アビドス自治区に位置するビルの一室。そこには黒いスーツを着た大人と、ペンを握る生徒の姿があった。
「……書いたよ」
「はい、確かに。契約書に貴方のサインの方を確認させていただきました。これでホシノさんがお持ちする生徒としての権利は全て、私のもとへと移譲されました」
文字の羅列した書類に名前を記入したホシノは、目の前の業務机に座る人物へと視線を向けた。そして書類の内容を確認したものは満足そうに話す。
「これで正式に、アビドス高校が背負っている借金。また、課された利息の大半はこちらで負担させていただきます」
「……ならいい」
「つきましては、現時点であなたの所持している物品は全て、こちらにお渡しして頂きます」
「…………あっ」
「……おや、これは」
目の前に差し出された箱に、自身の学生証と身に付けた装備を置こうとして気づいた。これから彼女の身に起こることを暗示して、いつも装備していたショットガンや折り畳み式の盾は学校へと置いてきており、最低限の護身用として持ってきたハンドガン*1を取り出すと、その拍子にポケットへと入れていたカードが床へと落ちた。
足元へと舞って落ちた黒服が拾い上げると、ホシノへと問いかけた。
「このカードは?」
「……Aid Ladyっていう会社のカードだよ。……返すの……忘れちゃってたな……」
「ほう…これが例の……」
カードの正体を知った人物は興味深そうに眺めると、そのままスーツの内側へと収めた。
「
「……勝手にすれば」
「えぇ、こちらで有効に使わせていただきますよ」
所持品を全て渡したホシノは、部屋に入ってきたPMC兵士へと連れられて行く。
「ついてこい」
「……どこに行くの」
「アビドス砂漠だ」
アビドス高校、対策委員会の一室でホシノを除く4人とシャーレの先生は、彼女の残した手紙を読み、声をあげた。
「何なのよ!あれだけ偉そうに話しておいて!切羽詰まったらなんでもしちゃうからとか言っておいて……こんなの受け入れるわけないじゃない!」
「……私が助けに行く」
「ダメです、シロコ先輩!今は足並みを揃えることが一番の……」
1人で助けに行こうとシロコが席を立ちあがった途端、轟音と共に彼女たちのいる校舎を大きく揺らした。
「うわぁ!?」
「爆発音……!」
「音からして遠くありません!これは……そんな!?」
すぐさまアヤネと先生はタブレットとシッテムの箱を取り出し、状況を確認すると驚きの声をあげた。
アビドス高校とその周辺に位置する自治区に、カイザーPMCの兵士と思われる部隊が隊列をなして進行してきていた。部隊後方には装甲車や迫撃砲を牽引した高機動車の存在が確認でき、その自治区に住むアビドスの住人やその建造物に攻撃を仕掛けていた。
「こちらに向かって数十……いえ、数百近いPMCの兵力が侵攻中!同時に自治区への無差別攻撃を確認しました!」
「か、カイザーPMC!?なんでここに!?」
「とりあえず応戦しないと!アビドスが攻撃されているのを黙って見ているわけには……」
「……!」
「…先生!」
ノノミが座った椅子を倒す勢いで立ち上がるよりも早く、シロコと先生が素早く動いた。
「シロコ!机を遮蔽物にして応戦して!セリカとノノミもすぐに動けるように準備をお願い。アヤネは学校の放送でまだ残ってる市民の方に避難を呼びかけて」
シロコが流れるように壁に立てかけた銃に手に取ると、そのまま対策委員会の教室のドアを蹴破り、学校の廊下に積まれている机の脚を掴んで即席のバリケードを作成する。同時に先生もシッテムの箱によるサポートを起動し、セリカとノノミに準備を促す。
「……いたぞ!対策委員がっ!?」
学校へと侵入したカイザーPMCの兵士たちは、階段を駆け上がり対策委員会の教室に向かって進行しようと廊下に姿を現した瞬間、照準器を覗いたシロコによって制圧された。
斥候として部隊の先頭を進んでいたところ、1人の兵士がやられたのを確認したカイザーPMCの兵士たちはすぐさま階段へと姿を隠す。
「下がれ!先頭がやられた、体勢を取り直せ!」
廊下を曲がった先から聞こえてくる声によって、敵がすぐそこまで迫ってきていることを知るが、シロコは焦るようなことはなく落ち着いて端末を操作すると、教室内に置かれたドローンを起動させた。
「シロコ、相手は廊下を曲がった先の階段の踊り場で防御を固めてる。無闇に突っ込んじゃダメ」
「ん……ならどうすればいい?」
「そうだね………セリカ、動ける?」
「もちろんよ!」
「私もいけます!」
教室前廊下で警戒をするシロコと、対策委員会の教室の中でタブレットを構える先生。その後ろで装備を整えたセリカとノノミが声を上げた。
残るアヤネは対策委員会の教室に備えられたマイクを使って、校舎に取り付けられた放送でアビドス市民に避難の指示を発信していた。その様子をみた先生は即座に作戦を組み立て上げ、こちらを見上げる3人に指示を飛ばす。
「シロコ。少しアクロバティックな動きになるけど、大丈夫?」
「大丈夫。先生の指示なら信頼できる」
「なら、その信頼に応えないとね。そこの消火栓を開いたら放水用のホールが入ってると思うから、それを取り出して窓の枠組みに巻いて固定して」
「わかった」
「セリカはとにかく待つことを優先。チャンスを作ってシロコとの挟撃を狙うよ」
「分かったわ!……挟撃?」
「……ならこれって」
「ラぺリングロープって聞いたことある?即席だから老朽化とかが不安だけど……きちんと点検されてるみたいだね」
「ん……いつもアヤネが学校の設備を見て回ってたから」
「それなら安心。シロコはホースを使って下の階に飛び込んでほしい」
「私は?」
「セリカは階段前の廊下を勢いよく駆け抜けて。相手には正面から狙われているって意識を向けられることさえできれば大丈夫」
「了解。それぐらいなら楽勝よ」
「ノノミはここの机でバリケードをつくって。最悪この廊下で相手と撃ちあうことになるかもしれないから、今のうちに陣地作成をして有利な状況にしておこうか」
「はい!」
先生はタブレットを片手に指示を飛ばしながら現在の状況を整理していた。
「(なんだろう……この違和感は。おそらく相手はカイザーPMCの部隊……でもなぜ今になって?この前のやりとりからしてアビドスの利息には興味がない……?だとするとカイザーの目的はアビドスの土地?)」
自身の知識と推測を照らし合わせていく先生だったが、自身の目の前で指示通りに動く生徒達を見て、その考えを改めた。
「(……いや、これについては後回しでいい。今やるべきは安全の確保)」
シッテムの箱の少女の憂う表情に目をやりつつ、準備を整えた生徒達からの声に気持ちを切り替えた。
「準備できたよ先生。いつでも行ける」
「よし……なら、私の合図でいこうか」
「うん」「わかった」
靴紐を強く結んだセリカと放水用のホースを片手に掴み、窓枠に脚を掛けるシロコは同時に返事を返した。
対策委員会の教室から離れた廊下の階段にて、防御を固めたカイザーPMCの部隊たちは、慎重に階段を登りつつ対策委員会の教室へと脚を運んでいた。
教室までの経路がここだけである以上、階段を上った先の曲がり角での掃射を受ける可能性が高いが、新しく配備された装備によって対応できる。そう判断した部隊は死角のクリアリングを済ませると、ハンドサインによって部隊全員に突撃の合図を送る。
それを受け取った他のメンバーは肯定のサインを返すと、強く床を踏み締める。サインのために挙げられた腕が振り下ろされるのを待っていた直後、突如として警戒する曲がり角の先から駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
それを耳にした部隊は、手に持つ武器の銃口を即座に通路へと向ける。引き金は指をかけた状態だが、まだ引かない。金に物を合わせたと言っても過言ではない装備によって相手からの奇襲に合わせた銃撃によって一気に制圧する算段であった。
徐々に近づいてくる足音。学校の床材として使われているフローリングの心地よい音がすぐそこまで来たと感じ取った瞬間、部隊の狙う階段のフロアに
「……!撃て……なっ!?」
彼らの視界に飛び込んできた赤に何かに対して容赦なく弾を打ち込んだ彼らに待っていたのは、真っ白い光景であった。
斥候の部隊長として動く者の引き金と同時に放たれた銃弾は、確かに飛び込んできた物体に命中させた。しかし当てられたソレは悲鳴を上げて痛みを訴えるようなことはなく、代わりに身体全体を弾けさせると部隊が陣取る階段と目の前の廊下を白く染め上げた。
「スモーク!いや、違う。これは……粉?まさか!」
煙にしては辺りへの展開が早く、それでいて視界にまとわりつく物体を手に取ると、認識を改めた。身に付けるゴーグルへと付着した粉のようなものを乱雑に拭って最低限の視界を確保すると、弾丸を打ち込んだ物へと目をやった。赤い色をしたソレは、視界端の廊下に転がっていた。
「消化器……!」
消火栓にホースと同じく備えられていた筒状のソレは彼の射撃によって破裂しており、噴出口を除いて原型と言える部分は残っていなかった。消化器全体を構成していた赤い金属部は見事に弾痕を残しており、それによって生じた亀裂によって弾け飛んだと推測できる。
通常であればキヴォトスで取り扱われる物品は、住人が当たり前のように持つ物によってそれ相応の耐久性を兼ね備えている。ここアビドスでは廃校寸前であり予算などあってないような学校ということではあったが、それでも手入れを怠らなかった彼女によってしっかりと備えられていた。
しっかりと中身に消火剤の粉末が充填された消化器。キヴォトスの治安に対して設計された耐久性。その辺の拳銃弾などでは凹ませるのが関の山のソレは、彼らの新調した装備、取り扱い安さも火力も段違いのものに変わったことによって本来の目的とは違う煙幕として役目を果たした。
「クソッ……!下がれ!下手に撃つと誤射を起こすぞ!」
現状の把握を終えた部隊長は、後続に対して下がるように指示を飛ばす。広く飛散した消火器の中身は、床との摩擦を減らすことによって思うように動くことが出来ず、階段の手すりに摑まることを余儀なくされた。両手で構えていた銃を片手に移し、もう片方の手は手すりへといっている。戦場に置いて装備以外に両手が塞がることは何を意味するか。彼らは予想外の状況であり一時撤退という思考によってそこまで気が回っていなかった。
両手が塞がった状況。床は摩擦を無くして素早い動きが封じらた。戦場は粉塵によって視界不良であり、更に追い打ちを掛けるように顔のゴーグルには拭っても拭いきれない粉がまとわりついている。そんな状況の中では
「…!お前は…ゴハッ!?」
「!どうした、何があった!」
部隊後方にいる者から断末魔のような声が耳に届いた。声の籠ったような声と共に倒れる音は、まだ敵と接敵すらしていなかったことを理解させる。
「敵襲だ!壁を背にして警戒しろ!」
部隊全体に指示を飛ばすべく警戒していた廊下から目を離し、後方へと顔を向けた。しかし、それもまた戦場においては致命的なミスとなった。
彼の背中に突如としてやってきた衝撃と痛みが襲い掛かる。
「……!ぐっ…クソが…がはっ!」
彼の致命的なミスが結果として相手からの攻撃を許してしまったが、それでも弾丸自体は彼の装備によって阻まれた。防弾チョッキの特性上、彼の体を構成する部分にヒビが入っているかもしれないが、それでもまだ戦闘継続は可能である。
足場の悪い階段の段差にいたが倒れまいの一心で手すりを掴み、おおよそ突撃銃のマガジン一つ分を耐えきった彼は、返す一手で手に持つ銃器で弾丸を浴びせるべく振り向こうとしたその時、二度目の衝撃が襲い掛かった。
「ふん、随分と丈夫ね」
振りむきざまに銃口を向けようとする背中に向けて容赦なく蹴りを叩き込み、階段の下へと追いやった人物は反撃の警戒のために体を隠すと落ち着いて銃のマガジンを差し替える。
そうして再度攻撃の準備を終えたセリカは手すり越しに顔を覗かせると、そこでは視界の確保が出来ていない状態かつ屋内ではいささか取り回しの悪い銃によって反撃を困難とする部隊たちに遠慮なく蹴りを畳みこむシロコの姿があった。
「えげつないわね……」
なんとか攻撃を当てようと射撃ではなく銃本体を振り回す者や、指示通りに背中を壁に預け落ち着いて狙いを定めようとするカイザーPMCの兵士たちだが、消火器の煙が立ち込める狭い空間の床すれすれを抜けるように動きまわり翻弄するシロコにとっては、その程度の攻撃をよけることなど造作もない。
そうして小さな戦場を駆け巡るシロコはマイク越しの指示を受け取ると、下の階に飛び込む際に用いた消火用のホースを手に、彼らの覚束ない脚の間を手繰らせたのちに合図を送った。
直後に階段を降りた場所から下の階を通じて校舎の外を経由したホースがバリケードを構築した少女の手によって引っ張られ、脚を縺らせられた部隊たちはそのまま転倒させられる。
「……くっ!このまましてやられ…る…か」
地面に這いつくばる部隊長は考えていた。作戦通りであれば既にアビドス高校の校舎内を制圧できているはずであったのだが、実際はどうだろうか。交戦と同時に消火器の中身を浴びせられ、指揮系統の乱れと同時にやってきた不意打ち。高価ではあるものの、その防弾性と制圧力などの性能は良いが、実践では動きづらく閉所での取り回しの悪い装備を逆手に取られた近接戦と搦め手。
なに一つとして上手くっていない行動に苛立ちを抱えた彼は、せめて一矢報いようと腰に取り付けられた手榴弾を取り外し、ピンを抜こうと手を動かした。動きずらい装備だが、それだけ丈夫だという証明でもあった。自爆覚悟の行動であるが、ダメージが大きいのはロクな装備の一つも身に付けていない制服姿のアビドスの方であった。
そう判断し、ホースに脚を取られた部隊の隊員たちを横目に手榴弾を手に取り、ピンを抜こうとした。狭い空間に響く金属音は他の隊員たちが視線を向けるが、気にすることなく手を振り翳そうする。接近戦を仕掛けてきたアビドスの姿が見えないが、相手との距離を取ることを優先するべく投げようとして動きを止めた。
「……?(待て……私はまだコレを
彼の視界の先には、階段上でこちらを見下ろすようにして銃を構えるアビドスの学生2名の姿と、その横を浮遊するドローンがあった。
黒髪のアビドス生徒は片手が塞がっているために抜いたであろう手榴弾の引き輪を口に咥えている。白髪のアビドス生徒は隣を浮遊するドローンを操作する為の物であろう端末を手に持っており、多少の改造が施された機体が装填したミサイルの弾頭をこちらへと向けていた。
その光景を見にした者が思わず落とした手榴弾と、アビドスの生徒によって放たれた手榴弾とドローンのミサイルが炸裂するのはほぼ同時のことであった。
「……教室前廊下、クリア」
「ありがとうセリカ、シロコ。先行部隊だったとは言え、相手は手慣れていたよ。気をつけて」
「アビドス高校周辺に多数の部隊を確認!すでに校舎内へと侵入してきています!」
「ひとまず学校に入り込んだ奴らからよ!アヤネ、先生!指揮をお願い!」
「はい!先生の安全を第一に……先生?」
アヤネも放送用のマイクの電源を切り、素早く身だしなみを整えてオペレーターの準備をしようとしたところで先生の状態に気づいた。シッテムの箱を構えて教室の外へと顔を向けていたが、どうも様子がおかしい。
「(これだけ大規模な行動……さっきの斥候もそうだけど、明らかに動きが早すぎる。事前に計画していたとしか考えられない。それにこのタイミング……何かが引っ掛かる)」
シッテムの箱から聞こえてくる声を頭の中で処理し、今後の動きを組み立てていくのと同時に、いま置かれているこの状況について並列で思考を回す先生は、先日の出来事を思い出す。
「(……そうだ、あの時メイドさんはなんて言ってた?”ここはすでにアビドス自治区ではない“……いや、違う。それはあの砂漠で知ったからまた別の件。その後にまだ何か…………あっ」
「先生……?大丈夫でしょうか?」
『「皆様は
心配したアヤネが放心状態のように思えた先生の手を取り、その顔を覗こうのしたその時、先生の口からそのように溢れて言葉が記憶の中のメイドと重なったのだった。
「………繋がった」
「……?どうかしたの先生。何が繋がった……って何してんのよ!?」
アヤネと先生の2人に声をかけたセリカだったが、片方から返事が返ってこなかったことに疑問を覚えて振り返ると、そこにはアヤネの方を強く掴んだ先生の姿があった。
「……カイザーPMC、アビドス自治区、多額の負債、アビドス対策委員会とアビドス生徒会、あの時言っていたメイドさんの言葉。そしてこの………ホシノの退学届」
一つずつ、先生がアビドスを訪れてから得たピースを口に出していき、それを組み合わせると、この現状を表したような図が出来上がった。
「……アヤネ。一つ、聞かせて欲しい」
「は、はい!なんでしょうか!」
顔を覗こうとした直後、肩を掴まれて真剣な眼差しを向けられたアヤネは声に力が入りながらも声を返した。
「……このアビドス対策委員会は、正式に認定された部活じゃない。違うかな?」
「………!?そ、それは……」
「2年前、ホシノはアビドス生徒会に所属していたって話。多分ホシノは今もその生徒会に所属していたんだ」
「……それは、はい………おそらくは……」
「まだ私はここキヴォトスに来て日が浅いけど、それでも少しはキヴォトスについて学んだつもりでね。………キヴォトスの自治体は、その自治体に位置する学校の
「……あ」
彼女の肩を掴んで自身の考察を話す先生を見て、アヤネも同じ結論に辿り着いた。
「……これまでの展開、きっとホシノの退学までもが全て仕組まれたことだったんだ」
思わずアヤネの肩を掴む手に力が入りそうになった先生は歯を食いしばるが、その拍子に口内が切れてしまい、口の端から赤い雫がわずかに溢れる。
「先生!血が……!」
「対策委員会の顧問として、みんなの先生として不甲斐ない気持ちで一杯なんだ。あの時……メイドさんが教えてくれた時に気づけたこと……いや、私が気づかなきゃいけなかったんだ。それが出来なかったあまり、こうしてみんなを……ホシノを追い詰めてしまった」
「先生…そんなことは…」
抑えながらも手に力が入ることで全身が僅かに震える先生を見たアヤネが声をかけようとしたところで、教室前の廊下から声がかかると同時に銃声が鳴り響く。
「アヤネ、先生!敵がこっちに向かって来てる!増援よ!」
「!ど、どうしましょう先生!」
「アヤネ、私は少し席を外すよ。シッテムの箱のサポートをアヤネのタブレットに送るから、みんなをサポートして欲しい」
「わ、分かりました!私にできることであれば何でも……でも、先生はこれから何を?」
「………まだ若い君たちを、未来ある子供達を、私の生徒達を危ない目に合わせて、ここまで追いこんだんだ。ならばこちらもシャーレの先生として、相応の対応を取らせてもらうよ」
「は、はい………」
その話す先生に対しアヤネは、普段通りの先生が纏った柔らかい雰囲気の内側から僅かに漏れ出た威圧感に思わず萎縮しまいかけるが、肩を掴んだ手がそのまま彼女の頭を撫でたことで落ち着きを取り戻させた。
「ごめんねアヤネ。ちょっと怖がらせちゃったかな……私も先生としてはまだまだだね。きっとアヤネならできる。すぐに私も合流するから、みんなを支えて欲しい」
「は、はい!任せてください!」
「お願いね」
そうして先生の手から離れたアヤネは気持ちを切り替えると、すぐさま隣の教室で保管されていたドローンを複数起動させる。
そのまま動きだしたドローン達は教室のドアを突き破ると、廊下でシロコ達と応戦していたカイザーPMCの兵士達に特攻を仕掛けた。
「な、何だ!?」
「今ですノノミ先輩!」
「了解しました!」
「ただのドローンだ!なんの装備も…ガハッ!」
突如として現れたドローンを気を取られた隙に、待機していたノノミが廊下に姿を現すと、そのまま手に持ったリトルマシンガンVの弾幕によって、直線上の廊下にいたカイザーPMCの兵士達を一網打尽にした。
「これより私が皆さんのオペレーターと同時に戦闘の指揮を取ります!セリカちゃんは階段手前のスプリンクラーを撃ってください!相手を気を引きます!シロコ先輩はバリケードの机をそのまま階段に投げ込んでください!この廊下の戦闘区域を確保します!」
「ん、了解」
「わかったわ………あれ、先生は!?」
「先生は私たちの為に動いてくれます!そのためにも私たちは校舎内に侵入したカイザーPMCの兵士達を排除して、市民の避難と安全を確保しなければなりません!」
「分かりましたー!何だかカッコいいですよアヤネちゃん!」
「大丈夫そうだね……そして、いま私がすべきことは……」
既に戦場と化したアビドス高校の校舎内で立ち向かう生徒達を見た先生は、とある人物に連絡を取るべく端末の連絡帳を起動した。まだ数が少ない連絡先の中で、目的の人物はすぐに見つかる。
それは、シャーレの先生がキヴォトスに訪れて初めて言葉を交わした人物であった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?
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いる
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いらない
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そんなこといいからはよ続き書け