サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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14話 USJ編-1 静けさや

 

 

さて、時刻は少し経ってその日の午後。

1-Aの生徒にとっては少し楽しみだったり、あるいは一昨日と昨日のせいでお腹いっぱいなので少し憂鬱だったりするヒーロー基礎学の時間がやってきた。

 

どうやら今日の授業に関しては、相澤先生が説明をするらしく、いつものように教壇に立って話し始めた。

 

「今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになった」

 

昨日の担当はオールマイトだけだったけれど、今回に関しては三人で見守るらしい。少し豪華に感じる。何か特別なことでもやるのだろうか……あるいは、何か特別なことでもあったか。

 

今になって、朝感じたよくわからない直感が思い起こされてきて、少し不安になる。……体の中に刀を収納できるようになったから、どこへでも真剣を持って行けるようになったのはよかった。

 

「ハーイ!何するんですか?」

「災害水難なんでもござれ……『人命救助(レスキュー)訓練』だ!!」

 

基礎学の一日目は戦闘訓練、二日目は救助訓練と、順調に初歩のステップを踏んでいるという感じだ。同時に、自分が一歩一歩着実にヒーローへと近づいていることを明確に認識できる。

相澤先生曰く今日は救助訓練故コスチュームの着用は自由らしいが、別に動作に支障はないだろうということでそのまま着ていくことにした。状況ごとに服装を変えてたらヒーローなんて務まらないだろうしね。

 

どうやら訓練場は少し遠くにあるらしく、そこまではバスに乗っていくそうだ。敷地内をバスで移動する必要のある学校なんて、他にあまりないんじゃないだろうか。

 

 

「バスの席順でスムーズに行くよう番号順で二列に並ぼう!」

「飯田くんフルスロットルだね」

 

バスの手前で、早速とばかりに天哉が持ち前の生真面目さでクラスを統率しようと試みる。本人もなんだか役目をまっとうできて嬉しそうにしていた。が。

 

「こういうタイプだったくそう!」

 

……まぁ、バスはバスでも、天哉がイメージしていた旅行バスタイプの座席配列のやつじゃなくて、普通にそこらを走っていそうな公共バスのそれだったから、結局天哉が主導した整列は全く無駄になってしまったわけだ。

 

「空回りも、魅力……だよ?」

「ありがたいがその慰めかたはよくわからないぞ霧崎くん……!」

 

そういうわけで、席は好きなところに座っていいことになった。

外の景色を見たいから後ろの二人用の席の窓側に座りたかったんだけれど、そこは全て埋まってしまっていた。すごく残念だ。

 

仕方ないので、通路側にはなってしまうが空いている後ろの席の適当なところに座る。

そして外を見ようと横を向くと——

 

「………うわ」

「うわってなんだコラ潰すぞボンヤリ女ァ!」

「……席変える」

「あ”!?逃げんのかコラ!?」

「……!逃げ、ない!」

 

「うわぁあそこの席やっばぁ」

「近寄らんとこ」

「大丈夫かな……」

 

凛が適当に座った席の窓側の隣席に座っていたのは、勝己だった。

思い出されるのはつい一昨日のことだ。入学初日で、しかも朝っぱらから喧嘩をしていた二人である。天哉と勝己の間にはどうやらもうわだかまりは残ってないが(天哉がそういったことをあまり引き摺らないタイプだった)、勝己と凛の間では全くの別で、仲直りどころかあれ以来まともに口をきいていないのだ。

 

そのことから凛も勝己には苦手意識を持っており席を変えようとしたが、勝己の謎の挑発によりそれは叶わなかった。凛は、大の負けず嫌いである。

 

「…………」

「………………」

 

当たり前だが、無言が続く。だが意外にも、その沈黙はすぐさま破られることになった。それも、勝己の方から。

 

「……オイ、ボンヤリ」

「……なに」

「……いや、なんでもねぇ」

「……そ」

 

なんだか、はっきりしない勝己だ。ちらりと凛は勝己の方を向いてみるが、その視線は窓の外に向いており真意は読み取れない。

詳しいことを問おうか悩んだ凛だが、その結論を出す前にクラスメイトたちの会話が耳に入ってきた。

 

「派手で強えつったらやっぱ轟と爆豪だな」

「あと霧崎も強いよね!どっちかというと地味だけど、純粋に”強っ”!って感じ」

 

それはどういう感じだろうか。三奈の表現はよくわからない。

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」

「んだとコラ出すわ!!」

「ホラ」

 

さっきまでは比較的おとなしかったのに、梅雨ちゃんのその一言で勝己が炎上を始めてしまった。そこに、電気が余計に油をそそぐ。

ついでに凛も、勝己に耳元で叫ばれてイラっときていたが。

 

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげえよ」

「てめぇのボキャブラリーはなんだこら殺すぞ!!」

「……うるさい、あほ勝己……」

「あ”あ”ん”!?アホっつったか!?てめえは逆にシンプルすぎんだブッ殺すぞ!!」

 

「低俗な会話ですこと!」

「あはは、でもこういうの好きだ私!」

 

そんなわけで、バスの中での移動時間は穏やかに……かは、いささか以上に疑問が残るが、とにかく平穏に過ぎて行ったのだった。

 

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 

「すっげー!!USJかよ!?」

「USJ……って、なに?」

「え、嘘。アンタ行ったことないの?」

 

残念ながら凛はUSJには行ったことがない。というか名前を聞いたこともない。もともとそういうことには興味がなかったし、養父も行こうと思ったこともなかった。本などは読むが、ほとんどの大衆娯楽から程遠い生活をしていた二人である。

 

バスを降りた1-Aの面々の目の前に広がったのは、一面の巨大施設だった。

テーマパークの入り口のようなゲートに、中央には小さな噴水広場があり、右奥には巨大な滝、左奥には人工とは思えないほど大きな岩石の山。

確かに、某有名テーマパークのようだという感想も納得である。

 

「水難事故、土砂災害、火事……etc。あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……ウソの災害や事故ルーム(U  S  J)!!」

「……USJって……危ないところ?」

「本物は命の危険とは多分真逆に位置してる場所だけどね」

「………??」

「………。今度、ウチらで行こうか」

「……?うん」

 

よくわからないけれど、いざ行くときは最大限の準備をしていかねばならないだろう。凛はそう結論づけた。

 

たった今1-Aに対して説明を行ったその教師——ヒーローは、スペースヒーロー『13号』というヒーローだ。見た目は中身の全く見えない宇宙服を着た少しミステリアスだが可愛がある見た目で、声も中性的。アンノウンの体現に見えるが、その正体は災害救助等で目覚ましい活躍を続ける心優しいヒーローであった。

凛も何度か見聞きしたことがあり、存在は知っていた。

 

そういえば、オールマイトを見かけない。授業前には三人の教師で行うと言っていたから、何かあったのだろうか。……まあ、大丈夫だろう。

 

オールマイトは、誰よりも強いのだし。

 

13号先生と相澤先生も何か話していたようでけれど、落着したのかついに授業を始めるようだった。改めて、13号先生が私たちに向き直る。

 

「えー始める前にお小言を一つ、二つ、三つ……四つ……」

(((増える……)))

 

やがて話すことがまとまったのだろう、気を取り直したように話し始めた。

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の”個性”は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」

 

その出久の相槌に、お茶子がうんうんと頷いている。どうやらお茶子は人一倍13号というヒーローのことが好きらしかった。

だが13号は、真剣な雰囲気で話を続ける。

 

「ええ……しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう”個性”がいるでしょう」

 

そう言われて、凛は真っ先に自分の個性に思い至る。凛の個性は、13号が言った類のものの中でも最たるものだ。武器を使用し、敵を斬り裂く。ひどく実践的で……残酷なことなどいくらでも引き起こせる個性。

だからこそ、使い方を間違えてはいけないのだと、凛は思う。

13号が、話を続ける。

 

「超人社会は”個性”の使用を資格性にし厳しく制限することで一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる”いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい」

 

相澤先生の個性把握テストで己の力の現在値と可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でその力を人に向ける危うさを体験しただろう。だから今回は心機一転して、人命のために個々の力をどう活用するか学ぼうと、13号は言う。

マイナスにもなりうる力を、大きなプラスにするための訓練だ。

 

「君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰って下さいな」

 

13号が。そう台詞を締め括った。

 

 

 

その時に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぞわり、と。二回目の、あの気配だ。

 

(……ああ、)

 

「以上!ご清聴ありがとうございました!」

「ステキー!」

「ブラボー!ブラボー!!」

 

みんなの声が、遠くに聞こえる。

心臓の音が大きくなり始めたけれど、意外にも頭の芯はひんやりと冷えたままだった。

スッと、腕の中から『朱鵺』を取り出して。

 

「そんじゃあまずは……」

「せんせい、」

 

なんだ、とばかりに相澤先生がこちらに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

「……なにか、くる、よ?」

 

 

 

 

 

 

全てが本当に始まった日、と言うのをあげるなら。

 

私は、今日がその日だと思う。

 

———歪みが生んだ悪意との、最初の邂逅の日だ。

 

 

 






USJデート編、制作決定。時期未定。
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