サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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12話 新機能

 

 

「ハイハイ、あんたは軽い凍傷だけだったから、これでもう大丈夫そうさね。そっちの子もすぐ目が覚めたし良かった、またなんかあったら遠慮なく来なさいな」

「……ん、ありがと」

「ありがとうございます」

「気にしない気にしない。ほらペッツだよ、お食べ」

 

凛たちの戦闘訓練が終わってから、大体一時間が経った。

凛も軽症なものの大事をとって安静にさせてもらっていたが、ついさっき焦凍が目覚めたこともあって、凛も保健室から退散することを決めたのだ。だがチラリと横を伺ってみれば、依然出久は眠ったままである。

 

「あの子が気になるかい?」

「……ん」

「今月でもう3回目だからねぇ。全く、この調子でいったらいずれ取り返しのつかないことになるよ」

「やっぱり……」

「俺らも可能な限り見守るようにします。クラスメイトとして」

「頼んだよ」

 

その一言を受けて、凛と焦凍は保健室を出る。

凛にとっては、焦凍が別れ際に出久を気遣うような発言をしたのが、少し意外だった。

 

(やっぱり……焦凍、優しい)

「なぁ霧崎」

「………なぁに?」

「実は、戦闘訓練が始まるまでお前のことちょっと舐めてた。それだけは謝らせてくれ。すまん」

「ん……べつに、いーよ」

「ありがとう。そんで本題だが」

 

一呼吸おいて、歩みを止めた焦凍が言葉を告げる。

 

「次は、負けねえ」

「……ん、負けたの、私。私こそ、負けない」

「いやお前は勝ったじゃねえか」

「一対一だと、負けちゃったし……」

「それを言うならお前木刀だったろ。100%の実力は出せてねえ」

「焦凍だって、最初に”個性”で建物凍らせてたし……あれなかったら、もっとやれてた……」

 

互いに勝利を押し付け合うという珍しい口論が繰り広げられ出したが、その不毛な争いはとある人物の登場で幕を下ろすことになった。

 

「やあ!轟少年、霧崎少女!」

「……オールマイト」

「怪我はもう大丈夫かい?講評を伝えに行こうと思っていたんだが」

 

ゼェゼェと、なぜか少し息を切らしている様子のオールマイトを、凛は少し不思議に思った。

 

「なんか……疲れてる?」

(ギクゥッ!?)

「……い、いやいや、最初の授業ということもあって、張り切ってしまったからな!柄にもなく少し疲れてしまったよ!」

「……そ。なら、いい」

「オホン!では、早速君たちの講評に入ろう」

 

その言葉に、凛と焦凍は背筋を正す。

 

「まず、轟少年。流石と言わせてもらうよ、立派だった。最初に建物を凍らせて時短決着を狙う判断は素晴らしいし、それが不発に終わった後も、ペアの障子少年と共に奇襲作戦の立案、そして霧崎少女に一対一で勝利する戦闘力。どれも賞賛に値する!」

「……でも、負けは負けなんで」

「ハッハッハ!向上心があるのはいいことだ!頑張れ、少年!」

 

ポンと肩に手を置かれ、少し照れたようにしている焦凍の姿が、凛は少し羨ましかった。……ふむ。

 

「さて、霧崎少女。今回のベストは、間違いなく君だ!予測不可能な初撃を見事回避した直感力!尾白少年に待機を命令した咄嗟の判断力!奇襲に難なく対応して見せたその駆け引き力!そして、轟少年と互角以上に渡り合った戦闘力!くぅ~!いやはや、非の打ち所がないね!思いつく弱点と言えば、武器の刀がない状況での立ち回りくらいだが……」

「それは、ちょっと思いついたことがあるから、試してみる……」

「そうかい!そいつは良かった!」

 

訓練中に思いついた、ちょっと突飛な方法。家に帰ったら試してみようと、思っていた。

今はそれより。

 

「……ん。ご褒美、ほしい」

「ご、ご褒美?何か欲しいものでもあるのかい?」

 

予想外の返しに少したじろぐオールマイトを見て、とりあえず応じてくれるらしいと判断した凛は、少し恥ずかしそうにしながらこう言った。

 

「頭、撫でてほしい……」

「……ハッハッハ!そういうことならお安い御用さ!頑張ったな、霧崎少女!」

「……ほえ〜」

 

二、三秒頭を撫でてもらって、凛は満足した。なにぶん、小さい頃からこうして頭を撫でたり甘やかしてもらったりする経験が凛にはなかったため、先ほどの焦凍の様子を見て少し気になったのだ。

オールマイトが幼少の頃から憧れである、というのもあるが。ちなみに凛は、オールマイトの『誰よりも強くあれる姿』に憧れている。

 

「……ありがと、オールマイト」

「ああ!では、私はこれで!緑谷少年にも講評を聞かせねばならないのでな!!」

 

そう告げた後、目にも止まらぬ速さで廊下を駆け抜けていったオールマイトを二人は見送る。

 

「なんであんな急いでんだ?」

「……廊下、走っちゃダメ……」

 

 

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

日付は変わって、翌日。

少し暑くなってきた通学路を、凛は一人歩いていた。豊かに葉を茂らせた新緑の木々が風に吹かれて、葉っぱ同士を擦らせてサワサワと音を立てる。空には雲ひとつなく、かんかん照りとまではいかないが、それでも今日は朝から気温が20度を超える予報が出ている。

 

やがて凛は雄英の門前についたわけだが……そこには、全く呆れてしまうくらいの人数のマスコミが詰めかけていた。ちょっと驚いて呆然としていると、マスコミの一組がカメラとマイクを向けながら凛の方へ近づいてきた。

 

「あ、きみ、もしかして雄英ヒーロー科の生徒かな?ちょっとインタビューいい?」

「……えと」

「日本一のヒーローが今春から雄英で教鞭をとっていますが、今の心境は?」

 

質問への回答を了承したわけでもないのに、間髪入れずに記者から質問が投げかけられた。これがマスコミの強引さか、なんて思いつつ、とりあえず質問には答えよう。

面倒くさいけど。

 

「……慣れてないのか、結構頑張ってる。新しい一面が見れて、ちょっと嬉しい……」

「新しい一面!それはどのような……」

「……遅刻したら困るから、もう行くね……」

「あ、ちょっと!」

 

小走りで集団を抜け出し、一息つく。

どうやら大半のマスコミがオールマイトを目当てとして来ているようだった。日頃からこんなのに囲まれていると、大変だろうな。

 

そうして抜け出したあたりで、凛は一人見覚えのある背丈を見つけた。

 

「……響香」

「あ、霧崎じゃん、おはよ」

「おはよ……」

「アンタもインタビューされた?ウチちょっとびっくりしちゃった、オールマイトいっつもあんなん受けてるんだ」

「ん……ちょっと、げんなり」

「相澤先生ルート?」

「それもやだ……」

 

校舎に入り、教室への道を歩きながら、響香と若干失礼な会話を続けていた。まあ、相澤先生が聞いたところで、なんとも思わなそうではあるが。

とりあえず、決してメディア嫌い=社会不適合者というわけではないということだけ、明言させていただく。

 

ともかく、将来ヒーローになることを考えれば、慣れていかなければいけないのだろう。頑張らねばと呑気に考えながら、教室の扉に手をかけた矢先。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワっと、凛の直感が何かに反応した。

慌てて周囲を見渡すも、いるのは眠そうに歩く生徒や、笑いながら駄弁る男子生徒たちのみ。特段変わった様子は見られない。あれだけ大きな直感だったのに、もう鳴り止んでいるし、なんだったのだろうか。

いつものような危険信号ではなく、何か、不気味な意思のようなものをぶつけられた感じだったから、少し不安なんだけど。

 

「ちょっとどうしたの、いきなり」

「…………ん、なんでもない……」

「なら良いけど……」

 

あまり不確定な要素で他人に心配をかけるわけにはいかない。自分の心のうちに留めておけば良いだろう。そう考えて、凛はいったん今のことは無視することにした。

 

「お!霧崎に耳郎じゃん、おはよう!」

「ん……電気も、おはよう」

「ケロ、凛ちゃん、いつもみたいに大荷物じゃないのね」

「あ、ほんとだ。アンタ、今日いつもみたいに刀のケース持ってないじゃん。忘れてきたの?」

 

そうなのだ。凛は今日、昨日までは持ってきていたゴルフバックのようなケースを持ってきていなかったのだ。

しかしその理由は、別に面倒になったからとか、ぼんやりしていて持ってくるのを忘れたとかではなく。

 

「ん、違う。ここに、入ってる」

 

ここ、と言いながら自身の腕をポンポンと叩く凛に、クラスメイトたちは首を傾げる。

 

「ここ?って、どこよ」

「ここ……」

 

 

そう言いながら、凛は自身の左手を拳の形にし、そこに右手を持っていって、何かを握るような仕草をする。

そしてそのまま、スルスルと刀を引き出した。……腕の、中から。

 

「「「うわっ!?」」」

「……昨日、頑張ったら、できた」

「ええ!?それ刺さってるとかじゃなくて!?」

「頑張ってできるもんなのかよ!?」

「すっげ、びっくり人間じゃん!!?」

「剣士と刀は一心同体、ってやつか?」

 

口々に騒がしく話すクラスメイトたちに顔を顰めながらも、凛は刀を体の中にしまいながら説明する。

 

思いついたのは、昨日の戦闘訓練の前のことだ。前々から、『サムライ』という抽象的に過ぎる個性の名前に違和感は抱いていた。突飛な解釈かもしれないが、焦凍の言ったように、剣士と刀は一心同体のようなものだというし、あとは八百万が体からいろんなものを生成して取り出したりしているのを見て、なんとなーくだが、思いついた。

 

『刀を自分の一部だと考えることはできないだろうか?』と。

その考えのもと、自分を刀の『鞘』に例えるようなイメージで体に刀を沈み込ませてみたところ……できた、というわけだった。どうやら体に取り込んで仕舞えば質量も無くなるらしく、凛はとても満足している。実際、刀とずっと共に在っているような感覚は結構心地いいものだ。

 

「なるほどなぁ、自分を鞘にするイメージか……てっきり増強系の個性だと思ってたけど、色々できんだな」

「ん……私も、びっくり」

「小さい頃に気付いたり、教えてもらったりはしなかったのかしら?例えば、親からとか」

「ん、それは私が……むぐ」

「あ、あはは、まあ、それは後でいいんじゃない?そろそろ授業始まるし、相澤先生来るよ?」

 

余計なことを喋ろうとした凛の口を響香が塞ぎ、誤魔化すようにそう話す。

他のクラスメイトたちもちょっと疑問に思ったようだが、無事に誤魔化されてくれたようだった。ほっ、吐息を吐いた響香がに、凛は目を向けた。

 

「……もご」

「ああ、ごめんごめん」

「なんで、止めたの……?」

「なんでも何も、朝っぱらから教室に爆弾落としてどうすんのよ」

「ばくだん……?」

 

なんのことか、とでもいうように首を傾げる凛に、響香は言葉を続ける。

 

「はぁ……。アンタが自分の身の上を誰に話そうが勝手だけどね。受け取る人の気持ちも考えた方がいいよ、アンタも変に気を遣われたりすんのはイヤでしょ」

「……ん」

「もうちょっと時間置いて、それなりの関係……全員と仲良くなってからにしたら」

「……わかった……」

 

よくわからないが、やめた方がいいらしかった。そういうことなら、響香の言い分に従っておこう。

 

そのすぐ後くらいに相澤先生が教室に入ってきたので、響香と凛は大人しく席について、相澤先生の話が始まるのを待つことにした。

 






木刀も仕舞えます。


個性『サムライ』能力:
・斬れると思ったものを斬れる
・刀装備時身体能力向上
(・直感力の向上)
・刀の収納←NEW!



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