機械少女と青春を   作:バグキャラ

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なんとか早めに書き終えることが出来てよかったです。


廃墟探索

 黄色い大海原とも表現できるほどに広大な砂漠にて、2つの直線的に砂煙を起こしながら進む人物がいる。全体的に白色でカラーリングされ、黒いラインが入った細見のホバーバイクへと跨ったEid Ladyのメイドであった。

 

 一般的なホバーバイクのように機体下部に取り付けれたプロペラのようなものは確認できず、後部にて青白く光るライトを通った場所に線のように残しつつ、おおよそホバーバイクとは呼べない速度で飛翔するソレは大空を翔る飛行機のようである。

 

 それに跨り、身に纏うメイド服と頭の後ろで纏められたベージュの髪を靡かせるメイドの姿は、その美しい容姿とスタイルによって様になっていたが、それとは対照に隣を走る代表を務めるメイドは、ひと回りほど小さい身体であることから、その様子を見た者に強い違和感を抱かせるようである。

 

「流石に目立ちすぎますが、この速度であれば本社まではそう時間はかからないでしょう」

 

 常人であれば、まず呼吸すら容易ではない速度のなかでそう話すメイドは、ハンドルを握る手はそのままに、バイクで駆ける砂漠一体を見回した。

 

「しかし……ここまで砂漠化が進んでいるとは。Butler(執事)の収集した地形データでは、おそらくこの砂の下に複数の建造物が埋まっているのでしょうね」

 

「はい。当機が代表をお迎えに上がる前に一度この場所を通った際に、簡易的ですが化粧箱を用いて一帯の地形データの再取得を行いました」

 

「おや、それは良い判断ですね。いずれアビドス自治区にも支店を置く予定です。機会を見て一度アビドス自治区の地形データを詳細に把握するとしましょう。取得したデータの同期をお願いします」

 

「かしこまりました」

 

 そして隣を走るメイドが取得した地形データを3D状に表示したマップを見ると、砂の下にはいくつかの質量をもった物体が確認できる。

 

「…………ふむ。確かに現在いるこの場所から数メートル下にはいくつかの建造物が確認できますね。地形の組成も地盤を除きほぼ砂ですか」

 

「市街地ではなく、おおよそ自治区郊外のような場所ですが、現時点でその全てが砂に埋もれている状態です」

 

「しかし、なぜここまで砂に覆われたのでしょうか?本来の地形との高低差からすると、おそらく砂に埋もれたのではなく、地形そのものが沈んだと判断できますが」

 

「現時点での予測では、本来この場所を支えていた地盤が()()()()()()()で崩壊し、地形そのものが沈殿。その後ここアビドスで定期的に発生する砂嵐によって砂に埋もれたとされています」

 

「おおむね同意しますが、その要因が一体なんなのか。掘削機のような()()()()()()()()()()か何かがここを通過でもしたのでしょうか?その点も含めて今後の調査で調べるとしましょう」

 

「かしこまりました……間も無く市街地へと入ります」

 

「えぇ、迷彩機能を起動するように。少ながらず市街地にも住民がいますので、見つかったら面倒です。それに急いでいる時に切符を切られては困りますので」

 

 そう冗談を交えながら迷彩機能を起動すると、砂煙を起こしながら砂原を駆けていたメイド達の姿が煙に溶け込むように見えなくなる。姿が消えた後に発生していた砂煙も市街地にはいると同時に消えてなくなり、何人たりとも彼女たちを補足することは不可能となる。

 

 カイザーPMC施設を離れてから数分。荒野仕様の車両であっても数時間はかかる距離を走破したソレは驚異的な速度であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 崩壊したビルに覆い茂る蔓系の植物。ひび割れたアスファルトの路面に、陥没した道路には土砂で濁った水たまり。どこからともなく聞こえてくる機械の駆動音から、崩落した地下施設を吹き抜ける不気味な風韻。空を覆う灰色の雲によって、昼間であろうが常に薄暗いこの場所に今、似つかわしくないであろう4人のメイド服を着た人物が歩いていた。

 

「……ったく、どこまでいっても気味が悪いなここは」

 

 4人の中で最も背の低い人物、メイド服の上にいわゆる横須賀ジャンパーを着た人物がそう愚痴をこぼした。

 

「えぇー、私は結構楽しいよ?……ほら?あそことか、いかにもって感じじゃない?」

 

 先程の人物のこぼした愚痴に反応するように答えるのは、服の上からでもはっきりとわかる身体的特徴を有しており、どこか人懐っこさを感じさせる人物は、遠くの方に見える地下へ崩落しているであろう大穴へと指をさしていた。

 

「アスナ先輩……気になるのは分かるけど、今は任務中だし後に……」

 

「もー真面目だなー、少しは気を抜いたら?」

 

「一応ここは立ち入り禁止区域ですよ……。一応はセミナーと連邦生徒会からの任務ですので……」

 

 アスナと呼ばれた人物を落ち着けるように声を掛けるのは、黒に近い褐色肌の人物、角盾カリンとメイド服の上にカーディガンを着崩し眼鏡をかけた人物、室笠アカネである。

 

「まぁアスナの言う通り、気張りすぎるなよお前ら」

 

「ほらー、リーダーもこう言ってるわけだしリラックスリラックス!」

 

 そういって部隊の先頭で話すのはスカジャンを羽織った人物、美甘ネルと足元まで伸びた長いベージュの髪を持つ人物、一ノ瀬アスナであった。

 

 ミレニアムサイエンススクール*1で活動する組織、C&Cのメンバーである彼女たちは現在、ミレニアムの生徒会であるセミナーと連邦生徒会からの依頼によって、ミレニアム近郊に位置する立ち入り禁止区域と指定された領域、通称廃墟へと調査に赴いていた。

 

「……さて、ヒマリのやつからは怪しい建物を探せって言ってたけど、流石にこの量はないだろうよ」

 

「うーん……ボロボロのビルがいっぱい!って感じだねー」

 

「この中から1つ1つ調べ上げるのはちょっと……」

 

「……いっそのこと全て爆破していくのはどうでしょう?」

 

 荒れ果てた地区の中で、ひと際見晴らしの良い場所へと移動した4人であったが、そこから見える景色はため息の一つも付きたくなるようなものであった。

 

 廃墟へと向かうきっかけとなった事件が起きてから数日後、この手の問題を専門とする人物*2からの助言で、怪しい建物を探してほしいの言われていた彼女たちであったが、その視線の先にあるのは視界の端から端までびっしりと建てられたビルであった。

 

 ここが廃墟と呼ばれるようになる前までは、それはもう大都市と呼んでもおかしくない規模の自治区であったことは想像にかたくない。

 

 しかし、現在となってはその大半が崩壊しており、なんとか形を保っている物もいずれ近いうちに崩れるであろうことは明白であった。

 

「……これだけの規模だ。地図なんかがあるわけでもなく、マッピングする暇があるほど任務の期間が長いわけでもねぇ。しらみつぶしなんてバカバカしい真似なんかせずに効率良くいくぞ」

 

「賛成~!」

 

「とりあえずミレニアムタワーにハッキングできるほどの施設となると……既に崩れた建物は除外したほうが良さそう」

 

「植物に覆われたビルも同様ですね。その他にも立地や建物の構造を考えると……やはり奥のほうでしょうか」

 

 どこか抜けたような空気から一転、簡易的ではあるが即座に目標の設定とその手段を組み立てていく4人。それぞれの持つ高い戦闘技術とずば抜けた判断力を持つことが、ミレニアムでも知れた凄腕のエージェント集団と呼ばれる所以であった。

 

「ひとまず目星となりそうな建物に移動すっか。その後は個人で好きに動けばいいだろ」

 

「りょ~かい」

 

「分かったリーダー」

 

「まぁいつも通りですね」

 

 そういって見晴らしの良い場所から動いた瞬間……

 

「「「「 !!! 」」」」

 

 全員がなにかに反応を示した。

 

「……おい、全員気付いてるか」

 

「もっちろん!なんだろコレ……?」

 

「……何かに補足された?」

 

「そのようですね、かすかに聞こえてくるのは……モーターの駆動音でしょうか?」

 

 各個人がミレニアムの中でも高い実力を持つだけあって、第六感とも呼べるものに全員が何かを感じ取る。

 

「……アカネ、2.3個ほど、近くのビルに仕掛けてこい。なるべく派手に崩れるようにしろ」

 

「了解しましたリーダー」

 

 ネルから指示を受けたアカネが端的に返事を返し、持ってきたバックを持って素早く行動に移す。

 

「カリン、近くの高台に移動しろ。ここじゃ視界が悪い」

 

「了解」

 

 カリンがアカネと同様に返事を返すと、彼女の背負う愛銃を素早く仕舞い、近くのビルへと走っていった。

 

「アスナはあたしに付き合え。……ったく、また変なのに見つかったか」

 

「おっけー!でもリーダーが面倒そうにするなんて珍しいね?」

 

「面倒っつうか、流石に飽きたってところだな。これならエンジニア部の奴らが作る意味不明な機械とやり合う方がまだマシだ」

 

 部活に所属する2人に指示を飛ばしたネルは、どこか気だるげな態度で彼女の愛銃であるツインドラゴンを肩に担ぎながら溜め息を吐く。

 

 彼女達4人がここにくるまでの間、閉鎖された領域である廃墟にて今もなお動き続ける無人ドローンや防衛機構が彼女たちを補足しては幾度となく襲ってきており、その度に迎撃をする羽目になっていた。

 

 任務を開始して間もない頃は、任務を請け負った部隊、C&Cのリーダーであるネル自身の好戦的な性格から、迷うことなく交戦を開始し、その度に大きな騒ぎへと発展していた。

 

 無論彼女達は戦闘のプロフェッショナルということもあって危険を犯すようなこともなく、着実に相手を撃退していた。

 

 普段の学生生活において、滅多に感じることのできない緊迫した状況は、彼女自身の感情を大いに昂らせることとなった。……が、それほど敵の数が多いわけでもなく、それでいて単調な行動、更には悠久の時が流れたことを感じさせないほどには無駄に硬いと三拍子が揃ったということもあって、ネル自身のモチベーションが次第に無くなってしまったのであった。

 

「なんつーか……最初はやり甲斐のあるものだったんだが、今となってはただの作業だな。仕事との分別はつけてるつもりだったんだがなぁ………ったく」

 

 そう言って近づいてくる機械の駆動音を前に、悪態をつきながら路面の石を蹴り飛ばす。

 

「でも、今回はちょっと違うかもよ?」

 

「あ?そりゃ()()()()やつか?」

 

「うーん……どうだろ?ただ……なんとなくって感じかな?」

 

「それを()()()()()()って言うんだよ。…………そろそろか?」

 

「あのビルの奥からかな?それにしても凄い音だねー」

 

 徐々に近づいてくる機械の駆動音とは別に、何かが削れるような音が聞こえてきた2人は、音のする方向へと視線を向け…………

 

「……ん?なんだ、今までやつとは違うみたいだ…………な!?」

 

「……やっば!リーダー!」

 

 音の発生源であったソレを見て即座に回避行動へと移った。その直後、彼女達がいた辺り一体を揺らしているかのようか衝撃とともに爆風があたりを包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ははっ!これだよこれ!やっぱ戦いはこうでないとなぁ!」

 

 ボロボロになったビルの残骸を背に、高らかに笑う彼女は、先程まで抱えていた憂鬱さをさっぱり取り払ったかのようなテンションであった。

 

「おいアスナ!そっちはどうだ!」

 

「だいじょうぶー!」

 

 衝撃と爆炎によってビルの瓦礫と共に巻き上がった砂埃が、つい先ほどまで隣にいたアスナの安否を不明瞭にしていたが、その奥から聞こえてるネル同様のテンションの高い返事によって、それを確かなものにした。

 

 あの時2人が見た光景は、ビルの影から出てくる肩に()()()()()を取り付けた大型の機体。そして目の前に迫る複数のミサイルであった。

 

「あの野郎、あたしらに姿が見える前に、すでにミサイルをぶっ放してくるとは。なかなかやるじゃねぇか」

 

 視界を向け、直後に打ち出されたミサイルを認識した2人は即座に回避行動へと移ったが、それだけでは間に合わない。お互いが同時にそう判断した瞬間、ほんの僅かな視線が交差したかと思うと、そのまま2人は互いの体を蹴り飛ばしたのだった。

 

 体へと伝わる衝撃に対し、抗うような動作は取らず、そのまま体の向かう方向へと勢いを変えながら身体の重要部位を手で覆い防御姿勢を取ると、近くの崩れたビルの瓦礫の隙間へと転がりこむようにして爆炎を回避した。

 

 時間に換算して、コンマにも満たない刹那の瞬間。C&Cの初期メンバーとして、共に多くの場数を踏んだ2人であったからこそできた芸当であった。

 

「いい加減、あのドローン共には飽き飽きしてたところだ」

 

 崩れた瓦礫から体を持ち上げ、不敵な笑みを浮かべるネルは、僅かながらも彼女の一張羅であるスカジャンに土埃をつけた下手人である機体へと視線を向ける。

 

 次第に収まりつつある砂煙の間から見えたそれは、一体どのような仕組みをしているのか、彼女たちへ向け放たれて空となったポッドへ再度ミサイルを補充する途中のようだ。

 

 まるで内側から装填されているかのように空のポッドを埋めていく様子は、ネルのテンションを最高潮へと持っていくには十分すぎる光景であった。

 

「だ、大丈夫かリーダー!?」

 

「すごい音でしたが、お怪我のほうは……」

 

 先程までノイズしか発しなかったネルのインカムからは、彼女の安否を確かめるかのような声が届く。

 

「おう、お前らも無事か。アスナも無事だから安心しろ。中々おもしれぇヤツが来やがったぜ」

 

「……あれか。確か……パワーローダー?でも所々違うような……偽物?」

 

「いえ、カリン。おそらくあちらが本物なのでしょう。今なお動き続ける防衛機構の一部。それを基に作られた兵器が、いわゆるパワーローダーと呼ばれているのでしょうね。ひとまず今回の調査の目的とはかけ離れていますが、報告内容としては十分に値するかと」

 

 道路の中央で、所々に砂埃がついたスカジャンに気を止めることなく敵を見つめるネルと、地面を転がったことでメイド服に付いた汚れを払い落すアスナとは対照に、ネルからの指示を受けビルの屋上で敵を補足するカリンと、崩れかけのビルを支える柱へと背を預けて僅かに顔をだして戦況を分析するアカネ。

 

 メンバーの無事を心配することはあれど、慌てた様子はなく、冷静に相手を見据えるC&Cは、まさにミレニアムの学生が誇るエージェント*3であった。

 

「よし……最低限の仕事の報告はできるわけだ。それなら気にすることなく……暴れられるってわけだっ!」

 

「わわっ!あっぶないなーもう!」

 

 ネルがそう言い切ったと同時に、目の前の防衛機構、通称パワーローダーがその腕部に取り付けたガトリングの銃口を向けると激しく火花を散らし始めた。

 

 先程のミサイルとは違い、事前にその動作を認識していたネルとアスナはその場から素早く跳躍して向かってくる銃弾を回避すると、そのまま安全圏である足元に潜りこみ、黒い装甲へと銃弾を叩き込んだ。

 

「……やっぱりっつうか、硬いなこいつ。アスナ!」

 

「こっちも無理っぽい!隙間までびっしりだよ!」

 

 ヒトでいう脇腹に相当する部分の位置に銃弾を叩き込んだネルは、その僅かながらに付いた弾痕と火薬特有の黒い汚れを付けただけの装甲に苦い表情を浮かべ、その反対側に潜り込んだアスナは、機体を支える脚部の装甲の隙間に、彼女の持つサプライズパーティーの銃口を直接差し込み引き金を引いたが、返ってくるのは固い金属に銃弾がぶつかった際に発生する特有の音におもわず驚きの声をあげる。

 

 無論、強力な兵装を携えるパワーローダー自身も、装備する武器では届かない足元で好き放題させるような真似はさせまいと、ガトリングを装備していない方の腕部を排除対象に大きく振り上げるが、その腕部に受けた衝撃によってわずかながら体勢を崩してしまい、相手に回避させる猶予を与えてしまった。

 

「はっ!ノロすぎるぜ!」

 

「ナイス援護!」

 

 吹き上げられた腕部に銃弾を直撃させた人物は、その場から少し離れたビルの屋上で、スコープを覗きその銃口に煙を残し軽く息を吐く。

 

「ふぅー……これでようやく傷一つか。流石はオーパーツの眠る場所を守るだけはある」

 

 カリンの持つ対戦車ライフル、ホークアイをもってしても腕部の装甲の表面を少し歪ませるだけの結果であり苦悶と感心、その両方を混ぜたかのような表情を浮かべた。

 

「さて……どうしたもんか。さっきまでの奴らよりは楽しめそうなんだが、やっぱ固てぇ」

 

「えぇー、長期戦かなー」

 

 機体から離れた場所にて先程の結果を分析する2人に対し、銃口を再度向けようと機体を動かすパワーローダーは、突如として頭上に降って湧いた複数の丸い物体を前に再度動きを止めると、その直後に生まれた爆炎によって機体全体が覆われる。

 

「……こちらでもあまり効果はありませんね。持ち込んだ爆薬を全て使用しても無力化できるかどうか……」

 

「アカネのやつでも無理か」

 

「うーん……リーダー?なんかこの下から音が聞こえない?」

 

 予想以上に硬い装甲を前に顔をしかめるネルとアカネをよそに、アスナは突如耳に手を当てると、何かを聞きとったかのような反応を示す。

 

「聞こえるって何がだよ」

 

「なんていうのかな。こう……響く感じで……」

 

「……もしかして、この下に空間があるのでしょうか?」

 

 耳に手を当て唸るアスナの表現に対し、アカネが推測を立てる。

 

「空間?」

 

「はい。反響するほどの音となると、かなりの大きさかと。おそらく雨水を一時的に逃がすための空間ではないでしょうか」

 

「……あー!あれだよリーダー!私がさっき言ってたやつ!」

 

「…………あれか」

 

 アカネの推測を聞いたアスナが何かを思い出すかのようにぐるぐるとその場を回っていると、突如として大きな声をあげた。それは、つい先程アスナがネルのこぼした呟きに反応した際に指を指し示した大穴であった。

 

「なるほど。あそこからはあまり距離も離れていませんので、この下の空間の一部があそこで崩落して露出していたということでしょうか」

 

「ここ廃墟も元は都市部みたいだし、そういった空間があってもおかしくはない……か」

 

 アカネの立てた予想と、それを補うように自身の考えをインカム越しに伝えるカリン。

 

「ならこうすっか。アカネ、仕掛けたビルはどれだ?」

 

「はい。あちら左手の崩れかけのビル2棟と、道路を挟んだ反対側の3棟に」

 

「アスナ、だいたいどの辺が脆そうだ?」

 

「うーん……やっぱりここから聞こえきたから、ここが一番良さそうだけど……でも、あっちもかな?」

 

「ならそこに誘導すっか。アカネ、合図したらやれ」

 

「かしこまりました」

 

「カリン、隙は作るからどんどん打ち込め。あたしらじゃあの図体を動かすのは骨が折れる」

 

「了解」

 

「アスナはあたしと一緒だ。押し込むぞ」

 

「らじゃー!」

 

 そう笑顔を浮かべ返事を返した直後、3人がいた辺りにミサイルが降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っは!やっぱトロいんだよ!」

 

「髪の毛がチリチリになっちゃうよ!」

 

 崩れかけのビルに残るヒビ割れたガラスを粉砕するほどの衝撃が伝い、再度辺りを包み込んだ爆炎の中から飛び出す2つの人影。やはり戦場には似つかわないメイド服を靡かせながら、一直線に駆け寄るネルとアスナ。それに対し、足元へと潜り込ませるかと言わんばかりに腕を振り上げるパワーローダーだが、それ狙っていたかのようにカリンは振り上げた腕を狙い撃つ。

 

「……!」

 

「図体ばかりで全く当たらねぇぞ!」

 

「……!よっと……ギリギリセーフ!」

 

 体勢を崩しながらも姿を捉えていたパワーローダーは、足元に向かう2人に対しガトリングの銃身そのものを横に薙ぎ払うが、ネルは背面飛びの要領で攻撃をいなし、アスナは上半身を大きく逸らして回避する。

 

 再度足元に潜りこまれてしまったパワーローダーは、すでに補充されたミサイルポッドで辺りを自身もろとも爆炎に包むべく、標準を定めようとカメラの役割をする頭部を足元へと向けた直後、薄暗い雲で覆われた空を映した。

 

「……!?」

 

「そんなにばかすかミサイル撃たせる馬鹿がどこにいんだよ!」

 

「そんなにバカバカ言ってるとリーダーも馬鹿になっちゃうよ?*4

 

「あぁ!?誰が馬鹿だとご゙ら゙ぁ゙!」

 

 急いでカメラの方向を定位置に戻したパワーローダーは、片足を大きく振り上げたネルを映し出す。自身の持つ銃がろくな効果を発揮しない以上、ほかの部分で補おうとする彼女は一呼吸おいて跳躍すると、大きく頭部を蹴り上げていた。

 

 人間の蹴る威力程度ではかすり傷すら付けられない装甲に対し、蹴る方向を可動域の範囲に限定することで無理やりカメラの方向を動かし、半端な攻撃が聞かない相手にわずかながらも隙を作った。

 

 そんなネルに対しパワーローダーは、相手を捕らえ、握り潰さんばかりの勢いで太い腕を伸ばし掴みにかかる。頭部を蹴り上げた勢いで体勢を崩したネルを手中に捕らえた。

 

 しかし、手に備えられたセンサーから返ってくる感覚はゴツゴツとした触感である。その正体を確かめるべく、握り潰した中身を確かめるべるパワーローダーはネルを握り潰したであろう掌をカメラへと映した。そこにあったのは、確実に捉えたハズのネルではなく、チャックの隙間から赤い光を覗かせるボストンバックであった。

 

「お手にする際は十分に注意を払うよう、お願い申し上げます」

 

 パワーローダーのカメラに映し出される奥の方で、アカネは優雅に一礼をした。その直後、握りつぶしたままの腕部に一発の銃弾が飛来する。

 

 閉じられた掌の隙間から見える電子機器に直撃した銃弾は、その肩に備えたミサイルに負けず劣らずの威力でパワーローダーに爆炎を披露した。

 

「……!?」

 

 腕部そのものを吹き飛ばさんほどの威力を受けたパワーローダーは、機体を形作る装甲では抑えきれないほどの衝撃を持って後方へと吹き飛ばされた。僅かに浮いた体は道路の路面をえぐりながら徐々に速度を落とし、そしてビルに囲われた広場のような場所にて静止する。

 

 腕は取れずとも、ボロボロの状態で仰向けになったソレは僅かながらも機体を起こそうと動きだすが、

 

「いまだ!やれ、アスナ!」

 

「いっくよー!アスナちゃんの……スペシャル~アタッーク!」

 

 そうアスナが声をあげた直後、パワーローダーの静止した場所に向けて回りを囲うようにして立ちそびえるビルが一斉に崩落を始める。誰が見ても崩壊寸前のビルであったが、意図的にそれを始めたビルに対しガトリングの銃身を向けて障害を排除しようと火花を散らすが、その程度では防げるほどの質量などではなかった。

 

 始めに受けたビル一棟に対し、何とか機体を潰されまいと関節部の固定値を最大に設定し、ボロボロの腕を使ってまで藻掻くパワーローダーであったが、続く2棟、3棟のビルを前になすすべなく押し潰され、その衝撃をもってして辺り一帯が崩落を始め、地下空間へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっと終わったか」

 

「いやー……楽しかったね!」

 

「……本来であれば私の役割だったのですが、仕方ありませんね……」

 

「はっ!指示通りにしか動けない程度では、C&Cは名乗れねぇな」

 

「……流石に疲れたな」

 

 戦闘終了後でもテンションが高いアスナに対し、どこか羨ましそうにアカネは目線を送っていた。反対にカリンは疲れたようにため息をつくが、場の空気を切り替える。

 

「とりあえず、任務再開だ。最低限の報告はできるが、このまま帰っちゃあエージェントとしての名が廃るな」

 

「そういえばそうだったね?」

 

「忘れてんじゃねーよ!」

 

 ネルの一言にアスナが思いだしたかのように話すと、出番の少なかったツインドラゴンの銃口で脇腹をつつく。

 

「ちょ、やめてよ!リーダーの背はちっちゃいんだから、ちょうどくすぐったいんだから」

 

「誰がチビだと!?もういっぺんいてみろやおら!」

 

「だれも言ってないですよリーダー……」

 

 空気を切り替えた後でもどこか軽い雰囲気を持つC&Cは、当初の目的である廃墟の調査の為、さらに奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 ビルの残骸と共に深い地下へと落ちていくパワーローダーは、破壊寸前のプログラムを持ってして最後の瞬間にふと思い出す。

 

 交戦していた4人のメイド服を身に付けた人物ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その疑問を最後に、地下空間の最下部へと達したパワーローダーは活動を停止し、ビルの残骸と共に瓦礫と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 戦闘が起こった区画から離れた位置にて、すでに機能していないであろう電波塔の上に立ち、高所ゆえの風でメイド服を靡かせる人物がそこにいた。

*1
長いので以降ミレニアムと呼称

*2
某超天才清楚系病弱美少女ハッカー

*3
一応C&Cは秘匿された組織ではあるが、ミレニアムの中ではほぼ公然の秘密である

*4
原作ではこんなセリフは言っていませんが、天然なアスナはなんとなくで言いそう




 この話を書いてて思ったんですが、パワーローダー君が可哀そうだなって……。いつかちゃんと活躍させる場を作るから待っててね。

 作品の評価や感想、誤字報告などが大変励みとなっております。皆様ありがとうございます。

登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?

  • いる
  • いらない
  • そんなこといいからはよ続き書け
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