機械少女と青春を   作:バグキャラ

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今回は以外にもあっさりと終わります。色々と戦闘シーンを書いたり、トリニティと便利屋との交渉シーンも書こうとしたのですが、もともとアビドス編自体が20話程度で収める予定だったので、省きました。

 展開が早すぎだろと思わるかもしれませんが、前回のプリン話を書いた時点で結構ぎりぎりでしたので、なにとぞご了承お願いします。

あと、今回は短めです


敵と味方

 カイザーPMC第51区画軍事施設。その中央にそびえる建物にてカイザー理事は、集結させた兵力への指示に忙殺されていた。

 

「当施設より東に2km先に新たな兵力を確認!ゲヘナ風紀委員会の2個中隊を視認しました!」

 

「なんだと、まだ増援が居るのか!?一体どうなっている!」

 

「不明です…!15分前に出撃した機械化歩兵3個中隊より通信!進軍中に所属不明の部隊による迫撃砲により車両が大破、移動は不可能とのこと!」

 

「くそ……今度は迫撃砲だと!手の空いている部隊は!?北にいる対デカグラマトン大隊にも招集を急がせろ!一体なにをやっている!」

 

「それが先程より通信が繋がらない模様で……!南方にて待機中の歩兵大隊より通信!待機場所より先1km先に戦車部隊を視認!所属は……ゲヘナ学園です!」

 

「クソがっ……!風紀委員会の次は万魔殿まで!?本気で企業に立ちはだかるつもりか!」

 

「追加で通信!西方にて少数ながら増援を確認……数は4。ですが、これは……」

 

「何、たったの4人か!?ならばとっとと近くの小隊でも送りこんでおけ!」

 

「いえ、その小隊がすでにその4名により全滅、現在中隊規模にて応戦中です!」

 

「───は?たったの4人だぞ?一体どこのどいつだ、画像を出せ!」

 

「はい。施設より20倍望遠にて敵部隊を確認、3番モニターに映します!」

 

「……こいつは───野良犬ごときが、噛みつきよって……!」

 

 アビドス自治区より敗走後、施設に呼び寄せていたPMC部隊がこの場所に向かってくる兵力への応戦によって徐々に数を減らしていく様子に焦りを覚える理事は、画像に映し出された人物を見て忌々しく吐き捨てる。

 

「……あとどの程度の部隊が残っている」

 

「はっ、現在出撃中の部隊を除くと3個大隊ほどかと」

 

「敵の増援は」

 

「…………確認できる限りでは合計して約2個大隊の規模かと」

 

「それが今も増え続ける、か……」

 

「……?理事長、一体どこへ────」

 

 どうあがいても目を背けられない事実に悪態をつきながら指令室を出るカイザー理事に部下は声を掛けた。

 

「残った部隊を4番倉庫の前へと集めろ。私が直接現場に出る」

 

「……4番倉庫といえば……まさか理事長、あれを使うおつもりですか!?まだ調整段階だと」

 

 部下の止める様子に目もくれない様子で歩いていく理事長を追いかけながら、その背中を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今更ながらいいのでしょうか……ゲヘナ学園の公的権力がこのようなことをしてしまって……」

 

「ほんとに今更って感じだね……まぁいいんじゃない?委員長も居るし」

 

『あら、無駄口はその辺でお願いしますね?これはれっきとした公務ですので」

 

「そうね……ちょうどいいから貴方たちにも伝えておくわ。アコ、出撃中の風紀委員全員に伝達しなさい。───ゲヘナ学園は本日を持って企業、カイザーコーポレーション直下の組織、カイザーPMCとその理事に正式に喧嘩を売ることを決めたわ」

 

「……え、まじ?委員長、それってまずいんじゃ───」

 

「は、はい。キヴォトスの3大学園に数えられるとはいえ、正式にというのはまずいのでは……」

 

『あの万魔殿の戦車隊もこの場にきていることが何よりの証拠ですよ。それよりも委員長、さらに増援を確認しました。一個大隊規模です』

 

「分かった。各部隊に通達、負傷した者はすぐに下がらせなさい。これは正式な戦争よ、やると決めた以上は徹底的にやるわ。それが風紀委員会の責務であり───以前のアビドスに対する罪滅ぼしでもあるのだから」

 

『かしこまりました』

 

「全員気合を入れなさい。私たちだけでカイザーPMCの全軍を止めるわ。あの子たちの邪魔をさせないで」

 

「了解しました」

 

「了解した委員長。聞いてたなお前ら!第3中隊と第4中隊は付いてこい!敵部隊中央へと切り込むぞ!」

 

 即座に部隊へと指示を飛ばして増援へと切り込む様子のイオリにヒナは何も言わない。脳裏に浮かぶマコトの思惑と今後多発するであろう問題にため息を付きながら手に持つデストロイヤーを目の前に構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーテステス………みなさん聞こえてますかー?戦車部隊長のイロハでーす。もうそろそろでカイザーPMC部隊と接敵すると思うので準備しておいてくださーい」

 

 万魔殿の公的武力である戦車隊を戦闘で率いる戦車、虎丸から届く気だるげそうな声を話すのは棗イロハだ。

 

 

 

 約数時間ほど前に出撃命令が出された彼女は淹れられたばかりのコーヒーを啜りながら学園の格納庫へと向かい、嫌々ながらも部隊出撃の準備をしていた。

 

「全く………人使いが荒いんですよマコト先輩は………あー、そこの弾薬の積み込みもお願いしますねー。なんせ企業に喧嘩を売りに行くみたいですから」

 

「了解しました戦車長!………ところで喧嘩を売りに行くとは?」

 

「あー……やっぱ聞かなかったことにして下さい。いつも通りの見回りと行くことで──行き先はゲヘナ自治区ではありませんけど」

 

「よくわかりませんが、ひとまず了解しました!」

 

「よくできた部下で助かりまーす」

 

 

 

 そのようなやり取りを思い出しつつも、今はただ受けた指示を受けた通りにこなしていく。

 

「目標、方位12時。敵カイザーPMC機械化歩兵部隊。距離1200m、各車両は対人榴弾を装填」

 

「こちら装填手、榴弾装填完了!」

 

「目標補足。標準を合わせ中です、風向きは」

 

「風速3メートル毎秒、方位270度からです」

 

「了解、風速補正終了。戦車長、いつでもいけます」

 

「了解しました。ではてー……いや、てーって言ったんで早く撃ってください」

 

「りょ、了解!発射!」

 

「みなさんも装填しだい撃ってくださーい。風紀委員の皆さんに睨まれない程度には仕事をしてもらいますよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、大丈夫ですか?」

 

「うん、ゲヘナがカイザーの大部分を受け持ってくれてるから」

 

「全然平気よ!」

 

「教えていただいた座標はもう少しの辛抱です!」

 

「みんなも体調が悪かったらすぐに言ってね」

 

「まだまだ行けますよ~」

 

「無理は禁物…………!」

 

 対策委員会の一同は、ホシノが囚われているであろう軍事施設へと向かっていた。以前のカイザーPMCの軍事施設と同様に金網のフェンスで囲われており、その上には有刺鉄線が巻かれている。

 

 が、突如として足並みの揃った音が聞こえてくる。音からして中隊から大隊規模と予測できる音にそれぞれは驚いた表情を浮かべた。

 

「……!前方に敵を発見しました!規模は3個中隊ほどかと───装甲車も複数確認出来ました!」

 

「まぁ、他のみんなに頑張ってもらっているとはいえ、最低限警備としても残ってるか」

 

「距離は約2kmほどで、間もなく接敵します。皆さん準備を!」

 

 アヤネからの通信に各々は武器を構える。徐々に近づいてく足音とそれに加えて謎の影も付随して現れていく。

 

「……なにあれ?」

 

「……無人兵器……いや、搭乗式の人型兵器だ。開発が進んでいるって話は聞いていたけど、もう実践投入されてるなんてね」

 

「────その通りだ、シャーレの先生。先日はずいぶんとやってくれたな」

 

「……!あんたは」

 

「少し見ない間に随分と姿が変わったね理事長。あの時の腕の怪我の修理と同時に整形したのかな?」

 

 そういって現れたのは、大きさが4m……否、5mに達するのではないかと言うほどにデカさを誇る兵器だった。兵器の頭部には戦車を彷彿とさせるような砲門が取り付けられており、腕部にはそれを小型化したようなモノが3つずつ備わっている。

 

「ふん……そう軽口を叩いていられるのも今の内だ。外では随分としてやられたが、貴様らを片づけたらすぐにそちらも───」

 

「そう安くみられちゃ困るな。そっちだって余裕がないんでしょ?貴方が乗ってる人型兵器も動きがどこかぎこちない……実践投入というよりは試験投入ってところか」

 

「つくづく癇に障る人物だな、シャーレの先生。だが認めよう、確かにこれはまだ調整段階であったが故に所々不安定だ。性能通りの発揮は難しいものだろう」

 

「ふーん……珍しいね。貴方のような人物が素直に認めるなんて───何を考えているのかな」

 

「だからこそ、援軍を呼んだのだ。安心しろ、貴様も良く知る人物だ」

 

「援軍…………まさか!?」

 

「来い、Aid Lady。依頼だ」

 

 登場部分を開いて現れた理事長がおもむろにカードを取り出したかと思うと、そのままカードの角を折って地面へとはじくように投げ捨てた。

 

 驚愕と不安の表情を浮かべる先生をよそに、砂で覆われた地面へと置かれたカードから映し出されるのはメイド服をきた人物だ。

 

『当社へのご連絡、誠にありがとうございます。人材派遣会社、Aid Ladyでございます』

 

「……まじか。ちょっと───いや、結構ヤバい」

 

「くくく、そうだろうシャーレの───ん?そのメイド服は確か……あの時のメイドではないか。久しぶりだと言いたいところが状況が状況だ、後にするとしよう。依頼だAid Lady、人材派遣の内の戦闘員としての派遣を要請しよう」

 

『…………』

 

 メイドは何も言わず、ただ微笑を浮かべている。

 

「報酬に関しては前払いなのだろうが、この状況だ。あとにしてもらおう、もちろん額は弾むと約束しよう。そうだな───まずは1000万だ。そこから随時追加で報酬に加えていくことを────」

 

『一つ、お聞かせ願えますか?』

 

「……なんだ?」

 

『貴方の後ろに控えている方々は、理事長の部隊でしょうか?』

 

「?あぁ、そうだ。そして依頼内容はそこにいるアビドスの生徒とシャーレの先生の排除だ」

 

『かしこまりました』

 

「時間が押している状況だ。詳しい説明は後にして……ひとまず戦闘員を指揮権と共にこちらに寄越してもらおう」

 

 カイザー理事が話している最中にメイドはふと、片腕を前へと出した。

 

「……?…………っ!!!みんな、私の後ろにっ!」

 

 ふと吹いた風によって巻き上げられた砂がカードから映し出されるAid Ladyのメイド服に当たった様子を見た瞬間、先生は対策委員会全員の服を掴むとそのまま力ずくで自身の下に引き寄せた。

 

 その直後、メイドが軽く腕を振り払い、そして────

 

「…………っ!!!」

 

「────は?」

 

 カイザー理事の後ろに控えていた部隊、3個中隊がバラバラになっていた。

 

 彼らが装備していた防具も武器も、そして彼ら自身もみな等しく。

 

 その場で一体何が起こったのか、カイザー理事もシャーレの先生も理解できていない。

 

 分かるのはただ一つ。理事の手によって呼ばれたメイドの手によって、カイザーPMCの部隊が壊滅されられたことだけだった。

 

 元は頭や腕、指先だってあろう部品が辺りへと散らばっており、キヴォトス特有の機械の身体を持つ住人ながらもその生々しさは思わず生徒たちの目を手で塞ぐ程度には強烈なものであった。

 

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

「────何が、一体何が起きた!?」

 

 先生は感じ取った。腕を振る瞬間、感じたことのない異様なソレを。以前まで出会ってきたAid Ladyが纏っていた存在感とはまた違ったものを感じ取った直後、シッテムの箱による不可思議な防御の範囲を生徒たちに適応させた。

 

 その結果として、先生を含むアビドス対策委員会は助かった。と、先生は判断している。

 

 尋常ではないほどの脂汗と限りなく加速した心拍数がそれを物語っている。

 

「(────あれは、殺意だ)」

 

 敵意でも害意でもない。あの瞬間メイドは確かにそれをもってして理事長の後ろにいた部隊を攻撃した。あれが攻撃だったのかは実際に銃を握ったことのない先生には分からない。

 

 だが、結果としてはそうというか言えないモノであった。

 

 控えていた部隊が消えたと理解するまでに時間が掛かっていた理事長は、やっとの思いで声をあげた。

 

「────なぜだ、なぜ私の部隊が消えている!?誰が……まさかっ!」

 

「私ですよ、理事長」

 

 ようやく答えにたどり着いたと同時に答え合わせをするメイドは、まるで何事もなかったかのように白々しく答える様子に思わず恐怖を覚える。

 

「ふざけているのか……?一体なんてことを!」

 

「既にそちらのカードを不正利用した人物へとご説明したので、再度理事長へと説明する義務も義理ござませんが、何かの機会です」

 

 さくさくと砂の上を歩くメイドに理事長は思わず後ずさりをしようとして、人型兵器に乗っていたことを思い出し、どこか慌てるように登場部分へと戻っていった。

 

「改めて申し上げましょう、こちらのカードはとあるお客様個人専用のカードです。そのため、こちらのカードをご利用はお客様、もしくは当人を含んだ方。又は当社で許可した人物のみとなっております」

 

「……一体なにを言っている?このカードは黒服が……がはっ!?」

 

「申し訳ございませんが、第三者が聞いている状況でそれ以上口を開くのはお控え願います」

 

 一体なにが起こったのか、人型兵器の搭乗部に戻った理事長がとある人物の名を口にした直後、人型兵器全体に強い衝撃が走り、そのまま転倒してしまった。

 

 Aid Ladyのメイドが話す第三者とは、おそらくシャーレの先生とアビドス対策委員会のことであるが、その本人たちが口を挟む様子はない。

 

 その理由は下手をすれば、カイザー理事が攻撃を受けている理由も分からないままメイドの矛先が自分たちへと向かうからだ。

 

「以前の者が使用した際はこちらの不手際もありましたので見逃しましたが、その際に警告させていただきました。2度目はないと」

 

「……クソっ、あいつはそんなことなど一度も……!」

 

「そちらの事情は知った事ではありません。当社としてはただカードの利用規則に従って対応させていただきます」

 

「……舐めるなよAid Lady!この兵器はかのオーパーツが眠る廃墟での無人兵器を、さらに我等の技術をもって改修した傑作だ!メイド如きがこの兵器を越えられると思うな!」

 

 そういって理事長は大きな人型兵器、通称ゴリアテの身体を起こすと、そのまま大きく腕を振りかぶり、目の前に立つメイドへと振り下ろした。

 

 その勢いは凄まじく、立っていたメイドの場所に大きなクレーターを形成させ、周りの堆積した砂を吹き飛ばした。

 

「……この程度ですか。あの鉄くずを改修したと聞いたのですが」

 

「───な!?」

 

 ゴリアテの太い腕を振り下ろした先、クレーターの中央には何事もなかったかのようにメイドが立っており、小さく細い腕の掌を上にあげて向ってきた腕を受け止めていた。

 

 その様子に驚く理事長だが、次の行動は早かった。

 

「ならば、これをくれてやろう!75㎜3連カノン砲だ!」

 

 振り下ろした腕をメイドごと巻き込むようにして、もう片方の腕に取り付けられた砲門をそこへ向けた。相手に思考する暇は与えないとばかりに即発射すると、その飛距離もあってかすぐに着弾し、おおきな爆風を生んだ。

 

 着弾の衝撃でAid Ladyに直撃したのかは分からない。だが、確かに命中したと理事長は確信していた。その為に受かんだ表情ゆえか、千切れた腕部に気づくのには時間が掛かった。

 

「……なぜ腕が損傷している?この程度で壊れるほど脆くは……」

 

「それは勿論、私のほうで取らせていただきましたから。粗末な耐久性ですね」

 

「……なに!?」

 

 ゴリアテの背後から聞こえてくる声に急いで振り返った理事は驚愕した。その小さな背丈からは比較できないほどに大きな腕を両手に()()()()()()()()握ったメイドが立っていたからだ。

 

「馬鹿な…馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!?」

 

「さて、これで終わりですか?」

 

「くっ……ならば最終手段だ!この150㎜艦砲でアビドスもろとも……」

 

「───機会があればまたお会いしましょう。生きていればの話ですが」

 

 両腕を失ったゴリアテが最後の攻撃手段として残された頭部の砲門をメイドへと向けたが、既にそこにメイドはおらず、ゴリアテのそばに移動していたメイドはその胴体へと手を当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘と呼べるか怪しいやり取りが終わった場には、騒ぎがあった証拠となる大きなクレーターと無造作に捨てられた人型兵器の両腕。胴体を無くした両足のみが地面に付く形で残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ここまで読んでいただきありがとうございました。前話のプリンもそうですが、ストック分が無くなったので結構ぎりぎりで書いて投稿しています。この話も投稿予定時間の5分前に仕上がりました。

 また感想やお気に入り登録、評価等が大変励みとなっております。いつも投稿したらすぐに感想をくれる読者が居て、その方の存在が自分の大切なモチベーションにもなっていますので、皆さんからも是非、感想がいただけたら幸いです。

 いままでさぼってた分、頑張って投稿します。

登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?

  • いる
  • いらない
  • そんなこといいからはよ続き書け
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