サーゼクス・グレモリーとグレイフィア・ルキフグスの恋は演劇の題材として人気だ。
この俺、ライザー・フェニックスも娯楽の一つとして演劇鑑賞は好むし、もう一つの目的だってあるんだ。
「なあ、俺の眷属になる気はねぇか?」
ハーレムを形成してるんだ、当然新しいメンバーを探すってのがそれで、役者になろうってんだから見た目の良いのが揃ってる。
その中でもレイヴェルの付き添いで観に行った『ラブ・ラビリンス』でグレイフィア様を演じたユーベルーナ、彼女を一目で気に入った俺は呆れる妹を先に帰すと勧誘に向かったんだ。
結果を先に言えば成功、そして更に続けるならばこの時の選択を俺は酷く後悔する事になった。
「ええ、喜んで受け入れましょう。ですが、今の私は本当の私ではありません。役者ですから当然ですが、それでも構いませんか?」
「別に気にしないぜ。じゃあ、早速……おっ!」
ユーベルーナを転生させるのに必要だったのは女王、兵士八個分の価値がある駒でしか眷属に出来ないなんて予想外の大当たりだ。
有能な人材を引き入れた喜びと今夜のお楽しみを考えれば心躍ったんだが……。
「じゃあ、この場で本当の私をお見せするわね」
ユーベルーナはそう言うと自分の胸元に両手を掛け……左右に引き剥がしたと思ったら緑の珍生物が現れた。
「私の本名はお茶漬け星人。眷属になった記念に美味いお茶漬けを食わせてやるど」
言葉も出ずに俺はその場で燃えたよ、膝から崩れ落ちて燃え尽きた。真っ白になっちまった……。
それとお茶漬けは美味しかったと妹のレイヴェルが言ってたが、俺は意地でも食わねえからな!
……尚、余談なんだがお茶漬け星人が正体を現した次の日から映像媒体及び芝居のポスターのユーベルーナがドレスできたさって口紅をつけたお茶漬け星人に置き換わって関係者一同の胃に結構なダメージが入ったとか。
「これが俺とお茶漬け星人の出会いであり……胃痛の日々の始まりだ」
「えぇ……」
なんか聞いてもいないのに始まった回想の内容に俺は言葉を失った。
部長の婚約者だとか、それなのにハーレムを築いているとか全部すっぽ抜けてしまう程の衝撃。
回想シーンの美女の正体が……あの宇宙人?
目を開けたまま寝ている小猫ちゃんと木場からは関わりたくないという強い意思が伝わってくるぜ、出遅れたっ!
……あー、でも堕天使に襲われてから俺の周囲で起きる奇天烈な出来事を考えたら分かる気がするんだよな。
あの宇治金時も身内みたいなもんだし……。
「ふっ……」
「はっ!?」
言葉は要らない、互いの目を見れば通じ合える。ハーレム形成のイケメンだろうが、俺達は分かり合えた。
握手? ハグ? いやいや、そんなのする程の関係じゃねぇし、ヤロー相手にしたくはないさ。
互いに苦労しているな。
大変ですよね。
まあ、こんな感じで終わりさ。後は互いに興味無し。それだけで十分だ。
「……あれはハジケコミニケーション? 選ばれた戦士は視線を重ねるだけで通じ合うと聞きますが……」
違うよ? 正気に戻ろうよ、小猫ちゃん。
俺の胃がキリキリ痛み出した時、なんか魔法陣が出現してウンザリだよ。
「作者も雑だね。何度同じ流れを繰り返す気なのやら。ノリで展開を決めているから途中で設定だって忘れるしさ」
木場も頼むからおふざけ禁止でっ!
「皆、待たせ……うぇ」
「あぁ……」
そして部長と朱乃さんは宇治金TOKIOとお茶漬け星人を前にして心底嫌そうな顔をしていた。
「ちょっと待ちなさい! 私が大学を出るまでは自由って話だった筈でしょ!? それを急に結婚を早めるだなんて勝手過ぎるわ!」
それからの会話は入り込む余地の無い傍観者、結婚の予定繰り上げに怒る部長の横ではライザーが余裕そうにして、その後ろではお茶漬け星人何宇治金TOKIOにお茶漬けを振る舞ってるが誰も気にしない。
「おいおい、政略結婚だぜ? そりゃ状況が変われば予定だって大きく変わるさ。管理の妨害が入らない今の内に更に盤石にしたいとか……散々各勢力に恨まれているドラゴンを宿している奴を眷属にした……とかな」
不意に俺に視線が向けられ、顎でしゃくられる。何で急にと思ったが、そういや由良が何か教えてくれたっけ。
曰く、宿主には無関係なのに赤と白の戦いは繰り返されている。
曰く、歴代所有者の怨念が宿っていたので大抵は飲まれて狂う。
曰く、多くの勢力を巻き込んだし、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの精神で狙われやすい。
本来感じる筈の怨念を感じないからって言われ、ついでだからって秘蔵のDVDをダビングする事を対価にした契約のついでに教わった事だ。
……馬鹿に汚染されたとか頭が痛そうに呟いて調査結果は適当だったけれどな。
「それと普通に厄介者達を一纏めにしてグレモリー家に押し付けたいんだろ」
「ぐっ! 傍迷惑だけれど分かる意見だわっ!」
「なんや、面倒なのが居るならわいがコテンパンにしてやるで? 姫さん」
「フェッフェッフェ。オレの実力で再教育してやろう」
「「さあ! その厄介者について教えてもらおうか!」」
「テメー等だよっ!!!」
まあ、そんなこんなで要約すると部長の立場を盤石にしてフェニックス家からも本格的な支援をする為にも結婚しようって事だ。
「この土地にはシトリー家の次期当主も居るし、婚約者程度では干渉に限度が有るからな」
「くっ!」
反論はさせないってばかりに理詰めで来られると部長は何も言い返せない。
おいおい、あんな珍妙な宇宙人を眷属にしてる奴が部長の処女を手に入れちまうなんて気に入らねぇ!
本当なら此処で大きな声を出して意見させてもらう所なんだけれど、前に由良が飯奢る代わりに貴族社会について教えてくれたんだ。
「あくまで歴史学的な観点からパイセンにも分かりやすく例えるなら時代劇を思い浮かべりゃ良いさ。貴族は殿様、家臣は侍。現代の貴族制度じゃ腹切りしろだの切り捨て御免とまでは行かねえが、足軽が他所の若様姫様に気軽に接しちゃ駄目みたいな位のもんだと覚えておきな」
彼奴、何か教えてくれるにしても遠回しで面倒だよな、助かるんだけれど。
「まあ、反発はするだろ? 俺も婿入り先で肩身の狭い思いは勘弁だし、両家の当主も解決策は用意した」
「……解決策?」
「レーティング・ゲームで決着をつけようじゃねぇか。つってもそっちは未使用の駒や封印措置で人数が足りないからな。十日間、その赤龍帝を鍛えて来な。序でに他所から助っ人を一人連れて来ても良いぜ」
「よっしゃー!! わいの力を見せる時や!」
「いや、アンタは公爵の眷属だろ! 他所からだよ、他所から!」
「じゃあオレか?」
「お前は俺の眷属だろうが、お茶漬け星人!! がふっ!」
また血を吐いた……。
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