エレベーターの扉が開き、1階のオフィスが視界に入る。先ほど命令をした4機のメイドが彼女に比べるとわずかにぎこちない動作で動いており、銃弾のめり込んだ机やキャスターの取れた椅子、床に散乱した書類やガラスの破片などを片付けており、荒れ果てたオフィスから広々とした空間へと変えていた。
「備品を全て取り替えることにしたのですか。効率的で何よりです。あぁ、ですがその取り替えた備品達は処分しないように。以前までは取り替えた後に処分して終わりでしたが、今は状況が異なりますので。修繕して使えるものはそのようにしましょう」
近くにいた1機のメイドにそう命令を付け加える。
「
『かしこまりました。対象の機体の操作権限を掌握。同時に機体への指示、およびサポートを開始します』
「あなたたち、先ほど作製したシステムの統括を行う管理人格、
4人のメイドは沈黙をもって肯定の意を表した。次の瞬間、彼女たちの動作が見違えたように変わった。まるで錆びついて動きの怪しかった機械が油を注されたように滑らかなものへと変わる。指示系統を自身から
そうしてビルから出ると、改めて自身の機体の動作を確かめるような動きを取る。手を開いては閉じを繰り返し、手足の関節を動かして問題がないことを確認する。
「さて、始めるとしましょうか」
そういって彼女は荒れ果て、人ひとりすらいない廃墟の街へと歩き出した。
彼女が“掃除”を開始して、どれだけ時間が経ったのだろうか。ビルから少し離れ、開けた場所でその中心に立ち、向かってくる無数の無人兵器たちを素手でさばき続けていた。彼女の周りには、多くの機械の残骸が山を形成しており、その経過した時間を物語っていた。
円盤状の浮かぶドローンのものから、ヒト型を踏襲したかのような装甲をまとったもの。複数の脚を兼ね備えた多脚式稼働戦車から未知の生物を模したものまで様々な種類が見て取れる。
しかし、そのどれもが彼女のいう鉄くずへと姿を変えており、破損して
不意に彼女に影を落とすものが現れる。肩にミサイルポットを備え付けた大型の兵器、名称パワーローダー。しかし、そのミサイルポットに備えられた弾頭はすべて使い切り、残っていないため近接戦へと移行したそれは、その丸太よりも太い剛腕を彼女へ向けて振り下ろしていた。しかし、一連の行動を見ていた彼女は、何事もなかったかのようにそのか細い腕で受け止める。
その想像もできないような衝撃が彼女の
「…………さて、ある程度は片付きましたか」
さきほど引きちぎった腕の残骸を持ったまま、辺りを見渡す。
「いかんせん数が多かったとは言え、少し散らかしすぎましたね…………掃除のつもりだったのですが、まぁ仕方ないでしょう。
『はい、ビル周辺の地形の把握は完了。一帯の情報の再取得は保留の状態となっております。また個体名ーーーーにより起動した4機による1階のオフィス、及びビルの外観の修繕もすでに完了しており、現在待機中となっております』
「ふむ、仕事が早くて助かりますね。でしたら
『かしこまりました。現在、待機中の
「えぇ、よろしくお願いしますね。……さて、散らかした鉄くずですが、どこに捨てましょうか。さすがにこれだけ脆すぎると、修繕したところで当社の備品としては使えそうにありませんね。なにかゴミ箱になりそうなものは……あれが良さそうですね」
そういって彼女は、手に持った腕の残骸を近くの廃墟となった建物の中へと投げ込んだ。
その後、応援に来た2人の協力も得て、
「……ふむ。ここら一体の地形はすべてを作り直したかのように変わっていますね、廃墟と化してますが。本当になにが起こったのやら……地形の把握は分かりました。それと情報の再取得の保留とは?」
『はい、専用ネットワークへの接続による情報の再取得は、回線の脆弱化、及び中継器の消失によって不十分なものとなりました』
「……
『提案します。専用ネットワークへの接続時に、別の強度の高い回線を発見しました。こちらはその強度性から中継器を必要とせずに接続が可能であり、情報の再取得ができる可能性があります』
「強い回線ですか?おそらく今の時代で使われているものでしょうか……
『はい。当ビルはーーーーによる事態の発生による社の存続プログラムが実行されて以降、当時のシステムの判断により外部との接続を遮断。および施設の保持へと移りました。そのため、現時点で当ビルは高い秘匿性を持った状態にあります。しかし、専用ネットワークではない回線に接続した場合、当ビルの存在が外部へと露見する可能性があります』
「あぁ、確かにそうですね。それはそちらの判断では難しいでしょう。それにその行為はあなたが長年にわたり果たしてきた業務を否定する行為になりますね。気が利かずに申し訳ありません」
『一部否定します。それは当ビルのシステムは組み込まれたプログラムによって行った業務であり、その有用性を示すためではありません。当ビルは次の社を受け継ぐために活動する機体の活動を補助、サポートするためにあります。また外部との回線による接続によって必ずしも、情報の再取得が可能とは限らないため、保留に致しました。また当ビルが外部へと露見した場合に限りましても、個体名ーーーーによる責任はないと判断します』
「そういっていただけると、私も
そういって表情に笑顔を浮かべる。彼女を基に作製したシステム統括型管理人格、通称
「わかりました。では
『かしこまりました。当ビルを中心に半径500kmに設定し、外部の回線に接続。情報の再取得を開始します』
そうして再度
「素晴らしい出来栄えですね、ここに来たばかりの時とは大違いです」
ひび割れた外壁や張り付いた蔓、割れたガラスによって廃墟同然と化していたビルは見違えるような変貌を遂げていた。壁に這うようにして伸びた蔓はすべてはぎとられ、ひび割れた外壁は触っても段差ひとつ感じない、綺麗なものへと仕立てられ、割れた窓ガラスは取り替えられ、鏡のように磨き上げられている。またビルの入り口から覗かせるオフィスは、訪れた者すべてを歓迎するかのようなエントランスに造りなおされていた。さながら近代デザインを模した新築のようなビルを見た彼女は満足そうにうなずく。
「私が“掃除”に夢中になっていたとはいえ、短時間でここまで仕上げられているとは驚きですね」
このビルが仕上げるためにかけられら工期はたったの数時間。しかも作業員がたったの4名である。どこかの学園に所属しているであろう工務部もびっくりなそれを、ここの機体のスペックの高さで無理やり通した工事は、それはもう見事というほかしかなかった。そして彼女の後ろに控えている2人のメイドに声をかける。
「本当に素晴らしい出来栄えです。2人とも、ご苦労様でした。残りの2人には私自身から声をかけるので、先に戻っておいてください」
目を伏せたまま、カーテシーによって肯定を示すメイド達。そしてビルの中へと戻っていった。
「さて。この素晴らしい出来栄えのままにしておいても良いのですが、いかんせん目立ちすぎますね」
彼女の言う通り、近代ビルへと姿を変えたそれは、それはもう目立っていた。周りが廃墟と化しているなかで、この建物が視界に入らないなどとはまずあり得ないだろう。
「
『かしこまりました。記録された改装前のビルを基にディスプレイに表示します』
その直後、ビルの表面が移り変わるように変化し、彼女がここに来た時と同じ状態が映し出された。その鏡のように磨き上げられたガラス張りの壁はディスプレイの役割も兼ねており、広告として扱うことが出来ると同時に、こうして周りから目を欺くために偽装することが可能である。そうして一通りやることを終えた彼女はビルの中へと戻っていった。
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登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?
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いる
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いらない
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そんなこといいからはよ続き書け