機械少女と青春を   作:バグキャラ

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ビルにて

 軋む関節を、崩れる指先を、剥がれゆく皮膚を気にも止めずに機体を動かす。動くたびに罅が広がり、亀裂が生まれ、体の端から崩れていく。それでも彼女は歩みを止めることはなかった。

 

 

 

 

 

 数時間前……

 

 目を覚ました彼女は立ち上がり、辺りを見渡す。

 

「いつまでもこのようにしている場合ではないですね。まずは機体の換装からでしょう」

 

 彼女は再起動してからの数十日、自身の状態について思考(演算)していたが、自身の状態及び、なぜ自身が再起動したのかについて結論が出たわけではない。

 

 機体の状態と残存動力が警告を発したためである。何故自身が再起動したのか、どうして社との通信が途絶えているのか。彼女は“その結論を今求めるべきではない”という結論を数十日掛けて導き出した。

 

「少なくともこの()()()()()()()から新しい()()()()()()に、できることなら()()()()()()()に変えたいところですね」

 

 彼女はぎこちない動作で歩み始めた。壁の隙間から差し込んでいた光はないことで真っ暗な空間と化していたが、何の迷いもなく進んでいく。彼女にとって暗闇など歩みを止める要因の一つにもならない。ある程度進んだところで足を止め、壁に脚を向ける。そのボロボロな機体からは想像もできない威力で繰り出された“蹴り"が壁を長方形の形で吹き飛ばした。

 

 そこから入り込む光や空気が暗闇で満ちていた部屋を上書きするように満たしていく。彼女が再起動した部屋全体が埃やシダで覆われており、先ほどの一撃で生じた衝撃が部屋の埃を巻き上げていく。

 

「ずいぶんとひどい部屋にいたものですね」

 

 そう呟いた彼女は蹴り飛ばして作った空間の出口へと向かっていく。外から差し込んだ光が彼女のボロボロな機体を照らし出す。纏っていた衣服や人工皮膚が剥がれ落ち、晒されたその銀色に鈍く輝く金属のフレームには亀裂が入っている。全身には細かい罅が多くみられ、その細い指先は何本か欠けている。そんな状態を意にも留めずに足を進める。

 

 先ほど蹴り飛ばした長方形の物体は、端に蝶番がついていることからドアだったと見て取れるそれを尻目に、彼女は建物の外へと出る。

 

「営業用フレームとはいえ、ここまで劣化していたことからかなりの年月が経っているとおもいましたが、ここまで荒れているとは……。当社への最短ルートを検索、使用動力を最小限に設定

 

 建物から出た彼女が見た光景は建物が風化し、ビルがへし折れて道路だったであろう場所には瓦礫が散乱しており街としては見る影もない。場所によっては植物に覆われて緑色に染まっている。ミレニアムの郊外に位置するそこは、のちに廃墟と呼ばれる場所であった。そんなことなど知りもしない彼女は体を引きずるように歩きながら、検索したルートをもとに目的地へと向かうのだった。

 

 

 

 彼女が歩き始めてからどれだけ時間がたっただろうか。目的地へと向かう最中に徘徊する無人兵器に絡まれながら、時間が経ってもなお起動して活動を続ける自動防衛機構をあしらいながら、出立時よりも傷を増やした機体を動かして、彼女は歩みを止めることはなかった。

 

 そして彼女は廃墟となったビルの前にたどり着く。ガラス張りの壁はところどころが割れており、伸びた蔦がビルの中へと侵入している。メモリに残っていたビルの外観と比較して、暗い表情を浮かべる。

 

「ひどいものです……時間が経っているとはいえ、ここまで荒れていると思うところがありますね。しかし、機械である私がこういった印象を抱くことになるとは……停止していた間にプログラムの更新でもされていたのでしょうか?」

 

 そういって彼女はビルの中へと進んでいった。足を運んだビルの1階は、それはもうひどいものだった。元がオフィスとは思えないようなそこには、いたるところに弾痕が見られ、床には先ほどあしらっていた無人兵器の残骸のようなものが散らばっている。

 

「これは……先ほど絡んできたものと同じ類のものでしょうか。すでに廃墟同然になった後とはいえ、勝手に立ち入られるのは良い気分ではないですね」

 

 そう周りを見渡しながら床に散らばった残骸を足で払いのけ、オフィスの奥へと進んでいく。そしてビルに備え付けられたエレベーターの前に立つ。そして欠けた指先でボタンを押す。

 

『当館は現在休館中であり、関係者以外立ち入り禁止となっております』

 

「……まさかシステムがいまだ健在とは。外観を見るに既に機能していないと思っていましたが、これは驚きですね。当機体の製造番号を表示。機体の換装のために施設への立ち入り、及び施設の利用許可を要求

 

『……認証終了。登録された製造番号を確認しました。当ビルの施設を再起動……エレベーターが到着するまで、しばらくお待ち下さい』

 

「システムだけでなく施設も動くとは、階段を使わなくて楽ですね。ダメ元で新しい機体の確保さえできればと思いましたが、これは僥倖です」

 

 そんなことを呟きながらエレベーターを待つ彼女の後ろで動く影があった。先ほど足で払いのけた無人兵器の残骸である。外部からの接触によって再起動し、備え付けられた兵装の銃口が彼女の後頭部を捉える。キヴォトスに住まうものたちにとっても痛いでは済まないであろう一撃が撃ちだされて彼女へと向かい、振り向いた彼女のボロボロの指先へと摘ままれる形で防がれた。

 

「さきほどの残骸ですか。社内への無断侵入、設備破損に飽き足らず、暴行未遂とは。自己判断思考プログラムどころか自律プログラムが組み込まれていないと、そこらの鉄くずとなんら変わりありませんね」

 

 先ほど摘みとったヒトの指先ほどの大きさの弾頭を打ち込んだ本人(無人兵器)へと向け、欠けていない指先で弾くように撃ち出す。彼女に撃ち込まれた一撃とは比較にならない速度で飛ばされた弾頭は、無人兵器の装甲へとめり込むように直撃し、その衝撃をもって直線状に弾き飛ばされてオフィスの外へと吹き飛んだ。

 

 ただの火薬も用いていない、指先で弾きだされた弾頭を受けた無人兵器は、その組み込まれたプログラムでは何が起きたかを判断することすらできずに、ビルの向かいの瓦礫の山と衝突し、あたりに散らばった鉄くずの仲間入りを果たした。そうした一連の過程を見届けた彼女の後ろでエレベーターが到着したことを知らせるチャイムが鳴り、ドアが開く。

 

「機体の換装とシステムの更新が済み次第、“他の機体”との通信、及び機体の再起動した理由について結論を出そうと思いましたが気が変わりました。準備が整い次第、この辺り一帯を“掃除”するとしましょう」

 

 そういって彼女はエレベーターの中へと姿を消した。




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登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?

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  • いらない
  • そんなこといいからはよ続き書け
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