キヴォトス三大校の一角、ミレニアムサイエンススクール。その中心に位置するミレニアムタワーの一室にて……
「……全員揃ったようね」
「はい、セミナー、特異現象捜査部、エンジニア部、そしてヴェリタスの部員の収集が完了しました」
中央に置かれた机を囲むようにして、ミレニアムに置かれた部活に所属する生徒達が集められていた。
「ありがとう、ユウカ。……ヴェリタスはまだセミナーとしては部活動は容認していないけれど、今回の事態は急を要するため仕方ないわね。まずはみんな、集まってくれたことに感謝します。ミレニアムサイエンススクール、セミナー所属の生徒会長を務めている調月リオよ。さっそくで悪いけど、会議を始めさせていただくわ。ノア、進行をお願い」
「はい。今回の会議の進行を務めさせていただきます、セミナー所属、書記の生塩ノアです。先ほど配りました資料は行き渡っていますか?……大丈夫なようですね、では本題に入らせていただきます。各務チヒロさん、お願いします」
「うん、わかった。この会議の開催をセミナーに要求したのは私、ミレニアム3年のヴェリタス部長代理の各務チヒロ。資料に目を通してもらってもいいかな」
「問題が発覚したのは本日未明。セキュリティを管理するPCにて、ミレニアムタワーの防壁に何者かがアクセスしたことが発覚。サーバーそのものにはアクセスされたような形跡は見つからなかったけど、侵入しようとしたのは間違いないと思う。そしてその防壁は……すでに解析された状態だった。ひとまずその防壁はすでに破棄して新しい防壁を解凍してあるけど、それもどこまで持つかわからない」
彼女が今回の会議を開催した議題を取り上げ、それを聞いた何名かが驚いた表情を出す。
「事前にヒマリ・チヒロからは聞いていたけど、まずい状況ね。ユウカ、頼んでいたものは?」
「はい、会議が始まる20分前に調査が終了しています。……セミナー所属の会計、早瀬ユウカよ。今回の議題に当たって、発生した被害について報告させていただきます。……とは言っても、この議題に関する被害について調査しましたところ、現時点でそのようなものは、発生・報告は
ユウカの発言に部屋にいたものたちは疑問の表情を浮かべ、思わずチヒロが声を上げる。
「え、それほんとユウカ?その防壁を作った私がいうのもなんだけど、たぶん侵入されてると思う。さっきは侵入されてないみたいな事は言ったけど、それは形跡が見つかってないだけであって十中八九サーバー、というかハブにも入られてるよ」
「いえ、確かに現時点では被害については報告されていません。むしろエンジニア部による実験棟の破壊状況のほうが目立っていますよ」
そうユウカが言うと椅子に座る3人に視線を飛ばす。それを向けられたものたちは、服装のいたるところに煤をつけて、笑いながら手を振って応じる。
報告を聞いたチヒロは再度、難しい状況を開く。少し間をおいてリオが口を開く。
「……どちらにせよ
ミレニアムタワーは在籍する生徒達の個人情報のほかに、ミレニアムを守るための防衛設備や新たな施設の開発状況などが保存されているため、この事態を重く受け止めるほかなかった。そういってリオは、車いすへと座って空間上に浮かぶディスプレイをせわしなく動かす少女へ声をかける。
「…………えぇ、そうですね。この超天才清楚系病弱美少女ハッカーですから、そのようなことなど容易いことですよ、えぇもちろん」
そうチヒロとの通話中に申した前口上を言いながら自信満々に言う彼女だが、その表情はどこか固く感じる。
「チヒロの言うとおり、サーバー、及びハブへの侵入はほぼ確実といっていいでしょう。侵入した痕跡や方法は見事に消されています。ですがこれは……」
「どうしたのかしら?」
「いえ、現時点ではシステム、及びサーバーの状態を確認していますが、以前に保存されたデータと比較しても特にデータの剥奪や改竄などといったことは行われていないですね。本当にただ見られただけというのでしょうか……?」
「本来であれば、その見られただけでも大騒ぎなのでけれど……、それは後にしましょう。犯人の目途についてはどうかしら?……他校、もしくはデカグラマトン、預言者たちの仕業?」
「いえ、それはないですね。一般的なハッキングとは、まったくと言っていいほど侵入方法やその痕跡が違います。あれらは扉を鍵ごと破壊して、部屋を荒らしまわる強盗のようなものに対し、今回は丁寧にピッキングして鍵を開けて部屋に入り、ただ部屋の中をのぞいた後にそのまま出て行ってますね。しかもご丁寧に足跡や指紋は除菌シートで拭き取り、部屋からでる際は外側から鍵までかけていますよ。というかよくこれに気づけましたねチヒロ、私でもしっかり見ないとわからないですよ」
「たまたまだよ、うちの部員が良くいたずらするから定期的に確認してただけ」
そう彼女がいうと、どこかばつの悪そうな表情で視線を逸らすヴェリタスの3人。
「……現状については理解したわ。それで?犯人と思われる人物の特定は?」
「いまやっていますよ、せっかちですねぇ。それにチヒロが破棄した防壁ですが、面白いことになってますよ。見てみますか?」
そうしてヒマリが少し操作すると、部屋に備え付けられたプロジェクターへと表示され、その画像に一同が目を向ける。
「この突破された防壁ですが、今回のハッキングによっていくつかの問題点が浮かび上がっています。無論、今回の事態が発生するまでは何の問題もない完璧なものと言えましたが、これはちょっと……」
続けてチヒロが声を出す。
「ヒマリは途中から寝てたからあんまり関係ないじゃん。……それにしてもこれはちょっと悔しいね。あ、もちろん私はしっかりと仕事をしたつもりだよ。受けた依頼を雑にするなんでことはしない。だけどこれは、そんなのお構いなしに突破されてる。しかも突破した際の問題点が綺麗に挙げられてるんだ。まるで生徒のやってきた宿題を訂正する先生みたいだね。多分今使ってる防壁より、これを修正したものを使った方が何倍も強度が高いよ。ここまでしてやられるとなると相当なやり手だね。ヒマリ以外にここまでできる人がいるんだね」
「いうなれば、年ごろの子ども部屋を掃除した母親が、わざと机の上にエッチな本を置いておくようなシチュエーションですね」
2人が表示した画像を解説しながら、どこか賞賛するような表情を浮かべている。
「………………」
リオは何も声を発しなかった。生徒会長という立場である彼女にとって、今回の事態をどのように対処すべきか考えていたからである。
「……それにしても犯人の追跡を行っているのですが、難しいですね。ミレニアムの施設を経由することで逆探知を回避しているのでしょうが、そこからさらに複数のネットワークをまたいでいるので、特定個人として割り出すのは不可能といって差し支えないですよ」
「…………ハッキングが行われた場所の特定もかしら?」
「それに関しては時間をかければ割り出せそうですが…………それはあなたもある程度の憶測はついているのでしょう?」
「………………」
ヒマリの問いにリオは返事をすることはなかった。
廃墟。ミレニアムの近郊に位置しており、かなり前に連邦生徒会により立ち入りを封鎖された区画だ。無人兵器が徘徊し、多くの自動防衛機構が闊歩する危険地帯であり、その兵器一つ一つが強力な装備を備えている。しかし、封鎖された理由については明確にされておらず、またキヴォトスの最新鋭、最先端を行くミレニアムでさえ手に余るテクノロジーやオーパーツが多数見つかっていることから、持て余した好奇心でこっそりと廃墟へ忍び込む生徒も少なくない。
「(……ヒマリやチヒロが調べることが困難と言われることから、おそらく今回の事態は廃墟からによるもの。そしてハッキングによってサーバー、及びハブへと侵入はされたものの、データの改竄などは行われておらず、ただ覗かれただけ……。他校や企業による偵察の一環?一体だれがなんのために……?)」
会議で得た情報を基に自身の脳内でパズルを組み合わせていく。そしてミレニアムの生徒会長として、最も
「……わかったわ。今回の事件を理由に連邦生徒会へ申告。C&Cに対し、廃墟へ調査を依頼します。調査内容は今回の事態を引き起こした人物、もしくはそれに類する施設の捜索、私からは以上よ。ほかに何かあるかしら……ないようね、ノア」
「はい。ではこれにて会議を終了させていただきます。後程、議事録や資料をまとめたデータを配布しますのでご確認ください。皆様、お疲れさまでした」
彼女が会議の終了を告げると同時に部屋の張りつめた空気が霧散する。そして集められた生徒達は部屋から退出していき、残ったのはリオとヒマリだけであった。
部屋の外から聞こえてくる話し声が遠のいていくのを感じると、手を動かしながらリオへと声をかける。
「…………どうするつもりですか?」
「……無論、ミレニアムの生徒会長として、
リオがそう告げると、ヒマリは大きなため息をつく。
「まぁ、あなたがそう判断するのであれば私からは何も言いませんよ。ハッキングのデータに関しては解析が終了次第、そちらへと送りますので。……では」
そういって車いすを動かし、彼女は部屋を離れていった。部屋に1人残った
お気に入り、評価、しおりやコメントなどが大変励みになりますので是非お願いします!
登場するメイドさん達の名前ってあったほうがいい?
-
いる
-
いらない
-
そんなこといいからはよ続き書け