機械少女と青春を   作:バグキャラ

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とりあえず、筆が進んだので投稿します。このぐらい投稿頻度が高ければいいのですが……


苛烈な砂漠で

「シロコ、セリカ!2人で相手を挟んで!」

 

「……っ!了解、シロコ先輩!」

 

 突撃銃という同じ武器種を持った2人は、砂に覆われたアスファルトという足場の悪い状況を気にも留めずに全力で疾走する。過って脚を滑らせるような愚行を犯すことは無く、逆に慣性を利用することで生み出した不規則な動きが、2人の間に挟まれた相手からの射線を切りつつ適格に急所を狙う。

 

「ん、セリカは好きに動いて。私が合わせる」

 

「なら、お言葉に甘えて!」

 

 氷上ならぬ、砂上のスケートともいえるような2人の動きは、二人の間に挟んだ相手どころか、砂漠の戦場全体を魅了し、翻弄するかのようであり、お互いに似た身体的特徴を持っていたからこそできたことであっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホシノは弾薬を受け取ったら前に詰めて!無理に撃破はしなくていいから、とにかく視線を集めて!」

 

「うへ~、おじさんに肉体労働は厳しいんだけどな~」

 

 そう言いつつも、頭上に来たアヤネのドローンから受け取ったショットシェルベルトを素早く体に巻き付けると、手に持った盾の重さを物ともせずに前線へと駆けだした。一連の動作を手慣れた様子で行うそれは、歴戦の猛者とも言えるような所作であり、彼女の持つ戦闘技術の高さが垣間見えたようであった。

 

「さーて……おじさんも年甲斐もなく暴れちゃおうかな?」

 

 普段の生活であれば、すぐさま年の近い後輩から指摘され、流されるような冗句であったが、その存在は近くにいないため、その場に残ったのは不適に笑みを浮かべた少女だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノノミは今ある弾薬を打ち切ったら、銃身を冷却!適度に様子を伺いつつ、隙を見て次の遮蔽物に移動して!」

 

「了解しました~」

 

 ずいぶんと前に放棄された車両に身を隠しつつ、他のメンバーを援護する為に弾幕を張っていたノノミは、撃ち切った給弾ベルトのつながった弾薬コンテナを取り外すと、わずかに赤く灼けた銃身を休ませながら遮蔽物に背を預ける。

 

 足元に落ちた薬莢を払いながら遮蔽物から僅かに顔を覗かせ、戦場を翻弄する対策委員会の姿を確認すると、銃身の冷却中であったリトルマシンガンⅤを片手で引っ張るように持ち上げる。遮蔽物として扱っていた車両から飛び出すと、近くに投下された物資をもう片方の手で掠めるように走り、そして近くに放棄された別の車両の後ろへと身を投げ込んだ。

 

 その直後、先程まで身を隠していた遮蔽物(車両)から火の手が上がる。わずかに残っていたガソリンが車両のタンクから漏れたことと、車両のエンジン部分に着弾した影響による部品のスパークによって引火し、既に穴だらけであった車両を黒く染め上げた。

 

 新しい遮蔽物(車両)へと身を預けた彼女は、ここへ向かう最中で掠めるように取った物資から新しい弾薬コンテナを取り出すと、給弾ベルトを愛銃と繋げる。同時に物資からペットボトルを取り出すと、封を開けて中身を一口分、中へと入れて乾いた喉を潤す。

 

「ふぅ……ぎりぎりでしたね~。さて、反撃ですよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤネ!次はシロコとセリカのマガジンをお願い!それと手榴弾を2つずつ、指定した場所に投下して!」

 

『は、はいっ!』

 

 十数分前から続く戦闘の中で一番の功績をあげているのは、前方で活躍するシロコやセリカ、ホシノや後方から弾幕によって援護するノノミではなく、オペレーターのアヤネであった*1。長く続く戦闘において最も重要であろう物資の補給を担っているのが彼女であり、その巧みなドローン捌きで戦場に赴く対策委員会の4人を支え続けていた。

 

 かつてアビドス対策委員会は資金・資源枯渇によって、ヘルメット団相手に窮地へと追い込まれていたが、シャーレの先生の来訪によってその窮地を脱することが出来た。

 

 先生が来る以前までは、対策委員会にとって銃のマガジンどころか、銃弾一発すらも貴重品となっていたが、今となってはシロコとアヤネの持っていたアビドス唯一のドローンすらも使い捨てるかのような戦法を取ることが出来ている。

 

 砂漠へと赴く前に用意された先生による複数の補給用物資を、先生によって容易された無数のドローンによって運ばせている状況は、まさしくお金に糸目をつけないという慣用句そのものであった。

 

 物資の輸送自体はシッテムの箱を持つ先生によって行われる予定であったが、オペレーターとして対策委員会の中で戦場へと赴くことが出来ない彼女が、先生に対して名乗り出たことで物資輸送の役割を担うこととなった。……が、先生には他のメンバーへのサポートを優先して貰おうとしていたが、彼女自身まさかここまでとは思ってもみなかった。

 

 普段であれば、対策委員会の作戦時にはオペレーターとして戦場の索敵や進路指示を行っている彼女が、同じく物資輸送だけに集中したドローンの操作であってもなお、先生の指示にぎりぎり食らいつけていることから、シッテムの箱による生徒へのサポートがどれだけ高度なものかを彼女は現在進行形にて身に染みて理解させられていた。

 

 アヤネの持つタブレットと、それに同期した彼女の身に付けるメガネ型端末*2には、先生の持つシッテムの箱から送られてくる膨大な量のデータが表示されている。

 

 まるで戦場全体を第三者目線によって俯瞰しているかのようなソレは、秒数単位で目まぐるしく変化していき、そして追加されたデータには戦場で動く対策委員会の4人の現在位置や所持している残弾数。そして先生によって指示された物資の種類や物資投下地点であった。

 

 すぐさま新しいドローンを起動すると、流れるような動作でドローンの操作権を掌握して必要な物資を持たせて戦場へと送る。秒単位で指定された投下地点へとドローンを送ると、直後に戦場で動きまわっていたシロコとセリカが挟んでいた相手を無力化する。それと同時に2人は空になったマガジンを投げ捨て……

 

『シロコ先輩!セリカちゃん!』

 

「!ナイスタイミング、アヤネ」

 

「タイミングばっちり!」

 

 2人のすぐそばに投下された物資から自身の銃に合うマガジンを抜き取り、愛銃へと挿し込んでチャージングハンドルを引いて薬室へと弾薬を送り込んだ。

 

 ただでさえ、先生から送られてくる戦場の情報を理解し、指示された通りにドローンを動かすだけでも精一杯の彼女は、それでも戦場で直接指揮を執る先生自身や、それに従う対策委員会の4人を助けるために額に浮かぶ汗を拭い、イヤホン越しに聞こえる者へと声を掛けた。

 

『先生!追加の指示をお願いします!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間前……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドスにて準備を終えた6人は、昨日風紀委員長に伝えられた通り、アビドスの砂漠へと向かっていった。

 

 以前までは舗装された道路と、それに沿うようにして建てられたであろう建物は既に多くの砂で覆われており、砂丘の所々から人工物の一部が顔を覗かせるだけであった。

 

「うーん……話には聞いていたけど、まさかここまでだったとはね……」

 

 先生はその現状に心を痛めながらも現実からは目をそらさない。

 

『今もなお定期的にアビドスに訪れる砂嵐によって、街は砂に飲まれていく一方です。何か恒久的な解決手段があればいいのですが……』

 

 先生の口からこぼれたその言葉に対し、イヤホン越しからオペレーターのアヤネがそう答えた。

 

『きっと昔の先輩たちは、この現状をどうにか解決しようとして……金融機関に借金をしていたんだと思います。しかし……』

 

「その借金も一時的な対策しか出来ず、こうして砂に覆われていった、か……」

 

 あくまでも、このアビドスに訪れる砂嵐はあくまでも()()()なものであり、何者かによって意図的に引き起こされたわけではない。一言でいうのであれば、()()()()()()。……そう言い表せるであれば、どれほど楽であっただろうか。青春を送るはずであった生徒達を苦しめ続けた砂嵐へと、やりきれない思いをぶつけながらも脚を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして歩くこと数時間、ようやく目的地が見えてきたところで不可解な物が目に映る。

 

「……あれは?」

 

 一同は砂に覆われた街を越えて、さらに歩いた先で金属製のフェンスで覆われた何かの施設を目の当たりにする。

 

「……こんな施設、私は知らない」

 

 アビドス生徒会に()()()()()()ホシノがそう驚きの声を漏らした。以前によく生徒会関連の仕事で何度かこの場所に来ていたホシノは、この場所のことをよく覚えていた。しかし、現在(いま)では、数キロ先まで続く有刺鉄線の張り巡らされたフェンスに覆われた施設が、その存在感を誇示するかのように鎮座していた。

 

「工場……?もしくは石油ボーリング施設、ではないような……この施設は一体?」

 

「……昔はこんな建物なんて………っ!」

 

 ノノミがそう言いながら考察を進める中で、突如としてホシノが盾を構える。その直後に多くの銃弾が一同を襲い、そして施設全体にアラートが鳴り響いた。

 

「侵入者だ!」

 

「捕らえろ、逃がすな!」

 

 アラートと共に聞こえてくる掛け声と同時に、彼女たちの前方から正体不明の部隊が向かってきた。

 

「……へぇ~、よくわからないけど随分と派手な挨拶だね」

 

「ん、歓迎の挨拶は返すのが礼儀」

 

 そういって向かってきた銃弾を防いだホシノと、その横で銃を構えるシロコ。

 

『え、えっと……とりあえず応戦する形でいいでしょうか先生?』

 

「そうだね……皆には()()にサインしてもらったし、何かあれば私が責任を取るよ」

 

 そういって先生もシッテムの箱を取り出した。

 

「じゃあ、派手にいこっか~」

 

 ホシノの掛け声と同時に対策委員会は銃を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤネ!このドローン貰うよ!」

 

『はい!追加で3機のドローンを向かわせています!』

 

 先生がそういうと同時にアヤネが操作していたドローンの制御端末を掌握し、自身の意のままにする。いわゆるハッキングのような手口だが、直接操作していたアヤネ本人も抵抗するようなことはせず、自身からドローンの操作を放棄してあらたに複数のドローンを起動した。

 

「ホシノ!4秒後に大きく飛んで!」

 

「……!あ~、そういうことね。りょ~かい」

 

 先生から飛ぶ指示の意味を素早く理解したホシノは、いままで注意を引いていた目の前の装甲戦闘車を無視するかのように銃を背中に預けたかと思うと、そのまま深く身を屈めた。

 

 生徒1人に翻弄され続けていた装甲戦闘車は、突如として銃を仕舞い込み、動きを止めたホシノに対してチャンスとばかりにその太い砲身を向けた。

 

 歩兵の持つ火力の数倍はあるであろう砲弾を咥えた砲身が、しゃがみこんだホシノから見てちょうど真円となった瞬間、折りたたんでいた小さな脚を解放し、大きく跳ね上がった。

 

「……!」

 

 銃を含め重さ十数キロはあるであろう盾や装備を気にも留めずに、自身の身長以上に飛んだホシノは驚きを隠せない装甲車を尻目に空へと視線を向けた。

 

「ナイスジャンプ!捕まって!」

 

「!よっと……先生こそ、タイミングばっちりだね~」

 

 ホシノの目線の先には、大きく空へと舞い上がったドローンがこちらへと急降下してきたかと思うと、そのままホシノの頭上で大きく弧を描くかのように再度高度を上げ始め、そのドローンの脚部を片手で掴んだ。

 

 本来であれば、物資を運ぶことだけでもぎりぎりな積載量を無視したホシノを持ち上げたドローンは、高い高度からによる急降下とシッテムの箱による限界(リミッター)の突破によってソレを可能とし、ホシノを装甲車の直上へと大きく持ち上げた。

 

 予想外の行動に装甲車は慌てて砲身を上へと向けたかと思うと、そこにはドローンから手を放して、両手で持った盾を大きく振りかぶったホシノの姿があった。

 

「これで~……最後だ!」

 

 ぎりぎりで砲身を持ち上げた装甲車に対し、ホシノは狙いを済ませて大きく息をのんだ。ドローンによる高度からの落下と彼女の盾の重量、そして生徒のもつ規格外の膂力が合わさった結果、規格外の一撃を受けた装甲車の砲身は大きく歪み、その衝撃で直前まで咥えていた砲弾が発射された。歪んだ砲身を通り抜けることが出来なかった砲弾とその衝撃は、砲身の中で大きく膨れ上がり、そして装甲車の砲身と上部まるごとを吹き飛ばす形で開放された。

 

「うひゃ~……こりゃすごいや」

 

 決着となった一撃を叩き込んだホシノは、すぐさま装甲車から離れると盾を構えて身を屈めていた。そしてくる爆発の衝撃を受けながら笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様ホシノ。カッコいい一撃だったよ」

 

「うひゃっ!?せ、先生……ありがとう」

 

 盾から顔を出していたホシノは、突如として頬に冷たい感触を感じとり慌てて振り返ると、そこにはペットボトルを手に持った先生が立っていた。

 

 盾を砂に埋もれた地面に突き刺し、制服に付いた砂を払い落すと、そのボトルを手に取り封を開ける。かれこれ戦闘が開始して数十分は経っていた。最初に現れた部隊自体は退けることなど容易いことであったが、次々とくる援軍相手に対し分が悪いと判断した先生は、迎撃した装甲車や崩れかけの建物、廃棄された車両などを用いたゲリラ戦を展開していた。

 

 2人の間には少しばかりの沈黙が流れ、それを破ったのはホシノだ。

 

「…………この部隊の所属は分かった?」

 

「勿論。ホシノたちが頑張ってくれたおかげだよ」

 

 そういって2人は戦場を見渡した。次々と現れた部隊を退け、あちこちに散らばる銃火器の破片に見えるロゴを確認して口を開いた。

 

「この特徴的なタコのマーク……カイザーコーポレーションだね。装備の質からしておそらくPMC…ってところかな?」

 

「PMC……民間軍事会社ねぇ」

 

「ヒナの言っていた通りだね、大当たりだよ。おそらくここ……いやこの奥でカイザーが何かを企んでる…………!」

 

「……!」

 

 そう答えた先生の目が突如として変わるのを見たホシノも手に持っていたペットボトルを投げ捨てると、地面に刺さった盾を抜き取り再度戦闘体勢に入った。

 

「全員集合!」

 

「「「……!はい!」」」

 

 交戦していた相手を無力化し終わり、戦場で動くホシノを除く3人が集まって一息ついていた最中であったが、先生から聞こえてきたその指示に対し、疑問をぶつけるような真似はせず、即座に行動を開始した。

 

 先生がアビドスへ来てまだ数日であったが、その高い実力と本人の気質から信頼を勝ち取っており、返事を返した3人の動きに迷いはなかった。

 

「ノノミは近くの物資を持ってきて!ホシノ!君が要だ!」

 

「……何をするつもり……あぁ、そういうことね」

 

 緊迫した先生の声に対し、ほんのわずかな懐疑心を抱いたホシノだったが、突如として聞こえてくるプロペラ音によってソレをすぐさま捨てた。

 

 先生自身も白い白衣をなびかせながら砂に覆われたアスファルトの上を全力で走り、その後ろをホシノがついていく。そうしてついたのは先程ホシノが撃破した装甲車の残骸であった。

 

 2人が目的の場所に付くと同時に、遠くから走ってきた3人が来るのが見えると、急いで全員に指示を飛ばす。

 

「ありがとうみんな!この下に入って!ノノミが最後!」

 

「「「はい!」」」 

 

 一番最初に先生がキャタピラと車体の間に体を滑りこませると、直後に滑りこんできたシロコとセリカを受け止めた。

 

「おかえり2人とも。すぐ指示に従ってくれてありがとう」

 

「それはいいだけど……何がくるの?」

 

「ん、セリカ。質問はあとで」

 

 狭い空間の中で息を整えながらも不安そうな表情を浮かべるセリカの頭を撫でて落ち着かせながら先生は答える。

 

「そうだね。あとで説明するから、今は……ね?」

 

「……わかったわ」

 

「ありがとうセリカ」

 

 ひとまず同意を得たセリカの頬に付いた砂をやさしく拭き取った先生は、続けざまに指示を飛ばす。

 

「ノノミ!その物資をひっぱりながら入ってきて!ホシノ!その盾で蓋をして!」

 

「分かりました~」

 

「……流石にあれはおじさんもびっくりだよ」

 

 ドローンによって投下された物資を引きずりながら走ってきたノノミが、愛銃を体に沿うように抱えて車体の下に滑りこむと、入り口を物資で蓋をする。

 

「ホシノ!早く!」

 

「……みんな入ったかな?それならおじさんも……よっこらせっと」

 

 そう言いながらホシノは体を屈めて入ると、車体と地面の間に盾を構えた。

 

「みんな!目と耳を閉じて口を大きく開いて!」

 

 現状をまだ把握しきれていないセリカ、シロコ、ノノミは少し狼狽えながらも先生の指示通りにする。この状況を把握していたのは、シッテムの箱による戦場の俯瞰をすることができる先生と、そのデータが送られてきていたオペレーターのアヤネ。そして最後に車体の下に潜り込んだホシノだけであった。

 

 カイザーPMCとの部隊との交戦していた戦場の上空には武装ヘリが、背に付けたプロペラによる強風によって戦場を覆う大量の砂を巻き上げながら、機体に取り付けた対地ミサイルを先程の戦場へと向けた。

 

「キャタピラを背に、衝撃に備えて!」

 

 先生がそう指示した後にキャタピラの隙間から強風によって砂が舞い込み始めた直後、装甲車の残骸の近くから聞こえてくるプロペラ音と共に凄まじい爆音と衝撃波が、その下に隠れる全員を襲った。

 

「「「「…………!」」」」

 

 まるで大地震かのような地面の揺れと衝撃が数秒続き、戦場を黒煙で包みこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……みんな、怪我はない?」

 

「な、なんだったのよ、今のは……」

 

 体験したことのない爆音と衝撃を襲った一同は放心状態であり、セリカはそばにいた先生のお腹に顔をうずめて声が震えており、シロコ*3も近くにいたノノミに抱き着いていた。

 

「び、びっくりしました~……」

 

「の、ノノミ先輩!?びっくりどころじゃないわよコレ!」

 

「…………ん」

 

 ノノミの一言にわずかながら気を取り直したセリカは再度、先生へと説明を求めた。

 

「……私も初めて見たけど、まさかここまでの威力だなんてね……」

 

「いや~……まさか戦闘ヘリを持ち出してくるなんて……しかも対地ミサイル持ちだなんて、おじさんびっくりだよ」

 

「せ、戦闘ヘリ!?なんでそんなものがアビドスの砂漠に居るのよ!?」

 

 セリカからの問にホシノがそう答えると、再度声をあげると聞かれた本人である先生が補足した。

 

「ちょうどいいね……良く聞いてみんな。アヤネも聞こえている?」

 

『は、はい……まさかここまで音が聞こえてくるなんて驚きです。皆さんに怪我が無くて良かったです』

 

 ミサイルによる爆音と衝撃によって一時的に通信が途絶えていたアヤネだが、なんとか再度連絡を取ることが出来き、先生も一安心する。

 

「さっきまで戦っていた相手はカイザーコーポレーション。この部隊は装備的におそらくPMCだと思う」

 

「PMC……何それ?」

 

『民間軍事会社の略です。カイザーコーポレーション自体、多くの分野に展開している企業ですがまさか軍事にまで手を入れていたとは……』

 

「……てことは、カイザーがアビドスの土地を買った目的はその……ぴーえむしーってやつの施設を建てるためってこと?」

 

 説明を聞いたセリカがその疑問を先生へとぶつけると、考え込むように喉を唸らせた。

 

「うーん……でもこんな遠くに施設を構える意味も薄い気がする」

 

 施設を建てるにしても、アクセスの悪いアビドスという立地の更に奥にある砂漠で展開するメリットは少ない。広大な土地とそれに見合わない安価な点は利点として上げられるが、説得力が少ないと先生は考える。

 

「さて……とりあえず、これからどうする?風紀委員長のヒナちゃんから聞いたことは大当たりで、おそらくこの奥にその答えがある……とは思うけど、今ならこの黒煙に乗じて撤退することもできるよ?」

 

 先生がそういった直後、対策委員会の4人が否定の言葉をあげた。

 

「冗談じゃないわよ!ここまで来て帰るつもりなんて一切ないわ!」

 

「ん。セリカの言う通り」

 

「ここまで来たら行けるとこまで行きたいですね」

 

『わ、私もこの先に何があるのか確かめて見たいです!』

 

「そういうことだからさ~、お願いしていいかな先生?」

 

 4人と通信越しの1人から頼まれた先生は、どこか肩をすくめつつも笑顔を浮かべた。

 

「勿論!生徒からのお願いだからね!さて、とりあえずここから出ようか」

 

「「「「 はい! 」」」」

 

 対地ミサイルからの衝撃と爆風を守ってくれた装甲車の残骸は既にボロボロの状態であり、つぎ同じもので攻撃されたら無事でいられる保証はない。ホシノが衝撃によって地面と車体に食い込んだ盾を蹴るように外しながら再度戦場へと戻ると、続くようにセリカと先生が車体の下から起き上がり、シロコとノノミは反対側から表面の炭化した物資を蹴破りながら起き上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~……こりゃ一溜まりもないね……」

 

「黄色い砂漠が真っ黒……」

 

「砂は減りましたけど、その代わりに……」

 

「……ボロボロだね」

 

 一同が装甲車の残骸から這い上がるとそこは、砂で覆われていたはずの戦場は黒く染まっており、砂の下に埋まっていたアスファルトや建造物が亀裂の入った状態で姿を露わにしていた。

 

「とりあえず相手は黒煙でこちらを見失ってるはず。もしかしたら撃退したと勘違いして撤退してるかもしれないから、今のうちに前進しようか」

 

「「「「 了解 」」」」

 

 先生の方針に従う対策委員会の面々はそう返事すると、各々の持つ銃の動作を確認する。その時ちょうど彼女たちの近くにアヤネの操作するドローンによって物資が投下され、それぞれが必要とする弾薬や、渇き疲労した体が欲していた水分を補給する。その彼女たちを一歩引いた場所から見守っていた先生は笑顔を浮かべる裏で厳しい表情を隠していた。

 

「(……まずい状況だね。士気は高いし、物資もまだ大丈夫。だけど疲労ばかりはどうしようもないか……。本当は撤退したかったけど、ここまで来たら恐らくあの子たちだけで突撃しかねない……)」

 

 以前、便利屋68の率いる傭兵たち達と交戦した際に浮かんだ敗北の2文字が再度先生の脳裏に浮かび上がる。

 

「(もしもの時は生徒だけでも必ず逃がす……コレを使えばそれだけの時間は稼げるはず)」

 

 白衣の下に着るスーツの内ポケットに手をあて、どこか覚悟を決めたような先生。表情には一切出さず、準備を整える生徒達には気づかせなかったが、ただ1人ホシノだけはその様子を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒達が準備を終え、銃を構える。それを見守っていた先生が言葉を発する。

 

「みんな、準備はいい?そろそろ黒煙が晴れるから、その前にできる限り前進するよ。私が確認できる限り、黒煙を出たすぐそこに大きな施設があるから、そこに突入するよ。アヤネもみんなのサポートをお願い」

 

「「「「 はい! 」」」」

 

 そして一同は脚を進めて黒煙を抜けて…………

 

「……!」

 

 何かに気づいたシロコが銃を構えて引き金に指を掛けた。

 

「……!まって……」

 

 先生が自体に気づき、その行動を止めようと声を掛けた時にはもう遅く、銃声と共に一発の弾丸が宙を駆けた。

 

「……ゴメン、先生。でも、当てるつもりは無かった」

 

「いや、シロコの気持ちも分かるよ。今は諫めるつもりは無いけど、あとで…ね?」

 

「……わかった」

 

 突如として起きた出来事についていけないアビドスの4人であったが、目の前に現れた人物を見て納得する。素早く銃を構えて、その人物に銃口を向けるが、先生が手をあげて銃口を下げるように指示をする。

 

 目の前にある大きな施設を囲むようにしてそびえたつ防壁の上にいる人物は、身軽な様子で飛び降りるとフワりと地面に降り立った。

 

 わずかな沈黙。砂漠を吹き荒れる砂の音だけが場を支配し、先生が言葉を発する。

 

「……どうしてメイドさんがここにいるのかな?」

 

昨日(さくじつ)ぶりでございます。アビドス高校の皆様、並びにシャーレの先生」

 

 そういって目の前のメイドは丁寧に返答し、こちらに向けてお辞儀をした。

*1
生徒を直接指揮している先生は、自身のおかげで勝てたなどとは微塵も思っていません

*2
この作品を書くにあたって参考にさせていただいているリビルドワールドという作品には、メガネ型の情報端末を用いる人物が登場しており、アヤネもこれをつけていたら良いなという妄想と独自設定になります

*3
ケモ耳持ちの生徒は突然の爆音に弱くあってほしい願望です




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