「「「 先生! 」」」
「───待たせたね、みんな。さぁ反撃といこうか」
突如として起こった爆発の後に対策委員会の元へと現れたのは、アビドス校舎への襲撃以降別行動をしていたシャーレの先生。そして、その後ろに控えるのは、かつてアビドス高等学校の自治区とこの場所で互いに銃を向けあった者たち、便利屋68であった。
「先生……!それにあなた達まで!」
「なによ、その私たちはおまけみたいな扱いは!この窮地を助けたのは一体だれだと思ってるのよ!」
「ん、先生」
「くっ……あながち間違いじゃないのがなんとも……」
「…え、そうなの?」
「いや、そもそもまだ窮地を脱した訳じゃないよ社ちょ……」
「そうよ!そこのシャーレの先生にどうしてもと頼まれてしまって、しょうがなく手伝ってあげたまでよ!」
「その点についてはすごく感謝してるよアル──
「そ、そうね!その幸運に感謝することだわ!」
「(───社長がアビドスに加勢したいって言いだしてたことについては……)」
「(まぁそれは言わなくてもいいんじゃない?アルちゃんのことだし、なにかしら理由が欲しいって考えてただろうし♪)」
「……いつのまに合流したのムツキ」
「ちょうど今♪それよりも面白いことになってるねー。やっほー眼鏡ちゃん♪おひさーって言うほど時間が空いた訳じゃないけど、寂しかった?」
カヨコの脳内での考えに割り込むようにして参戦し、同時に声をあげたのは、両の手を後ろにして大き目のバッグを支えるムツキである。
「ど、どうして貴方たちが……」
「だーかーらー、さっきアルちゃんが言ってたじゃん。そこの先生に頼まれたからって」
「そ、そうよ!情けない貴方たちに活を入れるついでよ!ついで!」
そういって話す対策委員会と便利屋68を尻目に、先生は数歩前へと進んだ。
「さて……ムツキの言葉を借りるのであれば久しぶりといった方がいいかな?カイザー理事。少し見ない間に好き放題してくれたみたいだね」
「なるほど……これは貴様の仕業か、シャーレの先生。姿を見せないかと思ったら随分と遅い登場ではないか、とっくにアビドスに見切りをつけたと思っていたが」
「まさか、生徒を見捨てる先生がどこにいるのさ」
「──まぁいい。それで、大層立派な教示を掲げる先生がここになんの用かね?部外者は
「私有地?それはこちらのセリフだよ。カイザーPMCの皆様には
「おや、非公認の部活顧問はご存じなかったかな?既にアビドス生徒会の小鳥遊ホシノは退学した。この意味が分からないわけではないだろう?」
「あぁ、これことかな?──全く、先生に相談の一つもなく身を投げ出す生徒には後でお説教が必要だね」
そういって先生は懐から一枚の紙を取り出した。それは、対策委員会の教室に残されたたった一枚の退学届け。
「なんだね、既に分かっているではないか。その書類が小鳥遊ホシノの退学届けを「受理していない」……なに?」
「貴方こそわかってないみたいだね、カイザー理事。私はアビドス対策委員会の経営顧問だ。で、ある以上は私がここにサインをしない以上これには何の意味もない」
「……は、はははは!随分と強情ではないか、シャーレの先生よ。稚拙な言い訳もここまで来ると滑稽だな」
「まぁ、それについては自覚してるよ。──だけど、
「……」
「こんな大人の悪意と子どもの葛藤の中で作られた紙なんてこうしてビリッ……と破いて捨てたいところだけど、それはまた別のお話。……さて、話を続けようか。この書類に私がサインをしない以上、ホシノはまだアビドスを退学していない。ま、私がこれにサインするつもりなんてこれっぽっちもないけどね」
「……ふん、それでどうするつもりかね?小鳥遊ホシノは2度とアビドスには戻らん。で、ある以上は私たちが私たちの土地をどう扱おうとアビドスには関係ないだろう?」
「そうだね……確かにホシノがアビドスを離れてしまった以上、ここの自治区が管理の手を離れた───もとい放棄されたと認識されるケースがあるのもまた事実だ。いくら学校の部活動によって管理されてたとしても」
「それに加えて生徒会が不在の学校の……それも非公認の部活ともなればな。なに、よくわかっているではないか。公的な部活・委員会・そして自治区がない以上はここ学園都市としても自立が不可能と認識されてもおかしくはないだろう?」
「………」
「ふっ……心配はいらん、この土地は有用に活用しようではないか。後ろにいるアビドスが去った後は我々が手を入れて……そうだな、カイザー職業訓練学校とでも名付け、企業都市の始まりの足掛かりとでも」
「いや、その心配は及ばないよ」
「……なに?」
「貴方の言う通り公的な部活・委員会・自治区が無い以上はキヴォトスでも苦しい立場に追いやられてしまうのは間違いない……だからこそ、早めに手を打たせてもらったよ」
そういってシャーレの先生がホシノの退学届を仕舞うのと同時に取り出したのは、たった一枚の書類。
それは承認書と題名打たれた書類であった。
「…………なんだソレは」
「文字通りさ。アビドス対策委員会を連邦生徒会の名の下で正式な部活として承認したことを示す書類だよ。ついでにアビドス高等学校の生徒会として活動することを申請、承諾したものでもあるね」
「────は?」
「「「「 !!! 」」」」
その取り出した書類にカイザー理事どころか、アビドス対策委員会の皆が驚愕の視線を向ける。
「ふざけているのか……そんな馬鹿げたものがあってたまるか!」
「ふざけてなんかないよ。何よりそちらが散々あの子達に言ってきたことでしょ?やれ契約書を出せだの正式な書類を見せてみろだの………だからこそ、こちらもソレに応じたまで」
「……ならばその書類の正当性を証明してみろ!いくらシャーレの権限があるといえ偽造であれば貴様もタダでは済まんぞ!」
「はぁー……全く。今までグレーゾーンぎりぎりでやってきた貴方がそれを言うなんてね。それに疑うならまずは自分で確認してみたらどうなのさ?今ここで証明してもいいけど、自分で調べた方が納得できるでしょ。ファクトチェックは基本中の基本だよ」
そう言われ自身の咄嗟の反論をシャーレの先生から切り捨てられたカイザー理事は表情を滲ませるのと同時に部下達に命令を飛ばした。が、返ってきた返答は………
「………連邦生徒会より確認が取れました。──
「……なん………だと」
シャーレの先生が提示した書類の正当性を示すものであった。もちろんこのやり取りは彼の目の前に居る人物にも聞こえている。
「───さて、これで正当性を示せたかな?先程貴方の口からアビドス対策委員会に直接指摘したのは公的な部活・委員会・自治区の3つだったね」
「……!」
「そのうち公的な部活と委員会*1についてはコレで解決というわけだ。そして自治区についてだけど──あなたはまだ正式にアビドス高等学校を含む自治区を取引した───直接手に入れたってわけではないでしょ?あくまでもホシノの退学による生徒会の不在によって自治区の放棄と判断した。でも私がホシノの退学届けを受理していないのとアビドス高等学校で新たな生徒会の設立によってソレも無しになった」
全うな主張とそれを補う正当性を突きつけられたカイザー理事はたじろぐ。
「……くっ…だが」
「───あの子たちの前で言うのは違うけど、ずいぶんと詰めが甘い。貴方の目的の宝がなんなのかは知りもしないし知りたくもないけど、随分とことが進んだことでさぞいい気分だったんでしょ?だからこそここに来て先走った貴方の失態であり、それが私にとって付け入る隙にもなった」
「っ……たかが教師風情が!」
「こちらの正当性は示した。ここはアビドス高等学校、対策委員会の管理する自治区だ、カイザーPMCの皆様にはお帰り願おうか」
「だれが貴様の言うことなんぞ───」
「それと、これは善意から来る忠告なんだけど、貴方のいる場所から数歩後ろに下がったほうがいい」
「?なにを──」
「……っ理事長!お下がりください!」
シャーレの先生からによる忠告と理事長のそばにいた部下から声が掛かった直後、カイザー理事の目の前に道路の標識が落下した。
「……っ!」
ヒトの身体なんぞ軽々と潰すことが想像できた大きさの金属板が、まさしく目と鼻の先に落ちたことによる衝撃とその事態が理事長を地面へと尻づかせた。
「ありゃ、少し
「……!」
カイザー理事にとって先生に話す言葉一つ一つがまるで予言のように聞こえるようであり、彼の隣にあるビルを指差す姿を見た際には思わず身体を震わせた。
後方にて待機する部隊および別働隊からは、いまだ続く爆発と建造物の崩壊によってその進行を妨害されて進行不可との連絡がひっきりなしに届いており、数分前とは思えない状況に表情を歪ませる。
1人。目の前のたった1人の大人の手によって覆された事態を彼は認めたくなかった。
「───さて、どうする?」
「……貴様1人程度など!」
そう言うと共に理事とPMC兵士たちは構えた。
「まだ懲りないか。ならこちらも、相応の対応をさせてもらおうか」
先生がカイザーの選んだ選択に応えると同時に、彼女の隣に立ち武器を構える者がいる。
「ん。準備はできてる」
「そうよ!そもそも正式だの不法組織だの関係ない!」
「えっと……セリカちゃん。もしかして先生の話を──」
「まぁまぁアヤネちゃん。今はホシノ先輩が優先ですよ」
「指揮権は先生に譲ってあげるわ!腑抜けたアビドスも脚を引っ張らないように気をつけなさい!」
「アハハッ!悪役らしくないアルちゃんもそれはそれでらしいかな♪」
「ふふっ、ふふふふふ……準備はできていますアル様。先生の指示通りに仕掛けた爆弾もこうして連鎖的に起爆すれば中隊程度は瓦礫の山に……」
「……まぁこうなるよね、わかっていたけど。ラーメンを食べにくるはずが、アビドスに加勢して大企業と事を構えることになるとは」
「本来は風紀委員の為に用意したものだったけど、ここにきて出し惜しみは無しよ!」
「敵の増援部隊と別動隊を仕掛けた爆弾で足止めして、指揮者および本隊を叩く。ま、今後の予行演習ってことで練習台にさせてね♪」
「さて……私の生徒達に手を出したんだ。今までの分を合わせて、反撃と行かせてもらうよ───カイザー理事」
「いいだろう……!私の企業に歯向かったことを後悔させてくれる!」
こうしてカイザー理事の登場によって一時停戦となっていた戦場が再び、火薬と銃弾を吐き出し始めた。
激化する戦場の中、瓦礫や遮蔽物の隙間を動く対策委員会と便利屋68を前にカイザー理事が声をあげた。
「この規模に勝てると思っているのか!裏切った飼い犬風情がアビドスに加勢したところでっ!」
「裏切りなんてしったことじゃないわ!仕事のしやすさで先生に劣った貴方の無力さを恥じなさい!」
「あははっ♪私たちはアウトローなんだから雇い主を裏切ることくらい当然だよねっ」
「……2人ともしゃべる余裕があるなら足元みようよ」
「あ、アル様は私が守ります!」
裏切りを指摘されたアルとムツキが反論する最中、冷静に戦場を把握して足元に転がる手榴弾を戦闘の余波で生まれた亀裂へと蹴とばして被害を抑える。
そんなやり取りを横目に対策委員会は的確に目の前のPMCを排除していく。
「……あの4人が入ってから動きやすくなった」
「人数が増えたってのも大きいけど、やっぱり先生よね」
砂漠での一幕以降、同じ武器種、戦闘スタイルの類似ということもあってバディのように動くことが増えたシロコとセリカは先程まではなかったはずの遮蔽物を背に、次の指示を待つ。
戦闘の再会直後、ムツキとハルカの仕掛けた爆薬によって戦場に隣接したビルのフロアが文字通り吹き飛び、それまで対策委員会とカイザーPMCお互いの射線を遮るものがなかった戦場に
真っ向からの撃ち合いでは、いくら先生の指示があったとしてもその人数差・物量を覆すことは難しい。だが、遮蔽物が生まれ、わずか4人ながらも増援が加わったとなれば話は別だ。対策委員会はこの数日で校舎前での便利屋68、アビドス砂漠においてのカイザーPMCとの激闘、アビドス高校校舎内でゲリラ戦など激動の日々を送ってきた。
奇襲、待ち伏せ、後方からの不意打ち、攪乱などお手の物。
戦場にある建造物や放棄された車両にいたる全てのものを満遍なく使い戦い、特に電子制御された車両に至ってはそのセキュリティを突破すれば無人兵器となんら変わりなく、雑に爆薬を詰め込んだだけで完成するのは戦場を駆けるお手軽ミサイルであった。
まさに混沌。圧倒的な兵力差を見てもなお、彼女たちが不利だと言えるものはこの場にはいない。
「───ノノミはそのまま瓦礫に隠れつつ、敵前線に圧力をかけ続けて。アルとカヨコはノノミのサポートをお願い、相手の動き次第で場所を変えつつ、面で捉えるように。ムツキとハルカは向かって左側のビルに仕掛けたものを起爆と同時に前進。路地から回って敵後方に切り込もうか」
「りょうかい~♪」
「わ、わかりました!」
「シロコ、セリカ、行けそう?」
「勿論よ!」
「指示を待ってた」
「ふふ、やる気十分だね。なら次は────」
戦闘の再会から現在に至るまで約十数分。アビドスの市街地中央から押し込まれていた対策委員会は、新たな援軍と別行動の指揮官が加わったことで本来以上の実力を発揮し、押されていた前線を破竹のごとく押し返していった。
その勢いはカイザーPMCの部隊をも呑み込んでいき、装備差や物量差のアドバンテージをへし折り、その部隊員たちの脳内に敗北の疑念を浮かび上がらせる。それはこの部隊の指揮官でもあり、企業の責任者でもあるカイザー理事も例外ではなく、周りの兵士たちに守られていながらも後ずさりをさせるには十分な勢いであった。
「(なぜだ!?なった数人……二桁すらいかない数の学生ごときにどうしてここまでやられる!?装備も人数もそろえたのだ、それがなぜ……なぜこんなことに────そうだ……全ては………全ては奴が来てから!)」
理解できない状況を前に、疑問と自答を脳内で繰り返すカイザー理事の脳内は目まぐるしく回転し、そして顔を上げた。
視線の先、彼の身の回りを固める者たちの隙間を潜り抜けたその先に……その人物はいる。指揮する生徒に身を任せることなく、それでいて遮蔽物に身を隠さず、後方に位置する場所の中央にてタブレットを構えるスーツの大人。
後方とはいえ、いつ銃弾が飛んできてもおかしくない場所にて堂々と身を構え、指示する為の口は動かし、戦場全体を俯瞰するかの如く視線を動かす者がいる。
シャーレの先生。銃弾が飛び交う戦場でありながらも不思議と彼女の周りにはその脅威がやってくることはなく、まるで彼女の周りが安全地帯であるかのようにさし示していた。
「(何故あそこだけ流れ弾がいかない……?いや、そんなことなどどうでもいい。せめて奴さえ排除すればこの状況などすぐに………っ!?)」
そうして理事の周りを固める部下たちに支持するべく腕を上げ、攻撃の狙いを向けようとした時、彼女の視線がカイザー理事を捉えた。
彼女との距離が離れていてもなお認識できるほどに透き通った瞳と、それに相応しい容姿が向ける視線が理事を射貫く。本来、または別の状況であればその視線を向けられたものが抱く感情はそれ相応のものだが、理事が抱いた感情はそんなものでは無かった。
声が出ない。息が詰まる。思考が纏まらず、視界がブレる。
「(なんだ──なんだこれは。私が奴におびえているとでもいうのか!?)」
攻撃を受けたわけでもなければ当人から声をかけられたわけでもない。だが、ただ一つ、一つの視線を向けられただけで彼の身は委縮し、動きが鈍くなってしまった。
そして、そんな状態を見逃すほど彼女は、この戦場は甘くはない。
カイザー理事の状態に驚いた周りの部下がその様子に対応しようと動きだしたその時、彼を囲う円陣に隙間が生まれたのだ。彼を守る部下たちは戦闘に長けた者だ。それゆえに隙間が生まれたことに対する油断・指摘・叱責はあれど、その隙間を開けたままにするほどの無能でもない。時間にして僅か数秒。それに気づいた者が即座に補う動きを取ったが、気づいたものはカイザーPMC達だけではなかった。
握った拳が通るか怪しいほどの小さな隙間。街中で起こる戦闘の最中に生まれた数秒の隙間に気づくものは間近の者か、あるいは洞察力にすぐれたものか。そんな隙間を待っていたと言わんばかりに飛来するのは1つの弾丸であった。ただの流れ弾などではない、明確な意志を持って放たれた弾丸がその隙間を通って中心で守られる人物、カイザー理事へと着弾し赤い火花を咲かせた。
「……!──なんだっ!?」
着弾したのは理事長の腕部。硬い金属で構成された太い腕部へとたどり着いた弾丸は、その役目を果たすべく、その衝撃と爆発をもって理事長へと牙をむく。彼自身も衝撃には驚きこそしたが大した損傷ではない、と思ったのも束の間の出来事*2であったため、身構えることも無ければ心構えが出来るわけもなく、その体は腕部から伝った衝撃を身をもって体験したのであった。
時間にして10秒にも満たない間に生まれた出来事は瞬く間に戦場へと電波する。味方陣地から起こった爆発はその不安や恐怖を纏って全体へと。部隊の前線を守る者たちは後方で起きた謎の爆発に対して、一連の流れを把握した後方ないし現場付近の者は指揮官の負傷と部隊を支える前線の崩壊を。
そしてだれかが叫んだ。
「……て、撤退だ!カイザー理事長が負傷された!近くの者は護衛に回れ!」
その声に反論するかのように声をあげるのは当事者だ。が、しかしその声には張りが無く、どこか弱弱しいように感じ取れる。
「だれが撤退しろなど命じた!無様に負けを認めるの───ぐぅ…!」
「理事長!傷が広がります、すぐに治療を!……おい!車両をもってこい!理事長を護送する!」
「くそっ……!退却……いや、転進だ!兵の再整備に入る!前線部隊は遅滞戦術へと移行しろ!」
「は、はいっ!」
周りの部下に支えられながら立ち上がり、覚束ない足取りで理事の元へと向かってくる車両に歩き出そうとして、ふと後ろを振り返った。
「……っ!」
先程彼に向けられた視線はとうに明後日の方向───否、戦場を動く者、生徒達へと向けられていた。
まるで、自分自身には既に興味がないと言わんばかりに
「……くそがっ!この代償は払ってもらうぞ、シャーレの先生……!」
すでに聞こえないであろう距離をとったカイザー理事はそう忌々しく吐き捨てた。あの視線を向けられていないことによる安堵感を覚えながら。
退却命令。自身が指示する部隊と戦闘を繰り広げていたカイザーPMCの部隊たちに伝わる連絡を、その手に持つ端末によって傍受しながらか、彼女はゆっくりと息を吐いた。
「すー……ふぅー……ひとまずは切り抜けたかな」
「は、はいっ!敵勢力、戦術変更を確認したのちに撤退を始めました」
「ふぅ……」
「……ん」
「……」
道路中心にて立つ先生の近くには遅延戦闘にて残った部隊へと警戒を向けながらも息を吐いて向かってくる対策委員会の姿があり、そこから少し離れた場所では
「いやーあんな三流悪党が言うようなセリフを聞けるなんて……いや、ちょっと前に聞いた気がするなー♪」
「……先生の指揮があったとは言え、結構雑な仕掛けでもあれだけ効果があるなんて……風紀委員会に効果があるかは結局のところ分らずじまいか」
「ちょっ、ちょっとなによムツキ!その視線は!」
「あ、アル様、お怪我はありませんか!?」
先生の指示にて敵部隊の近くにいたことによってカイザー理事の遠吠えを耳にしたムツキが愉快な表情で、先生の指示とはいえ、守るべき上司の元を離れていたハルカはその安全を確かめるべく集まっていた。
そのアルの元へ、先生とそれに付随して対策委員会は歩みよった。
「急な指示だったけど、上手く合わせることができたねアル。流石の一言だよ」
「あれって貴方のやつだったんだ。……ありがとう、ちょっとすっきりした」
「そうよ!ただの恩知らずかと思ったけどやるじゃない!」
「えぇ、そこまで褒めなくてもいいわ先生。出された要望に応えてこそのビジネスパートナーってやつでしょ……って、だれが恩知らずよ!」
「まぁまぁ、それでもすっきりしたのは違いありませんので☆───ところでビジネスパートナーというのは……?」
「え…あ、いや!あなた達は気にしなくていいわ!それよりも貴方たちはこれからどうするのかしら?」
「……とりあえずは一度戻ろうかな。みんなも疲れてるし、ひとまず休息をいれよう」
「はい。……きっとこの次は、今までで一番大きな戦いになると思います。ホシノ先輩を助け出すために」
「そのために準備を必要。色々と集めないといけないから」
アルからの問いかけに対し、各々は覚悟を思って答える。大切な先輩を取り戻すために。
「───そう。なら、その時は私たちにも声を掛けなさい。特別に今回限り、あなた達に格安で雇われてあげるわ」
「アルちゃんにさっんせーい♪こんなに楽しそうな事から仲間外れなんて、ぜぇーたい駄目だからね?」
「……まぁ、さっきのやつだけじゃ十分なデータも検証もできてないからね」
「私はアル様についていきます!」
「……いいの?」
「勿論よ、一時の出会いは最後まで付き合うのが仁義ってやつ……ハードボイルドよ!」
「───ありがとう。その時になったら遠慮なく声を掛けさせてもらうよ」
そういって先生と対策委員会のそれぞれが今回の加勢とその後の戦いに付き合うことを表明した便利屋に感謝を述べた。
そしてどこか恥ずかしながらも場を後にする便利屋68を見送り、対策委員会もまた学校へと帰還するべく足を運んだ。
「────…………もういないか」
目の前を歩く対策委員会に聞こえないほどの声量で呟く先生を最後尾にして。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
感想やお気に入り登録、評価や誤字報告が私にとってなによりのモチベーションと励みとなります。これからもよろしくお願いします。
登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?
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いる
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いらない
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そんなこといいからはよ続き書け