サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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総合評価500突破したそうです。


13話 リーダー

 

 

 

今日は珍しく(と言ってもまだ入学三日目だが)寝巻き姿ではなかった相澤先生が、机の上に書類のようなものを置きながら話し始める。

 

「Vと成績、見させてもらった」

「!!」

「爆豪、お前もうガキみたいなマネすんな。能力あるんだから」

「!…………わかってる」

 

……昨日の様子を見た限り、だいぶ参っていたようだったのだけど。一日経って落ち着いたのか、今日は存外大人しかった。その後は、出久に対する先生の手厳しいが期待のこもった注意があった後、先生は改めてクラス全員に目を向けた。

 

「それで、本題だ……急で悪いが今日は君らに……」

(一日目は、個性把握テスト……二日目は屋内での対人戦闘訓練で……今日は、なんだろ?)

「学級委員長を決めてもらう」

「「「学校っぽいの来たー!!」」」

 

クラス中が、一斉に叫んだ。このクラス、仲良いな……

 

「………なんか、普通……」

「普通でいいだろ!」

「つまんない……」

「えマジで!!?」

 

どうやら少しバトルジャンキーの気がありそうだった。

 

それはともかく。

先生の発言があった後、すぐさまクラス中から堰を切ったように委員長への立候補が飛び出し始めた。凛は特に興味はなかったが、クラスの8割以上が立候補するという始末。なんでそんなに意欲的なのか、と疑問に思ってしまう。

 

「霧崎はやんねえの?」

「うん……というか、なんでみんな、そんなにやりたいの……?」

「なんでってもなぁ……俺は小中ずっとやって来たしなぁ」

 

そんな電気の言葉を聞いて、凛は合点がいった。雄英の、それもヒーロー科に合格した人間ともなれば、『特別』な人が多いわけだ。特別な人間とはつまり、雄英に合格するほどの卓越した実力があり、ひたむきに頑張れる向上心があり、ヒーローになりたいと言える思いやりがある人間、もしくは目立ちたがりの人間ということ。

 

おそらく、このクラスにいる全員、それぞれの母校である中学校では生徒会なり学級委員なり、人を引っ張る役職でリーダーシップを発揮して来たのだろう。全員が全員、自己肯定感が高く、そしてそれに見合った実力を持っている、というわけである。……端的に言って仕舞えば、実力派陽キャ集団である。

まあつまり、そういったたくさんのリーダーが集まる場が、ここ雄英というわけだ。その中でリーダーの中のリーダーを決めようとするのだから、まあ混戦になるのも納得である。

 

そんな混沌とした騒ぎの中、一人の少年が声を上げた。眼鏡をかけた真面目な男子生徒、飯田天哉である。

 

「静粛にしたまえ!!」

「ん?」

「”多”を牽引する重要な仕事だぞ……!『やりたい者』がやれるモノではなかろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務……!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら——これは投票で決めるべき議案!!」

 

素晴らしい提案であった。

だがしかし残念ながら、そんな彼の手は。

このクラスの誰よりも高々と、天に向かって伸びていた。

 

「そびえ立ってんじゃねーか!なぜ発案した!!」

 

自分がやりたいという中でも、クラスを纏めて理性的な判断方法に持っていこうとする、天哉の意見だった。

 

(………)

 

まあ、結局その天哉の判断が受け入れられて投票になったわけだが。

 

「僕、三票ー!!?」

 

ということで。

学級委員長は、出久になった。

 

「一票……く、入れてくれた人、すまない……!」

「飯田さんは自分じゃなくて他に入れたのね……」

「何がしたかったんだよ……」

 

まあでも、出久はいい意味でも悪い意味でもクラスで一番ヒーロー精神が、というか自己犠牲精神が強いからね。個性把握テストで見せた窮地での成長力、対人戦闘訓練で見せた咄嗟の胆力と機転力は目を見張るものがあったし。

そう言った意味では適しているかもしれない。悪い点は普段の肝っ玉が小さくて無茶なことをよくするところだけど……そこは、二票もらって副委員長になった百がいい具合にカバーしてくれることを祈ろう。

 

 

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

今日の凛の昼食もいつもと同じく五割卵焼き弁当ではあるが、食べている場所と面子が珍しかった。

天哉と出久、それにお茶子と共に食堂でお弁当を食べていたのである。

 

「いざ委員長やるとなると務まるか不安だよ………」

「ツトマル」

「大丈夫さ。緑谷くんのここぞという時の胆力や判断力は”多”を牽引するに値する。だから君に投票したのだ」

「……ん、もう腕ぶっ壊さないなら、ついてく」

「う、気をつけます……」

 

ここいらで釘を刺しておくと、出久はバツが悪そうに体を縮こませてそう言った。まあ、相澤先生にも朝言われてたもんね。

 

「……私、天哉に入れたよ」

「あ、確かに!飯田君はやっぱ委員長って感じだよね、メガネだし!」

「あの一票は君だったのか、ありがとう霧崎君!そして済まない……!応援があったにも関わらず敗北してしまった……!」

「……そんなに気にすること、ない」

「そ、そこが飯田君のいいところだと僕は思うよ!」

 

真面目すぎるが、そこが逆にあのクラスの中だといい具合にまとめ役として働けそうだと思ったんだけどね。真面目さが空回りすることも一見悪いようには見えるけど実は大事だ。完璧なだけの人に人はついていかない。固いのに柔らかい、そう言うのがいいのだろうと思う。

 

「”やりたい”と相応しいか否かは別の話……僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」

「『僕』……!」

「ちょっと思ってたけど、飯田くんて、坊ちゃん!?」

「坊っ…!!……そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが」

 

天哉が言うには、彼は大人気ヒーローであるターボヒーロー『インゲニウム』を兄にもつ、代々ヒーロー一家の次男なんだそうだ。凛も、名前はよく聞いたことがある。なんなら、凛が今住んでいる地域の近くに事務所を構えているヒーローだった。

 

「規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!!俺はそんな兄に憧れヒーローを志した」

「ん……私のおじいちゃんも、たまにインゲニウムと一緒にパトロールしてる……」

「あ、まさか霧崎さんのお祖父さんって、具足ヒーロー『ヨロイムシャ』!?」

「……ん、そう」

 

流石に察しが早い。ヒーローオタクの名は伊達ではないようだった。

 

「すごいよ!その泰然自若とした立ち振る舞いと、いぶし銀の戦闘スタイルで長年ヒーロー活動に常時してきた今季ビルボートチャートの上半期7位に入った超古参の大人気ヒーローじゃないか!言葉少なに人を助け、感謝の言葉を受け取るのもそこそこに、渋い態度で去っていく……かっこいいよなぁ、僕も好きだよ、ヨロイムシャ!」

 

……次から次へとヒーローの情報が出てくるのはすごいと思う。なんだか、他人の口から自分の身内の話を聞くと言うのは、少しむず痒い思いがするね。家ではまあそれなりにズボラなところがあったりする人なんだけど。

 

「……あれ?でも、ヨロイムシャって結婚してたっけ……?」

 

……本当、そんなに細かいところまで、よく知ってると、おもうよ。

 

「……んと、それは……私、養子だし」

「え!?」

 

と、そこまで話して、身の上のことまで流れで話そうところで、朝響香に言われたことを思いだした。

 

『それなりの関係になってから……もうちょっとみんなと仲良くなってから話したら』

 

……果たして、私は今彼らと『それなりの関係』を築けているだろうか。

 

(わかん、ない……)

 

 

そんなふうに思って、スッと凛は顔を伏せた。

その時。唐突に、学校中に警報が鳴り響いた。

 

「警報!?」

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』

「セキュリティ3ってなんですか?」

 

天哉が近くの上級生らしき人に問いかける。その人は、切羽詰まったような顔をしてその質問に答えた。

 

「校舎内に誰かが侵入してきたってことだよ!三年間でこんなの初めてだ!君らも早く!!」

 

私たちは、あっという間に出口へと殺到する生徒たちの波に飲み込まれてしまった。遭遇したことのないよ事態に遭遇して、すぐさま逃げようと言う判断はいいと思うけど、それが結果的にパニックにつながってしまったようだ。

とりあえず、持ち前の体幹で人混みを掻き分け、流されないように窓際によってから、ついでに近くにいたお茶子も流されないように捕まえる。

お茶子は捕まえられたけれど、出久の方はあっという間に人混みに流されてしまった。……あー、まあ、意外とフィジカルはあるし、大丈夫だよ、大丈夫。

 

「お茶子、こっち」

「わわ!……あ、ありがと。なんか凛ちゃん落ち着いとるね」

「ん、直感もないし……あんま、危なくなさそ。……ほら」

 

凛はそう言って窓の外を指し示す。

 

「なにアレ!?マスメディア?」

「む、本当じゃないか!報道陣がなぜ……いや、まずはこの騒ぎを鎮めることが先決か……そうだ、麗日くん!」

「わ、飯田くん!おったんね!?」

「俺を浮かせろ!」

「へ!?」

 

天哉の伸ばした手に、お茶子が触れて、お茶子の”個性”『無重力(ゼログラビティ)』が発動する。

天哉の体に働いていた重力がなくなり、その体がふわりと浮かび上がった。そのまま天哉の個性『エンジン』の特徴であるふくらはぎのエンジンを噴かす。その勢いで、天哉は吹っ飛んでいった。無理に空中でエンジン噴かしたせいもあって、錐揉み回転しながら、だが。

そのままの勢いで、バコンと出口の上——食堂の中で一際目立ち、尚且つ生徒全員の目をひけるその場所に、勢いよく叩きつけられるように辿り着いた。(緑色の非常口の表示みたいな不格好な体勢で、だが)

 

そのまま全員の注意を引くように、声を張り上げる。

 

「皆さん……大丈ー夫!!!ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません大丈ー夫!!ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」

 

その天哉の呼びかけで、食堂の混乱はどうやら治ったようだった。

やっぱり、どれだけ不格好だろうと、なりふり構わず正しい行動ができる人だな、と思った。格好悪さが格好いい、と言うやつだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の、午後のホームルームでのこと。

学級委員長出久として前に出た出久が、はっきりとした口調で話し出す。

 

「委員長は……やっぱり飯田くんがいいと思います!あんなふうに格好よく人をまとめられるんだ。僕は飯田くんがやるのが正しいと思うよ」

 

その出久の発言にクラス中から賛同するような声が上がる。

その声援を受けて、天哉は立ち上がって宣言した。

 

「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」

「任せたぜ非常口!」

「非常口飯田ー!しっかりやれよー!!」

 

こうして。

天哉が委員長になったて言う話。

 

 

 

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

雄英高校、正面ゲート。このゲートは、雄英の生徒を外的な危険から完全に守るために、『雄英バリアー』と呼ばれる防御機構がついている。雄英のデータベースに登録されていない人物がゲートを無断で潜ろうとすると自動で四重のシャッター形式の門が閉まり、不審者を締め出す、と言う設計なのだが。

 

 

その堅牢なはずの雄英バリアーが、今。

砂粒のようになって(・・・・・・・・・)崩れ去っていた。

 

ゲートの前に集められてその光景を見せられた教師陣は、危機感を募らせていた。

 

 

 

 

「ただのマスコミにこんなこと、できる?」

 

「そそのかした者がいるね……」

 

「邪なものが入り込んだか、もしくは宣戦布告のつもりか」

 

 

 

 

歪みから芽生えた悪の芽は、その根を広げ、枝を伸ばし。憎き青天へと噛み付かんとしていた。

 

 






本人はいたって真面目なんだろうけど、どこかやることなすこと全部面白い人、いますよね。一種の人を惹きつける才能だと思います。


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