気楽に生きてりゃそれで良い(未完)   作:ケツアゴ

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第二話

 世の中には一般的な常識じゃ考えられねぇ連中が存在する。悪魔だけでもマジで同じ種族かって位に見た目に差があるし、肌や目の色の違い程度で争う連中が馬鹿に思えて来るぜ。

 

「なあ、言ったよな? ところてんを無理に食わそうとすん

なっつたよな?」

 

 だがよ、いくら摩訶不思議な世界って言っても程があるだろう!

 

「ぎゃぁあああああああああっ!? 溶ける、マジで溶けるから許してくれぇえええっ!」

 

 俺の目の前には巨大な鍋、そして煮えたぎった湯の中には冷蔵庫の中身を全部ところてんと入れ替えた犯人であるゼリー状の生物……生物で良いんだよな?

 

 名前はところ天の助、何代も前から勝手に碓氷家に居候して追い出そうが粉微塵にしようが、何なら冥府のコキュートスに不法投棄しようが平然と戻って来る謎の存在。

 因みに全身のほぼ全てがところてん、少しだけゼリーが混ざってる謎生物。

 

 

「ハンカチ! ぬのハンカチあげるから勘弁してくれぇええええっ!?」

 

「いや、要らない」

 

 一面にぬって描かれているハンカチを差し出して来たので叩き落とし、蓋をすると何重にも封印を施す。

 

 水晶みたいに輝く半透明の鎖が空中の魔法陣から伸び、蓋と鍋に絡み付いて完全に脱出を封じた。蓋が開かなくなるだけの単純な物じゃねぇ、蓋の強度も上げて破壊も不可能にする封印魔法、決まれば上級悪魔さえ暫くは出てこられねぇよ。

 

 

 

 

 

「これで暫くは静かにしてるだろ」

 

 鍋の内側からは激しく蓋を叩く音が聞こえ、それは徐々に静かになって行く。

 何度殺そうが蘇る化け物は封印すりゃ良い、不死性を無効化する手段や相手の心が死ぬまでの耐久戦なんざ徒労ってもんさ。

 

「じゃあ、ラーメンでも頼もうぜ。俺、担々麺な」

 

「……だよな」

 

 尚、封印したのに天の助は普通に俺の方に手を乗せていた。分かっていたさ、こうなるって。

 不死身の化け物が常識を超えた存在なら、此奴は常識が通じない馬鹿なのさ。

 

 

 

 この馬鹿の名前は、ところ天の助。正体不明のハジけた奴だ。

 

 

 ラーメンに餃子、それだけじゃ足りないから油淋鶏とサラダも頼んでテーブルに並べる。食べるのは俺だけじゃなく天の助もだが、食ったものが何処に行ってんだって疑問はとっくの昔に捨て、会話も無く食べ進めていた頃だ。

 

「あっ、そういや何時もの贈り物が届いてたぜ。お返しはところてんギフトセットで良いだろ?」

 

「良いわけねぇよ。前にお前が勝手に出した奴の賞味期限が切れてて大変だっただろ。勢力のトップに届いてたら宣戦布告と同じだったぞ」

 

 俺は優秀だ、幾つかの勢力が取り敢えず唾を付けておこうってたまに贈り物をくれる程度には。

 それが凄く面倒臭い。組織の後ろ楯が便利でも、付属する責務やしがらみを考えりゃ根無し草が一番だ。

 

 だから仕事は選んでいるし、贈り物には返礼品で帳消しにしているんだが、天の助はそれをところてん促進活動に利用しようとする、もう注意するのも面倒に思えてくる。

 

「今度やったらお前を腐らせて生ゴミの日に出すからな」

 

 多分目を離した一瞬で平然と家に戻ってるんだろうがよ……。

 

 

 

 

 

 

「あー、サボりてぇ。学校なんざ週休五日になりゃ良いのによ」

 

 どうでも良い相手に何を言われてもどうでも良いが、それは内容に関してだ。

 ほら、仮に寝てる時に聞こえた虫の羽音がプーンじゃなくってペーンとかでも耳障りなのは同じだろう?

 

 だから俺は面倒な学校に通い、そこそこの成績をキープしている。体育も適当に手を抜いて、授業以外は寝るか本を読むかだからで基本的に話し掛けて来る奴も少ない。

 

 今も窓際の席で弁当を食い、イヤホンで周囲の音をシャットダウンしながらボケっとしていたんだが、何気無しに目を向ければ窓の外では追い掛けっこの真っ最中だった。

 

「……またやってるよ」

 

 一学年上の先輩だが別の学校にも噂が届く連中、変態三人組。どうやら覗きが見つかって追いかけ回されているらしいが、俺にとっちゃどうでも良いさ。

 

「そろそろ学校側も共学にしたばかりで大事にしたくないからって有耶無耶にゃ出来ねえぞ、パイセン共」

 

 三人とは同じ中学、一人は家が近所だっつーんで餓鬼の事は遊んだ連中の内の一人、ダチって程じゃなくても顔見知り以上だから多少は意識を向ける。

 

「飯も食ったし……寝るか」

 

 あのまま三人が女子連中に捕まって制裁を受けようが、覗きや過剰な暴力で纏めて停学処分になろうが気にしない気にしない。

 

 眠りに落ちる際、廊下を歩く赤髪の先輩に教室が騒がしくなったので魔法で音を遮断、この時の為に持ち込んだ枕を机に置いて眠りについた。

 

 にしても廃教会に住み着いた堕天使はどうすんのかねぇ。一方的に邪魔だからって理由で襲われたら面倒だし、夜にコンビニ行くのが面倒になるんだよ。

 

 

「支配権の空白地帯ってマジでかっ怠い……」

 

 一族が権力に固執して俺の才能を利用しようと画策していたから……そんなのは餓鬼の頃の話。

 今はアレだ、何もかもが面倒だから権力とかから離れた根なし草が良いんだよ。

 

 権力による利益は要らないから厄介な事からも離れさせてくれ、呑気に生きてりゃそれで良い。

 

 

 

 

 

「聞いてくれよ、由良(ゆら)! 俺に彼女が出来たんだぜ!」

 

「エイプリルフールは四月一日の午前中だぜ、兵藤パイセン。隠し撮りは感心しないな」

 

 放課後、鼻息荒くどや顔で携帯のが面を見せて来たのは兵藤一誠。まあ、変態だ。

 

「いやいや、マジだって! 夕麻ちゃんって子で、俺に告白して来たんだ。それでデートプランの相談に乗ってくれよ」

 

「そうだな。なら……丸一日待ちぼうけを食らっても良いように暇潰しの道具は持っていけ。犯罪に巻き込まれた時用に小型のボイスレコーダーもな。悪戯か犯罪絡みを警戒しておけよ、有名な変態高校生」

 

 ちっとは普段の行いを思い出せ、っとまあ、此処まで言ってやるのが餓鬼の頃からの知り合いへのせめてもの情けだ。

 何せ告白して来たって奴は堕天使、それも兵藤の命を狙っての事だろうが、上げてから落とす気なら随分と悪質なこった。

 

 

 

「ぐっ! 俺が超絶ラブラブカップルになって見返してやるからな!」

 

「なったら良いな。ちょうぜつらぶらぶかっぷる」

 

 流石に悪魔の縄張りで目立つ真似はしねえだろうし、俺のと違って仲の良い家族が巻き込まれるこたぁねえだろ。

 まーだギャーぎゃー騒ぐ兵藤を無視して家へと帰る。

 

 助けないさ。何せ堕天使の人間狩りは総督のアザゼルが神器を理由に命じているんだし、知っていて邪魔すりゃ顔に泥を塗る行為だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 そして数日後、夕方になってデートの日だと思い出した俺は死んでいる頃だなと時計を眺める。悪魔の仕事は夜から、夜中に動くのはリスクが大きい。

 

 

「あえて悪魔に転生させて拘束するか、全員神器抜いて管理すりゃ良いのによ。面倒だねぇ。……馬鹿が居ねえ」

 

 虫の知らせとでも呼ぶべき嫌な予感を覚え、俺は慌てて天の助を魔法で探す。マーキングしているから直ぐにその姿を発見したが、今まさに堕天使に殺されそうな兵藤の前に飛び出した所だった。

 

 

 

「危ねぇ! プルプル真拳奥義 超硬化(コーティング)!!

 

 普段の柔らかそうな見た目から一瞬で金属の光沢を放つ頑強そうな分厚い板へと変化、光の槍の前に自らを差し出していた。

 

 

 

 

 

 

 




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