気楽に生きてりゃそれで良い(未完)   作:ケツアゴ

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割とシリアス


第一話

 人間生きてりゃ儲け物、実にその通りだと思わねぇか?

 

 凶悪犯だの災害だの不慮の事故だの、世の中は理不尽と不条理に満ち溢れてるのさ。

 友人とランチの約束をしたら、それが最後に交わした言葉ってのも有り得るし、テメェが予想もしない事態で死んじまうのもな。

 

「何故だっ! 私は高貴なる吸血鬼の、がはっ!

 

 そう、命の危機なんて虫だろうが人だろうが、それこそ化け物扱いされる奴にだって訪れるもんだ、平等にな。

 

 周囲に立ち込める鉄臭い臭い、俺が目の前の優男を縛った状態で叩き付けた時に割れたタンクから溢れ出した血の臭いだ。

 タンクに繋がったパイプから出る血液は緊急停止でもしたのか途中で止まり、更に先に視線を向ければ椅子に固定された子供の血を吸い上げるチューブが繋がっている。

 

 

「要領と運が悪かった、からか? 力ってのは災難を跳ね除ける為にあるが、限度ってもんがあるからな」

 

 最強無敵で生涯現役、実に格好良い響きだけれど、目の前の奴も俺もそんなんじゃない。格下相手でも負ける時は負けて、格上なんて叩き売る程存在するのさ。

 

 目の前の奴はそれを知らないのか慢心しきり、こんな工場みたいなので攫った人間を利用中だ。一応点滴みてぇので生かされてるが家畜かって感じだが、吸血鬼だしな、家畜扱いでも当然か?

 

「貴様達を好きにして何が悪いのだ! 大人しく飯になっていろ、人間!」

 

 なんかワーギャー叫んでる吸血鬼の近くには全身の血を吸い尽くされた後で力任せに放り捨てられた子供の死体なんだが、ハロウィンの仮装でもなきゃ魔法使いの家の子供、今回誘拐されたって話の子か。

 

「連れ戻せって依頼じゃなくって助かったわ。死体は放置……は駄目だよな。下手すりゃ回収に戻れってなるし……。うん、他の餓鬼は医療的な問題って言い訳すりゃ放置で良いからって思おう。心底嫌だけれど。……死んだ奴も俺も運が悪かったな」

 

 なにせ世の中には悪魔や堕天使、魔獣なんて物騒な存在が跳梁跋扈しているんだ。

 そんなのが存在しない平和でぬるま湯程度の悲劇だけの創作の世界とは大違いだよ。

 

「貴様、このままで終わると思うな。この程度の拘束、直ぐに、ぬ。抜け出せん!?」

 

「そりゃ抜け出せない様に縛ってるからな。にしても魔法使いの家の餓鬼を拐うとか、こんな風に面倒になるだろうに頭悪いな、お前。故意じゃないならそっちも運が悪かったな、同情するよとか言った方が良いか?」

 

 俺には煽る気なんて無かったから口から出たが、似た感じの言葉で怒らなかった奴が居ないから、多分怒るんだろうなあって思いながら人差し指を吸血鬼に向ければ、当たり前の様に何か喚こうと大口を開けた。

 あとは簡単、指先から魔法力を放って口の中から貫通させれば終了さ。派手に吹っ飛ばさなくても死ぬんだし、ローコストで終わらせましょうや。

 

「はい、これで終わり。仕事終わったら牛丼食べて帰るとしますかね」

 

 それにしても死体を持ち帰るの面倒だし、警備の魔獣の一匹でも残してりゃ良かったかもな。

 

 

 

 

 

 

 

「今回の報酬は振り込んでおいた。それと被害者の親からだが……」

 

 俺の目の前で口髭を蓄えたコートの男が一枚の書類を差し出し、手元にあったメロンソーダを逸機半分ほど飲み干した。

 グラスをテーブルに置き、次にコートの内ポケットから出したのは一枚の便箋、俺はそれを手で制して受け取りを拒否する。

 

「罵倒した事を謝りたいってんだろ? 別にどうでも良いさ。何時もの雑音を気にしていたらキリが無い」

 

 放課後のファミレス、部活帰りには少し早い時間帯にて学生服の俺と向き合って座っていた。

 枯れ草色のコートの襟と深く被った帽子のツバで見え辛いが四十代程度のオッさん、顔を隠すつもりが逆に悪目立ちしてるのは別に良い

 

「名前しか知らねぇ国で数百人が飢餓や紛争で死ぬのもニュースで名前を知っただけの自国民が数人死ぬのも同じさ。関係が薄い人間以外がどうなろうと無関係。同様に飼い犬に嫌われるのはショックだが、興味無い人間の感謝も憎悪も同じさ」

 

 男の名はナナシ、正確には名乗ってる名前に過ぎないけれどな。なぁに、別に本名なんざ知る必要無いだろ? 俺、親戚の名前もちゃんと覚えてないし。

 

「相変わらずだな、碓氷(うすい)

 

「軽蔑でもしたかい? 犠牲者の家族に何を言われても平気だが、仲介屋のアンタに嫌われたら仕事がやりにくくなって困るんだが」

 

 碓氷ってのは俺の名字、昔は陰陽師の名門だったらしいんだが、何百年も前に才能が枯れて没落、さっさと諦めれば良いのに繁栄の時代を知らない世代まで意地汚く固執して、一般人相手に汚い方法で金を稼ぎつつ受け継いだ力も絞りカスにまでなっちまって、今や残るは才能溢れる俺一人ってこった。

 

 はい! 説明終了! 俺の家族が居ない理由も高校生が怪しげな中年から仕事を受けている理由もこれで良いだろう?

 

「俺の方もお前と同じだ。重要なのは仕事をこなせるかどうか。そいつの価値観は無関係だ」

 

 その仕事ってのは冥界から逃げ出して悪さをする悪魔や魔獣、俺の親類みたいな連中への対処だ。最近じゃ販売目的で子供を拐って生かさず殺さず血を抜き取り続けていた吸血鬼を退治したんだが、俺が向かった時には周囲を嗅ぎ回る俺にムカついた結果の八つ当たりで一人殺されていてな。

 

 

「……にしても駒王町じゃ良くも悪くも飯の種が尽きないな。お姫様達の護衛も居なけりゃ侵入者察知の結界も無い。わりと重要な場所だった筈だろうに」

 

「政治的な問題も関わってるんでしょ。今の魔王は力で選ばれた象徴、更には派閥に分かれていて……次の選出の為にも身内の足を引っ張りたいのさ」

 

 

 

 背負うものがあると大変だ、全くだな、そんな風に会話をしていると注文の品が運ばれてくる。

 

 

「ジャンボパフェと白玉あんみつになります」

 

「二つとも私だ。ああ、そうだ。ドリンクバーでジュースのお代わりを貰って来るがお前の分も注いで来よう」

 

 相変わらずの甘党だよな、糖尿病とか大丈夫か? まっ、現代医療じゃ無理でもどうにかなるのがこっちの世界だがな。

 さっきも期間限定のケーキ食って、ジュースだって既にドリンクバーのメニューを制覇してたってのに。

 

「……茶で。ハチミツ系以外の甘味は苦手なんで」

 

「成長期だろうに好き嫌いしては大きくなれんぞ?」

 

 いや、スイーツ馬鹿の中年に心配されたくはないんだが……。

 

 

 

 

 

 

 ナナシと別れて日も暮れて、帰りに寄ったゲーセンで中古販売相場の倍以上の額を注ぎ込んだプライズ品を手にして帰宅する。

 

「あー、金をドブに捨てたわ。微っ妙なクオリティの上に別に好きな作品っつー訳でもねぇのによ。狙わなきゃ牛丼何杯食えたって話だろうが」

 

 寺か神社かって感じの広い敷地に建てられた日本家屋、汚い金で一族が建てた俺の家。正直持て余してるし、掃除に労力割くのも面倒だが、プライベート空間に他人を入れたくないし売る手続きも面倒なのでそのままだ。

 

 そんなんだから相続税やら税金がマジで厳しいんだけれどな。

 

 

「腹減った。……うん?」

 

 ファミレスでは微妙な時間だから飯になるもん頼まなかったのつつ、適当に出前でも頼もうかとリビングにまで来ればテーブルの上のメモに視線が向く。

 

 

 

『冷蔵庫に夜ご飯を用意しています。ポン酢以外で食べて下さい』

 

 メモに従い冷蔵庫へと向かう。すると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところてんしか入ってねぇじゃねぇかっ!!

 

 冷蔵庫にはみっちりとところてん(のみ)が詰まっていた。

 

 

 




かと思ったかぁ!!

何も聞かずに

  • 疾風のゲハ
  • 宇治金TOKIO
  • マコちゃん
  • 地獄のイルカの
  • コンバットブルース
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