セリカの持っているカードを比較するように隣に置いた。

 

「………あの小さいメイド*1が言ってたことは、なんでも……セリカ専用のカードみたいなことは言ってたと思う」

 

「……ん?セリカちゃん専用……?」

 

「そうなのよ……この前に便利屋のやつらがアビドス高校に攻め込んできたときがあったでしょ?その時に一緒にいたメイドが私に渡してきたカードなんだけど……先生の持ってるカードとどう違うのかしら……?」

 

「むむむ……サイズは同じで、デザインが違うだけ……でもメイドさんが言うには会員カードって言ってたみたいだし……なにが違うのかな?」

 

 先生も声を唸らせながら自身とセリカの持っているカードを見比べるが、外見から判断できるよな点はカードのデザイン以外では確認できない。このカード自体を渡した本人であるメイド達に聞くのが一番早いのではと考え始め……

 

「…………そりゃっ!」

 

「……あっ!?ちょ、ちょっとホシノ先輩!?」

 

 先生と同様に自身の席の前に並べてある2枚のカードを見比べていたセリカだが、突如として視界外から伸びてきた手によって黒いラインの入った白いカードをかすめ取られてしまい、思わず声をあげる。

 

「こんなにも怪しくて危なそうなカードはおじさんが預かっておきます!セリカちゃんのことだからいつの間に無くしちゃいそうだからね?」

 

 そういってカードを手にとったホシノは制服の胸ポケットにしまった。

 

「うーん……セリカちゃんですから」

 

「……この前も騙されて変なブレスレットを買ってた。セリカが持ってるのは不安」

 

 続くように対策委員会の2年生2人がホシノの行為を肯定する。

 

「ちょ、ちょっと……!先輩たちまで!?あ、アヤネは?アヤネは私のことをどう思ってるのよ!?」

 

「あ、あはは……私もそのカードは先輩たちに任せたほうがいいかな……?」

 

「うーん……私はノーコメントってことで」

 

 先輩たちにセリカへの不安を告げられた本人は救いを求めるように同級生のアヤネへと意見を求めるが、無惨にも先輩たちと同様の返事が返ってくる。そして先生も自身に話を振られるような空気を感じ取り、肯定とも否定とも言えない返事で先手を打った。

 

「み、みんなして私を何だと思っているのよ……」

 

 そうしてセリカは座る席へと項垂れ、しぶしぶ自身の持っていたカードをホシノへと託した。

 

「……でも、なんでこんなにもアビドスの土地が私たちの自治区になってないの?本来のアビドス高校本館と、その周りの広大な土地…………土地っていうよりは荒れ地が近いけど」

 

「そうですね……アビドス高校本館の周辺、数千万坪の荒れ地はすでに私たちの自治区ではなく、まだ砂漠化が進んでいない市内の建物や土地までもが私たちの手から離れています」

 

 そういってアヤネはアビドスの地図を教室に置かれたホワイトボードに張り付けると、マーカーで所有権の有無を示すように書き始める。

 

「……そして所有権がまだ渡っていないのは、こうして今使っている校舎と、周辺の一部地域だけです」

 

「ですが、どうしてこんなことに?学校の自治区の土地を取引するだなんて、普通できるはずが……」

 

「……アビドスの生徒会、でしょ」

 

 ノノミの抱いた疑問に答えるようにホシノが呟いた。

 

「学校の資産の決議権は、生徒会にある。それが可能なのは普通に考えて、その学校の生徒会だけ」

 

「……はい。ホシノ先輩の言うとおり、取引の主体はアビドスの全生徒会でした」

 

「……アビドスの生徒会は、2年前に亡くなったはずでは……」

 

「はい。ですので取引は2年前を最後に行われていません」

 

「そっか……2年前…か……」

 

 そう呟いたホシノはどこか過去を思い出すかのような表情を浮かべながら、2年前に無くなったアビドス生徒会のことについて語り始めた。

 

 対策委員会が出来る前、今から2年前のアビドス生徒会に所属していた生徒は自身と生徒会長の2人だったこと。当時の学校も生徒数は二桁であり、教職員も含めほとんど人がいなかったこと。

 

 当時のアビドス高校のことや、生徒会長のことを思い出しながら語るホシノに対策委員会の4人と先生は静かに耳を傾けていた。

 

「ほんとうに……お馬鹿さん2人が集まっただけの生徒会。肩書だけみたいなもので結局借金を減らすどころか、重要な問題にすら気づくことが出来なかったんだ……ずっと……なにも知らないままでさ……」

 

 当時の生徒会長を含め、自虐の強い過去を語ったホシノだがシロコがそれを否定する。

 

「そんなことはない。ホシノ先輩のおかげでこうして今対策委員会の5人が集まって、こうして重大な問題に向き合えてる。過去は過去、現在(いま)現在(いま)。私たちがこうやって問題に立ち向かえてるのはホシノ先輩が居てくれたから」

 

「う、うへ?」

 

「いつもダラダラしてるし、怠け者で、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な時にはいつも私たちの前に立ってた」

 

「そうです!セリカちゃんの時も真っ先に動いたのもホシノ先輩でした!」

 

「……うへ~、そうだっけ?」

 

 シロコの考えとアヤネの肯定に対しぼやかしながらも返事をするホシノだが、頬が赤くなっていたのは誰も指摘しなかった。

 

「でも、なんで前の生徒会はカイザーコーポレーションにアビドスの土地を売ったのでしょう……?」

 

 その場の空気を変えるようにノノミがそう呟いた。実は手を組んでいた説や前生徒会にスパイがいたなどの推測が飛び交う中、ホシノが前置きを言いながらも自身の考えを口に出す。

 

「いや……多分、最初は真面目に借金を返そうとしていたんじゃないかな」

 

「私も同じかな」

 

 続くように先生も自身の考えを伝えた。

 

「全く同じって訳じゃないけど、似たような手口があるんだ。取引の中において重要なのは、いかに相手に気づかれないように要件を飲ませるかってこと……きっとアビドスの砂漠や荒廃した土地を買い取って借金返済に充てるように促したんだろうね。カイザーコーポレーションの目的は最初から負債の回収じゃなくて、アビドスの土地だったってこと」

 

「……え、なによそれ……詐欺じゃない!」

 

「うん……子ども(生徒)を狙った大人による悪質な罠だよ」

 

 荒廃した土地に高値が付くわけもなく、ただ利息の返済へと回されていって……気づいた時にはもうアビドスの土地はカイザーコーポレーションの物になっていた。全くもって面白くない事実に先生は奥歯を嚙み締めた。

 

「でも、どうしてカイザーコーポレーションはアビドスの土地を狙っていたのでしょうか……?」

 

 そうアヤネが声を出す。当たり前のことだが、ただ荒廃した土地や廃墟を買い取ったところでカイザーコーポレーションに利益は無い。

 

「……その砂漠のことでみんなの耳に入れたいことがあってね……」

 

 そして先生は昨日にヒナから聞いたことを話しだす。

 

「昨日の風紀委員会との騒動の時に、委員長のヒナから教えてもらったことがあってね……」

 

 

 アビドスの捨てられた砂漠で、カイザーコーポレーションが何かを企んでいる

 

 

「アビドスの砂漠で……?」

 

「……なんでゲヘナの風紀委員長が?」

 

「先生に対して……」

 

 対策委員会の皆がそう口々に声を漏らしながら憶測を深めるなか、セリカが大声をあげる。

 

「ああもう!そんな難しいことを考えるより、先にやることがあるでしょ!」

 

「せ、セリカちゃん?」

 

「アビドスの砂漠はアビドスの自治区なんだから、実際に行って直接確かめて見ればいいじゃん!」

 

「……ん、そうだね」

 

「いや~セリカちゃんは良いこというねぇ。こんなにたくましく育ってママは嬉しいよ、泣いちゃったからティッシュ頂戴」

 

「はいどうぞ☆」

 

「ちょ、ちょっと何よこれ!?私が真面目なこと言ったら可笑しいわけ!?」

 

「あ、あはは……でもセリカちゃんの言う通りです」

 

「……じゃあ準備が出来たら、アビドス砂漠へと行ってみようか」

 

「「「「「 うん!」」」」」

 

 一同が先生の一言に頷き、おのおのが準備を始めるために席を立とうとして……

 

「そ の ま え に ~」

 

「「「「「 ? 」」」」」

 

 先生の一言で皆の動きが固まった。

 

「コレにサインだけ書いてもらおうかな?」

 

 そういって先生は、自身の持っている鞄から5枚の書類を取り出した。

 

*1
Aid Ladyの代表は、他のメイドと比べて機体のサイズ調整を行っている為、区別しやすいようにシロコがそう表現してるだけ




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