目的の階層へと到着したエレベーターがチャイムと同時に扉を開く。ビル一階のオフィスフロアの荒れ具合を見た後だと、信じられないほど綺麗に整えられたフロアが姿を見せた。そこは先ほど見たビルの外観からは想像も付かないほどに整備されたその空間に彼女は思わず口に出す。
「なるほど、先ほどのビルの外観は偽装でしたか。下のほうは本当に破損していたのでしょうが、上はおそらく無傷ですね。機体の
そう彼女が抱いた感想を述べながらエレベーターを降りて、オフィスを歩いて回る。自身の
「見事と言うべきでしょうか。誰かが訪れるわけでもなく、ただひたすらにシステムとして業務を果たし続けるとは。自己保存プログラムの作動とはいえ、長い間ただのガラクタと化していた私とは大違いですね」
どこか皮肉混じりに呟きながらも彼女は脚を進める。フロアの奥へ奥へと進んで行き、そして目的のものを見つけるの。彼女が再起動してから必要と判断したそれが収容されている専用の格納ケース。
「
そして彼女は手慣れた様子で格納ケースを開けていく。フレームの酸化を防ぐために充填された窒素ガスが開けた隙間から勢い良く噴出される。そして自身の亀裂の入った銀色のフレームの胸部を力任せに剥ぎ取り、剥き出された自身の動力源の端に付けられたケーブルを取り出して格納ケースと接続する。
「当機を換装状態へと変更。個体情報及びプログラムの移行、及び更新を開始。破損した当機の
機体の胸部から伸びたケーブルからフレームの収納ケースを通じて自身に保存された個体情報から組み込まれたプログラム、付与された権限などを全て移し込んでいく。
『換装用汎用フレームへのデータを転送及び機体の破損したメモリーを復元中、作業終了まで残り5時間です』
「予想はしていましたが時間が掛かりますね。ふむ……、ビルに保存された
『当ビルに保存された
「これは……」
時間潰しにとビルに保存した記録体からこれまでの経緯を閲覧しようとする。今までの彼女であれば、時間潰しなどということををするなどありえないことだったであろうが、再起動してからどこか変わりつつある彼女のことを教えるものはいなかった。
そうしてビルから表示された記録は……“無”であった。
「ビルの
顎に手を当て、ケーブルを繋いだデータの転送先である汎用フレームから共有したメモリの割り当てを利用し、
「何者かかがビルの記録を破棄した……?いえ、権限、もしくは社に所属する機体でないとビルの施設を利用するどころか、このオフィスにすら立ち入ることができないはず。ということは、記録体の破損や消去でなく、記録そのものが
自身の記録やビルの記録体の状況からそう結論を出す彼女
「となると、運よくビルが残っていたとは言え、他の活動している機体が残っているとは限りませんね。過去の顧客などもまだ残っているとは、この現状を見るにありえないでしょうが、まぁ後程調べましょう。しかし、このビルの記録体に
すでに彼女の所属していた会社は記録ごとなくなり、時代と共に過去へと忘れ去られている。しかし彼女は記録としてその存在を認識していた。機体に組み込まれたプログラムによるものだろうか、それとも再起動と同時に獲得した何かによるものだろうか。彼女はその要因を求める演算を行うことはなかった。
評価、お気に入り、感想、ここすき等よろしくお願いします。誤字報告もしていただけると大変助かります。
登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?
-
いる
-
いらない
-
そんなこといいからはよ続き書け