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いよいよ凛ちゃん戦闘パート。
他人称視点は初めてなので変なところあったら言ってください。
勝己の爆破でビルの一部が崩壊したために、凛たちの戦いは別のビルで行われることになり、移動が行われた。
その移動中に時間ができたので、とりあえず親交でも深めておこうかと、凛は尾白に話しかけることにしたようだ。
「……尾白、えっと、下の名前は?」
「ああ、
「ましらお……?」
「猿に夫って書いて猿夫。わかりづらくてごめん」
「……わかった。個性は、尻尾、だっけ」
「うん。戦い方は、尻尾を使った体術が主体だよ」
「ん……体術、とくいなの?」
「うん、それなりには」
「こんど、ちょっと教えてほしい……」
やがてビルの前に到着すると、凛と尾白はビルの中へ入る。ハリボテの核が設置されているのは、4階のフロアの北の広間。相手の個性次第では、外部からの直接侵入も警戒しなければならないけれど。
そう考えながら、凛は尾白の方を向いて作戦会議を始めた。
「……まず、情報共有しよ。向こうの二人は、焦凍と目蔵……焦凍の方は、テストの時は氷使ってた」
「障子くんの方は複製腕って個性らしい。個性把握テストの時に見たけど、触手を腕にしたりしてたかな。他にも耳とか口とかも触手に生やせるみたいだね」
「……ん。索敵、も?」
「多分できると思う。オールマイティに動ける厄介な個性だよ」
相談の結果、凛が遊撃、尾白が防衛と決定した。建物の立体構造は二人とも頭に入っているし、侵入ルートの想定も問題なく済ませた。
そこへー、オールマイトからマイク越しに声がかかる。
『よし、双方準備はいいかな?』
「ん、おっけ」
「俺も大丈夫です」
『では……スタートだ!!』
【第二戦】
ヒーローチーム:轟/障子 vs
「じゃあ、そろそろ行ってくるね……もしかしたら、助けてって出すかも……あー」
「ん?霧崎さん、どうし……」
「猿夫、私が合図したらジャンプ」
「……うん、わかった」
部屋から出て行こうとした矢先、凛の直感が危険信号を発した。
尾白が素直な人間でよかった、面倒な説明を省ける。そう思ってから、目を瞑って極限まで意識を集中させる。じわじわと、直感が発する危険信号の度合いが上がってきて——
「……今!」
「よっ……うわ!」
ピキ、と言う音と共に、部屋一帯が凍りついた。いや、部屋だけではない。凍り付いたのは、建物全体だった。
「……焦凍の個性、かな」
「エッグいね……こんなに広範囲に"個性"行使できるって、相当だよ。というか、なんでわかったの?」
「ん、勘……」
「か、勘かぁ……」
ちょっとガクッときたようなリアクションを見せる尾白だった。
「じゃあ、私行ってくる。また来そうだったら、インカムで伝える、から」
「うん、頑張って」
そう言って、凛は木刀片手に部屋を出ようとする。
「……あ、そうだ」
振り向いて、尾白の方を見た。
「……猿夫。なるべく、そこから動かないでね……」
「え?どういう……ああ、なるほど、そういうことね」
頷いた尾白を見てから、改めて歩き出す。
向こうに索敵可能な人物がいて、こちらの情報は多分筒抜け。奇襲も使えないし、やっぱり対応が後手に回ることは避けられない、と。
「木刀だと……あんまりやる気、出ないな……」
まあ、やりかたはいくらでもある。
【side:轟焦凍】
霧崎と話したのは、今日の昼休みが初めてだ。ぼんやりとしていたのが印象に残ってるくらいか。ただ、まっすぐこちらを見る眼だけは印象的だった。
「4階に二人。どちらも北側の広場から動いてないみたいだが……いや、一人の方は今動き始めた。二人とも近接型の武闘派って感じだからな。一人が遊撃、もう一人が防衛の振り分けか」
相方が索敵を得意としているのはいい。戦闘は俺一人で十分だし、後ろからサポートしてもらうのが一番楽だ。
「危ねえから下がってろ。向こうは防衛戦のつもりかも知れねえが……」
地面に手をついて、”個性”を発動させた。
悪いが、最短で決着をつけさせてもらう。
ピキピキと、建物が凍り始める。やがて10秒とたたずに、世にも珍しい氷漬けのビルが出来上がった。同時に、右の酷使のせいで体全体の体温が著しく低下したのがわかった。
……そう何度も連発できるもんじゃねえな、コレ。
「あとは核回収するだけだ。いくぞ」
「……ちょっと待て」
階段を登ろうとする直前、障子から静止がかかる。
触手に生やしていた耳を口に変えて、言葉を告げた。
「まだ足音がする。一人分だ。片方には避けられたっぽいな」
「……チッ」
また凍らせてもいいが……それで避けられたら、直接戦闘の時に支障が出るか。仕方ねえ。
「まあ、いい。二対一ならいける」
「それもそうだな。……動ける方は、三階に降りた。そこで迎撃する腹積りなんだろう」
「こっちゃ一方的に向こうの情報わかってるんだ。挟み撃ちで奇襲かけりゃいけるか」
「それでいこう」
動けてんのはどっちだ……?フツーに考えりゃ尻尾の方か。霧崎は勝手な印象だが、咄嗟の判断とか苦手そうだ。どっちにしろ、有利なのはこっちだが……。
どうにも違和感が、拭えない。
障子の索敵もあって、敵のいる位置はずっと筒抜けだったから、動けている方の敵のいる3階までは特に警戒もせずにフリーパスで到達できた。
そこで、一度敵の姿を物陰から視認する。かつん、かつんと規則的なリズムをブーツで奏で、腰には木刀を佩き、紅桜が目を惹くペリースを靡かせるそいつは、そのまま突き当たりの角を曲がって見えなくなった。
「動いているのは霧崎の方か」
「……そうみたいだな」
予想とは違った。やっぱり、違和感が拭えねえ。というか、どんどん強くなっているような感じだ。……だが、そんな些細なことを気にしちゃいられねえのも事実だし、今は無視だ。
ここからは、障子が足音を聞いて場所を補足しながらタイミングを練って、奇襲を仕掛ける手筈だ。
奇襲の第一弾として、ドンピシャのタイミングを図れる障子が背後から襲撃。二手目に、そっちに気を取られた霧崎の背後から、俺が氷漬けにする。初手のブッパを避けれるだけの反射神経があんなら、一段階の奇襲じゃ対応されるかもって判断から、念には念を入れようと、二重の奇襲作戦に仕上げた。
「……ここで、一旦別れるか。今までの周回ルートから行けば、大体あと15秒くらいで向こうの角を曲がるから、それから少しして俺は奇襲を仕掛ける。轟はその後だな。目安として20秒って考えておいてくれ」
「わかった」
そう言って、障子は極力音を立てないような感じで歩いていった。
それを見届けてから俺も配置につく。
5秒。10秒。
15秒。
——20秒。
ちらりと物陰から顔を出して、霧崎の方を伺えば、丁度障子が背後から襲いかかろうとしていた。霧崎の方も、窓の外に何かを見つけたのか、窓の方に視線を投げかけていて、完全に無防備。
獲った、と、思った。
「……ざん、ねん」
「ガッ……!?」
一瞬の出来事だった。
障子が拳を振りかぶった瞬間に、さも奇襲が来るとわかっていたかのような、絶妙なタイミングでの頭部へのカウンター。背後は見えていなかったはずなのに、木刀は頭部に吸い込まれるようにして振り切られ、障子の意識を見事に刈り取った。
どおっ、と音を立てて障子が倒れ込む。
「なっ……!?」
「……私の方から、先手は取れないし。だからね、襲撃のタイミングをこっちで調整したの……ダメ、だよ?敵の、見え見えの誘いに乗っちゃったら……」
障子の方を向いていた霧崎が、振り返って。
はっきりと、目が合った。ゾクリと、背筋に冷たいものが走る。
「かんたんに、失っちゃう」
「ッ……!」
「……焦凍、一対一だよ。奇襲なんかより、こっちの方が、楽しいよ?」
「言ってくれる……」
挑発に乗らないのが本来は正解なんだろう。幸い霧崎のいる位置は4階に続く階段がある場所からは一番遠い場所だ。今すぐ踵を返して駆け出して、核の回収に向かうのが最善手。
だけれど、それは俺のプライドが許さねえ。
「望み通り、相手してやるよ。タイマンでな」
「ん。かかって、きて」
木刀を構えた霧崎へ向かって、間髪入れず床に手をつき、氷柱を霧崎の足元から頭を目掛けて生成する。だがそれも、当たり前のように予見されて砕かれた。
「……む、ちょっと傷ついた……」
(ただの木刀で俺の氷が砕いた……。結構なパワーだが……弱点は、木刀の耐久性か?)
凛の個性『サムライ』の一番の特性として、『「斬れる」と判断したものを斬れる』というものがある。この能力の性質は実は、凛自身の斬ろうとしている対象に関する認識に依存しているのだ。
通常、太刀を持った凛であれば、その能力により刀の切れ味が底上げされ、簡単に両断することができるのだが。
手に持っているのが木刀なら、どうなるのかというと。
(木刀で、氷なんか斬れるわけないし……)
まあ、そういうことである。こう言った意識が根本で根付いている以上、上記の特性の発動はいくら自己暗示をかけたとしても難しい。ゆえに、使えている能力は『刀装備時の身体能力向上』のみとなっている。
さらには、木刀があまり乱暴な扱いに耐えられなさそうなのも問題だった。
そう言った事情もあって、次に凛に迫ってきていた氷柱に対しての凛の選択は、木刀での迎撃ではなく身を翻しての回避行動となった。
「ぼんやりしてるように見えて、随分反射神経がいいんだな」
「ん、よく言われる」
「そうか……よ!」
距離を縮めようとする霧崎の進行方向を立て続けに凍らせる。
向こうは近接しかねえし、こっちは後ろに下がりながら牽制しつつ、どっかのタイミングで足元掬うなり、武器破壊するなりして一気に仕掛けりゃいい……
「ねえ」
「……なんだ」
相変わらず、無表情で氷を砕きながらだが、唐突に霧崎が声をかけてきた。
「寒そう、だね」
「……お前は寒くないのか」
「ん。雪国出身……。好きな麺類は、氷見うどんと、ブラックラーメン……」
「そうか。合わねえな」
「ん、お蕎麦も、好きだよ?」
その言葉には答えず、再び氷柱を放つ。
だが、避けられる。……いや、いい。屋内ということもあって、閉所での戦闘だから、こうして行動を限定し続ければいずれ。
「ギア、あげるね……」
「ぐっ……!?」
単調になりかけていた氷柱の合間を縫って、明らかに速度の上がった霧崎がこちらへと迫る。
咄嗟に大きめの氷柱を生成するが、バギャッ、という音と共に真ん中から砕け散って。光を反射してキラキラと光る砕けた氷の破片を纏いながら、間合に入った霧崎が木刀を振りかぶった。
咄嗟に右腕でガードし、攻撃に移行した体勢の霧崎の足元を凍らせようと試みたが、よけられる。だがその回避に意識を割いた隙に、距離をとることができた。……骨は逝ったか、相手が木刀で助かった。
安心する間もなく、霧崎は攻撃を再開してきた。
氷、氷、回避、後退、氷、ガード。極限の集中力を要される攻防の間にて、霧崎が口を開いて問うてくる。
「……ねえ」
「くっ……」
「使わないの?……
突如としての問いに、一瞬意識が持っていかれた。
だが、すぐさま取り戻して。それと同時に、親父と同じようなことを言った霧崎に対し、胸の内から怒りが湧き上がる。
衝動のままに、個性を発動した。
「……!うるっ……せえ!!!」
「わ……」
バキ、という音と共に、廊下を塞ぐ形で氷が生成された。攻撃一辺倒の体勢だった霧崎も、流石に避けきれずに氷の中に下半身を囚われ、動けなくなる。
パリパリと体に霜が降りていくのがわかるが、それよりも。右側だけで勝利したことへの達成感の方が、大きかった。
「ハァ、ハァ……俺の、勝ちだ」
「……ん、私の、負け……くやしい」
「……それならもうちょっと、悔しそうな顔しろってんだ」
相変わらず無表情で、色素の薄い瞳でこちらを見つめる霧崎に、そう愚痴を吐く。
はあ、疲れる戦いだった……。
「でも、私
「……なにを……ぐはっ!?」
「……背後からごめん、轟くん」
「お前……尾白、なんで、動けて……」
だめだ、意識が朦朧とする。頭部に尻尾の一撃をもらって脳が揺れてるのと、個性の使いすぎで体が冷え切ってるせいで血が回らねえ……
「動けてたのは最初からだよ。俺は霧崎さんから決定的な指示が出るまで一切動けないふりをしてただけ」
「……なんだよ、最初から、全部手の平の上か……」
障子が倒れ、凛たちの行動が把握される心配がなくなり、さらには焦凍が凛を無視して核の回収に向かわないという選択肢をとった段階で、凛はすでに尾白に無線での連絡を取っていた。
『……障子くん、倒したから。テープで確保、おねがい。そのあとは、隙見て、焦凍、叩いて……』
『流石だね……わかった、任せてよ』
一対一だということを強調し、追い詰めてこちらへ意識を集中させ、極限まで力を使わせ、そのまま倒せたら倒して、無理だったらトドメの一撃を尾白に任せる。
その一連の作戦の流れを大体察したのか、焦凍は力なく頭を横たえて。
悔しそうな顔をしながらも、どこか晴れ晴れとした色を残して、目を瞑った。
オールマイトの、声が響く。
『
「……ないす、奇襲」
「俺は最後っ屁だけだよ。ナイスファイト、霧崎さん」
「……ん!」
そんなこんなで、凛たちの戦闘訓練は幕を閉じた。
ちなみに焦凍が気絶したせいで氷から解放されなかった凛は結局、同じく凍傷&脳震盪で割と重症な焦凍と共に、保健室へ連行されていったとさ。
凛ちゃんが奇襲直前に窓の外に目を向けたのは、鳥が飛んでて気になったからです。
能力説明
『「斬れる」と思ったものを斬れる』
簡単に言えば葬送のフ●ーレンのユーベルちゃんの得意魔法「大体なんでも斬れる魔法」みたいな感じ。
心から斬れる、と思えないと刀の切れ味は向上したりしません。今回も持ち武器が木刀なのでろくに発動しませんでした。
逆に言えば、「斬れる」と思えて仕舞えば、なんでも斬れる。
今の「斬れる」の最低ラインは、コンクリとか鉄塊とか。
10年以上も剣術やってますし、これくらいは当たり前に斬れる、って自信があるので、斬れます。
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