窓の外を見ると其処は巨大な便器でした、以上。
「いや、何で!?」
「……トイレコロシアムですか。ベルフェゴール家が考案した戦場が元になったという」
「終われば結果を受け入れて全てを水に流せ、そんな所かな?」
「小猫ちゃん、知ってたの!? そして木場、頼むから落ち着いて考えろ! 便器だぞ、便器! なんで冷静にコメントしてるんだ!」
窓から覗けば俺達の自陣は蓋の直ぐ近く、遥か彼方に見えるU字型便座の端がライザー陣営の陣地みたいなんだけれど、部長の結婚が掛かった戦いの場がどうして便器なんだ!?
そもそも疑問に思ってるの俺だけ!? 由良、お前もそっち側かよ!?
「落ち着け、パイセン。此処での姿も見られてるだろうし、下手な言動は評価に関わるぜ?」
うっ! それを言われると……。
「それにだ、別にこの便器の戦場も悪魔的には珍妙って訳じゃねぇ」
「そうなのか?」
「ベルフェゴール家ってのは伝承じゃ便器に座って召喚されるってなってるし、古代の王族だって相手に屈辱を与えて優位に立つ為に便器に座って応対したって記録も有るんだ」
「でも、悪魔以外からすれば馬鹿みたいだよな」
あっ、言いやがった。言いやがったよ、このところてん。
ふと視線を見れば小猫ちゃんや木場も目を逸らして知らないフリをしてるし、朱乃さんだって普段とは笑顔をちょっと違う気がする。
転生悪魔からすりゃ変に見えるんだな、この舞台。
「それよりもトイレコロシアムが舞台なのは少し心強いわ」
なんでっ!?
「ぶ、部長。それって一体……」
「私が説明しますね、イッセー先輩。トイレコロシアムは便器の中に落とされた時点でアウト、その時点でリタイアです」
おおっ! それじゃあ俺達だって十分勝ち目があるって事だな! あの焼き鳥野郎を便器に叩き落とせば部長の縁談は文字通りにお流れって事だ!
「まあ、飛べないパイセンと天の助が一番危ないんだけれどな」
「うっ! それを言うなよ……」
「言わなくても現実は変わんないぜ? ……こりゃ一発に力注ぎ込んだ魔力で攻撃ってのは絶対無理だな。溜めが長くて動作が単純で狙いも甘いんだ。寧ろなんで使い物になると思った?」
「お前、マジで少しはオブラートにだなぁ!」
「そろそろ時間だし、グレモリー先輩はパイセンの駒の封印を解除しといて下さいや。そうすりゃ雑魚散らし程度にはなるでしょ」
此奴、マジで容赦せずにズバズバ言って来やがる。くそっ! 今に見てやがれ! 俺の編み出した技で驚かせてやるからな!
そんな決意をしつつ準備時間は過ぎて行き、いよいよゲーム開始のアナウンスが響く。
朱乃さんと部長は陣地に残り、俺は木場と小猫ちゃんと共に右側からライザー側の陣地を目指した。
「天の助、おふざけは絶対に許さない。何故ならこれは依頼だから。ちゃんと狙え」
「お、おう……。何か凄い寒気がする言葉だな、それ」
俺と天の助は左側ルート、お茶漬け星人の魔力は右ルートから反応があるし、このまま進めば良いだろ。
トイレコロシアムは一周十Km、深夜の散歩にゃ少し面倒な距離だし、さっさと終われば良いと思っていた時だ。
「人間の男……」
「例の助っ人? じゃあ、バラバラにしちゃおっか」
現れたのはブルマに体操服の双子、手にはチェーンソーだ。おいおい、ショーの一種だってのにグロい光景が生まれそうな武器を使うもんだ。
チェーンソーの刃を床に擦り付けながら二人が迫り、だから天の助を蹴り飛ばした。
「さっさと終わらせろ」
「プルプル真拳奥義・アメーバ空域!」
天の助の強みは異常なまでの再生力だけじゃなく、変幻自在の肉体だ。
あと、なんかテンションで体積が増減するんだよ、どーなってんだ?
「この前みてぇに“体積足りなかった♪”とか言ったらぶっ殺してる所だが、今回はちゃんとやったな」
大きく形を変えた天の助はちょっと大きくなって双子の頭を覆い尽くす。
ガポガポと口から空気を吐き出して踠いても手は天の助の中に抵抗無く入り込み、やがて白目を剥いて倒れ込んだ。
『ライザー・フェニックス様の『兵士』二名リタイア』
「さて、次行くぞ。先ずはこの先を調べて……結構居るな、怠っ」
今のところ何もしてねぇが、何もしたく無いレベルで眠ぃ。あれか? ベッドの中でスマホをポチポチ弄って灯つけたまま寝落ちしたのが仮眠だったからか?
「ひゃっほー! フェニックス家って金持ちなんだろ? 取り行って冥界でところてんの促進してもらうぜ!」
「今後に差し障るだろ。マジで止めろ」
さっさと終わらせて寝たいってのに、余計な心配まで増えた。どうにかして天の助をリタイアさせないといけねぇな。
あー、マジで駄目だわ。簡単に読める展開だったじゃねぇか。このまま突き落とすか? いや、それやったら俺だけで相手しなくちゃならねぇし、俺が飛び込むのは嫌だ。だって便器だぜ?
悪魔ってマジで馬鹿なんじゃねぇの? 娯楽が少ないせいで頭がどうにかしてるだろうが。
「マジで魔法使いの家系ってロクな事しねぇ。俺は絶対に子孫残さないでおかないと……」
そもそもの話、グレモリー家と余計な契約結んだ馬鹿が身内に居るからこうなった。
だから死んでまで誰かに迷惑をかけないでおこうと思ったら向こう側から敵さんのお出ましだ
「あの二人をこんな短時間で始末するとはな。見直したぞ、人間! 我が名はカーマイン! この伝統あるトイレコロシアムで貴様を倒す者の名だ!」
「なんか脳味噌まで筋肉っぽいのが来たな」
頭のパンダナに鎧、確か騎士だった筈。他は僧侶に戦車に兵士一人の大盤振る舞い。
「言われてますよ、カーマイン」
「脳筋って見抜かれてる」
「五月蝿いぞ、お前達!」
姦しいってこんな状況なんだと思いつつ欠伸を噛み殺す。……この時、俺に電流走る。
「おい、天の助。もう一度アメーバ空域で連中を包んでくれるか?」
「彼奴等少しはやりそうだし、数が多いから大変そうだろ? 面倒臭いから嫌だ」
「このゲームでお前が最後まで残ってたら明日はところてんのフルコースにするからさ」
「よしゃぁああああああっ!!」
再び放たれるアメーバ空域、取り込まれるライザー眷属。
「ご苦労さん。もうリタイアして良いぜ」
そしてそれを凍らせる俺。これで脱出は絶対不可能。そのまま便器の中に行っトイレってな。
ライザー眷属を包んだ状態で凍った天の助を蹴り落とせば水音の後でリタイアの光が見えた。
『ライザー・フェニックス様の『騎士』一名『戦車』一名『僧侶』一名『兵士一名リタイア』
「これで良し」
これだけやったら問題無いだろ、そんな風に思った俺の耳にアナウンスが届く。
『リアス・グレモリー様の『騎士』一名『戦車』一名リタイア』
あらら、あっち側は随分と苦戦の様子だねぇ。
感想待ってます
何も聞かずに
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